「キャリアアップ助成金の審査が厳しくなっている」という話を耳にする機会が増えてきました。中小企業の経営者や人事・労務担当者にとって、キャリアアップ助成金は貴重な支援制度ですが、審査基準が厳格化されたことで、申請通過が難しくなっているのが実情です。実際に不支給とされるケースも少なくなく、その背景には不正受給の防止や助成金の適正利用を求める事情が影響しています。
この記事では、キャリアアップ助成金の審査が厳しい理由や不支給の典型例を詳しく解説し、申請を成功させるためのポイントや注意点をお伝えします。人材育成や経営コストの削減に役立てるためにも、助成金の申請成功率を高めるための対策を確認しておきましょう。
生島社労士事務所代表
生島 亮
いくしま りょう
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キャリアアップ助成金の審査が厳しいとされる理由には、いくつかの背景があります。この助成金は、非正規雇用者の正社員化を促進し、雇用の安定を図ることを目的に、厚生労働省が提供しています。近年、助成金の不正受給が増えたことや、制度の適切な運用を図るため、審査基準が厳格化されています。以下では、キャリアアップ助成金の審査が厳しい具体的な理由について解説します。
厳しい審査の理由1:不正受給防止のため
キャリアアップ助成金は多くの企業が利用できる制度ですが、その一方で、不正受給のリスクが高まっています。例えば、実際には正社員化の意思がないにもかかわらず、助成金を得るためだけに一時的な非正規雇用契約を結んだり、虚偽の書類を提出するケースが見受けられます。こうした不正を防ぐため、厚生労働省は審査を厳格化し、申請書類や手続き内容の詳細な確認を行う体制を整えています。これにより、不正行為の抑止とともに、正当に助成金を活用する企業が適切に支援を受けられるようになっています。
厳しい審査の理由2:助成金の目的達成を確実にするため
キャリアアップ助成金の目的は、非正規雇用者が安定した正社員として就業できる環境を整え、雇用の安定化と人材育成を進めることにあります。そのため、助成金を利用する企業が本当にこの目的に沿った取り組みを行っているかが、審査で重視されます。具体的には、就業規則に正社員転換に関する明確な規定があるか、労働条件が適切に整備されているかなどが確認されます。これにより、助成金の本来の意図に基づき、正社員化による安定した雇用環境が確立されることが期待されています。
厳しい審査の理由3:社会的信用の維持
助成金は公共資金によって運営されているため、社会全体からの信頼が求められます。不正受給や制度の不適切な利用が発覚すると、助成金制度全体の信用が損なわれ、制度の継続に支障をきたす恐れがあります。そこで、厚生労働省は透明性と公平性を確保するために、審査基準を厳しく設定し、各種書類や帳簿の管理体制を徹底しています。特に、賃金台帳の整合性や労働条件の適切な記載が重視され、企業側にもコンプライアンス意識が強く求められています。
このように、キャリアアップ助成金の審査が厳しい背景には、制度の信頼性と公正な運用を確保するためのさまざまな取り組みが関わっています。助成金を適切に受給するためには、申請内容が制度の目的に合致していることを確認し、細部まで整備した書類を提出することが重要です。
キャリアアップ助成金の申請には、制度に基づいた細かな項目まで準備を整えることが求められます。審査では、提出書類の内容が整合性を持ち、助成金の支給要件を確実に満たしているかが確認されます。
特に申請審査で厳しく指摘されがちな帳簿類の具体的なポイントについて、以下で詳しく解説していきます。
出勤簿と賃金台帳の整合性があるか(例: 残業代の支給状況)
キャリアアップ助成金の審査においては、出勤簿と賃金台帳の労働時間や残業代の計算が一致していることが重視されます。出勤簿に記録された残業時間数と、賃金台帳での残業代の支給額が相違している場合、不備とみなされ、申請が認められない可能性が高まります。
特に、審査の段階で未払残業代が発覚した場合には、申請の前にその未払分を清算し支払うことが必要です。この確認によって、適正な賃金支払いが確保されているかが審査されるため、日頃から出勤簿や賃金台帳の記録を正確に管理し、整合性を保つことが重要です。
雇用契約書と賃金台帳の記載内容の一致している
キャリアアップ助成金の審査では、雇用契約書と賃金台帳に記載されている内容が一致しているかが重要な確認項目です。
特に、基本給や手当の金額が雇用契約書と賃金台帳で相違がないことが求められます。
例えば、雇用契約書に手当の支給が記載されていないにもかかわらず、実際に賃金台帳に手当が記載されている場合、手当の名称や金額を雇用契約書にも明記する必要があります。
不一致が見つかると、賃金の適正性に疑問が生じ、助成金の支給が見送られる可能性が高まるため、契約書と賃金台帳の内容は事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
雇用契約書と就業規則の労働条件の記載内容の一致しているか
助成金の審査では、雇用契約書と就業規則に記載されている労働条件が一致しているかが確認されます。
特に、労働時間や休日休暇などの条件が契約書と就業規則で矛盾していないかが重要です。
例えば、雇用契約書で定められている休日が就業規則に反映されていない場合、労働条件の不明確さから労働者の権利保護に疑問が生じることになります。
こうした不一致が発覚すると、助成金支給に影響を及ぼす可能性があるため、実際の労働条件に合わせて雇用契約書と就業規則を見直し、整合性を確保することが必要です。
就業規則に不備がないか
キャリアアップ助成金の申請において、就業規則が適切に整備されているかどうかが重要な審査ポイントです。
特に、正社員転換に関する規定や手続きが就業規則内で明確に定められている必要があります。
不備や曖昧な記載がある場合、助成金の支給対象と見なされない可能性が高まるため、以下の要件を確認し、必要に応じて修正を行うことが推奨されます。
■就業規則の必須内容
- 正社員転換に関する規定の記載
- 助成金申請には、就業規則に正社員転換の手続きや条件が明文化されていることが必須です。正社員転換前にこの規定を整備しておく必要があります。
- 「賞与または退職金の制度」と昇給の基準の記載
- 助成金申請には、正社員転換後の昇給や賞与、退職金制度が明記されていることが必要です。以下の内容が不足していると、不支給になるリスクがあります。
- 昇給基準が明確に設けられていること
- 据え置きの給与がなく、適切に昇給が設定されていること
- 降格規定が記載されていないこと
- 助成金申請には、正社員転換後の昇給や賞与、退職金制度が明記されていることが必要です。以下の内容が不足していると、不支給になるリスクがあります。
- 正社員と非正規社員の待遇の明確な区分
- 就業規則には、正社員と非正規社員で異なる規定(基本給や手当、退職金の有無など)が明記されている必要があります。例として、以下のような区分が重要です。
- 正社員は月給制、非正規社員は時給制などの給与区分
- 契約社員やパートタイムには手当の支給がないが、正社員には支給するなど、待遇に明確な違いを設けること
- 就業規則には、正社員と非正規社員で異なる規定(基本給や手当、退職金の有無など)が明記されている必要があります。例として、以下のような区分が重要です。
- 正社員転換の6か月前からの規定整備
- 助成金審査において、正社員転換の少なくとも6か月前から、就業規則に正社員転換に必要な内容(基本給、賞与、退職金、各種手当の区分)を含めていることが求められます。規定改定日が正社員転換の6か月前でない場合、不支給となる可能性があります。
これらの要件を事前に確認し、整備することで、助成金申請がスムーズに進み、申請のリスクを最小限に抑えることができます。
キャリアアップ助成金の申請に必要な就業規則については下の記事で詳しく解説しています。
キャリアアップ助成金の申請に必要な就業規則とは?規定例や注意点を解説
キャリアアップ助成金は、企業の人材育成や労働環境改善を支援するために設けられた制度ですが、審査が厳格であり、不正受給とみなされるケースには不支給のリスクが伴います。
以下では、助成金が不正受給となる主な事例とその理由について解説します。
過去3年以内に退職した社員を再雇用して契約社員として申請するケース
キャリアアップ助成金の申請では、過去3年以内に退職した社員を再雇用し、契約社員として申請することが不正受給とみなされます。この助成金は、非正規雇用者の新規雇用や正社員転換を支援する目的があるため、以前に同じ企業で働いていた社員を対象とすることは本来の趣旨に反しています。
そのため、退職後3年以上が経過していない場合、再雇用者を助成金対象として申請することはできません。
身内(3親等以内)を雇用してキャリアアップ助成金を申請していたケース
キャリアアップ助成金は、企業における健全な雇用促進と人材育成を支援する制度ですが、3親等以内の親族を雇用して助成金を申請することは、不正受給と見なされます。親族間の雇用は形式的な関係になりやすく、助成金の本来の目的である実質的な人材育成や労働環境の改善が十分に達成されない可能性があるためです。
特に、経営に直接関与する事業主や取締役の親族(配偶者、3親等以内の血族や姻族など)への支給は制度の意図に反するため、厳格に規制されています。これにより、企業の雇用活動が真に労働者の成長と職場改善を目指すものとなるよう助成金が運用されています。
申請前には、対象従業員が事業主や取締役の親族に該当しないかを確認し、誤って申請しないよう十分に注意しましょう。対象外の親族を含めた申請は、不支給や返還命令のリスクが伴うため、支給要件を正確に把握しておくことが大切です。また、親族が従業員である場合には、他の助成金制度の利用も検討することが推奨されます。
半年後に正社員化と昇給して申請後すぐに降給させるケース
助成金を受け取った後、正社員転換と昇給を実施したにもかかわらず、その後すぐに降給させるケースは、不正受給と見なされます。キャリアアップ助成金は、長期的な人材定着と待遇改善を目的としているため、正社員転換後の待遇を維持しない行為は助成金の意図に反する行為と見なされます。
もしこのような行為が発覚した場合、助成金の返還が求められることになります。また、労働者が不利益を感じて労働局に告発したことがきっかけで発覚するケースもあるため、待遇維持の重要性を理解し、慎重に対応することが必要です。
帳簿の改ざんや二重帳簿の疑い
帳簿を改ざんしたり、二重帳簿を作成することは不正受給と見なされ、厳しい処罰の対象となります。助成金申請には、労働条件や勤務実態の正確な記録が求められており、賃金台帳や出勤簿の内容が一致しない場合、不正と判断されるリスクが高まります。たとえば、実際には出勤しているにもかかわらず帳簿上は「欠勤」と記載したり、実際に残業しているのに「残業なし」と記録するなどの行為が該当します。
特に、従業員が手書きで出勤・退勤時間を記録している一方で、会社側がExcelで残業時間を除外して管理するなどの二重帳簿は、意図的な不正と見なされやすく、不正受給の典型的な例とされます。このような不正が疑われる場合、実地調査が行われる可能性が高まるため、帳簿管理においては正確性と一貫性を保つことが重要です。
申請の手順・流れを守らない
キャリアアップ助成金の申請では、定められた手順や流れを守ることが厳格に求められています。この手順を遵守しない場合、審査が通らないばかりか、不正申請と見なされる可能性もあるため、注意が必要です。
たとえば、助成金を申請するには、まず「キャリアアップ計画書」を正社員転換の1日前までに作成し、労働局へ提出することが必要です。また、転換規定を盛り込んだ就業規則は、正社員転換の少なくとも6か月前から施行しておく必要があります。さらに、正社員化や処遇改善措置を実施した後には、所定の支給申請期間内に申請を行わなければなりません。これらの手続きを遵守することが助成金申請の必須要件であり、流れにそぐわない手続きを行うと支給が拒否されるリスクがあります。
助成金を円滑に受け取るためには、労働者代表や労働組合と協議の上で計画書を作成し、転換のメリットを労働者に提示することで、計画がスムーズに進むよう配慮することも重要です。
正社員前提の採用で契約社員扱いするケース
助成金の審査では、正社員として雇用する予定があるにもかかわらず、契約社員として雇用契約を締結し、キャリアアップ助成金を申請することは不正受給と見なされます。キャリアアップ助成金は非正規雇用からの正社員転換を支援することを目的としており、初めから正社員として雇用する意図がある場合には、この助成金の趣旨に反する行為とされ、不支給のリスクが高まります。
例えば、正社員としての求人に応募してきたにもかかわらず、採用後に契約社員として雇用契約を締結することや、最初から正社員化を前提としながら契約社員として雇用することも不正受給の典型例です。さらに、雇用契約書を正社員から契約社員に書き換えて申請する行為も不正とされ、重大なペナルティや返還命令が科される可能性があります。
助成金の不正受給に該当しないように、雇用契約の内容と助成金申請内容が一致しているか、また助成金の意図に沿って申請手続きを行っているかを慎重に確認し、正しい手続きに従うことが重要です。
キャリアアップ助成金を受けるためには、適切な手続きを経て、審査をクリアする必要があります。ここでは、申請から支給までの基本的な流れを解説します。申請をスムーズに進め、審査で不備が出ないようにするためには、事前の準備と計画が重要です。
申請から支給までの審査期間の目安
キャリアアップ助成金には「正社員支援コース」と「処遇改善支援コース」があり、それぞれ支給申請までの流れや準備が異なります。
以下の記事でキャリアアップ助成金の全コースの条件や対象者、申請方法をまとめています。
【2024年版】キャリアアップ助成金とは?条件や申請方法、支給金額を社労士がわかりやすく解説
以下は、キャリアアップ助成金の申請手順を簡単にまとめた流れです。
助成金の申請から支給までには通常3か月から6か月程度かかります。この審査期間には、申請内容の確認や書類の不備確認、必要に応じて実地調査も含まれます。
特に、年度末や年度始めには申請が集中し、審査が長引くことがあるため、余裕を持った計画が重要です。
具体的な申請手順
- キャリアアップ計画書の提出 – 労働局に「キャリアアップ計画書」を提出し、認定を受けます。この計画書には、正社員転換や処遇改善の具体的な方針を記載します。
- 正社員転換の実施 – 計画に基づき、非正規雇用者の正社員転換を行います。正社員転換の条件や手続きが就業規則に明記されていることが重要です。
- 転換後6か月の雇用維持 – 正社員転換後、6か月間にわたり雇用を維持し、継続的に賃金を支払います。この期間が終了した後に支給申請が可能です。
- 支給申請 – 6か月分の賃金支払いが完了したら、支給申請を行います。申請書類を提出し、労働局による審査を受けます。
このような手順を踏むことで助成金の支給が決定され、申請が通過すると指定された期日に助成金が振り込まれる流れです。審査期間を見越し、早めに準備を進めることが成功のポイントとなります。
キャリアアップ助成金は誰がいくらもらえる?対象者や支給金額を解説
申請時の注意点
キャリアアップ助成金の申請時には、いくつかの重要なポイントに注意する必要があります。
- 提出書類の不備がないよう確認する
助成金の申請には多くの書類が必要で、特に出勤簿や賃金台帳などの帳簿類には不備がないことが求められます。不備があると審査が遅れるだけでなく、場合によっては申請が通らないこともあるため、しっかりと確認しましょう。 - 支給申請期間内に申請する
キャリアアップ助成金には支給申請期間が設定されています。特に、正社員転換後6か月の雇用維持期間を経た翌日から2か月以内に支給申請を行わなければなりません。申請期限を過ぎると受理されないため、スケジュール管理が重要です。 - 審査対応の準備
申請後には、必要に応じて実地調査が行われることがあります。特に、賃金や労働時間に関する記録が正確であることが重視されるため、日常の記録管理が大切です。労働局からの問い合わせや実地調査に対応する準備を怠らないようにしましょう。
申請を円滑に進めるためには、事前準備をしっかり行い、申請の流れや注意点を把握しておくことが不可欠です。
キャリアアップ助成金正社員化コースの注意点や不支給なる理由いついて下記で詳しく解説しています。
キャリアアップ助成金の正社員化コース支給申請時の注意点!不支給になる失敗例も解説
キャリアアップ助成金の審査を通過するためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。
助成金は条件を満たしていないと不支給のリスクが高くなるため、事前の準備や対策が欠かせません。
以下では、審査を通過するための具体的なポイントについて詳しく解説します。
正社員転換時に基本給を5%以上引き上げる
キャリアアップ助成金の申請において、正社員転換時の賃金引き上げは重要な審査基準の一つです。制度の規定上、正社員転換後の賃金は3%以上の増額が義務づけられていますが、経験上、5%以上の引き上げを推奨しています。これは、審査の際に何らかの理由で賃金が否認されるリスクを減らすためです。
例えば、残業代の未払いが発覚したり、給与計算に不備があった場合、3%の引き上げでは不支給となる可能性があります。そのため、余裕を持って5%以上の賃金増額を設定することで、審査に落ちにくくなり、助成金の支給を確実にすることが期待できます。
さらに、従業員にとっても賃金の引き上げは大きなメリットがあり、モチベーションの向上にもつながります。助成金を確実に受給するためには、計画的に賃金の見直しを行い、事前にしっかりと準備を整えておくことが重要です。
残業代は1分単位で支給する
キャリアアップ助成金の申請時には、労働基準法に基づいて残業代を1分単位で支給しているかが審査の重要なポイントとなります。残業代を適切に計算・支給しない場合、不正受給と見なされるリスクがあり、助成金が不支給になる可能性があります。
例えば、15分単位で残業代を計算していると、審査に通らない可能性があります。これは、実際の労働時間に応じた支払いを厳密に求める助成金の要件に反するためです。日常的な労働時間の管理が不十分であると、申請が認められないこともあるため、出勤簿や賃金台帳の記録を正確に行いましょう。
さらに、実際の残業時間と支給された残業代が一致しているかを確認することも重要です。1分単位での計算を徹底することで、助成金の審査を確実に通過しやすくし、正しい給与支払いの基盤を整えることが期待できます。
申請準備に役立つチェックリストの作成
キャリアアップ助成金の申請を成功させるためには、事前準備が重要です。そのために、要件を満たしているかを確認するチェックリストを作成することをおすすめします。チェックリストは、各手続きや書類作成の進捗を把握するのに役立ち、ミスや不備がないかを随時確認できます。
まず、正社員転換に関する規定が就業規則に記載されているか、そして賃金の引き上げが必要要件を満たしているかなど、申請の必須項目を項目別にまとめます。さらに、出勤簿や賃金台帳の整合性や、残業代の支給が1分単位で計算されているかもチェックポイントに加えると効果的です。
このチェックリストを活用することで、書類の不備や手続きミスを未然に防ぎ、申請がスムーズに進むようにすることができます。
専門家である社労士に代行依頼や相談しながらすすめる
キャリアアップ助成金の申請は複雑で、要件を一つでも満たしていないと不支給となる可能性があるため、専門家である社会保険労務士(社労士)に代行を依頼することで申請の成功率が高まります。社労士は助成金申請の経験が豊富であり、手続きの流れや最新の法改正にも精通しているため、申請の際の手続きや書類作成において確実な対応が期待できます。
さらに、不正受給のリスクを抑えるためにも、社労士のサポートが有効です。専門の社労士が目を通して準備することで、書類や手続きにおける不備やリスクを最小限に抑え、ほぼ不正受給の問題が発生しないようにすることが可能です。自社での対応が難しい場合や不安がある場合は、社労士に相談しながら進めることで、申請におけるリスクを最小限に抑え、安心して助成金申請に取り組むことができます。
このように、助成金の審査を通過するためには細部にまで気を配り、計画的な準備が必要です。各ポイントを押さえ、確実な申請を行いましょう。
キャリアアップ助成金は、企業が非正規雇用者の正社員化や待遇改善を図る際に、そのコストを支援する目的で提供されている助成金です。しかし、助成金の活用にはメリットだけでなく、いくつかのリスクや注意点も存在します。ここでは、助成金を活用することで得られるメリットと、注意が必要なポイントについて解説します。
キャリアアップ助成金の活用メリット(コスト削減と人材育成)
キャリアアップ助成金を活用することで、企業にとってさまざまなメリットが得られます。まず、大きな利点は人材育成にかかるコスト削減です。正社員化や待遇改善にかかる費用の一部が助成金によって補填されるため、企業の負担を軽減できます。
この支援により、経済的な余裕が生まれ、必要な人材育成や職場環境の改善に予算を充てやすくなります。
また、非正規雇用者を正社員に転換することで、職場の士気が向上し、従業員の離職率を低下させる効果も期待できます。
正社員化によるキャリアアップは、従業員にとってもモチベーションの向上につながり、企業全体の生産性向上に寄与します。こうした人材育成を通じて、企業は長期的な成長を見据えた経営が可能になります。
キャリアアップ助成金正社員化コースの条件や対象者、申請方法までの流れを下記で詳しく解説しています。
キャリアアップ助成金正社員化コースの条件とは?対象者の要件と申請期間、人数などを解説
助成金活用に伴うリスクや注意点
助成金の活用にはいくつかのリスクや注意点が存在します。まず、助成金の支給には厳しい要件が設けられており、これらを満たしていないと不支給になる可能性があります。助成金の審査では、書類の不備や賃金台帳、出勤簿の整合性、契約書や就業規則の内容などが厳密にチェックされるため、慎重な準備が必要です。
さらに、助成金を受給した後に不正受給が発覚した場合、支給金額の返還を求められるだけでなく、罰則が科されるリスクもあります。不正受給と見なされないためには、労務管理の正確さや透明性が求められます。また、助成金を活用する際には制度改定や法改正が頻繁に行われるため、最新情報の確認と継続的な見直しも欠かせません。
その他のリスクとして、正社員転換を行うことで会社の負担が増える点が挙げられます。正社員が増えると、社会保険料や福利厚生費の負担が増加し、業績が悪化した際にも会社都合で解雇しにくくなる可能性があります。このような状況を回避するためには、助成金の活用が自社の長期的な経営計画に合致しているかを見極めることが大切です。
助成金を有効に活用するには、事前準備や慎重な手続きの進行が必要です。また、必要に応じて社労士などの専門家のサポートを受けることも検討すると良いでしょう。
社労士の顧問契約料やスポット(単発)の費用相場について下記記事で詳しく解説しています。
社労士との顧問契約の必要性・顧問料の相場・サポート内容・メリットデメリットを徹底解説
キャリアアップ助成金を活用することで、企業は人材育成と正社員転換の促進を図り、長期的な成長基盤を築くことができます。しかし、助成金の申請には厳しい審査基準が設けられており、これらをクリアするためには事前準備と注意が必要です。
助成金の申請に成功するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 正確な書類作成と管理:賃金台帳、出勤簿、雇用契約書と就業規則の整合性を保つことが求められます。不備がないか確認し、正確な記録を心がけましょう。
- 正社員転換時の賃金引き上げ:基準を上回る賃金増額(3%以上、実務上は5%以上)が推奨されます。従業員のモチベーション向上につながる適切な待遇改善を計画的に行いましょう。
- 法令順守と適切な手順の遂行:事前手続きや支給申請の期限を遵守し、適切なタイミングで進行することが不可欠です。
また、助成金申請の要件や手続きは複雑で、専門的な知識が必要な場合も多いため、経験豊富な社労士に相談することでリスクを軽減できます。社労士のサポートを活用すれば、書類の不備や計画の整合性の問題を未然に防ぎ、申請成功の確率を高めることが期待できます。
キャリアアップ助成金を有効に活用し、企業の成長と人材定着に役立てるために、申請内容をしっかりと準備し、慎重に手続きを進めていきましょう。
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