出張旅費規程は、従業員が出張したときの交通費・宿泊費・日当などを、どのような基準で支給するかを決める社内規程です。従業員全員に適用する旅費の支給基準は、就業規則の一部として定めるものと考えられます。そのため、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、作成・変更したときに、労働者の代表の意見書を添えて、所轄の労働基準監督署長に届け出ます。
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出張旅費規程は、出張のたびに精算の基準がばらつかないよう、支給の対象や金額の基準を文書にしたものです。主に次のことを定めます。
- 対象者:役員・従業員の区分、役職による支給額の差
- 出張の範囲:日帰り出張・宿泊を伴う出張・海外出張の区分、近距離の移動の扱い
- 交通費:経路の考え方、新幹線や航空機の座席の等級
- 宿泊費:上限額を決めるか、定額にするか
- 日当:出張中の食事などの雑費にあてる手当の額
- 精算の方法:精算の期限、仮払いの扱い、領収書の提出
労働基準法89条は、「当該事業場の労働者のすべてに適用される定め」をする場合、その事項を就業規則に定めるよう求めています。従業員全員に適用する旅費の支給基準も、この規定に基づき、就業規則の一部として整備するものと考えられます。就業規則の本体に記載するか、別の規程(別冊)として定めます。厚生労働省のモデル就業規則では、賃金などを別の規程にした場合も、その規程は就業規則の一部になり、届出が必要と説明されています。
出張のための旅費のうち、その旅行に通常必要と認められるものは、受け取る従業員に所得税がかかりません(所得税法9条1項4号)。通常必要かどうかは、役員と従業員の全体で支給額のつり合いがとれているか、同業種・同規模の会社と比べて相当か、といった点で判断されます(所得税基本通達9-3)。規程を作っただけで非課税になるわけではありません。
社会保険では、会社が負担すべき出張旅費を従業員が立て替え、実費で精算するものは「報酬」に含まれません。
出張旅費規程を作るメリットや、日当の考え方は、次の記事で解説しています。
「出張旅費規程」という名前の規程を作ること自体が、法律で義務付けられているわけではありません。次のような会社では、作成を検討するとよいでしょう。
- 出張が多く、精算の基準が人や部署によってばらついている
- 出張の日当を支給したい、または支給額を見直したい
- 役員と従業員の支給の基準をそろえたい
- 就業規則の見直しにあわせて、社内の規程を整えたい
常時10人以上の労働者を使用する事業場で、従業員全員に適用する出張旅費規程を新しく作成したとき、または支給額や対象などを変更したときは、就業規則の作成・変更として届け出ます。人数は、事業場(本社・支店・営業所など、場所単位)ごとに、パート・アルバイトなどの雇用形態に関係なく数えます。届出の流れは、就業規則の作成と変更の届出のページもご覧ください。
- 常時10人未満の事業場:就業規則の作成・届出の義務はありませんが、出張旅費規程を作成することはできます。
- 労働者を雇っていない(役員だけの)会社:労働基準法上の就業規則の届出の対象にはなりません。
出張の実態をうかがったうえで規程の案を作成し、常時10人以上の事業場では、意見書を添えて労働基準監督署に届け出ます。届出のあとは、従業員に周知します。
- 出張の実態を確認する
出張の回数や行き先、現在の精算方法、役員・従業員の区分を確認します。 - 規程の案を作成する
対象者、交通費・宿泊費・日当の基準、精算の方法を決めます。 - 労働者の意見を聴く(常時10人以上の事業場)
事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその組合、ないときは労働者の過半数を代表する者の意見を聴き、意見を書いてもらった書面(意見書)を受け取ります。 - 労働基準監督署に届け出る(常時10人以上の事業場)
就業規則(変更)届に、意見書と出張旅費規程を添えて、所轄の労働基準監督署長に届け出ます。 - 従業員に周知する
常時各作業場の見やすい場所への掲示や備え付け、書面の交付、データで保存して労働者がいつでも内容を確認できる機器を設置する、のいずれかの方法で知らせます。
- 就業規則(変更)届
- 意見書(労働者の過半数で組織する労働組合、ないときは労働者の過半数を代表する者の意見を記したもの)
- 出張旅費規程
所轄の労働基準監督署(事業場ごとに届け出ます)
窓口、郵送、電子申請(e-Gov)
- 現在の就業規則や賃金規程など(すでにある場合)
- 出張の実績(行き先・回数・精算した金額)
- 現在支給している日当や宿泊費の額(すでに決めている場合)
社労士に依頼すると、出張旅費規程の作成と、就業規則(変更)届の提出を任せられます。支給額が税務上妥当かどうかの判断は含まれないため、税理士にご確認ください。
出張旅費規程を作成・変更したら、遅滞なく(常時10人以上の事業場)
「出張旅費規程」という独立した規程を作る期限は、法令で決まっていません。常時10人以上の事業場で、従業員全員に適用する規程を作成・変更したときは、就業規則の作成・変更として遅滞なく届け出ます。法令に日数の定めはありませんが、変更のたびに届け出る必要があります。
- 会社が負担すべき出張旅費を従業員が立て替え、実費で精算する場合は、算定基礎届などで社会保険の報酬に含めません。通勤手当との違いは、算定基礎届に交通費は含める?通勤手当・定期代の計算方法で解説しています。
- 就業規則の作成とあわせて依頼するときの費用やメリットは、就業規則の作成は社労士に依頼すべき?費用相場とメリットで解説しています。
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生島社労士事務所代表
生島 亮
いくしま りょう
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