社労士(社会保険労務士)には、社会保険・労働保険の手続き、就業規則の作成と見直し、労働時間や賃金などの労務管理、給与計算、助成金の申請、労使トラブルの解決について相談できます。従業員を雇う事業主や人事労務の担当者が、採用から退職までの間に迷う場面の多くが、相談の対象です。
この記事では、事業主の方に向けて、社労士に相談できることの一覧と、採用・残業・賃金・休職・トラブル・退職の場面ごとの質問の例、相談すべきタイミング、社労士以外に相談すべきことの見分け方を解説します。

生島社労士事務所代表
生島 亮
いくしま りょう
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社労士に相談できることは、社会保険・労働保険の手続き、就業規則・社内規程、労働時間・休日・賃金などの労務管理、給与計算、雇用関係の助成金、労使トラブルの6つの分野に分けられます。社会保険労務士(社労士)は、労働・社会保険の法律と、人事・労務管理を専門とする国家資格者です。
| 分野 | 相談できる内容 | 質問の例 |
|---|---|---|
| 社会保険・労働保険の手続き | 入社・退社のときの健康保険・厚生年金保険・雇用保険の手続き 扶養家族の手続き 労働保険の年度更新・社会保険の算定基礎届 | パートを社会保険に加入させる必要があるか |
| 就業規則・社内規程 | 就業規則の作成・届出 法改正に合わせた見直し 賃金規程や育児・介護休業規程 | 事業場で常時10人以上になるとき、就業規則について何を準備するか |
| 労務管理(労働時間・休日・賃金) | 労働時間の管理と36協定 割増賃金・年次有給休暇 休職やハラスメントへの対応 人事・労務のコンサルティング | 休日出勤に割増賃金が必要になる条件と、その計算方法は何か |
| 給与計算 | 毎月の給与・賞与の計算 社会保険料・雇用保険料の控除 | 社会保険料の控除額は正しいか |
| 助成金 | 雇用関係の助成金の要件の確認と申請 | この取り組みで使える雇用関係の助成金はあるか |
| 労使トラブル | トラブルの予防 あっせんなどの手続での代理 | 解雇を考えているが、手順に問題はないか |
労働局のあっせんなどの紛争解決手続で、社労士が当事者を代理するには、特定社会保険労務士の付記が必要です。
労務管理の相談・指導は、社会保険労務士法で社労士だけに認められた業務(独占業務)ではありません。ただし、相談の内容によっては、弁護士法などほかの法律の制限を受けることがあります。
一方、他人から依頼を受け、報酬を得て、社会保険・労働保険の手続きの書類の作成や提出の代行、労働者名簿・賃金台帳などの帳簿の作成を業として行えるのは、原則として社労士・社労士法人です(社会保険労務士法2条1項・27条)。ほかの法律に別の定めがある場合や、税理士や公認会計士が本来の業務(税理士なら税務代理・税務書類の作成・税務相談)に付随して行う場合など、法令で定められた例外があります(同法27条ただし書・同法施行令2条)。
会社が自分で手続きをすることはできます。就業規則も会社が自ら作成できます。社外の人が報酬を得て業として就業規則を作成する場合、行政解釈では社労士の業務とされています。ただし、行政書士の団体とは見解が分かれています。
社労士への相談は、従業員を雇ってから辞めるまでの場面ごとに、法律のルールと自社の事情に合わせた対応を確かめるために活用できます。早めに相談するメリットは、手続きや規程を準備する前に法令違反のリスクを見つけられることと、経営者や担当者が本業に集中しやすくなることです。
ここで紹介する質問は、事業主が社労士に相談できる内容の例です。
従業員を採用するときは、労働条件の決め方と、加入させる保険について相談できます。たとえば、次のような質問です。
- 試用期間中の従業員を本採用しない場合、どんな手順と注意が必要か
- パートの労働条件通知書に、何を書けばよいか
- アルバイトの雇用保険の加入要件を、どう確かめればよいか
相談すると、労働条件通知書や雇用契約書に記載する内容と、加入する保険の手続きと期限を、自社の雇用形態に合わせて整理できます。
時間外労働や休日労働をさせるときは、労働時間と休日のルールの決め方について相談できます。たとえば、次のような質問です。
- 36協定は、どのような場合に必要か
- 固定残業代を導入した場合、実際の労働時間と追加で支払う額をどう確かめるか
- 変形労働時間制は、自社の働き方に合うか
相談すると、36協定に定める内容や届出の手続き、勤怠管理の方法、割増賃金を計算する前提を整理できます。
給与や賞与、手当を決めたり変えたりするときは、賃金のルールと、それに伴う届出について相談できます。たとえば、次のような質問です。
- 最低賃金が上がったとき、月給の従業員について何を確かめるか
- 今回の賞与は賞与支払届の対象か、誰についていつまでに届け出るか
- 手当を廃止するとき、どんな点に注意するか
相談すると、賃金規程の見直しや社会保険の届出が必要かどうかを整理できます。
従業員が病気やけがで休むときや、育児・介護で休業や短時間勤務をするときは、休職・休業のルールと手続きについて相談できます。たとえば、次のような質問です。
- 病気で休む従業員の休職と復職のルールを、どう決めるか
- 育児休業の申出があったとき、会社は何をするか
- 育児や介護で短時間勤務になり給与が下がる場合、標準報酬月額の見直しに必要な条件と手続きをどう確かめるか
相談すると、就業規則に定める休職の規定と、育児休業中の社会保険料の免除や、休業中の給付などの手続きを整理できます。
ハラスメントの相談を受けたときや、勤務態度に問題のある従業員がいるときは、会社としての対応の手順について相談できます。たとえば、次のような質問です。
- ハラスメントの相談を受けたとき、会社はまず何をするか
- 遅刻や欠勤が続く従業員に、どのような順序で指導するか
- 懲戒処分をするには、就業規則に何が定められている必要があるか
相談すると、事実の確認から指導・処分までの手順と、社内相談窓口の設置方法、就業規則に定めておく事項を整理できます。
従業員が退職するときや、会社から雇用契約を終了させるときは、進め方と手続きについて相談できます。たとえば、次のような質問です。
- 退職を勧めるとき、どんな点に気をつけるか
- 解雇の予告や解雇予告手当は、どのように決まっているか
- 契約社員の契約を更新しないとき、どんな点に注意するか
相談すると、進め方と用意する書面、雇用保険の資格喪失届や離職証明書などの退職の手続きと期限を整理できます。
相談だけでなく、社会保険・労働保険の手続きの代行、就業規則の作成、給与計算、雇用関係の助成金の申請は、作業そのものを社労士に依頼できます。
手続きを依頼すると、社労士が書類を作成し、役所への提出まで行います。従業員の情報や賃金・勤怠の資料を用意することと、労働条件などを最終的に決めることは、依頼した後も会社の役割です。
就業規則の作成を依頼する場合の費用は「就業規則の作成は社労士に依頼すべき?」で、給与計算を依頼できる範囲は「給与計算は社労士に依頼できる?」で詳しく解説しています。依頼する業務の選び方や費用相場、依頼の流れは、次の記事をご覧ください。
法定労働時間を超えて残業させる前、常時10人以上の労働者を使用する事業場になるとき、従業員の給与が変わったとき、従業員が退職するときなど、届出や規程の整備が必要になる場面では、早めに社労士に相談するのがおすすめです。どれも、届出や規程の整備を忘れると法令違反になる場面です。
法定労働時間(原則として1日8時間・週40時間)を超えて働かせたり、法定休日に働かせたりするには、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)と36協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
36協定を締結して届け出ないまま、法定労働時間を超えて、または法定休日に働かせると、労働基準法違反となり、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になります(労働基準法32条・35条・119条)。社労士には、36協定に定める内容と届出の手続きについて相談できます。詳しくは「36(サブロク)協定とは?」で解説しています。
パートやアルバイトを含めて、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る義務があります(労働基準法89条)。人数は会社全体ではなく、本社・支店・店舗などの事業場ごとに数えます。
作成や届出を行わない場合は、30万円以下の罰金の対象になります(同法120条)。社労士には、就業規則の作成と、労働者の代表の意見を聴いて届け出るまでの進め方を相談できます。詳しくは「就業規則の作成は義務?」で解説しています。
昇給や降給、手当の変更などで固定的な賃金が変動し、変動後の賃金を初めて支払った月から3か月の報酬の平均で標準報酬月額が2等級以上変わるなど、随時改定の要件を満たした場合は、月額変更届を提出します。給与が変わったからといって、必ず届出が必要になるわけではありません。
届出が遅れると、さかのぼって保険料を精算することになり、不足分の追加納付や、納め過ぎた分の調整が必要になることがあります。社労士には、届出が必要かどうかについて相談できます。詳しくは「月額変更届(随時改定)を申請しなかったらどうなる?」で解説しています。
雇用保険の被保険者が退職したとき、会社は、被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内に、資格喪失届をハローワークへ提出します。離職票は、会社が提出した離職証明書をもとにハローワークが交付するもので、会社が発行するものではありません。離職証明書は、本人が離職票を希望しない場合は添付しなくてもかまいませんが、離職日に59歳以上の人については、希望の有無にかかわらず提出が必要です(雇用保険法施行規則7条)。
届出をしなかったり、偽りの届出をしたりした事業主は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になります(雇用保険法83条1号)。社労士には、退職の手続きや書類の準備について相談できます。詳しくは「離職票(1と2)とは?」で解説しています。
訴訟の代理は弁護士、税金の申告は税理士、会社の登記は司法書士が担当します。社労士が扱うのは、労働・社会保険の手続きと、人事・労務管理です。
| 相談したいこと | 主な相談先 |
|---|---|
| 解雇や残業代をめぐる訴訟の代理 | 弁護士 |
| 労働局のあっせんなどの紛争解決手続での代理 | 特定社会保険労務士(付記を受けた社労士)、弁護士 |
| 税務申告・会計帳簿 | 税理士 |
| 年末調整 | 税理士(会社で行うこともできる) |
| 会社設立などの登記 | 司法書士 |
| 建設業許可などの許認可の申請 | 行政書士 |
補助金の申請は、補助金の種類によって扱いが異なるため、申請する制度ごとに確かめる必要があります。1つの悩みが複数の分野にまたがるときは、まず社労士に相談し、ほかの専門家とも連携しながら進める方法もあります。
社労士への相談方法には、毎月定額の顧問契約で継続して相談する形と、必要なときに1回ずつ相談・依頼するスポットの形があります。
相談や手続きが毎月のように発生する会社には顧問契約が、判断に迷ったときだけ相談したい会社や手続きが年に数回の会社にはスポットが向いています。相談は、電話やオンライン面談、チャット、訪問などで受け付けている事務所があります。
1回だけの相談の料金は、1時間ごとなど事務所によって決め方が異なり、初回の相談を無料にしている事務所もあります。顧問契約の内容や顧問料の相場、相談料の目安は、次の記事で解説しています。
社労士との顧問契約は必要?顧問料の相場や業務内容、メリット・デメリットを解説
相談したいことを1つの文にまとめ、関係する資料をそろえておくと、短い時間で具体的な助言を受けられます。
まず、いつ・誰について・何が起きたか、そして何を決めたいのかを整理します。場面別の質問の例のように「〇〇の場合、△△をどう確かめるか」の形で書き出すと、相談内容の範囲がはっきりします。
次に、就業規則、雇用契約書または労働条件通知書、賃金台帳、出勤簿など、相談に関係する資料をそろえます。従業員の個人情報が含まれる資料は、相談に必要な範囲で渡しましょう。
最後に、1回限りの相談か継続的な相談か、対応してもらう範囲と費用について、事前に確かめておきます。
無料で相談できる窓口、1回だけの相談、オンラインでの相談、従業員から顧問社労士に相談したいと言われたときの対応について、まとめて解説します。
あります。事業主も使える無料の窓口として、次の3つがあります。
- 社会保険労務士会の無料相談(総合労働相談所)では、労働問題や社会保険について社労士が相談に応じます。各都道府県の社会保険労務士会が設けています
- 厚生労働省の委託事業による労働条件の相談(労働条件相談ほっとライン)では、労働条件について電話で相談できます
- 行政の労働問題の相談(総合労働相談コーナー)は、都道府県労働局や労働基準監督署に設けられており、解雇やハラスメントなどの労働問題を相談できます
窓口ごとに相談できる分野や受付時間、予約の要否が異なるため、利用する前に各窓口の案内で確かめてください。いずれも相談のための窓口で、手続きの代行を頼む窓口ではありません。社労士事務所の中にも、初回の相談を無料にしているところがあります。
できます。顧問契約を結ばずに、1回ごとのスポットで相談を受けている社労士事務所があります。料金は1時間ごとなど事務所によって異なるため、相談の前に確かめておきましょう。
できます。電話やオンライン面談、チャット、メールなどで相談を受け付けている事務所であれば、遠方の事務所にも相談できます。資料を事前に送り、相談の日までに目を通してもらうと、相談を効率よく進められます。
顧問社労士が従業員からの相談に直接応じるかどうかは、顧問契約の内容と社内の運用によります。顧問社労士が従業員からの相談に対応できる範囲を、事前に確かめておきましょう。
会社と従業員の利害が対立する問題については、顧問社労士は会社と契約している立場のため、社会保険労務士会の窓口や総合労働相談コーナーなど、別の相談先を案内することもできます。なお、ハラスメントなどの相談では、外部の窓口を案内しても、会社が事実を確認し、適切に対応する必要があることに変わりはありません。
社労士には、事業主が人事・労務と社会保険について迷う場面の多くを相談できます。
- 社労士には、社会保険・労働保険の手続き、就業規則、労務管理、給与計算、助成金、労使トラブルを相談できる
- 採用・労働時間・賃金・休職・トラブル・退職の場面ごとに、具体的な質問の形で相談できる
- 労務管理の相談は社労士の独占業務ではないが、手続きの代行は原則として社労士の業務
- 法定労働時間を超えて残業させる前、事業場で常時10人以上になるとき、給与が変わったとき、従業員が退職するときは早めに相談する
- 訴訟の代理は弁護士、税金の申告は税理士、登記は司法書士に相談する
社労士クラウドのスポット申請代行サービスは、必要な時だけ専門家に業務を依頼できるサービスです。
- 顧問料はかからず、必要な手続きだけを1件からご依頼いただけます
- 社会保険労務士が、書類の作成から提出まで代行します
- Webで注文できるサービスで、全国どこからでもご依頼いただけます(お電話・LINE・Chatworkでもお問い合わせを受け付けています)
- 手続きごとの料金は料金表でご確認いただけます。個別の条件については、お問い合わせフォームからご相談いただけます
手続きに加えて、労務相談や毎月の給与計算もまとめて任せたい会社には、顧問契約のプランもご用意しています。
- 労務相談だけのプランから、入社・退社の手続きの代行や毎月の給与計算をまとめて任せられるプランまであります
- 給与計算を任せるプランでは、勤怠管理から給与計算までfreee人事労務で運用します(freeeの利用料は料金に含まれます)
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プランの内容と料金は、給与計算・労務相談の顧問プランのページでご確認いただけます。

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