キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の雇用条件を改善するために、厚生労働省が支給する助成金制度です。アルバイトやパート、契約社員、派遣社員などを正社員に転換したり、賃金アップや処遇改善を行うことで、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高め、企業の成長をサポートします。
特に中小企業の経営者にとっては、人材の定着や労働環境の改善を図りながら、コスト負担を軽減できるこの制度は、一番よく利用されている助成金です。そして金額も正社員コースであれば1名につき80万円と非常に嬉しい金額となっております。しかし、申請にあたっては、支給要件や必要な書類の整備など、多くの手続きが求められます。
この記事では、キャリアアップ助成金の概要から、正社員化や処遇改善支援内容、申請手続きの流れ、注意点、支給が受けられないケースまで詳しく解説しています。
キャリアアップ助成金を活用し、働きやすい職場環境づくりと、企業のさらなる発展を目指しましょう。
生島社労士事務所代表
生島 亮
いくしま りょう
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キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者である契約社員、派遣社員、パートタイマーなどのキャリアアップを支援するために厚生労働省が設けた助成金制度です。非正規雇用で働く従業員を正社員に転換したり、賃金や処遇の改善に取り組む事業主に対して助成金が支給されます。
この制度は、「正社員化支援」と「処遇改善支援」の2つの種類に大別されており、従業員のキャリアアップを推進し、労働市場の安定と企業の生産性向上を目指しています。また、最新の助成金内容や支給条件に変更が行われることがあるため、申請を検討する際には最新情報を確認することが重要です。
キャリアアップ助成金を利用することで、事業主は非正規雇用労働者の正社員化にかかるコスト負担を軽減し、従業員のモチベーション向上や企業の定着率改善を図ることができます。
助成金の対象となる事業主や労働者には一定の条件がありますので、以下で詳しく解説します。
対象となる事業主の条件
キャリアアップ助成金の対象となる事業主は、以下の条件を満たす必要があります。これらの条件を満たすことで、事業主は助成金を申請する要件を満たすことができます。
- 雇用保険適用事業所の事業主
事業所が雇用保険に加入していることが必須です。助成金は雇用保険の適用事業所のみ対象となります。 - 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主
各事業所に「キャリアアップ管理者」を配置し、キャリアアップ計画の実行を指揮・管理する体制を整えていることが求められます。 - 雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の認定を受けた旨の定めを置いた事業主
雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ計画を作成し、労働局長の認定を受けることが必要です。この計画は、非正規雇用労働者のキャリアアップを体系的に推進するために必要です。 - 対象労働者の労働条件の整備条件、勤務状況および賃金の支払い状況を明らかにする書類を備え、賃金の支払い方法を明らかにすることができる事業主
労働条件、勤務状況、賃金の支払い状況など、対象労働者に関する必要な書類を整備し、キャリアアップ計画に沿った取り組みを証明できるようにする必要があります。 - キャリアアップ計画期間中にキャリアアップ目標の達成を目指している事業主
キャリアアップ計画期間中に、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善の取り組みを実施し、その効果を確認できるように進めることが求められます。
上記5つの条件をすべて満たしている事業主が、キャリアアップ助成金を申請する資格を得ることができます。また、助成金を受給するには、労働法や社会保険関連の法律を遵守し、計画に基づいた取り組みを行うことが必要です。
【スポット申請】社会保険の加入条件や加入手続きの流れと加入方法の全まとめ
対象となる労働者の条件
キャリアアップ助成金の対象となる労働者は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者などの非正規雇用者です。これらの労働者が助成金の対象となるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
- 雇用期間の条件:
対象となる労働者は、通算して6か月以上雇用されていることが必要です。この期間中、正規雇用労働者とは異なる雇用区分の就業規則等の適用を受けている必要があります。 - 雇用形態の条件:
労働者は、有期雇用や無期雇用であり、正規雇用労働者として雇用されることを約束されていないことが条件です。また、無期雇用労働者とは、期間の定めのない労働契約を結びつつも、正規労働者と同等の労働条件が適用されていない者を指します。 - 資本・経済的関係のない雇用:
労働者の前職と現職の事業主に、資本的・経済的・組織的な関連性がないことが求められます。これにより、不適切な転籍やグループ内の形だけの転換を防止します。 - 親族でないこと:
正社員化を行った事業所の事業主または取締役の三親等以内の親族ではないことが条件です。 - 雇用の継続:
助成金の支給申請日において、正社員化後の雇用区分が継続しており、自己都合による離職がないことが必要です。 - 再転換の予定がないこと:
支給申請後に、有期雇用や無期雇用へ再転換する予定がないことが求められます。 - 定年までの期間:
定年までの期間が1年以上残っていることも、助成金の対象となるための条件です。
これらの条件を事前に確認し、要件を満たしている労働者が助成金の対象であるかを把握することが重要です。
対象となる中小企業の範囲
キャリアアップ助成金は、中小企業を主な対象としています。
中小企業の定義は業種により異なります。以下に、中小企業の範囲を表にまとめています。
業種 | 資本金の額・出資の総額と常時雇用する労働者の数 |
小売業(飲食店を含む) | 資本金5,000万円以下または従業員数50人以下 |
サービス業 | 資本金5,000万円以下または従業員数100人以下 |
卸売業 | 資本金1億円以下または従業員数100人以下 |
製造業その他の業種 | 資本金3億円以下または従業員数300人以下 |
事業主は、自身の企業がこれらの基準に該当するかどうかを確認し、助成金の対象であることを把握する必要があります。また、助成金の利用にあたっては、事前にキャリアアップ計画を策定し、計画に沿った取組みを実施することが求められます。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)の詳しい受給条件や対象者については下記の記事で詳しく解説しています。
キャリアアップ助成金正社員化コースの条件とは?対象者の要件と申請期間、人数などを解説
キャリアアップ助成金の中で特に注目されているのが、非正規雇用労働者を正社員に転換するための支援です。企業が契約社員を正社員へと昇格させることで、労働者の職場定着や働きがいの向上が図られ、企業側にも安定的な人材確保が期待できます。
この支援には主に「正社員化コース」と「障害者正社員化コース」があり、それぞれ異なる条件が設けられています。それでは、各コースの特徴と条件、助成金額の詳細を解説します。
正社員化コースの条件と支給金額
キャリアアップ助成金の中で広く活用されている「正社員化コース」は、企業が非正規雇用労働者を正社員として転換・直接雇用する際に支給される助成制度です。このコースを利用することで、企業はパートや契約社員、派遣社員などを正社員に転換する際のコスト負担を軽減し、雇用の安定化と人材定着の向上を図ることが可能です。
この助成金は、1年度につき1事業所あたり最大20人まで申請が可能で、正社員として同一の就業規則が適用される労働者を対象としています。
支給対象としては、6か月以上の雇用期間を経た契約社員で、正社員化する時点で安定した就労を見込む者が該当します。また、企業は「キャリアアップ計画」を事前に作成し、労働局へ提出する必要があります。
正社員転換後の雇用条件には、賞与や退職金制度および昇給制度の適用が求められ、さらに、正社員転換の前後で6か月間の賃金を比較し、3%以上の賃金増加も必要です(通勤手当や住宅手当などは増加額に含まれませんので注意が必要です)。
正社員化コースの受給金額や条件は、以下の通りです。
企業区分 | 条件 | 支給額(1人あたり) ※2期(12か月)分 |
中小企業 | 契約社員→正社員 | 80万円 |
中小企業 | 無期雇用→正社員 | 40万円 |
大企業 | 契約社員→正社員 | 60万円 |
大企業 | 無期雇用→正社員 | 30万円 |
正社員化コースには、特定の条件を満たす場合に追加で支給される加算措置が用意されています。中小企業・大企業ともに同様の加算が適用されます。
条件 | 有期雇用労働者の加算額 (1人あたり) | 無期雇用労働者の加算額 (1人あたり) |
派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用 | 28万5,000円 | 28万5,000円 |
対象者が一人親家庭の母または父 | 9万5,000円 | 4万7,500円 |
人材開発支援助成金の訓練修了後に正社員化 | 9万5,000円 (自発訓練で11万円) | 4万7,500円 (自発訓練で5万5,000円) |
正社員転換制度の新規定を作成し適用 | 20万円 (大企業は15万円) | 20万円 (大企業は15万円) |
「勤務地・職務限定、短時間正社員」制度を新設し適用 | 40万円 (大企業は30万円) | 40万円 (大企業は30万円) |
また、生産性向上要件(3年度前比で1~6%以上の生産性向上)が適用される場合は、支給額が増額されます。これにより、企業は制度を活用しながら非正規から正規への雇用転換をコスト抑制のもとで実現でき、人材の安定確保と雇用の質向上が期待できます。
(第1期)・正社員化した対象労働者に対し、正規雇用労働者としての賃金を6か月分支給した日※の翌日から起算して2か月以内に申請してください。
(第2期)(※第1期支給申請で不支給決定を受けた場合は、第2期は支給申請できません。)・正社員化した対象労働者に対し、正規雇用労働者としての賃金を12か月分支給した日※の翌日から起算して2か月以内に申請してください。
キャリアアップ助成金の正社員化コースについては、下の記事で詳しく解説しています。
【令和6年版】キャリアアップ助成金の正社員化コースとは?条件や申請方法、支給金額を社労士がわかりやすく解説
障害者正社員化コースの条件と支給金額
障害者正社員化コースは、障害を持つ契約社員を正社員に転換することを目的としたキャリアアップ助成金の一環です。障害を持つ労働者にとって、安定した正規雇用は経済的な自立と社会参加を促進する重要な機会となります。このコースを利用することで、企業は障害者の雇用促進に寄与し、働きやすい環境を提供することができます。
◯支給対象:
転換対象者は、6か月以上の雇用実績があり、重度の身体障害者や精神障害者、発達障害者、難病患者など、一定の障害を持つ労働者が対象です。なお、事業主・取締役の3親等以内の親族は対象外となります。
◯支給金額:
正社員化の内容や障害の程度に応じて、中小企業と大企業で支給額が異なります。助成金は1年(2期)にわたり、前半の6か月(第1期)と後半の6か月(第2期)に分けて支給されます。
企業区分 | 支給対象者 | 条件 | 支給額(1人あたり) |
中小企業 | 重度の身体障害者知的障害者精神障害者 | 契約社員→正規雇用 | 120万円(60万円×2期) |
中小企業 | 重度の身体障害者知的障害者精神障害者 | 契約社員→正規雇用 | 60万円(30万円×2期 |
中小企業 | 重度の身体障害者知的障害者精神障害者 | 無期雇用→正規雇用 | 60万円(30万円×2期) |
中小企業 | 重度以外の身体障害者知的障害者発達障害者難病患者高次脳機能障害者 | 契約社員→正規雇用 | 90万円(45万円×2期) |
中小企業 | 重度以外の身体障害者知的障害者発達障害者難病患者高次脳機能障害者 | 契約社員→無期雇用 | 45万円(22.5万円×2期) |
中小企業 | 重度以外の身体障害者知的障害者発達障害者難病患者高次脳機能障害者 | 無期雇用→正規雇用 | 45万円(22.5万円×2期) |
大企業 | 重度の身体障害者知的障害者精神障害者 | 契約社員→正規雇用 | 90万円(45万円×2期) |
大企業 | 重度の身体障害者知的障害者精神障害者 | 契約社員→無期雇用 | 45万円(22.5万円×2期) |
大企業 | 重度の身体障害者知的障害者精神障害者 | 無期雇用→正規雇用 | 45万円(22.5万円×2期) |
大企業 | 重度以外の身体障害者知的障害者発達障害者難病患者高次脳機能障害者 | 契約社員→正規雇用 | 67.5万円(33.5万円×2期) |
大企業 | 重度以外の身体障害者知的障害者発達障害者難病患者高次脳機能障害者 | 契約社員→無期雇用 | 33万円(16.5万円×2期) |
大企業 | 重度以外の身体障害者知的障害者発達障害者難病患者高次脳機能障害者 | 無期雇用→正規雇用 | 33万円(16.5万円×2期) |
◯その他の条件:
企業は、転換を行う前に「キャリアアップ計画」を策定し、転換のための就業規則や転換計画を労働局に提出する必要があります。また、就労継続支援A型事業の利用者や、事業主の親族が対象となることは認められていません。
キャリアアップ助成金の障害者正社員化コースを活用することで、企業は障害者雇用を促進し、人材の多様性を高めることが可能です。労働者にとっても、安定した職場でのキャリア形成が期待でき、企業と労働者の双方に大きなメリットをもたらします。
キャリアアップ助成金には、企業が非正規雇用労働者の処遇を改善するための「処遇改善支援」コースも含まれています。この支援制度は、賃金規程の改定や共通化、賞与・退職金制度の導入など、企業が労働者の待遇向上を図る取り組みを支援するものです。
処遇改善支援には、以下の5つのコースが設けられています:
- 賃金規程等改定コース
- 賃金規程等共通化コース
- 賞与・退職金制度導入コース
- 社会保険適用時処遇改善コース
- 短時間労働者労働時間延長コース(令和6年3月31日に廃止)
※短時間労働者労働時間延長コースは、令和6年3月31日に廃止されていますが、廃止日までの取り組みに関しては引き続き申請できます。
これらのコースを活用することで、労働環境の改善と人材の安定確保が期待できます。以下では、各コースの内容と支給条件について詳しく解説します。
賃金規程等改定コースの条件と支給金額
賃金規程等改定コースは、企業が非正規雇用者の賃金規程を改定し、処遇を改善する際に受けられる助成金です。このコースは、時給制から月給制への変更や給与水準の引き上げを通じ、労働者の待遇向上を図ることを目的としています。
以下の表にあるように、賃金引き上げ率や企業規模に応じて支給額が異なり、労働者1人あたりの助成金が支給されます。
賃金規程等改定コースの支給額
企業規模 | 賃金引き上げ | 支給額(1人あたり) |
中小企業 | 3%以上5%未満 | 5万円 |
中小企業 | 5%以上 | 6万5,000円 |
大企業 | 3%以上5%未満 | 3万3,000円 |
大企業 | 5%以上 | 4万3,000円 |
さらに、職務評価手法(例:要素比較法や分類法)を活用し、適正な賃金規程の改定を行った場合には、下記の加算措置が適用されます。
加算措置(職務評価手法を活用した場合)
企業規模 | 加算条件 | 加算額(1事業所あたり) |
中小企業 | 職務評価手法を活用した賃金規程改定 | 20万円 |
大企業 | 職務評価手法を活用した賃金規程改定 | 15万円 |
さらに、職務評価手法(例:要素比較法や分類法)を活用し、適正な賃金規程の改定を行った場合には、下記の加算措置が適用されます。
賃金規程等共通化コースの条件と支給金額
賃金規程等共通化コースは、企業が非正規雇用者に対して正規雇用者と共通の賃金規程を新たに作成・適用する場合に支給される助成金です。このコースは、同一職務に従事する非正規雇用者と正規雇用者が共通の賃金規程で待遇されることで、非正規雇用者のモチベーション向上や雇用の安定を促進します。支給額は企業規模により異なり、非正規雇用者への適用が長期的に継続されることが条件です。
賃金規程等共通化コースの支給額
企業規模 | 支給額(1事業所あたり) | 生産性向上要件を満たした場合の支給額 |
中小企業 | 60万円 | 72万円 |
大企業 | 45万円 | 54万円 |
「同一労働同一賃金」の理念のもと、非正規雇用者にも正規雇用者と同等の待遇を提供することで、企業の人材確保や離職率低下が期待されます。この制度を活用することで、企業は公正な労働環境の構築に寄与し、長期的な人材確保の有効な手段となるでしょう。
賞与・退職金制度導入コースの条件と支給金額
賞与・退職金制度導入コースは、企業が非正規雇用者向けに賞与や退職金制度を新設し、その支給や積立を実施する際に支給される助成金です。この制度の目的は、非正規雇用者の処遇改善を通じて労働者の定着率を高め、企業の人材確保に貢献することにあります。導入する制度内容は正規雇用者と同等であることが求められ、継続的な支給または積立が条件です。
賞与・退職金制度導入コースの支給額
企業規模 | 条件 | 支給額 (1事業所あたり) | 生産性向上要件を満たした場合の支給額 |
中小企業 | 賞与または退職金制度を導入 | 40万円 | 48万円 |
大企業 | 賞与または退職金制度を導入 | 30万円 | 36万円 |
加算措置制度
賞与と退職金の両方の制度を同時に導入した場合、追加の助成金が支給されます。
企業規模 | 条件 | 加算額 (1事業所あたり) | 生産性向上要件を満たした場合の加算額 |
中小企業 | 賞与と退職金制度を同時に導入 | 16万円 | 19万2,000円 |
大企業 | 賞与と退職金制度を同時に導入 | 12万円 | 14万4,000円 |
非正規雇用者に安定した待遇を提供することで、企業は人材確保や労働者の意欲向上を図れます。このコースは特に長期雇用の確保に貢献する助成制度として、多くの企業にとって有効な支援となるでしょう。
社会保険適用時処遇改善コースの条件と支給金額
社会保険適用時処遇改善コースは、令和8年3月31日までの暫定措置で、企業が短時間労働者やパートタイム従業員に対して社会保険の適用を拡大する際に利用できる助成金制度です。
このコースにより、非正規雇用者も正社員と同様の社会保険保障を受けられるようになり、企業は労働者の福利厚生を改善し、安定した人材確保が期待できます。
この社会保険適用時処遇改善コースは、「手当等支給メニュー」と「労働時間延長メニュー」の2つに分かれており、それぞれ企業規模や賃金引き上げ率、労働時間の延長条件によって支給額が異なります。以下の表に詳細をまとめます。
■手当等支給メニュー
企業規模 | 支給条件 | 支給金額 |
中小企業 | 1年目:賃金の15%以上増額 | 40万円(10万円×4期) |
大企業 | 1年目:賃金の15%以上増額 | 30万円(7.5万円×4期) |
中小企業 | 3年目:基本給の18%以上増額 | 10万円 |
大企業 | 3年目:基本給の18%以上増額 | 7.5万円 |
■労働時間延長メニュー
企業規模 | 支給条件 | 支給金額 |
中小企業 | 週所定労働時間を4時間以上延長 | 30万円 |
大企業 | 週所定労働時間を4時間以上延長 | 22.5万円 |
この助成制度の利用によって、企業は短時間労働者に対する社会保険適用の拡大を進めるとともに、従業員の雇用環境が改善され、結果的に人材の定着率向上や長期的な雇用安定が期待されます。
【令和6年3月31日に廃止】短時間労働者労働時間延長コースの条件と支給金額
短時間労働者労働時間延長コースは、パートやアルバイトの労働時間を延長し、社会保険への加入要件を満たした場合に支給される助成金です。
対象は、従来は社会保険の対象外だった短時間勤務の非正規労働者で、労働時間を延長して安定した働き方を提供することを目的としています。これにより、従業員のモチベーション向上や長期的な定着が促進され、企業と労働者双方にメリットが期待されます。
短時間労働者労働時間延長コースは令和6年3月31日に廃止されましたが、それ以前の取り組みに関しては申請が可能です。
短時間労働者労働時間延長コースには、労働時間の延長時間に応じた支給額が設けられており、以下の表に詳細をまとめています。
短時間労働者労働時間延長コースの支給額
支給額①(令和6年9月30日までの増額措置)
企業区分 | 条件 | 支給額 (1事業所あたり) |
中小企業 | 所定労働時間を3時間以上延長し、社会保険を適用した場合 | 23万7,000円 |
大企業 | 所定労働時間を3時間以上延長し、社会保険を適用した場合 | 17万8,000円 |
支給額②(令和6年9月30日までの暫定措置)
企業区分 | 条件 | 支給額(1事業所あたり) |
中小企業 | 所定労働時間を1時間以上2時間未満延長し、10%以上の収入増加で社会保険適用 | 5万8,000円 |
中小企業 | 所定労働時間を2時間以上3時間未満延長し、6%以上の収入増加で社会保険適用 | 11万7,000円 |
大企業 | 所定労働時間を1時間以上2時間未満延長し、10%以上の収入増加で社会保険適用 | 4万3,000円 |
大企業 | 所定労働時間を2時間以上3時間未満延長し、6%以上の収入増加で社会保険適用 | 8万8,000円 |
注意事項: 短時間労働者労働時間延長コースは1事業所あたり、1年度につき45人までの支給申請が可能です。
キャリアアップ助成金を活用することで、非正規雇用者の待遇改善や正社員化が推進できます。しかし、助成金の支給を受けるためには、所定の手続きを適切に行う必要があります。
以下では、キャリアアップ助成金の主要な支援コースである「正社員化支援」と「処遇改善支援」の申請手続きを順に解説し、効率的に支給申請を行うためのポイントについて詳述します。
正社員化支援の申請の流れ
正社員化支援の申請は、非正規雇用者を正社員に転換することで受けられる助成金の支給申請手続きです。この支援により、非正規雇用者のモチベーションや定着率向上が期待でき、労働環境全体の改善につながります。
以下の流れに沿って申請を行います。
正社員化支援を受けるには、まず「キャリアアップ計画書」を作成する必要があります。計画書には対象者、転換後の職務内容、賃金条件などを明記し、労働組合や労働者代表からの意見を反映させることが求められます。作成した計画書は、労働局に提出して認定を受けます。
キャリアアップ計画書の作成ポイントや記入例について詳しく下記記事で解説しています。
キャリアアップ計画書の作成方法を記入例付きで社労士が解説(令和6年版)
正社員転換にあたり、就業規則や賃金規程の改定が必要です。転換後の職務内容や賃金制度、転換手続きの要件を就業規則に明示し、必要に応じて労働基準監督署に届け出ることで、転換後の安定した就労環境を整えます。
改定した就業規則にもとづき、対象者を正社員に転換します。転換手続きを計画通りに進め、労働者に対して新たな雇用条件を提示して、正式に転換を完了させます。
転換後、6か月間にわたり継続的に雇用し、その期間中の賃金を支払います。賃金は転換前よりも3%以上の引き上げ及び賞与の支給が条件となるため、計画的な賃金改定を行いましょう。
6か月分の賃金支払いが完了したら、支給申請を行います。支給申請は、賃金支払い終了翌日から2か月以内に提出する必要があります。必要書類には、計画書、雇用契約書、賃金台帳などが含まれますので、準備を整えて申請します。
申請書類が受理されると、審査が行われます。計画内容と実施状況の整合性が確認され、問題がなければ助成金が支給されます。支給決定後、指定口座に振り込まれます。
処遇改善支援の申請の流れ
処遇改善支援コースは、非正規雇用者の待遇向上を目的に賃金規程の見直しや賞与制度の導入を行う場合に活用される助成金です。
労働者の働きがいを高め、職場全体の定着率を向上させるため、以下の手順に従って申請を進めます。
処遇改善支援を受ける場合も、正社員化支援と同様に「キャリアアップ計画書」を作成し、労働局に提出します。計画書には、賃金改定や社会保険適用などの取組内容を明記し、労働組合や従業員代表の意見を反映させます。
計画に基づき、賃金規程の改定や社会保険加入など、各コースの支給要件に沿った取組を実施します。実施内容が支給要件を満たすように、確実に取組を行うことが重要です。
取組が完了した後、対象者に対して6か月間分の賃金を支払います。この賃金は、処遇改善の内容に基づいて設定され、従業員の処遇向上が図られることが求められます。
6か月分の賃金支払いを終えたら、支給申請を行います。支給申請は、賃金支払い終了翌日から2か月以内に提出し、必要書類を整えて申請手続きを行います。
申請内容が審査を通過すれば、助成金が支給されます。審査では計画と実施内容の整合性が確認され、問題がなければ助成金が指定口座に振り込まれます。
キャリアアップ助成金の申請には、しっかりと計画されたキャリアアップ計画書が必要です。計画書は単なる書類ではなく、助成金の趣旨に沿った取り組み内容を明確に示す重要なツールです。ここでは、計画書作成時に考慮すべきポイントについて解説します。
コースの趣旨や実施期間に沿った取り組みを考案する
キャリアアップ助成金には、全6つのコースが用意されており、それぞれ異なる趣旨や支援内容に基づいて設計されています。計画書を作成する際には、まず対象とするコースの目的や支援の方向性を正しく理解し、それに沿った具体的な取り組みを考案することが重要です。
たとえば、「正社員化コース」を選んだ場合、非正規雇用者の正社員転換をスムーズに進めるための手続きや、必要な教育訓練の実施といった計画の詳細なステップを盛り込むことが求められます。さらに、実施期間と内容がしっかりと一致するよう工夫し、助成金の目的に合った効果的なプランを立てることで、審査の通過がより期待できます。
計画の全体的な流れを決定する
キャリアアップ計画の成功には、全体的な流れを事前に整理し、各段階の取り組みが一貫して実行されるようにすることが不可欠です。計画書には、各ステップの開始・終了時期、関係者の役割分担、実施手順などを時系列に沿って具体的に記載します。こうした流れを明確にしておくことで、計画書の作成がスムーズになるだけでなく、現場での実施も効率的に進められます。
たとえば、正社員化コースの場合は、非正規雇用者の対象者を選定し、必要な研修や教育を行った後、最終的に正社員転換手続きを実施する流れを記載します。また、各ステップでの成果や評価基準を設定することで、進捗の確認や改善も行いやすくなります。
このように計画全体の流れを詳細に整理しておくと、各取り組みが円滑に進み、助成金支給申請においても必要条件を確実に満たすことが可能になります。
キャリアアップ管理者を定める
キャリアアップ助成金の計画を円滑に推進するためには、責任者として「キャリアアップ管理者」を任命することが重要です。この管理者は、計画の実施を指揮し、進捗を確認しながら必要な調整や報告を担当します。また、助成金申請においては、管理者の役割と責務が明確であることが審査のポイントとなるため、適任者を選び、計画遂行のための体制を整えておく必要があります。
なお、キャリアアップ管理者は、複数の事業所を兼任したり、労働者代表と兼務することができません。これを踏まえた上で、事業所内の信頼できる人材を管理者として任命しましょう。適切な管理者がいることで、計画の進行や課題の解決がスムーズに行われ、助成金の効果を最大限に引き出すことが可能になります。
3年以上5年以内でキャリアアップ計画期間を定める
キャリアアップ計画書には、実施する計画期間を3年以上5年以内に設定する必要があります。これは助成金の要件であり、この期間内で目標達成が可能な内容で計画を立てることが重要です。計画期間を適切に設定することで、企業の成長と労働環境の改善を着実に進められるだけでなく、従業員にとっても無理のないスケジュールが確保され、計画の成功率が高まります。
なお、5年間の計画期間が終了し、さらに継続して取り組みを行いたい場合には、新たにキャリアアップ計画を作成し、再度提出する必要があります。
対象者、目標、期間、目標達成に向けた取り組みを記載する
計画書には、キャリアアップの対象者や具体的な目標、実施期間、そして目標達成に向けた具体的な取り組み内容を記載することが必須です。
たとえば、非正規雇用の従業員を対象とし、正社員化を目指す場合は、転換後の職務内容や評価基準、賃金の見直し方針などを明記しましょう。こうした詳細な情報を記載することで、助成金審査時に計画の実効性が評価されやすくなります。また、目標達成までの進捗を定期的に確認し、必要に応じて計画を見直すことで、計画の成功率を高めることができます。
この内容をもとに、キャリアアップ助成金の申請をスムーズに進めるための計画書作成のポイントを押さえ、効果的な労働環境の改善を実現しましょう。
キャリアアップ助成金の申請には、いくつかの重要な注意点があります。これらの注意点を把握し、適切に準備することで、申請の流れをスムーズに進めることができます。以下に、キャリアアップ助成金申請時に注意すべき点について解説します。
正社員化・処遇改善措置前の手続きが必要
キャリアアップ助成金を申請するためには、正社員化や処遇改善措置を実施する前に、事前の手続きが必須です。まず、「キャリアアップ計画書」を策定し、所定の機関に提出する必要があります。この計画書には、転換後の職務内容や賃金条件を具体的に記載し、労働者に対して転換のメリットを明確に提示することが重要です。また、計画書の作成にあたっては、労働組合や労働者代表と協議し、意見を反映させることで、円滑な転換が進められるよう配慮します。計画を事前に提出することで、措置後の支援金申請がスムーズに進み、労働環境の改善を迅速に実現できます。
就業規則などへの明記が必要
正社員転換や処遇改善の施策を行う際には、その内容を就業規則や賃金規程に明記することが不可欠です。これにより、会社のルールとして労働者に説明でき、労働条件の透明性を確保できます。特に、昇給や賞与の規定は具体的に記載することが求められ、単に施策を行うだけでは助成金は支給されません。どのような労働者が制度の対象となり、どの条件で適用されるかを明文化することが必要です。
例えば、昇給の基準として「勤務成績が一定以上であること」や「評価結果に基づき、原則として年に一度行う」など、具体的な基準を示すことで、労働者に対して透明性を高めることができます。また、賞与についても「会社の業績や個人の勤務成績に基づき、毎年支給する」など、支給のタイミングや条件を明記することが重要です。
さらに、就業規則の改定には一定の時間がかかる場合があるため、計画的に準備を進めることが重要です。
キャリアアップ助成金の申請に必要な就業規則については下の記事で詳しく解説しています。
キャリアアップ助成金の申請に必要な就業規則とは?規定例や注意点を解説
支給申請期間中の手続きが必要
キャリアアップ助成金の支給申請は、正社員転換や処遇改善措置を行った後、一定の期間内に完了する必要があります。具体的には、正社員転換後の賃金支払いを6ヵ月分完了した翌日から2ヵ月以内に申請手続きを行わなければなりません(賞与の場合は初回支払日の翌日から2ヵ月以内)。この期限を過ぎてしまうと助成金を受け取る権利が失われるため、申請期限の厳守が重要です。
また、スケジュール管理だけでなく、提出する書類の準備も慎重に行う必要があります。書類の不備や不足があると再提出が求められる場合があり、結果として期限内に申請が完了しないリスクが生じます。事前に必要な書類を揃え、内容に不備がないかをしっかり確認した上で提出することが大切です。
申請後はさかのぼって訂正できない
キャリアアップ助成金の申請は、正社員転換や賃金アップなどの措置を行い、6か月分の賃金支払いが完了した後にのみ行うことが可能です。特に注意が必要なのは、申請後に支給要件を満たさないことが発覚しても、さかのぼって内容を訂正できない点です。
例えば、賃金アップの割合を誤った場合、後からの修正が不可能であり、助成金を受給できなくなります。
近年、キャリアアップ助成金の不正受給が問題視されており、審査が一層厳格化されています。したがって、申請書類の記載内容や賃金支払いの実績が支給要件を満たしているか、提出前に入念に確認することが大切です。助成金申請に関する専門的な知識が必要な場合は、社労士などの専門家に相談し、正確かつ丁寧な申請手続きを心掛けましょう。
キャリアアップ計画を確実に遂行する
キャリアアップ助成金の受給には、計画したキャリアアップ計画を確実に実施することが必須です。たとえば、「正社員化コース」の認定を受ける前に労働者を正社員に転換してしまうと、助成金の対象外となります。
このため、助成金を受けるには「計画」「認定」「実施」という順序を守る必要があります。
また、計画の認定には時間がかかるため、コース実施日の1か月以上前には計画を提出し、余裕を持って準備を進めましょう。計画は変更が可能ですが、その場合は「キャリアアップ計画変更届」を速やかに管轄労働局へ提出しなければ助成金が受けられなくなるリスクもあるため、注意が必要です。
さらに、計画期間中に対象者が離職すると助成金が支給されないケースもあるため、綿密なスケジュール管理と途中での進捗確認を徹底し、計画通りに遂行できるよう準備を整えることが重要です。
助成金支給までに時間がかかる
キャリアアップ助成金の申請から支給までは、審査期間を含めて長期間がかかる点に留意が必要です。
助成金の申請は、正社員化や処遇改善を実施し、その後6ヶ月分の賃金支払いを完了してから行います。申請後も、給与支払いや計画の実施状況などの詳細な審査が行われ、問題がなければ支給が決定されますが、この審査には数ヶ月以上を要することが多く、実際に支給されるまで1年程度かかることもあります。
特に中小企業や個人事業主にとって、助成金支給までの長い待機期間はキャッシュフローの負担となりかねません。そのため、計画的な資金準備や余裕を持ったスケジュールの策定が重要です。
事業主や取締役の親族は対象外
キャリアアップ助成金の支給対象には、事業主や取締役の親族は含まれません。具体的には、3親等以内の親族(配偶者、3親等以内の血族および姻族)は助成金の対象外とされています。これは、親族を対象とした正社員転換や処遇改善が、客観的な人材育成や雇用環境の改善という助成金の目的に合致しないと判断されているためです。そのため、助成金申請は対象要件に適合する非親族の従業員に対して行う必要があります。また、親族が従業員の場合には、キャリアアップ助成金以外の適切な助成金制度を活用することも検討しましょう。
キャリアアップ助成金は、支給要件を満たしている場合に受給できる助成金ですが、要件を満たしているつもりでも、予期せぬ理由で不支給となる場合があります。具体的には、次のようなケースです:
- 労働基準法などの法令違反がある
- 実地調査に協力しない
- 書類の修正・再提出に適切に対応しなかった場合
- 過去5年以内に不正受給があった場合の申請
- 受給後の会計検査院による検査に協力しない
ここでは、キャリアアップ助成金が支給されない可能性がある具体的なケースについて詳しく解説します。
労働基準法などの法令違反がある
キャリアアップ助成金の支給には、労働基準法やその他関連する法令を遵守していることが不可欠です。支給申請日の前日から過去1年以内に労働関連の法律に違反している場合、助成金の対象外となる可能性が高まります。たとえば、適切な残業代の支払いや労働時間管理、有給休暇の付与といった基本的な労務管理が守られているかが問われます。また、労働者の処遇改善が行われていない場合も、助成金の意図に反するため不支給となる場合があります。
助成金を受けるためには、まず最新の労働基準法を遵守しているか確認し、不備がある場合は改善し、適切な労働環境を整えることが重要です。
実地調査の協力を拒否した
キャリアアップ助成金の申請後、支給内容が適正であることを確認するために、事業所への実地調査が実施されることがあります。これは、事業の運営状況や支給要件の順守状況を確認するための重要な手続きです。もしこの調査への協力を拒否したり、提出が求められた帳簿や賃金台帳などの法定帳簿を提供しなかった場合、助成金の支給対象から除外される可能性があります。また、書類の改ざんや不備が明らかになった場合も、不支給の対象となります。実地調査には積極的に協力し、正確な情報を提供するようにしましょう。
書類の修正・再提出に適切に対応しなかった場合
キャリアアップ助成金の申請時に提出した書類に不明点や疑義が生じた場合、都道府県労働局から追加の説明や証拠書類の提出を求められることがあります。このような要求に対して迅速かつ適切に対応しなければ、助成金の支給が却下される可能性があります。
特に、指定された期日までに対応を怠ると、不支給の対象となりやすいため注意が必要です。事前に書類の内容を十分に確認し、不備がないように整えておくことで、スムーズな対応が可能となります。
不正受給から5年以内の申請
過去に助成金の不正受給が発覚した事業主や事業所は、以降5年間、キャリアアップ助成金をはじめとする多くの助成金申請が制限されます。不正受給は、虚偽の申告などにより本来は受け取れない助成金を不適切に受け取る行為であり、違反が確認された場合には信頼性が損なわれるため、一定の期間が経過しない限り再度の受給が認められません。助成金の適正な利用と申請内容の正確さを守り、今後の申請機会を失わないよう注意しましょう。
受給後の会計検査院検査への協力不同意
キャリアアップ助成金の支給後、会計検査院からの調査や検査に協力する義務があります。この検査は、助成金の適正な使用を確認するために行われるもので、協力を拒否したり、必要な書類を提出しなかったりすると、助成金の返還や追加罰則が科される可能性があります。支給後も助成金の関連書類や添付書類は5年間保管し、万が一の検査に備えて適切に管理しましょう。助成金の円滑な運営と受給のため、受給後も適切な姿勢で会計検査に協力することが重要です。
キャリアアップ助成金の注意点と不支給になる失敗例については、下記の記事で詳しくまとめています。
キャリアアップ助成金の正社員化コース支給申請時の注意点!不支給になる失敗例も解説
キャリアアップ助成金を不正に受給した場合、厳しい罰則が適用されることがあります。不正受給とは、虚偽の申告や不正な操作によって、実際には支給対象外のケースで助成金を受け取る行為を指します。たとえば、実際には正社員への転換が行われていないにもかかわらず、手続きを装って助成金を申請したり、要件を満たさない従業員を対象にする行為が不正受給に該当します。
不正受給が発覚した場合には、以下のような厳しい罰則が適用されることがあります。
- 助成金の全額返還義務
不正受給が明らかになった場合、支給された助成金全額の返還が義務づけられます。さらに、返還額には年3%の延滞金および返還額の20%に相当する違約金が課されることもあり、返還額は高額となる可能性があります。 - 事業主名の公表
厚生労働省などの関係機関によって、不正受給を行った事業主の名前が公表されることもあります。これにより、企業の社会的信頼が失墜し、取引関係や企業イメージに重大な影響を及ぼすことがあります。 - 今後の助成金申請が制限される
一度不正受給が認定されると、その後5年間はキャリアアップ助成金を含む他の助成金の申請ができなくなります。この措置は、助成金制度の信頼性を維持するためのものであり、企業にとって今後の支援機会を失う大きな不利益となります。 - 罰金や追加課税
不正受給の悪質性や意図的な操作が確認された場合、罰金や追加課税が科される可能性があります。不正の程度によっては、刑事罰が検討される場合もあります。
助成金制度は適切な運用と公正な目的のために設けられているため、不正受給のリスクを避けるためにも、申請の際には支給条件や必要な手続きをしっかり確認し、正確な情報をもとに申請手続きを行うことが大切です。また、受給後も適正な管理と監査体制を整え、企業の信頼性と助成金制度の健全な利用を維持しましょう。
キャリアアップ助成金は、多くの企業や事業主が活用を検討する助成金制度です。しかし、受給条件や申請手続きに関する疑問が多く寄せられることから、ここではよくある質問について解説します。
キャリアアップ助成金制度は個人事業主でも受給できますか?
キャリアアップ助成金は、法人だけでなく個人事業主も受給可能です。ただし、申請に際しては、従業員の雇用形態や勤務時間など、一定の条件を満たす必要があります。具体的には、個人事業主が非正規雇用の従業員を正社員化したり、賃金を改定したりすることで、対象となる助成金の申請が可能です。申請前には、管轄の労働局で要件の確認や必要書類の準備をしておくと安心です。
キャリアアップ助成金は個人事業主も利用できる助成金制度?申請条件と対象者を解説
キャリアアップ助成金は1人につき80万円ですか?
キャリアアップ助成金の支給額は、1人につき最大80万円が基本とされていますが、具体的な金額はコースや対象条件によって異なります。例えば、正社員化支援や賃金規程改定など、それぞれのコースに応じた支給金額が設定されています。また、支給金額は助成対象者の人数や条件によって加算されるケースもあるため、申請する内容に応じて詳細を確認することが重要です。
キャリアアップ助成金の審査が厳しい理由はなんですか?
キャリアアップ助成金の審査は、不正受給防止や助成金の適正利用を確保するために非常に厳格に行われています。申請書類や添付書類の内容、支給要件の達成状況などを詳細に確認し、助成金の適正な利用を担保することが審査の目的です。特に、過去に不正受給が多発した経緯から、審査基準が一層厳しくなっています。
審査に通過するためには、支給要件を満たした証拠書類を事前にしっかりと準備し、内容に不備がないよう確認しておくことが重要です。書類の訂正や差し替えができないため、賃金台帳や出勤簿など、原本または正確に複写した書類を提出する必要があります。また、キャリアアップ計画書は支給要件を反映させた内容にすることが求められ、助成金の趣旨に沿った実施が求められます。助成金申請の手続きに不安がある場合は、専門機関や社労士に相談し、正確で誠実な手続きを心がけましょう。
キャリアアップ助成金の審査が厳しい理由や申請を成功させるコツを詳しく解説しています。
キャリアアップ助成金の審査は厳しい?申請成功のコツや不支給になる理由を解説
キャリアアップ助成金は、企業が非正規雇用者の正社員化や処遇改善を通じて労働環境を向上させるための重要な支援制度です。申請条件を満たし、適切な手続きを踏むことで、企業は労働者のモチベーション向上や定着率の向上といった成果を期待できます。また、助成金を受けることで、給与や待遇の改善にかかるコストを軽減でき、経営の安定にも寄与します。企業全体の成長と、働きやすい職場環境の構築を目指す上で、積極的に活用を検討してみましょう。
専門家である社労士への申請代行も検討する
キャリアアップ助成金の申請には多くの書類作成や条件確認が必要で、手続きが煩雑になることがあります。特に、申請書類の記載内容や必要書類の整備には専門的な知識が求められるため、不備なく進めるには注意が必要です。助成金申請をスムーズに進めたい場合や、要件に不安がある場合は、社会保険労務士(社労士)に申請代行を依頼することも有効な選択肢です。
社労士は労働法や助成金制度に精通しており、企業に最適なサポートを提供します。専門家の支援を受けることで、助成金申請が確実かつ効率的に行われ、結果として企業の負担も軽減されます。助成金を最大限に活用し、労働環境の向上を目指すために、社労士の利用も積極的に検討してみましょう。
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