顧問料0円、完全スポット(単発)対応の社労士サービスはこちら

2024年4月に建設業も36協定の対象!残業時間の上限規制と新様式の書き方・記載例を社労士が解説

2024年4月から、建設業にも36協定の時間外労働の上限規制が適用されました。これにより、これまで青天井での長時間残業が可能だった状況から大きく変わり、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働が厳しく管理されるようになりました。

特に長時間労働や休日不足が長年の課題とされてきた建設業界では、労働環境の改善と法令遵守が経営者にとって一層重要な責務となります。

この記事では、建設業の経営者や人事労務担当者が知っておくべき36協定の基本や、建設業における上限規制の影響について解説します。また、36協定届(新様式)の書き方・記載例を含め、実務に役立つ情報を詳しくご紹介します。

この記事を監修した人

生島社労士事務所代表

生島 亮

いくしま りょう

https://syarou-shi.com/

社会保険手続きの自動販売機|全国のあらゆる社会保険手続きと労務相談を「顧問料なしのスポット」で代行するWebサービス【社労士クラウド】の運営者|懇切丁寧 ・当日申請・フリー価格・丸投げOK| 1,800社以上の事業主様や顧問先の社保周りを解決されたい士業の先生にご利用頂いており、顧問契約も可能です|リピーター率8割以上

目次 非表示

目次へ

2024年4月から建設業も36協定の時間外労働上限規制の対象

2024年4月から建設業にも36協定による時間外労働上限規制が適用されるようになりました。これにより、建設業界でも法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働が厳しく管理されることになりました。

これまで建設業は、他の業種で先に導入された時間外労働の上限規制の対象外とされており、36協定を締結すれば無制限に時間外労働を行えましたが、2024年4月1日からは適用除外の取り扱いが変更され、建設業にも上限規制が適用されるようになりました。

以下では、36協定の基本、残業時間の上限、適用背景、および猶予期間が設けられた理由について詳しく解説します。

生島社会保険労務士
生島社会保険労務士

建設業界でも残業時間に関して話題になっております。36協定の申請は当然必要です。 社会保険に関する手続き(届出・種類)は複雑で多くの専門的知識を必要とするため、社労士に依頼することも検討してください。

社労士クラウドなら「社会保険・労働保険などあらゆる手続き」を顧問料なしのスポット(単発)で簡単かつ迅速にお手続きできます。

お困りの場合は、公式LINEまたはChatworkにて社会保険に関するご質問を受け付けていますので、お気軽にご相談ください。

36協定とは?

36(サブロク)協定とは、労働基準法第36条に基づき、企業が法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える時間外労働や法定休日の労働を従業員にお願いする際に締結が必要な労使協定です。この協定を労働基準監督署へ届け出ることで、企業は労働時間の延長や休日労働を合法的に行うことが可能となります。

一方で、36協定を締結していない場合、時間外労働や休日労働を従業員に命じることは法律で禁止されています。違反があった場合には罰則が科される可能性があるため、適切な締結と運用が重要です。

36(サブロク)協定とは?時間外労働の上限規制を基本からわかりやすく社労士が解説

残業時間の上限は月45時間、年間360時間が原則)

36協定に基づく時間外労働の上限は、原則として月45時間・年間360時間と定められています。この基準を超えて時間外労働を行う場合には、特別条項付きの36協定を締結する必要があります。ただし、この特別条項の適用には以下の厳格な制約が設けられています:

  • 時間外労働が年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
  • 2~6カ月の平均で時間外労働と休日労働の合計が月80時間以内
  • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6回まで

建設業ではこれまで、時間外労働の上限規制が適用除外となっていましたが、2024年4月からは他業種と同様の規制が適用されました。この変更により、労務管理の見直しや現場ごとの新たな対応が必要になります。

これらの規制は、長時間労働が労働者の健康に与える悪影響を防ぎ、適正な労働環境を整備する目的で設けられています。特別条項を活用する際も、規定を超えないよう慎重に対応し、法令順守を徹底することが重要です。

建設業で猿予期間が設けられた理由

建設業において、2019年の労働基準法改正により導入された時間外労働の上限規制については、2024年3月31日まで5年間の適用猶予が設けられていました。この猶予措置の背景には、建設業特有の労務管理上の課題が深く関係しており、他業種と同じ基準を直ちに適用することが現実的ではなかったという事情があります。

建設業は、天候や資材の納入遅れ、工期の変更といった予測困難な外的要因に大きく左右される業界です。このため、工程が計画通りに進まないことが頻繁に発生し、法定の時間外労働の上限内で業務を完了させることが困難な状況がしばしば見られます。そのため、他業種と同じ規制を即時適用するのは難しいと判断され、特別に猶予期間が設けられました。

さらに、建設業では、長時間労働の慢性化や休日取得率の低さといった問題が長年指摘されてきました。国土交通省の調査によると、建設業の年間出勤日数は他産業よりも約30日多く、労働時間が長くなりがちな状況が常態化しています。また、人材不足、高齢化、後継者不足といった構造的な問題も深刻であり、これらの要因が働き方改革の進展を妨げていました。

こうした背景を踏まえ、猶予期間中には企業に対して、労務管理体制の整備や労働環境の改善といった課題への対応が求められていました。しかし、多くの企業で準備不足が指摘されるのが現状のようです。

建設業における36協定と時間外労働の上限規制の影響

建設業界において、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されるようになりました。これにより、法定労働時間を超える労働の管理が厳しくなるとともに、労務管理の透明性が求められます。上限規制が建設業に与える影響について、具体的なポイントを解説します。建設業特有の事情を踏まえた運用方法や注意点についても説明していきますので、適切な対応に役立ててください。

時間外労働時間に罰則付きの上限規制が適用された

2024年4月以降、建設業にも時間外労働に関する罰則付き上限規制が適用されました。この規制では、1か月の時間外労働は45時間以内、年間では360時間以内が原則とされており、これを超える労働は認められません。また、休日労働も含めた「時間外休日労働時間数」が計算対象に含まれるため、これまで以上に労働時間の管理が複雑化しています。

特に建設業では、天候や資材供給の遅延、工期変更といった予測困難な要因が多く、従来の運用体制では規制への対応が難しい場合もあります。そのため、労働基準法に基づいた勤怠管理システムの導入や、労務管理方針の見直しが必要不可欠です。

さらに、時間外労働の上限規制を守らなかった場合、企業は行政指導や罰則の対象となります。罰則内容としては、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。このようなリスクを回避しつつ、従業員の健康を守るためにも、早急な対応と適切な管理が求められます。

36協定における残業時間の上限(月45時間/年360時間)や超えたらどうなる?社労士が解説

36協定の特別条項を締結しても上限規制は超えられない

特別条項付きの36協定を締結することで、臨時的な特別な事情が発生した場合に限り、月45時間・年360時間の時間外労働の上限を一時的に超えることが可能です。しかし、建設業においても、特別条項付きの36協定には厳格な上限規制が課されています。

具体的には以下の条件を守る必要があります。

  • 時間外労働は年720時間以内
  • 休日労働を含む1か月あたりの時間外休日労働の合計が100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計が2~6か月平均で80時間以内
  • 月45時間を超える時間外労働は年6回まで

これらの条件を超えた場合、労働基準法違反となり、罰則が科されます。また、この特別条項は、臨時的で特別な事情に限定され、恒常的な長時間労働を認めるものではありません。

この規制により、建設業界でも労働者の健康管理が強化され、長時間労働の抑制が期待されています。特別条項を活用する際は、労使間での十分な協議と計画が不可欠であり、法定の範囲内での適切な運用が求められます。

36協定の特別条項とは?時間外労働時間の上限や注意点を解説

災害時の復興・復旧事業には例外規定が適用される

建設業では、災害時の復興・復旧事業に従事する場合、時間外労働の上限規制に例外規定が適用されます。この例外規定は、緊急対応が必要な災害復旧作業において、通常の上限規制を一部適用外とすることで迅速な対応を可能にするものです。

具体的には、以下の点で上限規制が除外されます。

  • 時間外労働と休日労働の合計における月100時間未満の規制が適用されない
  • 2~6か月平均80時間以内の規制も適用されない

ただし、年間720時間以内という上限規制は適用されるため、無制限に労働時間を延長することはできません。また、この例外規定を適用する際には、労働基準監督署への事前届出が必要であり、緊急対応の必要性を証明することが求められます。

例外規定の適用において最も重要なのは、従業員の安全確保です。災害復旧事業は緊急性が高いものの、過労や安全管理の不備があっては本末転倒です。そのため、労務管理を徹底し、適法かつ効率的に現場運営を進めることが不可欠です。

災害復旧事業における例外規定は、労働者の負担を軽減しつつ、現場対応を円滑に進めるための重要な仕組みです。適切な活用を通じて、法令順守と効率的な業務運営を両立することが求められます。

上限を超えて残業できないだけでなく、罰則も科される

2024年4月以降、建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、これを違反した場合には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金といった罰則が科されます。また、悪質な違反と判断されるケースでは、厚生労働省によって企業名が公表される可能性もあります。このような場合、企業の社会的信用が大きく損なわれ、事業継続に支障をきたすリスクがあります。

特に建設業では、従来の慣習的な労務管理が原因で違反が発生しやすい環境があるため、法令に基づく適切な労務管理体制の整備が急務となっています。時間外労働の上限を超えないよう、事前の計画や勤怠管理システムの導入を検討することが必要です。

さらに、企業が労働時間管理を徹底することは、罰則の回避だけでなく、従業員の健康を守り、職場環境を改善する重要なステップです。違反リスクを軽減するためには、36協定の適正な締結と運用を行い、必要に応じて社労士などの専門家のサポートを受けることを検討しましょう。

36協定の特別条項とは?時間外労働時間の上限や注意点を解説

【注意】月60時間超の時間外労働に適用される割増賃金

2024年4月以降、建設業でも月60時間を超える時間外労働に対して、割増賃金率が50%に引き上げられます。この規定は、長時間労働の抑制と労働者の健康保護を目的としたものであり、企業にとっては人件費負担の増加に直結する重要なポイントです。

ただし、中小企業に対しては猶予期間が設けられており、適用時期が異なるため、各企業が自社の適用タイミングを確認することが必要です。また、残業が深夜時間帯(22時~翌5時)に及ぶ場合には、50%の時間外割増賃金に加えて、25%の深夜割増賃金が適用され、合計75%の割増率となります。

この規定に対応するため、企業は以下の対策が求められます。

  • 労働時間管理を強化し、不要な時間外労働を減らす
  • 就業規則や賃金規定を最新の法令に基づいて見直す
  • 勤怠管理システムを導入し、正確な労働時間記録を行う

適切な労務管理を行うことで、労働環境の改善とともに、企業のコスト管理や法令遵守も実現可能です。この割増賃金規定の適用は、労使双方にとって負担と利益の両面があるため、慎重な運用が求められます。

社会保険 【社労士監修】36協定とは?割増賃金や残業に関する知識を分かりやすく解説

建設業の36協定届における新様式の書き方と記載例

2024年4月以降、建設業においても36協定が厳格に適用されることとなり、法令遵守が一層求められるようになります。この変化に伴い、36協定届の新様式が導入され、適切な届出作成が企業の義務となりました。

建設業界では、労働時間の柔軟な管理と、法定範囲内での時間外労働の適正な運用が重要です。

以下で、36協定届の新様式の種類とその記載方法、注意点について具体的に解説します。

建設業の36協定届における新様式の種類と条件

2024年4月以降、建設業でも時間外労働の上限規制が適用されるようになり、それに伴い36協定届の様式選択がより重要になりました。

業務内容や時間外労働の状況に応じて、以下の4種類の様式から適切なものを選択する必要があります。

残業の内容36協定届の様式
月45時間を超えない残業様式9号
月45時間を超えない残業で、災害時の復旧・復興対応が見込まれる場合様式9号の3の2
月45時間を超える残業様式9号の2
月45時間を超える残業で、災害時の復旧・復興対応が見込まれる場合様式9号の3の3

これらの様式は、時間外労働や休日労働の内容に応じて使い分ける必要があります。また、災害時の復旧・復興事業が含まれる場合には、特別条項を適切に追加した様式を選択することが重要です。

以下のフローチャートを活用することで、自社の業務に最適な様式を迅速に判断することができます。

引用元:令和6年(2024年)4月1日以降の建設の事業における36協定のフローチャート | 厚生労働省

注意点として時間外労働や休日労働が発生しない場合は、36協定の締結は不要です。しかし、一度でも時間外労働や休日労働が発生する場合は、適切な様式を選択し、届け出る必要があります。

一般条項の書き方と注意点

一般条項は、「時間外労働が月45時間・年360時間を超えない」かつ「災害時における復旧・復興の事業が含まれない」場合に使用される形式です。他の業界と同様の一般条項の36協定届を用いることが可能です。この形式は、適切な労働時間管理と法令遵守を実現するための基本的な文書であり、作成時には細心の注意が必要です。

この一般条項の様式の正式名称は「時間外労働・休日労働に関する協定届(一般条項)様式第9号」です。一方、災害時の復旧・復興の事業が含まれる場合には、「時間外労働・休日労働に関する協定届【建設事業(災害時における復旧及び復興の事業)を含む場合】(一般条項)様式第9号の3の2」を使用する必要があります。

以下に、一般条項の記載時に留意すべきポイントを詳しく解説します。

1. 事業所の情報を正確に記入

事業所名、所在地、労働保険番号など、すべての情報を正確に記載します。複数の支店や現場がある場合は、それぞれの事業所ごとに分けて記入する必要があります。情報が古い場合、届出が無効となる可能性があるため、最新の情報を確認してください。

2. 時間外労働を行う具体的な理由を記載

時間外労働が必要となる具体的な理由を簡潔かつ明確に記載します。

記載例:「追加発注への対応」や「急な仕様変更による工期切迫」

抽象的な記載ではなく、具体性を持たせることが重要です。記載内容が曖昧だと審査に時間がかかる場合があります。

3. 業務の種類を明確に記載

従業員が従事する業務を具体的に分類し、記載します。

記載例:「施工管理」「設計」「事務処理」など

業務内容を明確に記載し、曖昧さを避けることで監督署での手続きがスムーズになります。

4. 延長可能な時間数を具体的に記載

1日、1か月、1年ごとに延長可能な時間数を記載します。

記載例:1日につき「2時間」、1か月につき「30時間」など

設定する時間は法定範囲内で、現場の実情に合ったものにする必要があります。

5. 労使協定の有効期間を設定

協定の有効期限は1年以内とし、期限が切れる前に更新手続きを行います。有効期限が過ぎると協定が無効となるため、期限管理を徹底しましょう。

6. 労働者代表の選任方法と署名

労働者代表の選任方法を記載します。

記載例:投票による選出、話し合い、立候補など

署名・押印:労働者代表が署名・押印を行うことで、協定の効力が確保されます。

一般条項の記載において、ミスや不足が発生すると労働基準監督署で36協定届が受理されない可能性があります。また、災害時の復旧・復興の事業が含まれる場合には、「様式第9号の3の2」を使用する必要があります。適切な様式を選択し、現場ごとの状況に応じた記載を行うことが、法令遵守と労働環境の整備につながります。

正しい記載方法と注意点を押さえることで、36協定届の作成・提出をスムーズに進めることができます。

特別条項付きの書き方と注意点

特別条項付きの様式は、臨時的な事情で月45時間を超える時間外労働が必要になる場合に使用される形式です。この形式では、労働基準法が定める上限を超える時間外労働を適用するための詳細な条件や手続きが求められます。

正確な記載が求められる重要な文書であり、不備があると届出が却下される可能性があります。

特別条項の様式には、以下の正式名称があります。

  • 通常の場合:「時間外労働・休日労働に関する協定届(特別条項)様式第9号の2」
  • 災害時対応の場合:「時間外労働・休日労働に関する協定届【建設事業(災害時における復旧及び復興の事業)を含む場合】(特別条項)様式第9号の3の3」

適切な様式を選択し、正確に記載することで、36協定の届出がスムーズに進みます。各現場の状況に応じた文書作成を行い、労働基準監督署での手続きを確実に行いましょう。

以下に、特別条項付きの記載時に留意すべきポイントを詳しく解説します。

1. 臨時的な事情の具体的内容を記載

  • 記載例
    • 「納期の逼迫による対応」
    • 「大規模災害の復旧作業」
  • 注意点:具体的かつ詳細に理由を記載し、抽象的な表現を避けます。これにより、審査の遅延を防ぐことができます。

2. 時間外労働の上限を明確に記載

  • 上限基準
    • 1か月の上限:100時間未満
    • 2~6か月平均の上限:80時間以内
  • 記載例:特別条項の適用期間中における具体的な上限時間を明記し、基準を遵守します。

3. 適用回数を記載

  • 制限:特別条項の適用回数は年間6回以内とされています。
  • 記載例:年間適用回数を具体的に記載し、適用条件を明確にします。

4. 限度時間を超えて労働する際の手続き

  • 記載例
    • 「事前に直属の上司に報告し、承認を得る」
    • 「労働者代表への通知を行う」
  • 注意点:具体的な手続きフローを明確に記載することで、労働基準監督署での確認がスムーズになります。

5. 健康および福祉の確保措置を記載

  • 対応策
    • 医師による面接指導
    • 深夜業の回数制限
    • 勤務間インターバルの確保(終業から始業まで一定時間の休息を確保)
    • 代償休暇の付与
  • 目的:労働者の健康を守り、長時間労働によるリスクを軽減する措置を詳細に記載します。

6. 割増賃金率と延長時間数を記載

  • 記載内容
    • 「限度時間を超えた労働にかかる割増賃金率」
    • 「延長可能な時間数(1日・1か月・1年単位)」
  • 注意点:記載漏れがあると、協定の効力が無効になる可能性があるため注意が必要です。

記載時によくあるミスとその修正例

36協定届の作成では、記載ミスが原因で労働基準監督署での届出が受理されないケースが少なくありません。以下に、よくあるミスとその修正方法を具体的に解説します。

1. 労働者代表の選任方法の記載漏れ

  • ミス例:選任方法の記載がない、または「選任方法:〇〇」と抽象的に記載。
  • 修正例:「全従業員の過半数による投票で選任」など、具体的な選任手続を記載。

2. 時間外労働の上限時間の誤記

  • ミス例:「月45時間」を「月50時間」と誤って記載。
  • 修正例:法定範囲内に修正し、「月45時間、年間360時間以内」と明確に記載。

3. 事業所情報の不備

  • ミス例:労働保険番号や所在地の一部が未記入。
  • 修正例:事業所名、所在地、労働保険番号など、最新の情報を追記。

4. 延長可能時間数の記載不足

  • ミス例:「延長時間数」の記載が「適宜」と抽象的。
  • 修正例:「1日2時間、1か月45時間」など、具体的な数値を明記。

記載ミスを防ぐためには、以下のポイントを押さえましょう。

  1. 厚生労働省の記入例を確認する
     公式ガイドラインや記入例を参照することで、適切な書式を理解できます。
  2. ダブルチェックを徹底する
     記載後に労務担当者や労働者代表とともに内容を再確認。
  3. 専門家のサポートを活用する
     社会保険労務士に相談することで、不備を未然に防ぐことが可能です。

正確な記載は、法令遵守と労使間の信頼構築に直結します。適切な手順で36協定届を作成し、スムーズな届出を目指しましょう。

建設業の36協定の締結から提出までの流れ

2024年4月以降、建設業も時間外労働上限規制の対象となり、36協定の適切な締結と提出が求められます。

以下では、締結から提出、従業員への周知までの流れをわかりやすく解説しています。

特に建設業に特有の注意点にも触れていますので、スムーズに手続きを進める参考にしてください。

労働者代表または組合と労使協定を締結する

36協定の締結には、労働者代表または労働組合との協定が不可欠です。
労働基準法では、時間外労働や休日労働を実施する場合、労働者との合意が必要とされています。

以下の手順を参考に締結を進めましょう。

  1. 労働者代表の選任
     従業員の過半数による投票や話し合いで代表を選任します。透明性の確保が重要です。
  2. 協定内容の策定
     残業の上限時間や特別条項の有無など、具体的な内容を労働者代表と協議して決定します。
  3. 労働者代表の署名・押印
     協定内容が決定したら、労働者代表の署名と押印を得て締結を完了させます。

労働者代表の選任に不備がある場合、協定自体が無効となる可能性があります。また、建設業の場合、災害時の復旧・復興業務を考慮した内容を事前に盛り込むことも重要です。

36協定届を作成し、所轄の労働基準監督署長へ提出する

36協定届の作成と提出は、締結後の重要なステップです。
提出しなければ、協定の効力が認められず、時間外労働や休日労働が法的に実施できなくなります。以下の手順に沿って進めましょう。

  1. 協定届の作成
     一般条項または特別条項付きの様式を選び、必要事項を正確に記載します。
  2. 必要書類の確認
     労働者代表の署名が入った36協定書を添付することが求められます。
  3. 労働基準監督署長への提出
     協定締結後、速やかに所轄の労働基準監督署に届け出ます。提出期限を守ることが重要です。

記載漏れや内容の不備がある場合、届出が受理されないことがあります。公式ガイドラインや記入例を参考に、正確に作成しましょう。

従業員へ36協定締結完了を周知

36協定の締結内容は、すべての従業員に周知する義務があります。
従業員が内容を理解していないと、労働環境のトラブルに発展する可能性があります。

周知する方法として例えば以下の方法があります。

  1. 掲示や回覧
  2. 説明会の開催
  3. 社内マニュアルへの追加

周知が不十分だと、従業員から不満が出る可能性があります。労使間の信頼関係を築くためにも、周知方法には工夫を凝らしましょう。

【注意】建設業の36協定は現場ごとに提出する

建設業では、36協定を現場ごとに届け出る必要があります。特に複数の現場を管理している企業では、それぞれの現場で異なる労働条件や労務管理の状況に基づいた協定を締結し、適切に届け出ることが求められます。

各現場での労働時間の実態を詳細に把握し、それに基づいて協定内容を策定することが重要です。例えば、工期や作業内容が異なる場合には、それぞれの現場ごとに労働時間の上限や特別条項の適用条件を反映する必要があります。

さらに、現場が異なる地域に所在する場合は、それぞれの現場を所管する労働基準監督署に届け出を行わなければなりません。本社や事業所で労務管理をまとめている場合であっても、現場単位での管理が必要とされる場合は、現場ごとの届け出が必要です。

現場ごとに届け出を怠ると、労働基準法違反とみなされる可能性があり、監督署からの是正指導や罰則の対象となることがあります。

また、災害復旧業務などの特例が適用される場合には、その旨を協定に正確に記載し、適切な様式を使用することが求められます。このような注意点を踏まえ、適切に手続きを進めることで法令遵守を徹底し、現場ごとの労働環境を整えることが可能です。

建設業が36協定を遵守するための対策

2024年4月の法改正により、建設業も36協定の対象となり、時間外労働の上限規制が適用されます。この改正により、建設現場における労働時間管理の徹底と、従業員の健康を守るための対策が急務となっています。特に、長時間労働の是正や労働環境の改善は、法令遵守だけでなく、現場の生産性向上にもつながります。

ここでは、36協定を遵守するための具体的な対策を3つご紹介します。

勤怠管理システムの導入で長時間労働を是正

建設業では、直行直帰や現場ごとの業務が多いため、従業員の労働時間を正確に把握するのが難しい場合があります。そこで、勤怠管理システムを導入することは、労務管理を効率化し、長時間労働を是正するための有効な手段となります。このシステムにより、リアルタイムで労働時間を記録・管理し、36協定の上限規制に確実に対応することが可能です。

例えば、クラウド型の勤怠管理システムを利用すれば、従業員が現場でスマートフォンやタブレットを使って出退勤を記録できます。これにより、事務所に戻らずに勤怠を打刻できるため、正確な労働時間の把握が可能になります。また、上限時間を超えそうな場合に自動でアラートを発する機能もあり、残業や休日労働の抑制につながります。

さらに、勤怠管理システムは、労働基準監督署への届出書類の作成にも役立ちます。正確なデータに基づいて書類を効率的に作成でき、記載ミスを防止できる点が大きなメリットです。これにより、労務管理の負担が軽減され、企業は法令遵守を徹底しながら、従業員の健康を守る環境を整備することができます。 

労働時間を短縮する取り組みを実施する

労働時間の短縮は、36協定を遵守するだけでなく、従業員の負担軽減や生産性の向上にも直結します。建設業においては、従来の作業工程を見直し、業務効率化を進めることが重要です。

例えば、重複した作業を削減するための標準化マニュアルの作成や、ICT技術を活用した自動化ツールの導入が挙げられます。これにより、作業時間を削減しながらも品質を保つことが可能です。

また、工期の調整も労働時間短縮には欠かせません。計画段階から無理のないスケジュールを立て、従業員の過剰な残業を抑える体制を整えることが求められます。従業員が自己管理しやすい仕組みを導入し、時間外労働の発生を未然に防ぎます。これにより、長時間労働を抑制しつつ、36協定の規定を遵守する環境を構築できます。

さらに、従業員のスキルアップを図ることで、少人数でも効率よく作業を進められる体制を整えることが労働時間短縮に寄与します。研修や資格取得支援を積極的に行い、一人ひとりの生産性を向上させることが長期的な改善策となります。このように多角的な取り組みを実施することで、36協定を遵守しながら働きやすい環境を実現していきましょう。

働き方改革における週休2日制の推進

週休2日制の導入は、建設業において従業員の健康管理と働きやすさを向上させる有効な施策です。これにより、長時間労働の削減や、従業員の疲労軽減を図ることができます。特に建設現場では、労働環境が過酷になりやすいため、計画的に休日を設定することが重要です。従業員が十分な休息を取ることで、業務効率や現場での安全性も向上します。

また、週休2日制は企業の魅力を高める施策としても注目されています。週休2日制を導入している企業は、求職者にとって魅力的に映り、優秀な人材を確保しやすくなります。さらに、従業員の定着率が向上し、採用や研修にかかるコストを削減できることも大きなメリットです。結果として、労働環境の整備は企業の成長にも寄与します。

国土交通省や日本建設業連合会も、建設業における週休2日制の普及を目指して具体的な施策を推進しています。例えば、「4週8閉所」の実現や試行工事の実施、適正な工期設定を促すガイドラインの策定などが挙げられます。これらの施策を活用し、自社に合った形で週休2日制の導入を検討することが、持続可能な労働環境の実現につながるでしょう。

建設業の36協定のことでよくあるQ&A

建設業界における36協定の適用が本格化する中、多くの事業者や労務管理者が疑問を抱くポイントが増えています。ここでは、建設業に特有の労働環境や法改正に関連したよくある質問に回答し、法令遵守と労働環境改善の参考となる情報を提供します。実際の現場で直面する具体的な課題についてもわかりやすく解説します。

直行直帰の移動時間は労働時間に含まれるのか?

直行直帰の移動時間が労働時間に含まれるかどうかは、「使用者の指揮命令下にあるか」が判断基準となります。労働基準法では、労働時間とは労働者が使用者の指示に従って業務に従事している時間と定義されています。

例えば、現場へ移動する途中で、会社から指示を受けた特定の業務を遂行する場合は労働時間に含まれる可能性があります。一方、単に自宅から現場へ移動するだけであれば、それは「通勤時間」とみなされ、労働時間には含まれません。

具体例として、会社が「事務所に7時に集合し、現場Aに向かう」と指示した場合、事務所に到着した時点から労働時間が開始されると考えられます。また、移動中の車内で打ち合わせや作業の段取りを行う場合も、労働時間とされることが一般的です。

ただし、労働時間に該当するかどうかの判断が曖昧な場合も多く、トラブルを防ぐためには、移動時間について事前に会社の規定を明確にしておくことが重要です。さらに、労務管理システムを活用して移動時間の記録を正確に行い、透明性を確保することが推奨されます。

災害時の特別条項はどのように適用されるのか?

災害時には、36協定の特別条項が適用されることがあります。この特例措置により、緊急性の高い復旧や復興作業を進めるため、労働時間の上限が一時的に緩和されることが認められています。

特別条項は、労働基準法に基づき使用者と労働者の間で締結される協定で、労働者代表の同意を得て適用されます。災害時の復旧作業は、住民の安全確保や社会インフラの再建など、迅速な対応が求められるため、通常の労働時間規制を超える作業が必要になる場合があります。

例えば、地震や台風などの大規模災害後に、道路や橋梁の修復、倒壊した建物の撤去作業が急務となった場合、特別条項を適用することで、法定の時間外労働の上限を超える労働が認められます。ただし、この場合でも労働者代表の合意を得た協定書の締結が必要であり、労働時間の記録を正確に管理することが求められます。

災害時の特別条項は、緊急事態において迅速な対応を可能にする重要な規定です。しかし、適用する際には、法定手続きを遵守し、労働者の健康と安全を守るための十分な配慮が欠かせません。特別条項を適切に活用しつつ、安全かつ効率的な作業環境を確保することが、企業の責任と言えるでしょう。

まとめ:建設業も36協定を締結して上限規制を守ろう

2024年4月より、建設業にも36協定の時間外労働の上限規制が適用され、法令遵守が一層求められるようになりました。これまでのように36協定を締結すれば無制限に残業が可能だった時代は終わり、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働が厳格に管理されることとなります。

特に建設業界では、長時間労働や休日不足が長年課題とされてきたため、法令遵守と労働環境の改善が一層求められます。

元請け・下請けを問わず、従業員を雇用するすべての建設業者は、自社の労働実態を踏まえた36協定の締結が必須です。

今後、建設業者には以下の取り組みが求められます。

  • 自社の労働実態に基づいた36協定の締結
  • 工期の平準化を通じた労働時間の適正化
  • 現場や従業員ごとの正確な労働時間の把握

特に経営者や人事労務担当者は、新しい36協定届の様式に合わせた正確な書類作成や記載のポイントを押さえ、上限規制に対応するための準備を進めることが重要です。

36協定の適正な運用は、法的リスクの回避にとどまらず、従業員の定着率向上や企業のイメージアップにもつながります。また、週休二日制の導入や働き方改革の推進を通じて、健全で生産性の高い職場環境を築くことが期待されます。

労務管理に不安を感じる場合は、専門家である社労士に相談し、的確なサポートを受けながら対応を進めるのも効果的です。法令を遵守しつつ、従業員が安心して働ける環境づくりに取り組みましょう。

社労士の顧問料の費用相場 社労士との顧問契約の必要性・顧問料の相場・サポート内容・メリットデメリットを徹底解説

生島社会保険労務士
生島社会保険労務士

社労士クラウドなら「社会保険・労働保険などあらゆる手続き」を顧問料なしのスポット(単発)で簡単かつ迅速にお手続きできます。

お困りの場合は、公式LINEまたはChatworkにて社会保険に関するご質問を受け付けていますので、お気軽にご相談ください。

最安値の社会保険手続きをするなら

全国のあらゆる社会保険手続きと労務相談を「顧問料なしのスポット」で代行するWebサービス社労士クラウド
懇切丁寧 ・当日申請・全国最安値価格| 1,800社以上の社会保険手続き実績|