算定基礎届は、従業員の社会保険料や将来の年金額を正しく算定するために、事業主が毎年必ず提出しなければならない重要な書類です。しかし、日々の業務に追われていると、提出期限である7月10日をうっかり過ぎてしまうことも珍しくありません。
もし算定基礎届を出さなかったら、年金事務所からの督促や罰則といった法的リスクだけでなく、従業員の将来の年金額にも影響が及ぶ可能性があります。さらに、企業の信用問題に発展しかねないため、労務管理上の大きなリスクとなります。
この記事では、算定基礎届を提出しなかった場合の具体的な影響や、提出期限を過ぎてしまった場合の対処方法を詳しく解説します。あわせて、提出漏れを防ぎスムーズに手続きを行うためのポイントについてもご紹介しますので、最後までぜひご覧ください。
生島社労士事務所代表
生島 亮
いくしま りょう
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算定基礎届は、従業員の社会保険料を正しく計算し、適切に納付するために、事業主が日本年金機構へ提出しなければならない重要な書類です。
この届出は、毎年1回、定められた期間内(毎年7月1日から7月10日まで)に提出する義務があり、従業員の4月、5月、6月の報酬をもとに、その年の9月から翌年の8月までの社会保険料の基準となる「標準報酬月額」を決定するために行われます。標準報酬月額とは、毎月の給与や賞与などの報酬を、等級ごとに区切られた金額にあてはめたものです。この手続きを「定時決定」と呼び、その際に提出するのが「算定基礎届」です。
算定基礎届には、以下のような役割があります。
適正な社会保険料の算出
算定基礎届に基づき、従業員一人ひとりの標準報酬月額が毎年見直され、社会保険料が計算されます。これにより、実態に即した正確な社会保険料を算出でき、従業員と会社は適正な額を納付できます。
従業員の社会保険給付の保護
将来支給される年金額や健康保険の給付額(傷病手当金など)は、標準報酬月額によって決まります。算定基礎届によって標準報酬月額を正確に届け出ることは、従業員が将来、適正な額の給付を受けるために必要です。
算定基礎届の提出を怠ると、標準報酬月額が適正に決定されません。その結果、社会保険料の過不足が生じたり、将来の給付額に影響を及ぼしたりするおそれがあります。そのため、算定基礎届は、企業と従業員の両者にとって、非常に重要な手続きといえます。
算定基礎届の提出期間と提出期限
算定基礎届の提出期間は、原則として毎年7月1日から7月10日までと定められています。
この期間内に、事業主は管轄の年金事務所または健康保険組合に対して、算定基礎届を提出しなければなりません。ただし、7月10日が土曜日または日曜日の場合は、翌月曜日が提出期限となります。
例えば、7月10日が土曜日の場合は、7月12日の月曜日が提出期限になります。 2025年の場合、7月10日は木曜日なので、提出期限は7月10日です。
【社労士監修】社会保険の算定基礎届(定時決定)とは?対象者や提出方法、作成時の注意点をわかりやすく解説
算定基礎届(定時決定)を提出しなかった、または提出が遅れた場合、企業と従業員に影響が及ぶだけでなく、最悪の場合、罰則が科されることもあります。
具体的には、年金事務所からの催促や指導、社会保険料の追徴、さらには法的な罰則を受けるリスクが生じます。
また、従業員の将来受け取る年金額や健康保険給付に影響を与えるほか、企業の信用問題に発展する可能性もあるため、算定基礎届は、期限内に必ず提出しなければなりません。
ここでは、算定基礎届を出さなかった場合の具体的な影響について詳しく解説します。
年金事務所からの催促や是正指導を受ける
算定基礎届の提出期限を過ぎても届出がない場合、管轄の年金事務所から提出の催促を受けることになります。
日本年金機構では、提出期限を過ぎても算定基礎届が提出されていない事業所に対して、電話や文書で連絡をしたり、事業所を訪問したりするなど、さまざまな方法で提出を促しています。
具体的には、提出期限の7月10日を過ぎた後、まず日本年金機構から提出状況の確認の連絡があります。その後も提出が遅れると、年金事務所から「提出のお願い」といった通知が届き、早期の提出を促されます。
再三の催促を受けても提出しなかったり、期限を過ぎても算定基礎届を提出しなかったりすると、最終的には事業所への訪問調査が行われる場合もあるため、迅速な対応が必要です。
年金事務所からの連絡や通知を無視し続けると、年金事務所からの印象も悪くなり、より厳しい対応を受ける可能性も出てきます。
期限内に提出することはもちろん、提出が遅れる場合は、必ず事前に年金事務所に連絡し、遅れる理由を説明して、提出予定日を伝えましょう。
遡って修正手続きをする(社会保険料の未納リスク)
算定基礎届を提出しなかった場合、または提出期限が過ぎてしまった場合、過去の適用漏れ期間について遡って算定基礎届を作成し、最終的には過去の報酬月額に基づき、修正された社会保険料を納付しなければなりません。
これは、算定基礎届の未提出や提出遅延によって、標準報酬月額が前年の9月のまま据え置かれることが原因です。特に、4月、5月、6月の給与の平均が前年の標準報酬月額と大きく異なる場合、本来納付すべき社会保険料との間に差額が生じ、社会保険料の未納が発生するリスクがあります。この場合、従業員の将来の年金額や健康保険給付(傷病手当金など)にも影響があります。
具体的には、提出が遅れた期間の報酬月額や社会保険料額を算出し、納付すべき保険料額を再計算します。また、提出が遅れた理由によっては、年金事務所へ「遅延理由書」の提出が必要となる場合があります。
さらに、社会保険料の納付が遅れた場合は、さかのぼって納付することに加え、延滞金が発生する可能性があるため、注意が必要です。
罰則の適用
算定基礎届の提出義務を怠ったり、虚偽の届出をしたりした場合は、健康保険法第208条および厚生年金保険法第102条に基づき、「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。
また、算定基礎届の提出を怠った場合だけでなく、提出した内容に誤りがあった場合にも、罰則が適用される可能性があります。
例えば、従業員の報酬を実際よりも低く申告した場合は、虚偽の届出とみなされ、罰則の対象となる可能性があります。これは、企業が負担する社会保険料を不当に少なく抑えることが目的であると考えられます。
そのため、事業主は算定基礎届を正確に記入し、期限内に提出することが求められます。
従業員への影響
算定基礎届の未提出や誤った内容の届出は、従業員にも大きな影響を及ぼします。算定基礎届は、従業員の将来の年金額や、病気やケガをした際の健康保険給付(傷病手当金など)の金額を算出する基となる標準報酬月額を決定する上で、重要な役割を担っています。
もし、算定基礎届が提出されなかったり、標準報酬月額が実態より低く設定されたりしたままだと、将来受け取れる年金額が本来よりも少なくなってしまう可能性があります。また、従業員が病気やケガで働けなくなった場合に支給される傷病手当金の金額も、標準報酬月額に基づいて計算されます。
そのため、標準報酬月額が実態より低く設定されていると、傷病手当金の金額も少なくなり、従業員が十分な保障を受けられなくなるリスクがあります。
実際に、事業主が従業員の報酬月額を過少に申告したことで、従業員が適切な傷病手当金を受け取れなかった事例が存在します。
この事例では、事業主が、健康保険の被保険者である従業員の報酬月額を、実際よりも低く年金事務所へ届け出ていました。その後、この従業員が業務外の病気で休業し、協会けんぽへ傷病手当金の支給申請を行いました。
しかし、事業主が報酬月額を本来の金額で届け出ていれば支給されたはずの傷病手当金が、過少申告によって支給されませんでした。このため、従業員が受け取れるはずだった金額との差額について、事業主に損害賠償責任があるかどうかが争点となりました。
この判例(東京地裁平成29年3月16日判決)では、事業主の過少申告がなければ、被保険者が受給できたはずの傷病手当金が受給できなくなったとして、事業主の賠償責任が認められました。つまり、被保険者へ支払うべき金額(本来支給されるべき傷病手当金の額から、過少申告により支給された金額を控除した額)を、事業主が負担することとなったのです。
この事例から、事業主が算定基礎届を適切に提出しなかったり、故意に誤った情報を提出したりした場合、従業員に不利益が生じるだけでなく、事業主自身も法的責任を問われる可能性があることがわかります。
引用:社会保障法判例
企業の信用問題
算定基礎届を提出しないことは、企業の信用問題にも発展する可能性があります。年金事務所から再三の催促を受けてもなお提出を怠ったり、提出期限を過ぎても算定基礎届を提出しなかったりすると、悪質な事業所と判断され、年金事務所からの信用を失うことになります。
その結果、日本年金機構が運営する健康保険や厚生年金保険などの適用事業所の検索システムで、企業情報が公表される可能性もあります。
さらに、算定基礎届の提出義務を怠ることは、法令遵守意識の低い企業とみなされ、取引先や金融機関からの信用も低下するリスクがあります。
特に、新規取引先の開拓や金融機関から融資を受ける際に、社会保険関係の手続きを適正に行っているかどうかは、重要な審査項目の1つです。
加えて、社会保険の適切な管理が行われていないと、従業員からの信頼を失うことにもつながります。算定基礎届は、従業員の将来の年金や健康保険給付に直結する重要な手続きです。その手続きを適切に行わないことは、従業員の将来への不安を招き、企業に対する不信感を生む原因となります。
従業員からの信頼は、企業の持続的な成長に欠かせない要素です。
算定基礎届の提出状況は、企業の信頼性を判断する上で、対外的にも対内的にも重要な指標の1つとなります。
一方的に標準報酬月額が決定されるリスク
算定基礎届を提出しない場合、最終的には年金事務所が職権で標準報酬月額を決定する(職権決定)ことになります。
この場合、実際の給与額や、本来提出すべきであった算定基礎届の内容に関わらず、年金事務所の判断で標準報酬月額が決定されてしまいます。多くの場合、前年の標準報酬月額や、同業他社の平均的な標準報酬月額などを参考に決定されるため、実態よりも高額な標準報酬月額が設定される可能性もあります。
その結果、算出される社会保険料が本来よりも高額になり、企業と従業員の双方にとって、想定外の負担が発生するリスクが生じます。
さらに、年金事務所が決定した標準報酬月額に不服がある場合、不服申し立ての手続きが必要となりますが、原則として決定された標準報酬月額に基づき、修正されるまでの期間の保険料を納付しなくてはなりません。この不服申し立ては、時間と労力を要し、企業にとって大きな負担となります。
このような事態を避けるためにも、算定基礎届は必ず期限内に提出し、正しい標準報酬月額を届け出ることが重要です。
ここでは、算定基礎届の提出が遅れた場合の具体的な対応方法について解説します。
算定基礎届の提出期限は原則として毎年7月10日と定められており、提出を怠ると、社会保険料の計算に影響が生じたり、将来の年金額が減少したりするなど、様々な影響やリスクが生じます。
しかし、万が一、算定基礎届の提出が遅れてしまった場合でも、適切な対応をすることで、それらの影響やリスクを最小限に抑えることが可能です。
年金事務所に連絡し、速やかに算定基礎届を提出する
算定基礎届の提出が遅れたことに気づいたら、まずは速やかに管轄の年金事務所に連絡し、指示を仰ぎましょう。年金事務所に連絡する際は、提出が遅れた理由、現在の状況、そしていつまでに提出できるかを明確に伝えましょう。
例えば、「業務が繁忙期で社会保険の適用や社会保険料の計算などの手続きが後回しになっており、算定基礎届の提出期限を失念していました。現在、大至急作成を進めており、〇月〇日までには提出できます」といった具合です。
特に、中小企業の事業主は、通常業務に加えて社会保険の手続き業務を担うケースが多く、やむを得ない事情がある場合は、その旨を誠実に説明することが大切です。
電話で連絡する際は、以下の情報を伝えられるように準備しておきましょう。
- 事業所の情報(名称、所在地、事業主の氏名など)
- 連絡者の氏名、連絡先
- 社会保険の適用
- 従業員の人数
- 給与の支払い状況
その際、不明点があれば遠慮なく質問し、提出方法や提出期限、必要書類について、指示を仰ぎましょう。
そして、年金事務所へ連絡後は、速やかに算定基礎届を作成し、提出します。 提出期限を過ぎているため、算定基礎届の提出とあわせて「遅延理由書」の提出を求められる場合があります。
算定基礎届の提出が遅れたとしても、年金事務所の指示に従って適切に対応することで、罰則や社会保険料の未納リスクを最小限に抑えられます。
また、不明点や判断に迷うことがあれば、専門家である社会保険労務士に相談することも検討しましょう。
算定基礎届の書き方については下記記事で記入例つきで解説しています。
従業員への対応
算定基礎届の提出遅延により、従業員の社会保険料や将来の給付額に影響が生じる可能性がある場合、企業は従業員に対し、誠実な説明と迅速な対応を行う必要があります。
まず、算定基礎届の提出が遅れた事実と理由を、従業員に丁寧に説明しましょう。
特に、以下の点について明確に伝えることが重要です。
- 社会保険料の決定が遅れること
- 社会保険料が遡って修正される可能性があること
- 将来の年金額や健康保険給付(傷病手当金など)に影響する可能性があること
標準報酬月額の変更により社会保険料の本人負担額が増加する場合は、特に丁寧な説明を心がけ、従業員の不安や疑問を解消することが大切です。
従業員に不利益が生じた場合は、企業側の責任であることを明確に認めた上で、社会保険料の不足分の分割納付を認めるなど、個々の状況に応じた柔軟な対応を検討すると良いでしょう。
また、今回の事態を招いた原因を分析し、再発防止策を検討することも重要です。
例えば、
- 提出期限を事前に把握し、社内でリマインドを行う
- チェックリストを作成し、提出漏れを防ぐ
- 社会保険労務士などの専門家に業務を委託する
などの対策が考えられます。これらの再発防止策を従業員に説明することで、企業の信頼回復に繋がります。
算定基礎届の提出遅れは、企業にとっても従業員にとっても好ましい事態ではありません。しかし、事業主自らが、企業の責任であることを説明し、迅速かつ誠実に対応することで、その影響を最小限に抑え、信頼関係を維持することが可能です。
算定基礎届の提出は、事業主にとって毎年発生する重要な義務です。
しかし、業務が多忙な時期と重なることもあり、うっかり出し忘れてしまったり、提出が遅れてしまったりするケースは少なくありません。 そのため、事前にしっかりと対策を講じ、提出期限を遵守することが重要です。
ここでは、算定基礎届の提出漏れや提出遅れを防ぐための具体的な対策について解説します。
提出期限の確認とリマインダー設定する
算定基礎届の提出漏れを防ぐ最も基本的かつ効果的な方法は、提出期限(原則として毎年7月1日から7月10日)を正確に把握し、リマインダーを設定することです。
まず、提出期限を自社のカレンダーやスケジュール管理システム、例えば、Googleカレンダーなどに登録し、期限の1ヶ月前、2週間前、1週間前など、複数回のリマインダーを設定することが重要です。
このように複数回設定することで、うっかり忘れてしまうリスクを減らすことができます。
また、リマインダーには、提出期限だけでなく、提出に必要な準備作業の期限も設定しておくと効果的です。
例えば、「4,5,6月分の給与データの確認」、「必要書類の準備」、「届出書の作成」など、作業ごとに期限を設定しておきましょう。
届出作成から提出までの流れを理解する
算定基礎届の提出漏れや提出遅れを防ぐためには、提出期限の管理だけでなく、届出の作成から提出までの流れを事前に理解しておくことが重要です。
算定基礎届の大まかな流れは以下のとおりです。
- 日本年金機構からの届出用紙(被保険者報酬月額算定基礎届)の送付(6月中旬)
- 対象者の確認
- 報酬月額の算出
- 算定基礎届の作成と提出
- 日本年金機構からの標準報酬月額決定通知書の送付
2、3,4に関しては届出が送られてくる前にあらかじめ準備を進めておきましょう。
このように、一連の流れを事前に理解しておくことで、必要な準備や作業を把握でき、効率的に手続きを進めることができます。また、過去の提出書類を参考にすることで、記入ミスを防ぎ、スムーズな作成が可能です。
チェックリストを作成する
算定基礎届の提出は、多くの確認事項を伴う複雑な手続きです。そこで、提出漏れや記入漏れ、期限遅れなどのミスを防ぐためには、チェックリストの作成が非常に有効です。
チェックリストには、以下の項目を含めると良いでしょう。
提出対象となる従業員をリストアップしたか
- 提出対象となる従業員を確認したか
- 4月〜6月の報酬を集計し、平均報酬月額を算定したか
- 報酬月額の平均を算出し、健康保険と厚生年金保険それぞれの等級表に当てはめて、標準報酬月額を決定したか
- 書類の記入ミスがないか確認したか
- 添付書類を準備したか
- 電子申請・郵送・持参のいずれかで提出方法を決めたか
このように、チェックリストを活用することで、算定基礎届の提出に関するミスを未然に防ぎ、スムーズな手続きを実現できます。
社労士に相談、代行申請依頼をする
算定基礎届の作成や提出は、専門的な知識を要する複雑な手続きです。特に、報酬月額の計算に必要な対象となる報酬(賃金や現物支給の換算)や支払基礎日数の記入など、専門知識を要する項目が多く、社会保険の手続きに慣れていない中小企業の事業主にとって、大きな負担となる場合があります。そのような場合は、社会保険労務士(社労士)に相談や依頼をすると安心です。
社労士は、社会保険や労働保険に関する専門家であり、算定基礎届の作成や提出を代行してくれます。専門家に依頼することで、提出書類の作成や提出手続きに伴う事業主の負担を軽減することができます。また、法改正などの最新情報にも精通しているため、適切なアドバイスを受けることが可能です。
社労士への依頼には費用が発生しますが、算定基礎届の提出漏れや提出遅れに伴うリスク、手間の大きさ、そして何より、従業員や会社の信用問題に発展するリスクを考慮すると、必要な投資と考えるべきでしょう。
【社労士クラウドのスポット申請代行サービスについて】
社労士クラウドのスポット申請代行サービスは、必要な時だけ専門家に業務を依頼できるサービスです。例えば、算定基礎届の作成・提出のみを依頼することも可能です。スポットで依頼することで、自社で対応するよりも、確実かつ効率的に手続きを進められる場合があります。
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算定基礎届スポット提出代行の料金を確認する
ここでは、算定基礎届の未提出や提出遅れに関してよくある質問について、Q&A形式でわかりやすく解説します。
算定基礎届の案内はいつ届く?
算定基礎届の案内は、例年6月上旬から中旬にかけて、日本年金機構から各事業所宛に送付されます。
具体的には、健康保険と厚生年金保険の適用事業所に対して、事業主宛に「被保険者報酬月額算定基礎届」と記載された封筒が届きます。
健康保険組合に加入している場合は、健康保険組合から独自の様式で届く場合があります。封筒の中には、算定基礎届の用紙、提出期限や標準報酬月額の計算方法、そして具体的な記入方法などが記載された説明書が同封されているのが一般的です。
案内が届いたら、内容をよく確認し、提出期限(原則として7月10日)までに提出できるよう、早めに準備に取り掛かりましょう。
算定基礎届の督促はいつ届く?
算定基礎届の提出期限(7月10日)を過ぎても提出がない場合、提出期限後、概ね1~2ヶ月後を目安に年金事務所から督促状が届くことが多いです。
提出期限を過ぎても提出がない場合、まず年金事務所から提出状況の確認の連絡があります。その後、8月中旬から9月にかけて、未提出の事業所に対して「算定基礎届の提出について(お知らせ)」といった督促状が送付されるのが一般的です。
ただし、これはあくまでも目安であり、事業所の状況や年金事務所の事務処理の状況によって、督促状が届く時期は前後する可能性があります。
また、提出期限を大幅に過ぎていたり、再三の連絡にもかかわらず提出しなかったりすると、年金事務所の職員が直接事業所を訪問し、提出を強く求める場合や、行政調査(旧算定調査)の対象となる場合もあります。
督促状が届いた場合は、記載されている提出期限までに必ず算定基礎届を提出しましょう。
算定基礎届を出さなくていい人(対象外)は?
原則として、7月1日現在で健康保険・厚生年金保険の被保険者である従業員は全員、算定基礎届の提出対象となります。
ただし例外として、以下に該当する方は算定基礎届の提出が不要となります。
6月1日以降に被保険者資格を取得した人
6月1日以降に社会保険の被保険者資格を取得した人は、資格取得時の決定(資格取得時決定)で決定された標準報酬月額が適用されるため、その年の算定基礎届の提出は不要です。
6月30日以前に退職した人
6月30日以前に退職するなどして被保険者資格を喪失した人は、7月1日時点で被保険者ではないため、算定基礎届の提出は不要です。
7月、8月、9月に月額変更届の提出を予定している人
7月、8月、9月のいずれかの月から社会保険料額に大きく変動がある、つまり標準報酬月額が変更となるため、月額変更届の提出を予定している人については、算定基礎届の提出は不要です。
具体的には、固定的賃金に変動があり、その後継続した3ヶ月間の報酬の平均月額と、現在の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた場合が該当します。ただし、その旨を年金事務所にあらかじめ申し出する必要があります。
上記に該当しない従業員は、原則として算定基礎届の提出が必要となります。
例えば、休職中の従業員、海外赴任中の従業員、70歳以上の被用者(厚生年金保険のみ)についても、上記の除外対象に該当しない場合は、算定基礎届を提出する必要があります。
算定基礎届は、従業員の社会保険料や将来の年金額、健康保険給付を適正に算出するために欠かせない重要な書類です。提出を怠ると、年金事務所からの督促や指導を受ける可能性があるだけでなく、最悪の場合は懲役刑や罰金刑といった法的罰則に繋がることもあります。また、従業員の標準報酬月額が正しく決定されず、将来の年金額の減少や保険料の過不足など、従業員に不利益が生じるだけでなく、企業の信用問題にも発展しかねません。
このようなリスクを避けるためにも、事業主は算定基礎届の提出義務を正確に理解し、毎年7月10日の提出期限を厳守することが極めて重要です。
そのためには、日本年金機構から6月中に送付される案内をしっかり確認し、対象者や提出方法、4月から6月までの給与計算の内容、賃金・賞与・手当・通勤手当など報酬に含む項目を早めに整理し、計画的に準備を進めましょう。
また、記入漏れや計算ミスを防ぐために、チェックリストの活用や複数人による確認も有効です。
算定基礎届を適切に提出することは、企業の社会的責任を果たすだけでなく、従業員との信頼関係を築くうえでも重要です。
提出を怠ることで生じる労務管理上のリスクは、企業の信用問題に直接影響を及ぼします。事業主は算定基礎届の提出を重要な経営課題の一つと位置づけ、確実な提出と適正な管理を徹底しましょう。
全国のあらゆる社会保険手続きと労務相談を「顧問料なしのスポット」で代行するWebサービス【社労士クラウド】
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