給与計算は、社会保険労務士(社労士)に依頼できます。毎月の計算だけでなく、賃金台帳の作成や社会保険・雇用保険の手続きまでまとめて任せられるのが、社労士に頼む強みです。
費用は「基本料金+従業員1人あたりの料金」で決まることが多く、従業員5人で月2.5万円前後が目安です。勤怠の集計や賞与の計算まで頼むかどうかで変わります。
ただし、年末調整は税理士の業務のため、社労士には頼めません。税理士に頼むか、自社で行うかを決めておきましょう。
この記事では、社労士に依頼できることとできないこと、税理士との違い、メリット・デメリット、費用の目安、依頼するときの流れを、社労士の立場から説明します。自分で計算するか、専門家に依頼するかを判断する材料にしてください。

生島社労士事務所代表
生島 亮
いくしま りょう
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初めて従業員を雇用した時の給与計算については、入社から初回の給料日までの流れと注意点を動画でも解説しています。
給与計算は、社労士に依頼できます。社労士は、給与の計算と、それに関わる社会保険・雇用保険の手続きを、まとめて引き受けられる専門家です。
毎月の給与の金額を計算すること自体は、社労士の独占業務ではなく、社労士の資格は必要ありません。社内の担当者が計算してもよく、給与計算ソフトを使う会社も多くあります。ただし、給与計算と一緒に行うことが多い賃金台帳の作成や、社会保険・雇用保険の手続きには、別の決まりがあります。
次の業務は、法律で担当できる人が決まっています。社会保険・雇用保険の手続きと賃金台帳の作成を、社外の人が報酬を得て業として行う場合は、原則として社労士・社労士法人に限られます。
- 社会保険・雇用保険の手続き(資格取得届・喪失届、月額変更届、賞与支払届など):書類の作成と提出の代行は社労士の業務です(社会保険労務士法2条1項1号・1号の2)
- 賃金台帳の作成:賃金台帳は、労働基準法で会社に作成が義務づけられている帳簿です(労働基準法108条)。こうした帳簿の作成を、報酬を得て業務として代わりに行えるのは、原則として社労士です(社会保険労務士法2条1項2号・27条)
- 年末調整の書類の作成と提出:所得税の手続きで、税理士の業務にあたります(税理士法2条)
ただし、賃金台帳の作成や保険の手続きについては、税理士が税理士の業務(税理士法2条1項)に付随して行う場合に限り、例外として認められています(社会保険労務士法27条ただし書き・同法施行令2条)。給与計算を依頼するときは、「計算」だけを依頼するのか、「賃金台帳の作成」や「保険の手続き」まで頼むのかを分けて考えると、依頼先を選びやすくなります。
給与計算に関わる主な業務を、依頼先ごとにまとめると次のとおりです。
| 仕事 | 社労士 | 税理士 | 給与計算代行会社 |
|---|---|---|---|
| 毎月の給与計算 | 頼める | 頼める | 頼める |
| 賃金台帳の作成 | 頼める | 税理士の業務に付随する場合に限り頼める | 代行会社自身には頼めない。社労士・社労士法人が担当するかを確認 |
| 社会保険・雇用保険の手続き | 頼める | 原則として頼めない(税理士の業務に付随する場合に限り対応できる) | 代行会社自身には頼めない。社労士・社労士法人が担当するかを確認 |
| 年末調整 | 頼めない(年末調整には関われない) | 頼める | 提携する税理士が担当するかを確認 |
| 労務の相談(残業・休み・就業規則など) | 頼める | 専門外 | — |
| 税金の相談(節税・申告など) | 専門外 | 頼める | — |
給与計算のほかに社労士に相談・依頼できること(保険の手続き・就業規則・労務の相談など)は、「社労士に相談・依頼できること」で場面ごとに解説しています。
年末調整は、1年間の給与から差し引いた所得税を、年末に計算し直して過不足を精算する手続きです。税務署に提出する源泉徴収票や法定調書の作成・提出を、報酬を得て代わりに行うことは、税理士の業務にあたります(税理士法2条)。
年末調整は税理士の業務のため、社労士は関われません。給与計算を社労士に依頼する場合は、年末調整を顧問税理士に頼むか、自社で行うかを、契約の前に決めておきましょう。顧問税理士に頼む場合は、社労士と税理士の間で、1年分の給与のデータをどう受け渡すかも決めておくと安心です。
給与計算だけを依頼できるかどうかは、事務所によって異なります。
- 給与計算だけでも引き受ける事務所
- 顧問契約(労務相談や手続き代行の契約)を結んでいる会社に限って、給与計算を引き受ける事務所
- 給与計算は引き受けず、手続きと相談だけを行う事務所
料金ページに「顧問契約がある場合のみ」と書かれていることもあるため、見積もりの前に確認しておくと、やり取りがスムーズに進みます。
社労士に依頼する最大のメリットは、給与計算と、それに関わる保険の手続きをまとめて任せられることです。反対に、費用がかかることと、社内にやり方が残りにくいことがデメリットです。
| メリット | 具体的には |
|---|---|
| 保険の手続きとまとめて任せられる | 入社・退社のときの資格取得届・喪失届や、固定的な給与(基本給や手当)が変わり、条件にあてはまったときの月額変更届など、給与の金額と結びついた手続きを、同じ相手に任せられます。給与計算の担当と手続きの担当が別だと起こりやすい、手続きの漏れを防げます。 |
| 保険料率や最低賃金の改定を反映できる | 健康保険料率・雇用保険料率・最低賃金などは、毎年のように変わります。改定に気づかず、古い数字で計算してしまう誤りを防げます。 |
| 担当者が辞めても、給与計算が止まらない | 給与計算を担当者1人だけが把握している会社では、その人が退職や休職をすると、給与の支払いが遅れるおそれがあります。外部に任せておけば、毎月の支払いを続けられます。 |
給与計算に限らず、社労士に依頼するメリットと注意点は、「社労士に依頼するメリットと注意点」でまとめています。
| デメリット | 対策 |
|---|---|
| 毎月の費用がかかる | 担当者が給与計算にかけている時間と比べて判断します。費用の目安は、このあとの「費用相場」で説明します。 |
| 社内にやり方が残りにくい | 毎月の計算結果を社内でも確認し、変わった点の説明を受けるようにすると、社内にも知識が残ります。 |
| 年末調整は別の手当てが要る | 年末調整を税理士に頼むか自社で行うかを、契約の前に決めておきます(上の「年末調整は社労士には依頼できない」) |
| 支払日の直前の変更に対応できない場合がある | 締め日から支払日までの間に、勤怠のデータを渡す期限ができます。期限と、直前の修正への対応方法を、契約の前に確認しておきます。 |
このほか、給与や従業員の個人情報を外部に渡すことになります。データの受け渡し方法(クラウドのソフトを共有するのか、ファイルを送るのか)も、契約の前に確認しておきましょう。
給与計算のやり方は、大きく4つあります。従業員の人数だけで決めず、「保険の手続きがどのくらい発生するか」「顧問税理士がいるか」もあわせて考えると選びやすくなります。
| やり方 | 社内に残る作業 | 向いている会社 |
|---|---|---|
| 自分で計算する(エクセルなど) | すべて(計算・明細・賃金台帳・保険の手続き・年末調整) | 従業員が少なく、給与体系が単純な会社。担当者が制度の改定を追える会社 |
| 給与計算ソフトを使う | 勤怠の入力、ソフトの設定の見直し、保険の手続き | 社内に担当者を置ける会社。料率の改定にソフトが対応してくれる |
| 税理士に頼む | 保険の手続き(社労士に頼むか自社で行う) | 顧問税理士がいて、年末調整や税務とまとめて頼みたい会社 |
| 社労士に頼む | 勤怠の締めと、社労士へのデータの受け渡し。年末調整(税理士に頼むか自社で行う) | 入社・退社が頻繁で、保険の手続きが多い会社。労務の相談もしたい会社 |
給与計算ソフトを使いながら、計算結果の確認や保険の手続きだけを社労士に依頼する、という役割分担もできます。
自分で計算する場合の手順(入社が決まってから初回の給与支払日まで)は、「初めての給与計算のやり方」で説明しています。2回目以降の毎月の計算の手順と、手取りまでの計算例は、「給与計算のやり方」で紹介しています。毎月の手取りや控除の金額は、給与計算ツールで試算できます。
社労士に給与計算を依頼する費用は、「月額の基本料金+従業員1人あたりの料金」で決まることが多く、従業員5人で月2.5万円前後、10人で月3万円前後が目安です。
社労士に給与計算だけを頼む場合、従業員10人で月額およそ3万円(税抜)が目安です。
インターネットで給与計算の料金を公開している社労士事務所のうち、給与計算だけの料金と税込・税抜の区分がはっきり分かる3件をもとに、人数別の月額を計算すると次のとおりです。
| 従業員数 | 月額の目安(中央値) | 月額の幅 |
|---|---|---|
| 5人 | 約2.5万円 | 約2.5万円〜3.8万円 |
| 10人 | 約3万円 | 約3万円〜3.8万円 |
| 20人 | 約4万円 | 約3.8万円〜4万円 |
このほか、1人あたり3,000円程度としている事務所もあり、従業員が多いほど事務所ごとの差が大きくなります。正確な金額は見積もりで確認してください。
事務所によっては、給与計算を顧問契約とセットにしている場合があります。その場合は、上の金額とは別に顧問料がかかります。顧問料の相場は、「社労士の顧問料の相場」で説明しています。
| 区分 | 主な業務 |
|---|---|
| 基本料金に含まれることが多い | 毎月の給与計算(基本給・手当・残業代・控除の計算)、給与明細の作成 |
| 別料金になりやすい | 勤怠の集計(タイムカードやシフト表から労働時間を集計する作業)、賞与の計算、初期設定(ソフトへの従業員の登録など)、銀行振込のデータ作成 |
公開されている料金を見ると、勤怠の集計は1人あたり月1,000円〜3,000円程度、初期設定は1.5万円〜3万円程度、賞与の計算は1回につき毎月の給与計算の1か月分程度、としている事務所があります。見積もりをとるときは、毎月の金額だけでなく、1年間でかかる総額(初期設定・賞与の回数を含めて)で比べましょう。
給与計算だけを依頼する契約のほかに、労務相談や保険の手続きと一緒に依頼する顧問契約があります。入社・退社が多い会社や、残業代や休日のルールを相談したい会社は、顧問契約とセットにしたほうが、まとめて任せられます。
社労士クラウドの給与計算代行は、顧問契約(労務相談+手続き代行)とセットで、freee人事労務での運用を前提にしています。料金は社労士クラウドの給与計算代行(顧問契約とセット)のページで確認できます。
依頼から本番の給与計算まで、早くても1〜2か月ほど見ておくと安心です。特に、最初の月は社内の計算結果と社労士の計算結果を突き合わせると、設定の誤りを見つけやすくなります。
- 相談・見積もり:従業員数、給与の締め日と支払日、使っている勤怠・給与のソフト、依頼したい範囲(勤怠の集計・賞与・保険の手続き)を伝えます
- 契約:料金と、どこまでを依頼するか(年末調整は税理士か自社で行うことを含めて)を書面で確認します
- 資料の提供と初期設定:下の資料を渡し、社労士がソフトに従業員や手当を登録します
- 並行稼働(テスト):最初の1〜2回は、社内の計算結果と社労士の計算結果を突き合わせ、差があれば原因を確かめます
- 本番:毎月、勤怠を締めたらデータを社労士に渡し、計算結果と給与明細を受け取って、給与を振り込みます
- 就業規則・賃金規程(基本給・手当・残業代の計算ルール)
- 36協定などの労使協定(残業の上限など、残業代の計算の前提になるもの)
- 労働者名簿・雇用契約書(従業員ごとの給与・手当・勤務時間)
- 扶養控除等申告書(所得税の計算に使う)
- 社会保険・雇用保険の加入情報(被保険者番号など)
- 過去数か月分の賃金台帳・給与明細
- タイムカードや勤怠ソフトの記録
労働者名簿と賃金台帳は、労働基準法で作成が義務づけられています(107条・108条)。出勤簿やタイムカードなどの労働時間の記録は、保存が義務づけられている書類です(109条)。全部がそろっていなくても、多くの事務所は現状を聞きながら一緒に整えてくれます。
見積もりをとるときは、料金だけでなく、次の点も確認しておくと、契約したあとの認識の食い違いを防げます。
- 給与計算だけで引き受けているか、顧問契約が条件か
- 勤怠の集計から依頼できるか、締めた勤怠データを渡す形か
- 使うソフトの指定があるか(今のソフトを変える必要があるか)
- 給与の締め日から支払日までの日数で、毎月の計算が間に合うか
- 計算の誤りが見つかったときに、誰が直して、従業員にどう知らせるか
- 給与や個人情報の受け渡し方法と、契約が終わったときのデータの扱い
- 年末調整を税理士に頼むか、自社で行うか
- 1年間の総額(初期設定・賞与を含めて)
給与の金額の計算を、社労士ではない給与計算代行会社に頼むこと自体は、違法ではありません。注意したいのは、賃金台帳の作成と、社会保険・雇用保険の手続きです。社労士・社労士法人でない者が、報酬を得てこれらを業として行うことは、社会保険労務士法で禁じられており(27条。税理士が税理士の業務に付随して行う場合などの例外を除く)、27条に違反してこれらの業務を行った者は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります(同法32条の2第1項6号)。代行会社にこれらの業務も頼む場合は、誰が受任し、誰が担当するのか(社労士・社労士法人か)を確認しましょう。
入社・退社が多く、社会保険・雇用保険の手続きもまとめて任せたい会社は、社労士が向いています。顧問税理士に記帳や決算を頼んでいて、年末調整もあわせて任せたい会社は、税理士に頼む方法もあります。ただし、年末調整は社労士には頼めず、保険の手続きは原則として税理士には頼めません(税理士が税理士の業務に付随して行う場合は例外です)。給与計算を社労士に、年末調整を顧問税理士に頼む場合は、1年分の給与のデータをどう受け渡すかを決めておきましょう。
給与計算は毎月発生するため、毎月の契約が一般的です。単発で引き受けるかどうかは、事務所によって異なります。入社・退社のときの保険の手続きは、単発で依頼できる事務所が多くあります。社労士クラウドでは、給与計算は顧問契約とセットでお引き受けし、手続きは単発(スポット)でもご依頼いただけます。給与計算だけを依頼できるかや、顧問契約が条件かは、上の「給与計算だけ依頼できるか」を見てください。
誤りの原因(渡した勤怠データの誤りか、計算の誤りか)を確かめます。給与が少なかった場合は、不足分をすみやかに追加で支払います。払いすぎていた場合は、従業員に説明したうえで、精算のしかたを確認します。従業員への説明や精算を誰が行うかは、契約の前に決めておきましょう。
人数だけでは決まりません。入社・退社が多い、パートや時短勤務など働き方がさまざまな、担当者が1人しかいない、といった会社は、人数が少なくても依頼するメリットが大きくなります。
- 給与計算は社労士に依頼できる。保険の手続きとまとめて任せられるのが、社労士に依頼するいちばんの理由
- 費用は「基本料金+人数単価」が多く、5人で月2.5万円前後、10人で月3万円前後が目安。勤怠の集計や賞与は別料金になりやすい
- 年末調整は税理士の業務で、社労士には頼めない。税理士に頼むか自社で行うかを、契約の前に決めておく
自分で計算する、ソフトを使う、税理士や社労士に依頼する、のどれが合うかは、保険の手続きの多さと、社内に担当者を置けるかで決まります。迷ったら、まず見積もりをとって、1年間の総額と担当の分け方を比べてみてください。
社労士クラウドでは、労務相談・保険の手続き・毎月の給与計算をまとめて任せられるプランをご用意しています。
- 給与計算は、顧問契約(労務相談+手続き代行)とセットのプランです
- 勤怠管理から給与計算まで、freee人事労務で運用します(freeeの利用料は料金に含まれます)
- 給与計算とセットなら、導入支援料は0円です
- オンラインで、全国どこからでもご依頼いただけます
- 従業員30名未満の会社を主な対象としています
料金や導入の流れは、下のページでご確認ください。ほかの手続きの料金は料金表にまとめています。

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