社会保険手続はとても複雑ですよね。事業主様から「いつ何をどこに届け出ればいいのか分からないので教えて欲しい」というご相談を日々受けます。
労働保険・社会保険の手続きは、1年のうちで決まったタイミングで発生するものと、入社や退社など、イベントが発生するごとに必要な手続きが必要なもの、また生年月日に応じて必要なものがございます。
今回は、様々なタイミングで発生する様々な社会保険手続きを社労士が解説します。
生島社労士事務所代表
生島 亮
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毎年決まった時期に作業する項目
社会保険の手続きは多岐にわたります。被保険者資格の取得や喪失は日々起こり得る手続き項目ですが、「算定基礎届」や「労働保険年度更新」などは、毎年手続き時期が決まっています。
年間のスケジュールをまとめる
会社によって、賞与支払い届や月額変更届、入退社、育児休業給付や高年齢雇用継続給付などの時期が変わってきます。よって、自社にあったマイカレンダーを作っておくとよいでしょう。万が一業務に漏れが発生したり、誰かに依頼したい場合は是非ご相談ください。
社労士Cloudなら「全ての手続き」を顧問料なしのスポット(単発)で簡単かつ迅速にお手続きできます。
1月に行う社会保険及び労働保険手続き
労働保険関連
- 1月31日までに労働者死傷病報告の提出(休業4日未満10月 ~12月分)
- 労働保険料第3期法定納付期日
労働者の健康と安全を確保するために、業務上で事故や疾患が発生した場合には、速やかに所轄労働基準監督署長に報告する義務があります。その労働者の休業が4日未満の場合は、4か月分をまとめてその期間における当該事実について報告する形になります。1日でも労働者が休業した場合は提出が必要です。10月 ~12月分は1月31日、4月 ~6月分は7月31日、7月 ~9月分は10月31日の回です。実際に事故が起こった際の参考として「【労災or健保?】従業員がけがや病気をした時の対応」をご確認ください。
労働保険料は原則毎年7月10日に保険料を一括で納付しなければなりませんが、以下の条件どれかに当てはまる場合、7月10日/10月31日/1月31日の、3回に分けて納付することができます。(事務を委託している場合はこの期日+2週間猶予がつきます)1月31日の納付分は12月1日~3月31日分(第3期)の保険料にあたります。
・概算保険料額が40万円以上
・労災保険か雇用保険のどちらか一方の保険関係のみ成立している場合は20万円以上
・労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合
2月に行う社会保険及び労働保険手続き
労働保険関連及び社会保険関連
- 特になし
3月に行う社会保険及び労働保険手続き
社会保険関連
- 健康保険料率 ・介護保険料率の改定月
健康保険料率と介護保険料率は毎年変わります。3月から適用になり、4月納付分から実際の額が変更になります。
4月に行う社会保険及び労働保険手続き
労働保険関連
- 雇用労働保険料の改定 (不定期)
- 新入社員入社時の入社加入手続き
- 雇用契約書・労働条件通知書作成
- 年次有給休暇付与
- 定期健康診断の実施・届出
社会保険関連
- 新入社員入社時の入社加入手続き
健康保険料と異なり、毎年必ず、ではありませんが、変わる場合があります。直近では2023年4月と10月に段階的に保険料率が引き上げられました。7月の年度更新の金額に影響しますので、ご注意ください。
「新入社員入社時の入社加入手続き」について
下記の保険手続きが必須です。
①雇用保険被保険者資格取得届(従業員の雇用保険加入)
②社会保険資格取得届(従業員の社会保険加入)
③被扶養者異動届(家族の社会保険加入)
こちらの手続きの詳細については「【社労士監修】初めて従業員を雇用した際に会社が行う手続き全般」をご参照ください。
これらの手続きにあたり、2022年4月1日以降に20歳を迎えた人には年金手帳が交付されず、基礎年金番号通知書が交付されています。年金手帳を会社保管している場合は、以降、形式が異なりますので、新卒社員の年金手帳管理運用について一考する必要があります。
入社の時に必要となる手続き
従業員が新しく入社する時は、社会保険や雇用保険の加入手続きが必要です。必要な手続きの種類や内容は、「独身なのか」「従業員に扶養する家族がいるのか」といった家族構成や、「正社員なのか」「アルバイトやパートなのか」といった雇用形態によっても変わってきます。
そのため、社会保険や雇用保険の加入手続きを行う際は、まず従業員が加入基準を満たしているか、満たしているとしたら、手続きの際にはどのような情報や書類が必要となるかを確認しましょう。
入社手続きで担当者が注意すること
新入社員の保険加入を円滑に進めるには、手続きに必要な情報を必要な時点で入手しておくことが大切です。
この時に重要なのが、従業員本人から提出してもらう書類です。例えば、従業員に扶養する家族がいる場合、扶養する家族のマイナンバーや住民票が必要になることもあります。手続きをスムーズに進めるためにも、あらかじめチェックリストをつくって全体像を把握しておきましょう。また、入社手続きで最も急ぎたいのが、従業員の健康保険被保険者証の交付です。入社手続きが遅れて健康保険被保険者証交付も遅くなってしまうと、健康保険適用で診療できなくなる期間が長くなります。
5月に行う社会保険及び労働保険手続き
労働保険関連
- 労働保険年度更新申告書郵送(納付期限 7月10日)
毎年5月末までに、事業主宛に今年度分の申告書が届きます。いわゆる年度更新です。最終的には前年度の確定保険料、および今年度の概算保険料の計算をし、7月10日までに納付となります。この期限までに保険料が支払われないペナルティはかなり厳しいものとなります。条件がそろえば、延納(分割払い)という選択肢もありますので、早めにご対応ください。
6月に行う社会保険及び労働保険手続き
労働保険関連
- 労働保険年度更新申告書提出(納付期限 7月10日)
社会保険関連
- 賞与支払届提出→賞与支給日から5日以内
賞与についても健康保険・厚生年金保険の毎月の保険料と同率の保険料を納付することになっています。賞与を支給した場合には、支給日より5日以内に「被保険者賞与支払届」により支給額等を届出します。
7月に行う社会保険及び労働保険手続き
労働保険関連
- 7月10日 労働保険年度更新申告書提出期限
- 概算保険料と昨年度分の確定保険料納付(労働保険料第1期法定納付期日)
- 7月31日 労働者死傷病報告の提出(休業4日未満4月 ~6月分)
社会保険関連
- 定時決定(月額算定基礎届の提出期限)
- 高年齢者障害者雇用状況報告書の提出
7月10日が年度更新の納付期限です。必ずこの日までに納付しましょう。
この労働保険料は原則毎年7月10日に保険料を一括で納付しなければなりませんが、一定の条件下で、(1月の項をご参照ください)7月10日/10月31日/1月31日の、3回まで分けて納付することができます。7月10日納付分は4月1日~7月31日分(第1期)の保険料にあたります。
1月同様、休業4日未満の4月~6月分の労災当該事実について7月31日までに報告しなければなりません。なお休業が0日の場合は、提出する必要はありません。
7月1日現在で使用している全被保険者の4月、5月、6月の3か月間の報酬月額(実際に支払われた額)を基に、毎年1回標準報酬月額を決定し直します。これを定時決定といいます。なお、下記に該当する従業員は対象外となり、算定基礎届の提出は不要です。
①6月1日~7月1日の間に被保険者となった従業員
②7月~9月の間に随時改定をする従業員
③6月30日以前に退職した従業員
この定時決定を経た算定基礎届は原則7月1日から7月10日までに事務センターか所管の年金事務所に提出しなければなりません。また、健康保険組合にも算定基礎届を提出する必要がありますが、健康保険組合への提出期限は組合によって異なるので、別途確認が必要です。
7月10日までに、6月1日時点での、高年齢者と障害者雇用状況を報告する義務があります。高年齢者については、65歳までの雇用確保が義務付けられたことに加え、65歳から70歳までの就業機会の確保が努力義務となり、さらなる高年齢者就業確保措置を講じることが企業に求められるようになりました。定年、定年の改定予定等についての報告書で、従業員を雇う全ての企業が対象です。障害者については常用労働者が 43.5人以上の事業主(2023年現在、今後条件が厳しくなる可能性があります)が対象です。障害者雇用については障害者法定雇用率というものがあり、基準に達しない場合、納付金が発生します。 この報告をしない又は虚偽の報告をした場合は、罰金の対象です。高年齢者、障害者の雇用について不安な点がありましたら、ご相談ください。
8月に行う社会保険及び労働保険手続き
労働保険関連及び社会保険関連
- 特になし
9月に行う社会保険及び労働保険手続き
社会保険関連
- 定時決定 (算定)後の社会保険料の反映月
定時決定した 報酬月額に基づいた保険料を、実際の徴収に反映させる月になります。(※9月から適用になり、10月納付分から実際の額が変更になります)この報酬月額がその後、大きな変動をしない限り、9月から翌年の8月まで適用されます。
10月に行う社会保険及び労働保険手続き
労働保険関連
- 10月31日 労働者死傷病報告の提出(休業4日未満7月 ~9月分)
- 労働保険料第2期法定納付期日
- 定時決定に伴う社会保険料控除額の変更
1月、7月同様、休業4日未満の7月~9月分の労災当該事実について10月31日までに報告しなければなりません。休業が0日の場合は、提出する必要はありません。
労働保険料は原則毎年7月10日に保険料を一括で納付しなければなりませんが、一定の条件下で、(1月の項をご参照ください)7月10日/10月31日/1月31日の、3回まで分けて納付することができます。10月31日納付分は8月1日~11月30日分(第2期)の保険料にあたります。
11月に行う社会保険及び労働保険手続き
労働保険関連及び社会保険関連
- 特になし
12月に行う社会保険及び労働保険手続き
社会保険関連
- 賞与支払届提出(支給日から5日以内)
冬の賞与についても夏(6月)同様、支給日より5日以内に「被保険者賞与支払届」により支給額等を届出します。
賞与支払届とは?書き方のポイントや記入例、提出先から手続きの流れを解説
いつ | 区分 | 手続き |
社員が入社したら | 社保 | 健康保険・厚生年金資格取得手続(5日以内) |
労働 | 雇用保険資格取得手続(翌月10日まで) | |
社員が退職したら | 社保 | 健康保険・厚生年金資格喪失手続(5日以内) |
労働 | 雇用保険資格喪失手続(10日以内) | |
賞与を支給したら | 社保 | 賞与支払届(5日以内) |
給与を改定したら | 社保 | 月額変更届の提出(改定月より3ヶ月間をみて、該当を確認、4ヶ月後に提出) |
社保 | 社会保険料控除額の変更(該当したら改定月から5ヶ月後) | |
業務に残業が生じる時 | 労働 | 36協定の提出 |
従業員の退職で会社側が行う社会保険・雇用保険の手続き!必要書類や流れを解説
社会保険には加入年齢の下限・上限や年齢による保険料免除の制度などがあります。そのため年齢の節目ごとに、行政への手続きや給与計算での社会保険料控除の変更といった業務が発生します。これらを円滑に行うためには、節目となる年齢を把握したうえで、毎月、その年齢に到達する従業員の抽出作業が必要になります。
注意したい年齢は40歳、60歳、64歳、65歳、70歳、75歳です。給与から介護保険料を徴収するのは40歳から64歳まで。60歳から65歳到達前の年齢は、一定の条件を満たせば雇用保険の給付金が受け取れます。70歳になると厚生年金保険の資格を喪失しますが、同時に70歳以上被用者となります。75歳になると自動的に後期高齢者医療制度に加入するため、健康保険の資格は喪失します。
いつ | 区分 | 概要 |
20歳到達 | 社保 | 未成年の健康保険被扶養者である配偶者がいたとき、配偶者の20歳到達時に3号被保険者となる |
40歳到達 | 社保 | 介護保険料の徴収開始 |
60歳到達 | 雇用 | 高年齢雇用継続給付金の受給開始。60歳以降の賃金低下の収入補助。 |
65歳到達 | 社保 | 介護保険料の徴収終了 |
70歳到達 | 社保 | 厚生年金保険70歳以上被用者該当届の提出 |
社保 | 健康保険・厚生年金保険、被保険者資格喪失届の提出 | |
社保 | 厚生年金保険料の徴収終了 | |
75歳到達 | 社保 | 健康保険・厚生年金保険、資格喪失手続 |
厚生年金保険は70歳まで
厚生年金保険には加入開始年齢の決まりはありませんが、70歳の誕生日の前日になると被保険者資格を喪失します。厚生年金保険の被保険者でなくなるため、70歳到達月の分より厚生年金保険料は徴収されません。厚生年金保険の資格は喪失しますが、同時に厚生年金保険70歳以上被用者となるため、標準報酬月額や標準賞与額による老齢年金の一部停止は継続します。
健康保険は75歳まで
健康保険も加入開始年齢の決まりはありませんが、75歳の誕生日になると被保険者資格を喪失します。これは75歳の誕生日に後期高齢者医療制度の資格を取得するためです。後期高齢者制度加入の手続きは自動的に行われ、75歳の誕生月の前月には市区町村から新しい保険証が自宅に届きます。健康保険喪失手続きは自動的に行われない為、健康保険被保険者資格喪失届に健康保険証と高齢受給者証を添えて年金事務所等に提出します。
70歳以上被用者とは
厚生年金保険70歳以上被用者とは、次の条件の全てに該当する70歳以上の人のことです。
- 過去に厚生年金保険の被保険者期間があること
- 厚生年金保険の適用事業所に勤務していること
- 月所定労働日数と週所定労働時間等、年齢以外の労働条件が厚生年金保険の加入要件に該当すること
いかがでしたでしょうか?
社会保険手続きは年間を通して、様々な手続きがございます。手続きを行うことで正当な社会保険料が控除され、年金事務所や労基署からの調査があったとしてもクリアすることができます。きちんとその時期に応じた手続きを心掛けましょう。
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