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社労士は会社に必要ない?判断のポイントと、社労士がいない会社の主なリスクを解説

社労士は会社に必要ない?判断のポイントと、社労士がいない会社の主なリスクを解説

「社労士は会社に必要ないのでは?」「社労士がいない会社は違法?」

会社を設立したばかりのころは、「手続きは自分でできそう」「ソフトや税理士に頼れる」と考え、社労士に頼むほどではないと感じることもありますよね。

結論から言うと、社労士に依頼する義務は法律上ありません。社労士がいない会社も違法ではなく、手続きは事業主自身や社内の担当者が行えます。

とはいえ、法律上できることと、自社だけで正しく続けられることは別です。

自社では正しいと思っていた加入の判定や手続きの期限が、後から誤りと分かり、さかのぼって手続きや保険料の精算が必要になることもあります。今は問題がないと思える場合でも、一度は社労士に確かめておくと、こうした手戻りを防ぎやすくなります。

会社が育つにつれて、1人目の従業員を雇うとき、常時10人に近づくとき、手続きの担当者が辞めるときなど、自社だけでは判断しにくい場面が増えていきます。こうしたときが、社労士が必要になるタイミングです。

この記事では、社労士がいない会社の主なリスク、社労士が必要かどうかを決める判断のポイント、社労士が必要になるタイミングを、事業主の方に向けて社労士が解説します。

この記事を監修した人

生島社労士事務所代表

生島 亮

いくしま りょう

https://sharoushi-cloud.com/

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社労士がいない会社は違法?

社労士(社会保険労務士)とは、社会保険・労働保険の手続きの代行や、人事・労務の相談を仕事にする国家資格者です。

会社に社労士への依頼を義務づける法律はなく、社労士がいなくても違法にはなりません。社会保険・労働保険の手続きは、経営者や社内の担当者が自社で行えます。

社会保険労務士法は、他人の求めに応じて報酬を得て、業として、社会保険・労働保険の手続きの書類の作成や提出の代行を行えるのは、原則として社労士・社労士法人に限ると定めています。会社自身の手続きは「他人の求め」にあたらないため、この制限の対象ではありません。

社労士に相談・依頼できることは、次の記事で場面ごとに解説しています。

社労士(社会保険労務士)に相談・依頼できることは?場面別の相談例とタイミングを解説社労士(社会保険労務士)に相談・依頼できることは?場面別の相談例とタイミングを解説

ただし、社労士に頼んでも頼まなくても、手続きと労務管理の責任は会社にあります。労働者を雇ったときの届出、労働条件の明示、就業規則や36協定などは事業主の義務で、社労士に任せても、義務を負うのは会社です。

届出をしなかったり、必要な手続きをしないまま働かせたりしたときは、会社や責任者が罰則の対象になることがあります。

たとえば、次の2つがあります。

  • 事業主が、正当な理由がなく健康保険・厚生年金保険の届出をしなかったり、虚偽の届出をしたりした場合は、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります
  • 36協定の締結・届出をしないまま、法定労働時間を超えて、または法定休日に労働させた場合は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になります

36協定の決め方や、残業時間の上限は、次の記事で解説しています。

36(サブロク)協定とは?時間外労働の上限規制を基本からわかりやすく社労士が解説36(サブロク)協定とは?時間外労働の上限規制を基本からわかりやすく社労士が解説

社労士が必要ないと感じやすい理由

社労士は必要ないと感じる理由は、主に次の3つです。どれも一理ありますが、それだけでは防げないこともあります。

手続きは自社でできそうだから

入社・退社の手続きや年度更新は、事業主自身や社内の担当者が行えます。入退社が少ない会社では、期限のある手続きが年に数回しかなく、困る場面が少ないこともあります。

ただし、加入の対象かどうかの判定や期限を誤ると、後からさかのぼって手続きや保険料の精算が必要になることがあります。

労務管理ソフトがあるから

労務管理ソフトや電子申請を使えば、入力や届出書の作成、提出の負担を減らせます。

ただし、ソフトは入力された情報から書類を作るもので、誰を保険に加入させるかの判定は会社の責任です。電子申請は提出の方法であり、届出が必要かどうかを判断してくれるわけではありません。

税理士に相談できるから

給与や年末調整の相談は、税理士にできます。給与計算そのものに、資格は必要ありません。

ただし、社会保険・労働保険の手続きは別の領域です。税理士・税理士法人には、社会保険労務士法の施行令により、税理士の業務に付随して行う場合に限って例外が認められています。

この例外で行えるのは書類の作成までで、届出の提出代行や事務代理は含まれないとされています。税理士に給与や年末調整を任せていても、社会保険・労働保険の手続きまで任せられるとは限らないため、実際に誰が対応するか、業務の範囲を確認しておきましょう。

給与計算を社労士に頼む場合の、税理士との違いは、次の記事で解説しています。

給与計算は社労士に依頼できる?メリット・費用相場・税理士との違いを解説給与計算は社労士に依頼できる?メリット・費用相場・税理士との違いを解説

社労士がいない会社の主なリスク

社労士がいないことだけで、手続き漏れが起こるわけではありません。注意したいのは、期限の管理、加入の判定、法改正の確認が、担当者任せになっていないかです。

主なリスクは、次の6つです。

リスクが生じる場面起こりうること
入社・退社の届出の期限に間に合わない加入のさかのぼり
保険料のさかのぼり
従業員の給付への影響
年度更新と算定基礎届が、同じ6〜7月に重なる準備が間に合わず、提出が遅れる
36協定を出さずに、法定労働時間を超えて働かせる労働基準法違反となり、罰則の対象になる
常時10人以上の事業場で、就業規則を作成・届出していない労働基準法違反となり、罰則の対象になる
法改正を見落とす加入の要件が変わったことに気づかず、手続きが漏れる
トラブルが起きたときの最初の対応が決まっていない何を確かめ、どこへ連絡するかを決めるのに時間がかかる

期限の遅れや漏れに気づいたら、自己判断で放置せず、年金事務所・労働基準監督署・ハローワークなど、手続きを受け付ける窓口に事実を伝えて、対応を確認してください。遅れても、提出は必要です。

社労士が必要ないかを決める、3つの判断のポイント

社労士が必要かどうかは、人数と成長段階、法令への対応とトラブルのリスク、社内で確かめて回せる体制の3つで判断できます。

3つとも問題がなければ、自社で手続きできますが、1つでも不安が残る場合は、社労士に相談するのがおすすめです。

「社労士が必要ない」と「社労士に相談する価値がない」は、別の話です。自社で手続きを管理できている場合でも、加入要件や労働時間の管理の判断が正しいかを、社内だけで確かめるのは難しいことがあります。社労士に相談すれば、今の対応に問題がないかを確かめられるほか、これからのトラブルを防ぐためのアドバイスも受けられます。

社労士が必要ないかを決める3つの判断のポイント。人数と成長段階、法令への対応とトラブルのリスク、社内で確かめて回せる体制

人数と成長段階

人数によって、会社に生じる手続きや義務は変わります。1人目を雇えば、原則として労災保険の適用や労働条件の明示が、事業場で常時10人以上になれば就業規則の作成・届出が必要です。36協定は人数に関係なく、法定労働時間を超えて、または法定休日に働かせる前に必要です。

社会保険は、人数だけでは決まりません。法人は、代表者1人でも、法人から労務の対価として報酬を受けている場合は、原則として加入が必要です。パート・アルバイトは、週の所定労働時間などで、本人ごとに加入が決まります。

パート・アルバイトが社会保険に加入する条件と、今後の改正の流れは、次の記事で解説しています。

社会保険の加入条件とは?50人以下の場合やパートの要件をわかりやすく解説【2026年最新】社会保険の加入条件とは?50人以下の場合やパートの要件をわかりやすく解説【2026年最新】

法令への対応とトラブルのリスク

入退社が多い会社や、パート・アルバイトが多い会社ほど、届出の件数が増え、期限の管理と加入の判定の負担が増えます。間違えたときの影響も大きく、社会保険は加入や保険料がさかのぼることがあり、雇用保険は従業員が受ける給付に影響することがあります。

トラブルが起きたときに、最初に何を確かめ、どこへ連絡するかを決めて動けるかも大切です。

社内で確かめて回せる体制

自社で手続きを続けるには、期限のある手続きの担当者と、不在のときの代わりの担当者、年度更新・算定基礎届などの年間の予定表、法改正を確かめる先が必要です。担当者が1人だけだと、休職や退職で期限を見落としやすくなります。

社労士が必要になるタイミング

従業員を雇っていない個人事業主や、代表者だけの法人なら、今は自社で手続きできることが多いです。ただし、会社が育つにつれて、自社だけでは判断しにくい場面が増えていきます。

次のようなときは、自社だけで続けられるかを一度見直しましょう。

社労士が必要になるタイミング。1人目の従業員を雇うとき、パート・アルバイトを雇うとき、残業や休日の出勤をさせるとき、事業場で常時10人に近づくとき、入社・退社が増えたとき。担当者が辞めるとき、トラブルや行政の調査、法改正は時期に関係なく起こる
タイミング自社だけでは難しくなる理由
1人目の従業員を雇うとき労働保険の加入、雇用保険・社会保険の加入の判定、労働条件の明示など、初めての手続きが一度に始まる
パート・アルバイトを雇うとき、働く時間を変えるとき週の所定労働時間などで、雇用保険・社会保険の対象かが分かれ、従業員ごとに加入要件を確認する
残業や休日の出勤をさせるとき人数に関係なく、前もって36協定を結び、労働基準監督署に届け出る必要がある
事業場で常時10人に近づくとき就業規則の作成と届出が必要になり、パート・アルバイトを含めた数え方も確かめる
入社・退社が増えたとき資格取得届・資格喪失届・離職票などの期限が重なり、漏れやすくなる
手続きの担当者が辞める・休むとき期限や手順を知る人がいなくなり、手続きが止まりやすい
労働トラブルや、行政の調査があったとき残業代・解雇・労災などは、早い段階で専門家に確かめる必要がある。相手方との交渉や訴訟が必要な場合は、弁護士への相談も考える
法改正で、加入の条件や手続きが変わるとき雇用保険の週10時間への引き下げ(2028年10月1日から)など、対象者が変わる

社労士に頼むと決めたときの、メリットと注意点は、次の記事で解説しています。

社労士に依頼するメリットと注意点!費用相場も解説社労士に依頼するメリットと注意点!費用相場も解説

スポット依頼と顧問契約の選び方

社労士に頼むかどうかは、頼む・頼まないの二択ではありません。顧問契約を結ばなくても、必要な手続きだけをその都度頼んだり、1回だけ相談したりできます。

対応の選び方は、次の3つです。

選択肢向いている状況会社の例
自社対応加入判定・計算・期限管理を社内で行える従業員がいない、または数人で入退社が少なく、担当者と代わりの担当者がいる
スポット依頼普段は自社対応できるが、特定の手続きで支援が必要普段の手続きはできるが、年度更新や算定基礎届、初めての離職票に不安がある
顧問契約手続きや相談が継続的に発生する入退社が多い、パート・アルバイトが多い、労務の相談が毎月のようにある

人数だけで決まるものではないため、手続きの量と社内の体制をあわせて選びましょう。

依頼できる手続きや料金の仕組みは、社労士事務所によって異なります。依頼する場合の相場と、顧問契約の内容は、次の記事で解説しています。

社労士との顧問契約は必要?顧問料の相場や業務内容、メリット・デメリットを解説社労士との顧問契約は必要?顧問料の相場や業務内容、メリット・デメリットを解説

社労士は必要ないかについてよくある質問

会社に社労士は1人必要ですか?

社労士を社員として雇う必要はありません。会社に社労士を置くことや、社労士に依頼することを義務づける法律もありません。

社労士に頼みたいときは、外部の社労士事務所に、必要な手続きだけをスポットで依頼するか、顧問契約を結んで継続して依頼するのが一般的です。続けて依頼するかどうかは、「社労士が必要ないかを決める、3つの判断のポイント」を目安にしてください。

個人事業主は社労士が必要ですか?

従業員を雇っていない個人事業主は、多くの場合、社労士に頼む必要はありません。労働者を雇っていないため、労災保険・雇用保険の通常の加入手続きが原則として発生せず、健康保険・厚生年金保険の強制適用の対象にもなりません。本人の国民健康保険と国民年金の手続きは、自分で行えます。

従業員を雇うと、手続きと労務管理の義務が生じます。初めて人を雇うときは、社労士への相談を考えましょう。法人にする場合は、従業員がいなくても、法人から労務の対価として報酬を受ける役員がいれば、原則として社会保険の加入手続きが必要になる点に注意しましょう。

まとめ

社労士がいない会社も違法ではありません。ただし、手続きと労務管理の責任は会社にあり、加入の判定や期限の誤りは、後からさかのぼって正すことになります。社労士は必要ないと感じている会社でも、少しでも不安があれば、一度相談してみることをおすすめします。顧問契約を結ばなくても、必要なときだけ相談する方法もあります。

この記事のポイントは次のとおりです。

  • 社労士への依頼は法律上の義務ではなく、いなくても違法ではない
  • 依頼の義務はなくても、手続きと労務管理の責任は会社にある
  • 自社でできる、ソフトがある、税理士がいるという理由だけでは、加入の判定や期限の誤りは防げない
  • 主なリスクは、届出の期限の遅れ、36協定や就業規則の漏れ、法改正の見落とし、トラブルの最初の対応が決まっていないこと
  • 判断のポイントは、人数と成長段階、法令への対応とトラブルのリスク、社内で確かめて回せる体制の3つ
  • 1人目の従業員を雇うとき、常時10人に近づくとき、手続きの担当者が辞めるときなどは、社労士が必要になるタイミング
  • 顧問契約のほか、必要な手続きだけのスポット依頼や、1回だけの相談もできる

社労士は、依頼した会社の側に立って、手続きや労務の相談に応じ、法令に沿った運用を支える専門家です。業務で知った秘密を漏らさない守秘義務もあるので、社内の事情も含めて相談できます。判断に迷ったときは、早めに社労士に相談しましょう。

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