月額変更届(随時改定)とは、従業員の基本給や手当など、毎月固定で支払われる報酬額に大きな変動があった際に必要となる社会保険手続きです。特に、給与の昇給や降給によって報酬が2等級以上変動した場合に、この手続きが行われ、標準報酬月額を見直して適正な社会保険料を再計算します。
年金事務所の調査でも狙われやすい部分です。」
この手続きを正確に行うことは、従業員が将来受け取る年金額や、健康保険料にも影響を与えるため非常に重要です。特に中小企業やベンチャー企業では、給与の変動が頻繁に発生するため、手続きを迅速かつ正確に進めることが求められます。もし、手続きが遅れたり、誤った内容で提出されると、追加の保険料が発生したり、従業員とのトラブルを引き起こす可能性もあります。
この記事では、随時改定が必要となる条件や、月額変更届の書き方、提出方法を詳しく解説します。さらに、経営者や労務担当者がスムーズに手続きを進めるためのポイントも紹介していますので、ぜひ最後までお読みください。
生島社労士事務所代表
生島 亮
いくしま りょう
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社会保険の月額変更届とは、標準報酬月額が変動した際に必要となる書類で、正式名称は「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」です。 主に、昇給や降給、雇用契約の変更に伴い、給与やその他の報酬額が大幅に変わった場合に使用されます。
標準報酬月額とは、従業員の給与額を基に、一定の範囲で等級に区分した金額であり、これに基づいて社会保険料や厚生年金保険料が算出されます。
健康保険の場合は1〜50等級、厚生年金保険の場合は1〜32等級に区分されています。
通常、給与の変動があった際には年1回、定時決定(算定基礎届)で見直しが行われますが、年度途中に大きな変動があった場合には、随時改定(「月変(ゲッペン)」)が適用され、月額変更届を提出して保険料が再計算されます。
例えば、従業員の昇給や降給によって給与が大幅に増減し、標準報酬月額の等級が2等級以上変動する場合、随時改定が行われます。これにより、適切な保険料が算出され、企業と従業員の双方にとって正確な社会保険料の支払いが確保されます。
標準報酬月額の随時改定と定時決定との違い
標準報酬月額は、定時決定と随時改定の2つの方法で見直されます。定時決定は、毎年4月から6月までの給与を基に年に1回行われ、9月から翌年8月までの保険料に適用される標準報酬月額を決定する手続きです。毎年7月10日までに「算定基礎届」を提出し、給与の平均額を基に保険料が算出されます。
一方、随時改定は、昇給や降給などの理由で給与や報酬に大きな変動があった場合、定時決定を待たずに標準報酬月額を見直す手続きです。具体的には、固定的賃金(基本給、通勤手当、役職手当など)が増減し、その結果として標準報酬月額が2等級以上変動した場合に適用されます。この随時改定を行うことで、適切な保険料を算定し、給与と保険料の乖離を防ぐことができます。
随時改定の手続きを行う際は「月額変更届」を提出し、新しい標準報酬月額が報酬の変動後4ヶ月目から適用されます。
以下の表で、随時改定と定時決定の違いを視覚的に確認してみましょう。
随時改定 | 定時改定 | |
対象条件 | 固定的賃金が大幅に変動(2等級以上)した場合 | 毎年必ず実施 |
提出書類 | 月額変更届 | 算定基礎届 |
実施時期 | 昇給・降給や雇用契約の変更時に実施 | 毎年4〜6月の給与を基に算定。 ※算定基礎届を7月に提出。 |
対象期間 | 変更後4ヶ月目から適用 | 9月から翌年8月までの1年間 |
適用開始時期 | 変動があった月から数えて4ヶ月目に反映 | 9月分の保険料から反映 |
随時改定と定時決定の時期が重なった場合
定時決定と随時改定の時期が重なることは珍しくありません。このような場合、原則として随時改定が優先されます。
例えば、4月から6月の給与に大幅な変動があった場合、その変動を反映するために随時改定が行われ、定時決定よりも早く適用されます。これにより、実際の給与額に即した標準報酬月額を反映させ、適切な社会保険料を算出します。
ただし、随時改定が行われた後も、再び給与に大きな変動が生じた場合には、再度標準報酬月額が改定されることがあります。適切な手続きを行うことで、給与の変動に応じた保険料が確実に反映され、無駄な支払いを防ぐことができます。
標準報酬月額を決定するタイミング
標準報酬月額が決定されるタイミングは、主に以下の3つがあります。
- 資格取得時の決定
従業員が新たに社会保険に加入する際、標準報酬月額が初めて決定されます。この際、まだ最初の給与が支払われる前であっても、基本給や通勤手当などを基に1ヶ月の見込み額を算出し、その額に応じた標準報酬月額が設定されます。 - 定時決定(算定基礎届)
毎年4月から6月の3ヶ月間の給与を基に、標準報酬月額が再計算されるのが定時決定です。この見直しのために「算定基礎届」を7月に提出し、9月から翌年8月までの保険料が決定されます。これにより、社会保険料がその年の給与に基づいて適切に調整されます。 - 随時改定の対象になるタイミング
昇給や降給、勤務時間の変更などにより、給与が年の途中で大幅に変動した場合、定時決定を待たずに標準報酬月額を見直す必要があります。この場合、標準報酬月額が2等級以上変動した場合に随時改定が適用され、給与の変動に応じた保険料が適切に調整されます。
随時改定の具体的な適用条件や手続きについては、以下で詳しく解説しています。
随時改定が必要になるケースは、以下の3つの要件をすべて満たす場合に必要です。
- 昇給や降給により固定的賃金に変動があった場合
- 固定的賃金の変動後、連続する3か月間の報酬の平均額が、現在の標準報酬月額と比較して2等級以上の差がある場合
- その3か月間すべてにおいて、支払い基礎日数が17日(短時間労働者は11日)以上である場合
これらの条件を満たす場合には、標準報酬月額を変更し、適切な社会保険料を算出するために「月額変更届」の提出が必要です。支払い基礎日数とは、社会保険料の計算に必要な労働日数を指し、この基準を満たすことで適正な手続きが進められます。
① 固定的賃金に変動があった場合
固定的賃金とは、基本給や通勤手当、役職手当、家族手当など、毎月一定の額が支払われる賃金のことを指します。昇給や降給、通勤手当の変更、資格手当の追加など、これらの固定的賃金に変動があった場合には、随時改定が必要となります。
固定的賃金の変動が標準報酬月額に影響を与え、2等級以上の差が生じた場合には、随時改定の手続きが求められます。これにより、社会保険料が正確に計算され、過不足なく支払うことができます。
固定的賃金の変動例
- 昇給または降給による基本給の変更
- 通勤経路の変更による通勤手当の増減
- 家族手当や役職手当の追加、変更、廃止
- 資格手当の支給開始や終了
これらの変動があった場合は、速やかに手続きを行い、適切な社会保険料を反映させることが重要です。
② 変動により標準報酬月額に2等級以上の差が生じた場合
固定的賃金に変動があった場合、その影響で標準報酬月額が2等級以上の差を生じた際には、随時改定が必要となります。標準報酬月額の等級は従業員の報酬額に基づいて決定され、2等級以上の変動が発生した場合(下記画像参照)、適正な社会保険料や厚生年金保険料を算出するために、速やかに手続きを行うことが求められます。
上記画像の例では、等級18から等級20へと標準報酬月額の等級が変更された場合、2等級以上の差が生じているため、随時改定の対象となります。このような場合には、全国健康保険協会が公開している保険料額表を参考にしながら、速やかに手続きを進めることが重要です。
具体的には、昇給や降給によって報酬が大幅に変動し、標準報酬月額が従来の等級と比べて大きく変わることがあります。この際、過剰な保険料支払いや不足分を防ぐためにも、迅速に随時改定を行い、適正な保険料の調整を行うことが必要です。※等級は全国健康保険協会が公開している保険料額表から確認できます。
具体的な手続きの流れ
- 変動月からの3か月間の給与の平均額を計算:
昇給や降給が反映された月から3ヶ月間の給与を基に報酬の平均額を計算します。 - 現在の標準報酬月額との比較:
計算した平均額と現在の標準報酬月額を比較します。 - 2等級以上の差がある場合、随時改定の手続き:
2等級以上の差が確認された場合、速やかに「月額変更届」を提出して標準報酬月額を修正します。
注意点
- 固定的賃金が増加しても、残業手当などの非固定的賃金が減少した結果、2等級以上の差が生じない場合もあるため、注意が必要です。
- 標準報酬月額が等級の上限または下限に該当する場合、1等級の変動でも随時改定が適用されるケースがあります。
- 手続きを怠ると、後に不足分を追加で支払うことになるため、早急な対応が重要です。
等級の変動は、社会保険料や厚生年金保険料に直接影響するため、従業員と企業双方にとって、適正な手続きを行うことが安心な労務管理の基本となります。
③ 3ヶ月とも支払基礎日数が17日以上である場合
随時改定が適用されるためには、固定的賃金の変動に加えて、支払基礎日数が連続する3ヶ月間でそれぞれ17日以上であることが条件となります。
支払基礎日数とは、その月における給与の支払い対象となる日数で、基本的には出勤日数や勤務時間数を基に計算されます。これが17日以上であれば、その月の給与が標準報酬月額の算出に含まれ、随時改定が適用されることになります。
また、特定適用事業所に勤務する短時間労働者の場合は、支払基礎日数が11日以上であれば随時改定の対象となります。3ヶ月間連続でこの条件を満たすことが求められ、これにより、標準報酬月額の適正な見直しが行われます。
支払基礎日数の数え方
支払基礎日数の数え方は給与形態によって異なりますが、以下の方法があります:
- 日給月給制: 月給の基本が決まっており、欠勤や遅刻によって給与が減額される場合、就業規則に基づく所定の労働日数から欠勤日数を差し引いた日数が支払基礎日数となります。
- 完全月給制: 休んだ場合も減額されない形態で、暦日数がそのまま支払基礎日数となります。
- 時給制・日給制: 出勤した日数がそのまま支払基礎日数として計上されます。なお、有給休暇も支払基礎日数に含まれる場合があります。
この条件を満たさない場合、随時改定は適用されないため、変動月以降の勤務状況にも注意を払い、正確な管理を行うことが重要です。
随時改定の対象にならないケース
随時改定は、報酬の大きな変動があった際に標準報酬月額を見直すための手続きですが、いくつかのケースでは随時改定の対象外となることがあります。これらのケースでは、給与に変動があったとしても随時改定は行われず、定時決定やその他の条件に基づいた手続きが適用されます。
随時改定の条件に該当しても対象外になるケース
随時改定の条件に当てはまっても、以下のような場合は随時改定の対象外となることがあります。これらのケースでは、随時改定の手続きを行う必要はありません。
1. 休職しており、休職給を受けている場合
休職中で休職給が支給されている場合、たとえ固定的賃金に変動があったとしても、随時改定の対象にはなりません。通常の業務に復帰し、再び給与が支給されるようになった時点で標準報酬月額の見直しが行われます。
2. 固定的賃金は増加したが、非固定的賃金が減少した場合
例えば、基本給が増加したものの、残業代などの非固定的賃金が大幅に減少した結果、標準報酬月額が変動しなかった場合、随時改定は適用されません。標準報酬月額の2等級以上の変動が条件であるため、固定的賃金の変動のみではなく、総報酬額の変動も確認が必要です。
3. 固定的賃金は減少したが、非固定的賃金が増加した場合
逆に、基本給などの固定的賃金が減少した一方で、残業代などの非固定的賃金が増加し、結果的に標準報酬月額が変動しなかった場合も随時改定は行われません。この場合、報酬全体として大きな変動がないため、改定の対象外となります。
4. 既に標準報酬月額が上限・下限に達している場合
標準報酬月額には上限や下限が設定されています。仮に2等級以上の変動があったとしても、報酬額が既に標準報酬月額の上限または下限に達している場合は、等級が変更されないため随時改定の対象外となります。
これらのケースに該当する場合、随時改定は行われず、定時決定やその他の手続きで適切な対応を行うことが求められます。
随時改定に伴う月額変更届の提出は、正確な手続きを踏むことで、適切な社会保険料や厚生年金保険料を確保するために重要です。以下では、随時改定の手続きの流れや月額変更届の具体的な書き方について詳しく説明します。
随時改定の手続きの流れ
随時改定の手続きは、以下の4つのステップで進行します。
固定的賃金の変動があった従業員が、随時改定の対象となるかを判定します。以下の条件にすべて当てはまるかを確認しましょう。
- 昇給や降給により、固定的賃金に変動があった場合
- 変動後、連続する3か月間の報酬の平均額が、現在の標準報酬月額と比較して2等級以上の差がある場合
- その3か月間すべてにおいて、支払基礎日数が17日(短時間労働者は11日)以上である場合
これらの要件を満たしている場合、随時改定の手続きが必要となります。速やかに月額変更届を作成・提出する準備を進めましょう。
随時改定が適用されることが確認された場合、「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届(通称:月額変更届)」を速やかに作成します。この書類には、給与情報、勤務日数、変動した報酬額などを正確に記載する必要があります。
作成する際は、改定後の標準報酬月額が給与の変動があった月から4か月目以降に適用されることを考慮しましょう。社会保険料の支払いは、当月分が翌月に天引きされるため、手続きが遅れると、給与天引き額と実際の社会保険料額に差が生じる可能性があります。このような不整合を避けるためにも、月額変更届は早めに作成し、提出することが重要です。
作成した月額変更届は、日本年金機構の事務センター、または管轄の年金事務所へ提出します。現在では、窓口での提出に加え、オンライン申請や郵送による提出も可能となっており、利便性が向上しています。
特に、資本金が1億円を超える法人や一部の特定法人については、電子申請が義務付けられているため、該当する場合はe-Govを使用した電子申請が必要です。
また、提出期限を守らないと遅延ペナルティが発生する可能性があるため、速やかに提出を行うことが重要です。提出が遅れることで、企業や従業員に不利益が生じることを防ぐためにも、期限内の手続きが求められます。
注意点として、協会けんぽに加入している企業の場合、月額変更届は日本年金機構への提出のみで済みますが、組合健保や共済組合に加入している場合は、それぞれの組合にも提出が必要となります。
月額変更届が受理されると、新しい標準報酬月額が決定されます。変更内容は、届出が受理された翌月から反映され、その時点から厚生年金保険料や健康保険料などの社会保険料が新しい標準報酬月額に基づいて計算されます。
この変更は、従業員の給与計算にも影響を与えるため、給与担当者は、適切なタイミングで給与システムに変更を反映させる必要があります。
特に、保険料が増減する場合、給与からの控除額が変わるため、従業員への事前の通知や説明も重要です。こうした適切な対応により、過不足のない保険料が算出され、トラブルを未然に防ぐことができます。
月額変更届の書き方のポイントと記入例
月額変更届を作成する際は、以下のポイントを押さえることが重要です。適切な記入により、スムーズな手続きが進み、適切な保険料が算出されます。
1. 被保険者情報
被保険者の氏名、基礎年金番号、生年月日などを正確に記入します。特に基礎年金番号は重要な情報ですので、書類やデータを確認のうえ正確に記入するようにしましょう。
2. 報酬額の変更内容
昇給や降給に伴う報酬額の変動を記載します。具体的には、基本給や固定的手当(通勤手当、役職手当など)の内訳を明確にし、変更前と変更後の金額をそれぞれ記入します。また、報酬額が2等級以上変動しているかどうかも記載が必要です。
3. 支払基礎日数
支払基礎日数とは、その月の出勤日数や勤務日数を基に算出される日数です。月額変更届では、連続する3ヶ月間の支払基礎日数が17日(短時間労働者の場合は11日)以上であるかを確認し、その日数を記入します。この確認は、随時改定の適用要件を満たしているか判断するために非常に重要です。
4. 改定年月
標準報酬月額の変更が適用される改定年月を記載します。通常、給与の変動が発生した月から数えて4ヶ月目が改定の適用月となります。例えば、4月に昇給があった場合は、その変動分が適用されるのは8月となります。
5. 給与支給月と基礎日数の記載
固定的賃金の変動があった月からの3ヶ月間の給与支給月を記入し、それぞれの月の支払基礎日数も記載します。支払基礎日数が適正に記入されていることが重要で、これにより随時改定の対象となるかが決まります。
これらの項目を正確に記入し、適切な手続きを進めることで、従業員の保険料が正しく算出され、会社の労務管理が円滑に行われます。
随時改定の手続きを適切に行うことは、正しい社会保険料の算出につながり、企業の労務管理を円滑に進める上で重要です。ここでは、月額変更届の手続きを行う際に注意すべきポイントを解説します
月額変更届の提出は可能な限り早めに行う
月額変更届は、固定的賃金に変動があった場合、できるだけ早く提出することが求められます。通常、賃金の変動があった月から数えて3ヶ月以内に連続して支払基礎日数が満たされる場合、手続きを進める必要があります。提出が遅れると、社会保険料が不適切なまま継続されるリスクがあり、追加支払いや差額調整が発生することがあります。
決定通知が届いたら、従業員に通知する
月額変更届が受理され、新しい標準報酬月額が決定した際には、会社に対して決定通知が送られます。会社側は決定通知を受け取ったら、速やかに従業員に通知することが重要です。従業員が新しい保険料率や給与に関する変更を理解していないと、不安や混乱を招く可能性があるため、透明性を持って情報を共有しましょう。
賞与を年4回以上支給した場合は随時改定にも反映する
賞与が年に4回以上支給される場合、これも随時改定の対象となる可能性があります。固定的賃金の変動だけでなく、頻繁に賞与が支給される場合も、標準報酬月額の変更が必要になることがあるため、年4回以上の賞与支給を行っている企業は、随時改定の要件に注意し、手続きを怠らないようにしましょう。
賞与を年4回以上支給する時の社会保険の手続きを年3回以下の場合との違いを含めて解説!
産前産後休業や育児休業終了後の随時改定の対象について
産前産後休業や育児休業終了後に従業員が職場復帰する際、給与が変動することがあります。この場合、随時改定とは異なる「産前産後休業終了時改定」や「育児休業等終了時改定」が適用されることがあります。これらの改定では、復職後の給与が3ヶ月間連続して支払基礎日数が17日以上(短時間労働者は11日以上)である場合、4ヶ月目から新しい標準報酬月額が適用されます。
産前産後休業や育児休業の終了時に給与変更があった場合は、随時改定の対象になるか、またはこれらの改定の対象になるかを確認し、適切なタイミングで月額変更届を提出することが重要です。
月額変更届を出さないとどうなるのか?罰則のリスクも
月額変更届を提出しない場合、正確な社会保険料が適用されず、後に追加で保険料の支払いが求められることがあります。特に、従業員の昇給などで保険料が不足している場合、その差額を追徴されるリスクがあります。逆に、降給で過剰に保険料が支払われていた場合は、翌月以降の給与で調整される必要があります。
さらに、長期間にわたって月額変更届が未提出の場合、年金事務所から催告状が送られ、無視すると6か月以下の懲役や50万円以下の罰金が科される可能性もあります。また、故意の不提出が確認されると、企業に対して立ち入り調査が行われることがあり、従業員との労務トラブルにも発展するリスクが高まります。
これらのリスクを回避するためにも、賃金変動があった場合は速やかに月額変更届を提出し、正確な社会保険料の算定を行うことが重要です。
月額変更届(随時改定)を申請しなかったらどうなる?出し忘れた場合の罰則対応方法を解説
社会保険の月額変更届(随時改定)について、よく寄せられる質問をいくつかご紹介します。役員報酬の変更や訂正の手続き、残業代が随時改定の対象となるかなど、これらの疑問に対する回答を詳しく解説していきます。
変更になった社会保険料をいつ反映させるべきか?
変更された社会保険料は、月額変更届が受理された後、通常は翌月から給与計算に反映させることが求められます。随時改定が適用された場合、新しい標準報酬月額に基づいて社会保険料や厚生年金保険料が再計算され、その額が反映されるのは、改定の翌月分の保険料からです。
たとえば、昇給や降給により7月に月額変更届を提出し、8月に受理された場合、新しい社会保険料は9月分の給与から反映されます。これにより、適正な保険料の計算と従業員への給与支払いがスムーズに行われます。変更になった社会保険料を給与に正しく反映させることは、企業の重要な義務であり、遅延や誤りがないよう注意が必要です。
役員報酬を変更した場合は月額変更届の提出は必要?
役員報酬を変更した場合でも、原則として「月額変更届」を提出する必要があります。役員も従業員と同様に、報酬に基づいて社会保険料が計算されるため、報酬に大幅な変動があった際には随時改定が適用されます。ただし、役員報酬の変更が一時的なものであったり、随時改定の要件(2等級以上の差や17日以上の支払基礎日数)を満たしていない場合は、月額変更届の提出は不要となるケースもあります。
役員の社会保険の加入義務については下記の記事で紹介しています。
会社役員の社会保険加入は義務?条件は?役員報酬ゼロ場合も解説
月額変更届を訂正した場合は、取消届はありますか?
月額変更届に誤りがあった場合、取消届は必要ありません。誤りを訂正する場合は、正しい情報を再度「月額変更届」に記載し、速やかに管轄の年金事務所に提出することで訂正が可能です。また、訂正手続きが遅れると保険料の過不足が発生し、後に精算が必要となることもありますので、間違いに気づいた時点で早めの対応が求められます。
残業代は社会保険料の随時改定の対象になりますか?
残業代は「非固定的賃金」に分類されるため、基本的には社会保険料の随時改定の対象にはなりません。随時改定の対象となるのは、基本給や役職手当、通勤手当などの「固定的賃金」に限られます。ただし、残業代が長期的に大幅に増加し、月々の総報酬額が標準報酬月額に2等級以上の差を生じる場合には、結果的に随時改定が行われることもあります。従って、非固定的賃金の影響がある場合でも、随時改定の可能性については個別に確認することが大切です。
固定的賃金(基本給、通勤手当、役職手当など)の増減があった場合、標準報酬月額に2等級以上の差が生じることがあります。このような場合には、随時改定の対象となり、「月額変更届」を提出する必要があります。給与や報酬に大きな変動があった場合は、次のステップを確認して手続きを進めましょう。
- 随時改定の要件を確認:昇給や降給により、固定的賃金が変動し、3か月連続して支払基礎日数が17日以上であるかどうか確認します。
- 月額変更届の作成:給与情報、報酬額の変動内容を正確に記入し、必要な書類を準備します。
- 提出期限を守る:月額変更届は、遅延なく、正しいタイミングで日本年金機構や管轄の年金事務所に提出します。
適切な手続きを行わない場合、社会保険料の過不足や、従業員とのトラブル、場合によっては罰則を受けるリスクがあります。企業として、従業員の昇給や雇用条件の変更に合わせて、早急に対応することが重要です。
手続きのミスを防ぐために、社労士への依頼を検討しよう
月額変更届の手続きは複雑で、ミスや遅延が後々大きなトラブルに発展することがあります。特に、給与の変動が頻繁に発生する企業では、正確で迅速な手続きが求められます。こうした手続きを確実に進めるためには、専門家である社労士に依頼することが一つの選択肢です。
社労士に依頼することで、書類作成や情報管理といった煩雑な業務をスムーズに進めることができます。また、専門的な知識を活かしてミスを防ぎ、法令遵守を徹底することができるため、経営者や人事担当者の業務負担が軽減されます。
会社の成長や人材管理に集中するためにも、社会保険手続きの複雑さを感じている場合は、一度社労士への依頼を検討することをお勧めします。
知識とサポートを受けることで、大きな問題に発展することなく、会社の安定した運営が可能になります。
下記の記事で社労士の必要性や顧問料の相場、スポット(単発)依頼の料金相場をまとめています。
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