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キャリアアップ助成金の申請に必要な就業規則とは?規定例や注意点を解説

キャリアアップ助成金(正社員化コース)を申請するには、助成金の要件を満たした就業規則の整備が欠かせません。しかし、「どのように記載すれば条件を満たせるのか」「具体的にどの部分を改定すれば良いのか」と悩んでいる企業も少なくありません。

また、就業規則の不備や記載漏れが原因で助成金が不支給となるケースも少なくないため、慎重な対応が求められます。

キャリアアップ助成金の審査では、就業規則を通じて助成対象の取り組みが企業内で実際に実施されているかが確認されます。特に、正社員転換のタイミングや手続き、昇給制度など、具体的な要件を満たした内容を適切に盛り込む必要があります。

この記事では、キャリアアップ助成金(正社員化コース)の申請に必要な就業規則の作成ポイントや必須項目、規定例に加え、申請時に注意すべきポイントについても詳しく解説します。

キャリアアップ助成金を活用し、正社員化を推進しながら効率的に労働環境を整えたい中小企業の経営者や人事担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。

この記事を監修した人

生島社労士事務所代表

生島 亮

いくしま りょう

https://syarou-shi.com/

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キャリアアップ助成金(正社員化コース)に必要な就業規則とは

キャリアアップ助成金の正社員化コースを利用するためには、就業規則の整備が不可欠です。就業規則は、企業内での労働条件や職場の規律を明文化した基本ルールであり、正社員転換を促進するための助成金申請において重要な役割を果たします。特に、正社員転換に関わる賃金、昇給、賞与などの条件を明確に規定し、労働者に対する処遇を適切に保証するための内容が求められます。これにより、助成金の申請がスムーズに進み、企業と従業員の双方にとって有益な結果をもたらします。

【令和6年版】キャリアアップ助成金の正社員化コースとは?条件や申請方法、支給金額を社労士がわかりやすく解説

生島社会保険労務士
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就業規則とは

就業規則とは、労働条件や職場での規律を明文化した、企業における基本的なルールブックです。労働基準法では、常時10人以上の労働者を雇用する事業場に対して、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています。

就業規則には、労働時間、休日、休暇、賃金、退職など、労働条件の基本的な内容が記載されており、これにより企業と労働者の双方の権利・義務が明確化され、トラブルの未然防止につながります。

また、従業員数が10人未満の事業場においては、就業規則の作成と届出は法的な義務ではありませんが、トラブルを防止し、労働環境を整備するために作成しておくことが推奨されます。

キャリアアップ助成金の申請には、従業員数に関わらず就業規則の作成・提出が必要です。

【スポット作成】就業規則の作成は義務?就業規則の必要性と相場について

キャリアアップ助成金に就業規則の提出が求められる理由

キャリアアップ助成金(正社員化コース)の申請において、就業規則の提出が求められる理由は、企業が助成金の対象となる取り組みを制度として明確に運用しているかを確認するためです。就業規則は、労働条件の基準を定めた公式文書であり、正社員転換や処遇改善が企業の制度としてきちんと運用されていることを示す重要な証拠となります。

助成金の受給においては、賃金規定や昇給制度、退職金制度など、正社員化後の労働条件が就業規則に明示されている必要があります。これにより、企業が労働者に対して適切な処遇を保証し、助成金の要件を満たす体制を整えていることを証明します。また、就業規則の作成と労働基準監督署への届出を行い、労働基準法を遵守することが、企業と従業員の信頼関係を強化し、職場環境の向上にもつながります。

正社員化コース申請における就業規則のポイント

キャリアアップ助成金(正社員化コース)を申請する際には、重要なポイントを押さえておく必要があります。

① 正規雇用・非正規雇用の定義を明確にする

キャリアアップ助成金の正社員化コースは、非正規雇用労働者の待遇改善を目的としています。そのため、就業規則には正社員と非正規社員の定義や適用範囲を具体的に記載し、雇用形態による待遇(手当・昇給・賞与・退職金など)の違いを明確に示すことが求められます。このように待遇の差分をはっきりさせることは、労使間の信頼構築や労働環境の改善にもつながります。

② 正社員化(転換)の制度が正しく導入されていること

正社員化コースを申請するには、正社員転換の制度が適切なタイミングで導入されていることが重要です。例えば、就業規則に転換の基準や手続きを正確に記載し、その施行日が適切であることが求められます。また、従業員数が10名を超える事業所の場合には、労働基準監督署に届け出た就業規則の写しを支給申請時に添付する必要があります。そのため、制度導入は余裕を持って進めるよう心がけましょう。

③ 給与の支給状況と就業規則に整合性を持たせる

就業規則と労働条件通知書(雇用契約書)の内容に齟齬がないことを確認することが重要です。特に基本給や手当の部分は、助成金支給の要件である「3%以上の賃金改定」に影響し、昇給・賞与・退職金に関する規定は「待遇の差分を明確にする」ための要件に関わります。労働局は給与の支給状況との整合性を細かくチェックするため、支給・不支給に関わる項目は厳重に確認しましょう。

これらのポイントを押さえておくことで、キャリアアップ助成金の正社員化コース申請の成功率を高めることができます。

【令和4年4月】キャリアアップ助成金(正社員化コース)改定内容の反映が必要

令和4年4月にキャリアアップ助成金(正社員化コース)の改定が行われ、以下のような制度変更がありました。企業がキャリアアップ助成金を受給するためには、これらの改定内容を就業規則に反映させる必要があります。また、労働条件を適切に整備し、従業員に周知することも欠かせません。

■主な改定内容

・無期雇用労働者への転換に対する助成を廃止
・「賞与もしくは退職金制度」と「昇給制度」の両方の適用が必須
・非正規雇用労働者の定義が変更

これらの改定点について、以下で詳しく解説していきます。

無期雇用労働者への転換の助成を廃止

有期雇用労働者から無期雇用労働者への転換に対する助成が廃止されました。これにより、現在は有期雇用・無期雇用労働者のいずれも、正規雇用への転換のみが助成対象となります。正社員転換を進める企業に対して、より明確な支援を提供することを目的としています。

また、有期雇用労働者が正社員に転換した場合の助成額は1人当たり60万円〜80万円、無期雇用労働者が正社員に転換した場合は1人当たり30万円〜40万円です。これらの支援額を活用し、企業は正社員転換を重視した取り組みを進め、就業規則においても正社員転換に関する内容を明確に規定することが求められます。

「賞与もしくは退職金」と「昇給」の両制度の適用が必須

キャリアアップ助成金の改定により、「賞与もしくは退職金制度」と「昇給制度」の両方を適用することが必須となりました。企業が助成金を申請する際、これらの制度が就業規則に記載されていない場合は、必ず明示する必要があります。

具体的には、支給や実施のタイミングなども実態に即して記載することが求められます。

非正規雇用労働者の定義変更

これにより、キャリアアップ助成金の対象となる労働者の範囲が変更され、より多くの労働者が対象となる可能性があります。

定義
改定前6ヶ月以上雇用している有期または無期雇用労働者
改定後賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則」を6ヶ月以上適用されている有期または無期雇用労働者

例えば、契約社員やパート労働者で、正社員とは異なる賃金規定が設けられているケースが該当します。この変更により、非正規雇用労働者がキャリアアップ助成金の対象となるためには、正社員と非正規雇用の賃金規定や計算方法の違いが就業規則に明確に記載されていることが重要です。

非正規雇用労働者の定義変更により、企業は助成金の要件を満たし、非正規雇用労働者のキャリアアップを支援する体制を整えることが求められます。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)に対応する就業規則の必要事項と規定例

キャリアアップ助成金(正社員化コース)を申請するためには、就業規則に必要な事項を明記し、助成金の要件を満たすことが重要です。ここでは、助成金に対応するために就業規則に盛り込むべき具体的な必要事項について説明します。

労働者定義と適用範囲の明確化に関する規定

キャリアアップ助成金の申請において、労働者区分の定義は非常に重要です。助成金の対象となる労働者を明確にし、各区分に応じた労働条件や処遇の違いも記載することで、労使間の信頼関係を築くことができます。

就業規則には、以下のように労働者区分を明確に定義することが求められます

規定例

【第〇条(従業員の定義)】

  • 正社員:常に所定労働時間を就労できる者で、会社の目的遂行のために直接担当業務だけでなく、周辺業務を含めた職責を全うできうる立場の者をいう。
  • 契約社員:期間の定めのある労働契約を締結する労働者(短時間労働者および派遣労働者の うち、期間の定めのある労働契約を締結する労働者を含む)であり、雇用契約期間は、原則として3ヵ月以上1年以内とする。

労働者区分を明確にすることで、正社員や契約社員、パートタイム労働者がどのような条件で適用されるかをはっきりさせ、各雇用形態の権利や義務を明確にすることができます。これにより、労働トラブルの未然防止に役立ちます。

正社員転換を実施するタイミング・手続きに関する規定

キャリアアップ助成金(正社員化コース)を申請するためには、正社員転換の実施タイミングと手続きを就業規則に具体的に記載することが求められます。

例えば、契約期間の満了時に正社員転換を検討することや、勤続年数やスキル評価の基準を満たした場合に転換の機会を提供することが重要です。

規定例

【第〇条(正規雇用への転換)】

  1. 6か月以上勤務する有期契約労働者或いはパートタイム労働者等で、正社員を希望する者は、下記の要件をすべて満たした場合、正社員として採用し、労働契約を締結することがある。但し、有期実習型訓練を終了した場合は、3か月以上とする。a,1日8時間、週40時間の勤務ができること。b,社長の面接試験に合格すること。c,転勤や配置換えに応じられること。d,人事評価結果としてc以上の評価を得ている者または所属長の推薦がある者に対し、面接および筆記試験を実施し、合格した場合について転換することとする。
  2. 前項の場合において、当該パートタイム労働者に対して必要な教育訓練を行なう。
  3. 年次有給休暇の付与日数の算定の算定において、有期契約労働者或いはパートタイム労働者としての勤続年数を通算する。
  4. 転換時期は、随時とする。

このように、正社員転換のタイミングや手続き、評価基準を明確に定めることで、従業員にとってはキャリアパスが明瞭になり、企業内でのキャリアアップを支援することができます。適切な手続きが整備されていることで、助成金の申請もスムーズに進めることができます。

昇給・賞与・退職金に関する規定

昇給・賞与・退職金に関する規定も、就業規則に明記する必要があります。特に、正社員化コースにおいては、正社員転換後に「賞与もしくは退職金制度」と「昇給制度」の待遇が適用されることを具体的に示すことが重要です。

基本給や賞与、退職金、各種手当について、正社員と契約社員で異なるルールが就業規則に書かれていることが必要です。

例えば、契約社員には時給や日給制を適用し、正社員には月給制を適用するなど、待遇の違いを明確に記載することで、キャリアアップ助成金申請の要件を満たしやすくなります。また、特定の手当が正社員にのみ支給される場合も、その内容を具体的に記載することが求められます。

さらに、降格に関する規定があると助成金が不支給になる可能性があるため、降格に関する条項は慎重に取り扱う必要があります。

規定例

【第〇条(昇給)】

会社は、前年4月1日より当年3月31日までの査定期間内の勤務日数が3ヶ月以上ある者について、会社の業績、各人の能力、勤務成績その他を勘案して良好な労働者について、原則として4月に昇給を行う。但し、業績によっては昇給時期がずれることがある。また、会社の業績低下等のやむを得ない事由がある場合は行わないことがある。

【第〇条(賞与)】

 賞与は、原則として正社員を対象として前年4月1日より当年3月31日までの査定期間内の勤務日数が3ヶ月以上ある者について、会社の業績、各人の能力、勤務成績その他を勘案して良好な労働者について、原則として10月に賞与を支給する。但し、業績によっては支給時期がずれることがある。
2,賞与は原則として、支給日に在籍する正社員について支払う。但し、勤務成績が著しく不良な正社員については、全部または一部を支給しないことがある。
3,本条の賞与は、就業規則に定める正社員以外の社員には支給しない。

【第〇条(退職金)】

退職金は正社員に対して支給され、支給額は勤続年数および退職時の役職等を基に算定されます。退職金制度の詳細については、就業規則に明確に記載し、正社員にのみ適用されることを示します。

有期雇用労働者の契約期間に関する規定

有期雇用労働者の契約期間を定めることは、正社員への転換を見据えた場合にも重要なポイントです。契約期間を明確にすることで、企業と労働者双方が安心して雇用関係を続けられる環境を整えることができます。具体的には、契約更新の頻度や評価基準、業務の性質に応じた更新条件などを明確に記載することが求められます。

規定例

【第〇条(労働契約の期間)】

有期契約労働者とは、期間の定めのある労働契約を締結する労働者(短時間労働者および派遣労働者の うち、期間の定めのある労働契約を締結する労働者を含む)であり、雇用契約期間は、原則として3ヵ月以上1年以内とする。

契約更新の基準を明確にすることで、労働者に対して透明性を高めると同時に、企業にとっても安定した労務管理が可能となります。

また、契約終了時の手続きを詳細に定めることで、誤解やトラブルを防止し、スムーズな労務管理の実現が期待できます。

就業規則と賃金規定のチェックリスト

キャリアアップ助成金を申請するためには、就業規則と賃金規定が助成金の要件を満たしているかを確認することが重要です。以下のチェックリストを参考に、就業規則と賃金規定を詳細に確認しましょう。

各項目をしっかり確認することで、申請手続きがスムーズに進むだけでなく、労使間の信頼関係の向上にもつながります。

項目正社員契約社員
就業規則労働者の定義と適用範囲は明確に規定されているか正社員転換後の試用期間は助成金対象外となっているか労働者の定義と適用範囲は明確に規定されているか原則となる契約期間が定められているか
賃金規定昇給制度が適用されているか「賞与もしくは退職金」の支給が明確に適用されているか非正規雇用労働者との差異が明確に示されているか正社員との基本給や手当、待遇において明確な違いが規定されているか

キャリアアップ助成金(正社員化コース)に対応した就業規則作成時の注意点

キャリアアップ助成金(正社員化コース)の受給を目指すには、就業規則の整備が欠かせません。適切に就業規則を作成し、企業の労務管理体制を整えることが助成金の支給条件を満たすための第一歩です。本記事では、助成金の受給を確実にするために、就業規則を作成・適用する際の具体的な注意点について解説します。

キャリアアップ助成金受給のためには正社員転換の6ヵ月前から就業規則の適用が必要

キャリアアップ助成金を受給するためには、正社員転換の6ヵ月前からキャリアアップ助成金の要件を満たした就業規則が適用されている必要があります。

例えば、2024年8月1日に非正規雇用労働者を正社員に転換する場合、2024年2月1日までに要件を満たした就業規則を適用していなければなりません。

就業規則の改定には労働者代表の意見聴取など一定の手続きが必要であり、余裕を持った準備が求められます。また、改定した就業規則は速やかに従業員に周知し、実際の労務管理に反映させることも重要です。

キャリアアップ助成金受給のためには10人未満の事業所も就業規則の作成・届出が必要

キャリアアップ助成金を受給するためには、従業員数が10人未満の事業所であっても就業規則を作成し、労働基準監督署に届出を行う必要があります。

10人未満の事業所には法的な届出義務はないものの、助成金の申請においては必要な要件となるため、必ず対応しておきましょう。就業規則を適切に整備することで、助成金の支給要件を満たしやすくなります。

参考)就業規則は10人未満の会社でも作成すべき?就業規則作成の義務とメリットを社労士が解説

就業規則の届出をしていない場合は、「就業規則申立書」の添付が必要となります。

個人事業主でも要件を満たせばキャリアアップ助成金を受給することができます。

キャリアアップ助成金は個人事業主も利用できる助成金制度?申請条件と対象者を解説

規定が要件を満たしていれば必ず受給できる訳ではない

キャリアアップ助成金の申請において、就業規則が要件を満たしていることは重要ですが、それだけで必ず助成金が受給できるわけではありません。就業規則の内容が実際の労務管理の状況と一致していない場合、不支給となる可能性があります。労働基準監督署や労働局は、申請内容と実態が合致しているかを厳しくチェックするため、実態に即した規定を作成し、実際に運用することが不可欠です。

キャリアアップ助成金の正社員化コース支給申請時の注意点!不支給になる失敗例も解説

まとめ:会社設立から5日過ぎた場合はすみやかに社会保険の加入手続きをすすめましょう

キャリアアップ助成金の正社員化コースを受給するためには、就業規則の整備が非常に重要です。就業規則は、企業が従業員に対して公平かつ透明性のある労働条件を提供していることを示す基本的な文書です。特にキャリアアップ助成金の支給申請においては、規定が実態に即しているか、労働者に適用されているかが厳しく確認されるため、しっかりと整備し適用する必要があります。

今回の記事で解説したように、就業規則の適用や改定には余裕を持った準備が必要です。申請手続きの際に焦らないためにも、早めの段階から就業規則の見直しを行い、助成金の要件を満たすように整備しておきましょう。また、従業員に対する就業規則の周知も、労働環境の透明性を高める重要な要素となります。

キャリアアップ助成金の審査は厳しい?申請成功のコツや不支給になる理由を解説

就業規則の作成は専門家の社労士に依頼することを検討する

キャリアアップ助成金の受給を確実にするためには、労務管理の専門家である社会保険労務士(社労士)のサポートを受けることが効果的です。社労士は労働関連の法律や助成金申請手続きに精通しており、適切な準備と確実な手続きを支援してくれます。

特に、就業規則においては規定漏れや表現の不備によって助成金が不支給となるケースが多いため、専門家に作成を依頼することが推奨されます。

社労士の顧問料の費用相場 社労士との顧問契約の必要性・顧問料の相場・サポート内容・メリットデメリットを徹底解説

生島社会保険労務士
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