役員賞与を損金として算入するには、事前確定届出給与の届出申請が必要です。この手続きを怠ると、税務上の損金算入が認められず、結果的に法人税負担が高くなる可能性があります。
損金とは、会社の利益から控除できる経費であり、損金算入が認められることで、会社の法人税負担を軽減することが可能です。
この記事では、役員賞与を事前確定届出給与として損金算入するための届出手続きや、注意すべきポイントについて詳しく解説します。
提出期限を守り、役員賞与を効果的に活用し、税務面でのメリットを最大化する方法について知りたい方は、ぜひお読みください。
役員賞与を税務上の損金に算入するためには、事前確定届出給与としての申請が必要です。事前確定届出給与とは、役員に対して「いつ」「いくら」を支給するかを事前に決定し、所轄の税務署に届出を行うことで、確定した金額が損金として認められる制度です。
一般の従業員の賞与とは異なり、役員賞与が損金算入されるには一定の要件を満たす必要があります。この条件を満たせない場合、税務上の損金として扱われません。事前確定届出給与は、あらかじめ定めた金額を指定日に支給することで、非常勤役員の報酬にも活用されています。
これにより、法人税の負担を軽減できるメリットがありますが、届出の内容や手続きには細かい規定があるため、十分な理解が必要です。
具体的な条件やメリット・デメリットを以下で詳しく見ていきましょう。
損金算入される役員賞与の条件
役員賞与を損金算入するためには、事前確定届出給与として申請し、厳格な条件を満たす必要があります。
まず、賞与額や支給時期を事前に株主総会で決議し、その内容を議事録に記載することが求められます。また、税務署への届出も必要で、事前に確定した内容通りに支給されることが重要です。
支給額や支給方法に変更が生じた場合、税務上の損金認定が否認される可能性があるため、十分な計画が求められます。
事前確定届出給与のメリットとデメリット
事前確定届出給与には、主に2つのメリットがあります。
■メリット
- 税務上の損金として認められること
事前確定届出給与として認められた役員賞与は、税務上の損金に算入できるため、法人税の節税効果が期待できます。 - 事業年度内の支出計画を管理しやすくなること
事前に決定した賞与額に基づき支給を行うため、事業年度内の支出管理が容易になり、経営計画も立てやすくなります。
■デメリット
- 支給内容の変更で損金算入が否認されるリスクがあること
支給額や支給内容が事前の決定から変更された場合、税務上の損金認定が取り消される可能性があります。 - 届出の提出期限を厳守する必要があること
届出を期限内に提出しない場合、税務上の優遇措置を受けられなくなるため、手続きのタイミングに注意が必要です。
役員賞与を損金算入するためには、事前に税務署に届出を行う必要があります。この手続きは期限内に行わなければ損金として認められないため、事前確定届出給与として正しく申請するための流れを押さえておきましょう。
以下で具体的な手続きのステップと重要なポイントを解説します。
事前確定届出給与の届出の提出期限はいつまで?
事前確定届出給与の届出は、いくつかの条件に基づいて提出期限が設定されています。一般的な基準は、以下の2点です。
- 株主総会などの支給決議をした日から1か月以内
- 事業年度開始の日から4か月以内
通常、役員賞与の支給に関する決議をした日から1か月以内に届出書を提出する必要があります。ただし、決議日が職務執行開始日後である場合や、特定の臨時改定事由が発生した場合など、ケースによって異なる期限が適用されることがあります。
各条件を確認し、適切な時期に提出できるよう注意が必要です。
たとえば、事業年度が10月1日に始まる法人であれば、株主総会での決議が行われた日から1か月以内、もしくは事業年度の開始から4か月以内に提出する必要があります。
新設法人の場合は、設立日から2か月以内が提出期限となります。
事前確定届出給与の届出の提出までの流れ
事前確定届出給与を損金算入するには、適切な手続きを踏む必要があります。
主な流れとしては、株主総会での決議、議事録の作成、そして税務署への届出書の提出があります。それぞれのステップについて、以下で解説します。
最初に、役員賞与の金額や支給日を株主総会で決議します。ここで決まった内容を議事録として記録することが重要です。議事録は税務署に届出をする際の証拠書類となるため、決議の内容を正確に反映し、形式にも注意しましょう。
まず、株主総会において役員賞与の金額や支給日を決定し、決議の内容を議事録に記録します。議事録は税務署への提出時に証拠書類として使用されるため、内容を正確に記載することが求められます。
株主総会で役員賞与の支給額や支給日を決定し、議事録を作成した後は、速やかに税務署に事前確定届出給与の届出書を提出します。この届出書がないと、役員賞与を税務上の損金として認めてもらえないため、必ず期限内に提出することが重要です。
届出書には、役員賞与の支給日や支給額を具体的に記載する必要があります。支給日や支給金額が明確でない場合、税務署において認められない可能性があるため、1円単位で正確に記載しましょう。また、提出する際は、納税地を所轄する税務署に直接持参するか、郵送での提出が可能です。
届出書と併せて提出する付表には、株主総会で決議した内容と一致する支給日と支給額が求められます。提出後に内容を変更した場合、損金算入が否認されるリスクがあるため、事前に決定した通りに支給することが必要です。提出後に疑問が生じた場合や修正が必要な場合は、事前に税務署へ相談することをお勧めします。
事前確定届出給与に関する定めを変更する方法
事前確定届出給与に関する内容を変更する際も、事前に税務署への届出が必要です。
たとえば、支給額や支給日を変更する場合、再度株主総会での決議と議事録の作成を行い、変更内容を税務署に届け出なければなりません。届出をしないまま変更を行うと、損金算入が認められなくなる可能性があるため、慎重に手続きを進めることが重要です。
特に、「臨時改定事由」に該当する場合は、変更事由発生から1か月以内に届出を行う必要があります。
臨時改定事由とは、役員の職制上の地位変更や職務内容の重大な変更など、役員給与の変更がやむを得ない事情に基づく場合を指します。この場合、株主総会での決議を行い、その内容を記載した変更届出書を提出します。
既に事前確定届出給与を届出ている法人が賞与の内容を変更する場合、変更手続きを確実に行うことで、税務上のリスクを回避できます。
臨時改定事由や他の理由で変更が必要な場合は、必要な書類や手続きのスケジュールを確認し、適切に対応しましょう。
役員賞与を支給したら5日以内に賞与支払届を提出する
役員賞与を実際に支給した場合は、支給日から5日以内に「賞与支払届」を提出する義務があります。これは社会保険の観点から必要な手続きであり、遅延すると罰則が科される可能性もあるため、必ず期限を守りましょう。賞与支払届の提出は、主に社会保険料の計算に影響するため、忘れずに行うことが大切です。
賞与支払届については下の記事で詳しく解説しています。
賞与支払届とは?書き方のポイントや記入例、提出先から手続きの流れを解説
事前確定届出給与を適用する際には、支給時期や金額について事前に慎重に検討することが重要です。
事前確定届出給与は届出通りの内容で支給しなければ損金として認められないため、以下の2つのポイントに特に注意が必要です。
・届出は期限内に提出すること
・役員報酬は記載したとおりに支給すること
詳しく解説していきますね。
届出は期限内に提出すること
事前確定届出給与の届出書は、必ず期限内に提出する必要があります。期限を過ぎてしまうと、役員賞与が税務上の損金として認められなくなるため、提出期限を事前にしっかりと確認し、準備を進めておきましょう。
特に、支給決定を株主総会で行った場合は、その決定日から1か月以内の届出が求められます。期限を守ることで、税務上のトラブルを防ぎ、事前確定届出給与を適切に適用することができます。
役員報酬は記載したとおりに支給すること
届出書に記載した支給日と支給金額に従い、正確に支給することも重要です。事前確定届出給与として認められるためには、届出通りに支給が行われることが条件となります。たとえば、届出で支給額を40万円としたにもかかわらず、60万円を支給した場合、60万円全額が損金不算入となるため注意が必要です。また、届出金額より少額を支給した場合も同様に、全額が損金として計上できなくなります。
支給時期についても、届出内容と異なる場合には全額が損金として認められません。
業績変動などの理由で支給額や時期を変更する必要が生じた場合、変更手続きが適切に行われないと、会社の資金計画に悪影響を及ぼす可能性があります。
事前に支給時期や金額を慎重に検討し、計画通りの支給を実行することが重要です。
役員賞与の届出に関する手続きや注意点について、よく寄せられる質問を以下にまとめました。
役員賞与の適用に際して疑問がある場合は、これらの回答を参考にしてください。
役員賞与を支給しない場合の扱いはどうなる?
役員賞与を支給しないことを決定した場合でも、事前に届出を行っていた場合は注意が必要です
支給を行わないことで届出通りの支給が行われなかったと見なされるため、事前に税務署に「役員賞与支給なし」という旨の届出を行うことが求められます。
支給しない理由が臨時改定事由に該当する場合には、その変更内容を適切に報告することで、税務上のトラブルを回避することができます。
役員賞与と役員報酬の違いは?
役員賞与と役員報酬は似ていますが、税務上の取り扱いに違いがあります。
役員報酬は通常、毎月同額が支給される定期同額給与であり、日常の業務遂行に対する報酬です。これに対して、役員賞与は事前確定届出給与として届出を行い、支給日や金額を固定した上で臨時に支払われるものです。
役員賞与は損金算入の条件が厳しく、届出通りに支給されなかった場合は全額が損金不算入となるため、届出の内容に基づいた支給が重要です。
事前確定届出給与の届出が否認されることはありますか?
事前確定届出給与の届出が否認される場合もあります。否認の主な理由には、届出内容と実際の支給が一致しないことや、届出の提出期限を過ぎていることが挙げられます。
たとえば、届出で定めた支給日や支給額が異なった場合や、支給額に端数があるなどの不正確な情報が記載されていた場合には、損金算入が認められなくなることがあります。
届出の際には、正確な情報を記載し、提出期限を守ることが大切です。税務署に事前に確認を取ることも、トラブルを防ぐ一助となります。
賞与は年3回以下、年4回以上で社会保険の手続きが異なる場合があります。
賞与を年4回以上支給する時の社会保険の手続きを年3回以下の場合との違いを含めて解説!
役員賞与を損金算入し、法人税の負担を軽減するためには、事前確定届出給与としての届出が必要です。この届出には、支給日や支給金額を決定し、税務署に期限内に提出する手続きが求められます。届出が受理され、内容通りに支給されることで、役員賞与は税務上の損金として認められ、会社の財務負担を軽減する効果が期待できます。
ただし、届出内容に沿った支給が行われない場合は、損金算入が否認されるリスクがあるため注意が必要です。株主総会での決議内容を正確に反映した議事録を作成し、届出内容に従って支給を行うことで、税務リスクを最小限に抑えることが可能です。
また、役員賞与に関しては多くの規定が存在するため、税理士や社労士などの専門家への相談も視野に入れると良いでしょう。事前に適切な対策を講じて、役員賞与を効果的に活用し、会社の財務安定を図りましょう。
さらに、役員賞与を支給した場合には、支給日から5日以内に「賞与支払届」を年金事務所に提出する必要があるため、この手続きも忘れずに行いましょう。
未提出の場合の対応策や罰則についてのリスクを理解し、万全の準備を進めることが重要です。
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