この記事では、従業員が育児休業をした時に厚生労働省から支給される両立支援助成金の概要(育児休業等支援コース)について解説します。大きくわけて4つのカテゴリに分かれておりますので、まずは全体の把握をざっくりとしましょう。各カテゴリに関しては別途記事を設けておりますので適宜ご参照ください。
「育休復帰支援プラン」を作成し、プランに沿って労働者の円滑な育児休業の取得・職場復帰に取り組み、育児休業を取得した労働者が生じた中小企業事業主に支給します。
A:育休取得時 (育児休業取得者が出た場合)
- 育児復帰支援プランにより支援する措置を実施する旨を、あらかじめ労働者へ周知すること。
- 育児に直面した労働者との面談を実施し、面談結果を記録した上で育児の状況や今後の働き方についての希望等を確認のうえ、プランを作成すること。
- プランに基づき、対象労働者の育児休業(産前休業の終了後引き続き産後休業及び育児休業をする場合には、産前休業。また、産後休業の終了後引き続き育児休業をする場合には、産後休業)の開始日の前日までに、業務の引き継ぎを実施し、対象労働者に、連続3か月以上の育児休業を取得させること。
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B:職場復帰時 (育児休業から復帰した者が出た場合)
「A:育休取得時」の助成金支給対象となった同一の対象労働者について、以下の全ての取組を行うことが必要です。
- 労働者の育児休業中にプランに基づく措置を実施し、職務や業務の情報・資料の提供を実施すること。
- 育休取得時にかかる同一の対象労働者に対し、育児休業終了前にその上司が面談を実施し、面談結果を記録すること。
- 労働者を、原職等に復帰させ、原職等復帰後も申請日までの間、雇用保険被保険者として6か月以上継続雇用していること。
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C:業務代替支援 (育児休業取得者の業務を他の労働者が代替した場合)
- 育児休業取得者を、育児休業終了後、原職等に復帰させる旨を就業規則等に規定すること。
- 労働者が3か月以上の育児休業を取得し、事業主が休業期間中の代替要員を新たに確保する(A)または代替要員を確保せずに業務を見直し、周囲の社員により対象労働者の業務をカバーさせる(B)こと。
- 労働者を上記規定に基づき原職等に復帰させ、原職等復帰後も申請日までの間、雇用保険被保険者として6か月以上継続雇用していること。
D:職場復帰後支援 (育児休業から復帰後の労働者を支援する取組をした場合)
- 育児・介護休業法を上回る「A:子の看護休暇制度(有給、時間単位)」または「B:保育サービス費用補助制度」を導入していること。
- 対象労働者が1か月以上の育児休業から復帰した後6か月以内において、導入した制度の一定の利用実績(A:子の看護休暇制度 は10時間以上(有給)の取得またはB:保育サービス費用補助制度は3万円以上の補助)があること。
対象事業主(共通)
次の条件のすべてに該当する事業主が対象です。
- 中小企業事業主であること
- 育児休業の制度及び育児のための短時間勤務制度について、対象労働者の育児休業(産前休業の終了後引き続き産後休業及び育児休業をする場合には、産前休業。また、産後休業の終了後引き続き育児休業をする場合には、産後休業)開始日の前日までに労働協約又は就業規則に規定していること。
- 一般事業主行動計画を策定し、その旨を都道府県労働局長に届け出ていること。
一般事業主行動計画とは?
両立支援等助成金(出生時両立支援コース及び育児休業等支援コース)においては、次世代法に基づく一般事業主行動計画に関し以下の4つ全てを行うことが支給要件とされています。また、助成金の支給申請時点で行動計画の期間が有効であることが必要です。
- 行動計画の策定
- 社外への公表
- 労働者への周知
- 「一般事業主行動計画策定・変更届」の労働局への届出
助成金の申請には、労働局の受理印がある④「一般事業主行動計画策定・変更届」の写しが必要です。支給申請日時点で①から③のいずれかを実施していないことが判明した場合は、助成金は不支給となります。
- 申請に不備があり、管轄労働局長が事業主等に補正を求める場合の補正期間如何
- 1週間とする。
- 育児休業や介護休業に係る手続きや賃金について、法を上回る運用をしたが、就業規則等に規定はしていない場合、対象となるか。
- 就業規則等に規定化されているものについてのみ対象
- 労働者から口頭により休業の申出が行われ、事業主がこれを認めて休業している場合であっても、支給申請時に育児休業申出書又は介護休業申出書の提出が必要か。
- 原則として、労働者は必要事項を記載した休業申出書により休業を申し出る必要があり、支給申請時には当該休業申出書の写しの添付が必要であるが、上記の場合には休業申出書と同様の内容の申立書を作成し、提出することとして差し支えない。
- 就業規則等に規定の必要がある育児(又は介護)休業制度等については、どのような規定ぶりであれば支給要件を満たしていることとなるか。
- 育児休業制度等については、「育児・介護休業等に関する規則の規定例」の簡易版の記載例程度の具体的な内容の整備が望ましく、かつ、申請日時点においてその内容が法の定める基準に達していることが必要である。
- 一般事業主行動計画の策定及び労働局長への届出並びに計画の公表及び労働者への周知については、いつまでに行われている必要があるか。
- 支給申請日までに行われている必要がある。
- 行政書士が、「提出代行者」又は「事務代理者」として支給申請を行うことは可能か。
- できない。
留意事項
- 国の助成金制度の一つですので、受給した事業主は国の会計検査の対象となることがあります。
- 助成金の支給決定にあたり、事業所の実地調査を行う場合があります。
- 不正受給をしてから5年以内に申請をした事業主は助成金を受給できません。
- 不正受給をしようとする事業主には必ずと言ってよいほど、調査が来ます。あらゆる罰則がありますので絶対にしないように気を付けてください。
両立支援助成金の概要を解説しました。細かいルールや規定に関しては両立支援助成金の各カテゴリごとに記事を作成しておりますので、そちらをご参照ください。
子育て支援に積極的な企業は、福利厚生が整ってる会社として優秀な方にも選ばれやすくなります。まだ子育て支援非対応の中小企業は、両立支援等助成金を積極的に利用して、従業員が仕事を理由に子育てを諦めることがないようにサポートしていきましょう。
また、近年、育児休業を取得しやすい環境の整備も義務化されるなど「家庭と両立できる職場」の整備が法的にも求められています。
各コースの支給金額・要件だけでなく申請時の注意点も解説するので、ぜひ参考にしてください。
生島社労士事務所代表
生島 亮
いくしま りょう
https://syarou-shi.com/18年の会社経営で叩き上げられた人事・労務ノウハウを駆使し、経営者さまと同じ視座で考え、人と企業を育てていくという思いで、労務トラブルや労務リスクの不安の解消を精一杯お手伝いさせていただきます。