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社会保険の被保険者資格喪失届とは?記入例や提出先、遅れた場合の影響について解説

従業員の退職や家族が扶養から外れる、労働条件の変更に伴い、必ず発生するのが「社会保険(健康保険・厚生年金保険)の資格喪失手続き」です。

しかし、提出期限は事実発生から5日以内と短く、書類の書き方も独特なため、「何から手をつければいいのか分からない」「記入ミスで会社や従業員に迷惑をかけたくない」と悩む人事・労務担当者の方は少なくありません。

本記事では、社会保険の被保険者資格喪失届について、手続きが必要になるタイミングや具体的な書き方・記入例はもちろん、実務上のつまずきやすいポイントや、遅れた場合の影響、さらには従業員に伝えておくと親切な対応方法まで、わかりやすく解説します。

この記事を最後までお読みいただくことで、社会保険の資格喪失手続きに関する不安を解消し、自信を持って正確に業務を遂行できるようになります。

この記事を監修した人

生島社労士事務所代表

生島 亮

いくしま りょう

https://sharoushi-cloud.com/

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健康保険・厚生年金保険(社会保険)の被保険者資格喪失届とは?

「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」とは、従業員が退職や死亡などによって社会保険の加入資格を失った際に、事業主が日本年金機構へ提出しなければならない重要な書類です。

この手続きは、主に2つの重要な目的のために行われます。 

一つは、会社(事業主)と従業員が負担する社会保険料の徴収を正しく停止するため。もう一つは、従業員が退職後に国民健康保険への加入や家族の被扶養者になるなど、次の公的医療保険制度へスムーズに移行できるようにするためです。

この手続きが遅れたり、届出の内容に誤りがあったりすると、保険料の過不足が生じるだけでなく、退職した従業員が保険証を使えずに医療費を全額自己負担しなければならないといったトラブルにも発展しかねません。

会社と従業員双方にとって不利益とならないよう、事業主には事実発生から5日以内の迅速かつ正確な提出が義務付けられています。

資格喪失日は、その理由によって異なり、保険料の計算にも影響するため正確な理解が不可欠です。

喪失の理由資格を失う日(資格喪失日)
従業員が退職した退職日の翌日
従業員が死亡した死亡日の翌日
従業員が75歳に到達した75歳の誕生日当日(後期高齢者医療制度へ移行)
ートタイマー等で労働条件が変更された契約変更が適用された当日

一連の社会保険手続きは専門的な知識を要するため、初めて手続きを行う担当者の方や、他の業務と兼任されている方にとっては負担が大きい場合もあります。手続きに不安を感じる場合は、専門家である社会保険労務士へ相談することも有効な選択肢です。

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生島社会保険労務士
生島社会保険労務士

退職の手続きは雇用保険だけではなく社会保険の喪失手続きも行いましょう。社会保険に関する手続き(届出・種類)は複雑で多くの専門的知識を必要とするため、社労士に依頼することも検討してください。

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健康保険・厚生年金保険の資格喪失届の提出が必要になるタイミング

被保険者資格喪失届の提出は、従業員の退職時だけでなく、労働条件の変更や特定の年齢への到達など、さまざまな場面で必要となります。

どのようなタイミングで資格喪失手続きが必要になるかを正確に把握していないと、手続き漏れによる保険料計算のミスや、従業員の保険給付に関するトラブルにつながる恐れがあるため、人事・労務担当者は注意が必要です。

ここでは、事業主が資格喪失届を提出すべき代表的な事例を、一つひとつ詳しく見ていきましょう。

従業員が退職・死亡したとき

従業員が退職した場合や、在職中に死亡した場合は、健康保険・厚生年金保険の資格喪失手続きが必要です。自己都合退職、会社都合退職、定年退職といった退職の理由を問わず、すべてのケースで手続きを行わなければなりません。

資格喪失日は「退職日または死亡日の翌日」です。この日付は社会保険料をいつまで徴収するかの基準となるため、特に月末退職のケースでは正確な理解が求められます。

たとえば「3月31日付けで退職」の場合、資格喪失日は4月1日となります。この場合、資格喪失月である4月の保険料は発生せず、3月分の社会保険料までが徴収対象です。

【実務ポイント】
従業員本人だけでなく、被扶養者分の健康保険証もすべて、原則として退職日までに回収してください。資格喪失後に誤って保険証を使用して医療機関にかかると「無資格受診」となり、後日、健康保険組合等から会社へ医療費の返還請求が行われるなど、予期せぬトラブルの原因となります。

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従業員の労働条件が変更になったとき(パート化など)

正社員からパートタイマーになるなど、労働条件の変更によって社会保険の加入基準を下回った場合にも、資格喪失手続きが必要です。

原則として、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、同じ事業所で働く常時雇用者の4分の3未満になった場合に資格喪失の対象となります。

ただし、近年は社会保険の適用範囲が拡大しており、この基準を満たさなくても加入義務が発生するケースがあるため注意が必要です。

資格喪失日は、退職時の「翌日」とは異なり、「契約変更が適用された当日」です。この日付の相違は、実務上間違いやすい重要なポイントとなります。

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従業員が70歳に到達したとき(厚生年金保険)

従業員が70歳に到達すると、在職中であっても厚生年金保険の被保険者資格を喪失し、その後の扱いや手続きが変更となります。

健康保険の被保険者資格は75歳になるまで継続しますが、厚生年金保険の加入は70歳までと定められているためです。このタイミングで必要となる手続きは、「70歳になった後も働き続けるのか」、それとも「70歳以降に退職するのか」で異なります。

以下の通り、状況によって使用する届出様式が異なるため、様式の選択ミスには特に注意が必要です。

対象者の状況届出の種類
70歳に到達し、引き続き在職する従業員「厚生年金保険被保険者 70歳到達届」
(資格喪失届とは別の専用様式)
70歳以上の従業員が退職する「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」
(70歳以上被用者不該当届)

このように、「70歳に到達しただけ」なのか、「70歳以上で退職した」のかで使う届出様式が異なるため、様式の選択ミスには注意が必要です。

従業員が75歳に到達したとき(後期高齢者医療制度へ移行)

従業員が75歳になると、それまで加入していた健康保険(協会けんぽや健康保険組合など)の資格を喪失し、自動的に「後期高齢者医療制度」へ移行します。

この制度変更に伴い、事業主は健康保険の「被保険者資格喪失届」を提出する必要があります。資格喪失日は、原則として「75歳の誕生日当日」です。

この手続きで特に重要なのが、被扶養者のいる従業員への対応です。75歳に到達した本人と異なり、被扶養者は自動で次の保険に加入することはありません。

資格を失った日から国民健康保険に加入するか、他の家族の被扶養者になるかなど、ご自身で手続きが必要になることを、必ず従業員本人を通じて被扶養者の方へ伝えてください。

【実務ポイント】
「年齢計算ニ関スル法律」により、年齢は誕生日の前日に加算されるため、資格喪失日の解釈で不明点が生じる場合があります。通常は誕生日当日とされていますが、対象となる従業員がいる場合は、事前に管轄の年金事務所や健康保険組合に資格喪失日を確認しておくと、より万全な対応が可能です。

65歳以上75歳未満の従業員が一定の障害状態になったとき

65歳以上75歳未満の従業員で、法令で定められた一定の障害状態にあると広域連合から認定された場合、本人の申請により後期高齢者医療制度へ前倒しで加入できます。

この申請が受理された場合も、健康保険の資格を喪失するため、事業主は資格喪失届を提出しなければなりません。資格喪失日は「広域連合の障害認定を受けた日」となります。

【実務ポイント】
健康保険の資格を喪失しても、厚生年金保険の加入資格は残ります。提出書類の「喪失原因」の選択や「添付書類の有無」も他と異なるため、慎重に処理してください。

法人の役員が退任・非常勤になったとき

法人の取締役などが退任した場合や、非常勤役員となり社会保険の加入要件を満たさなくなった場合も、資格喪失届の提出が必要です。

「非常勤」の判断は、勤務実態や役員報酬の額などを基に総合的に行われます。実態として被保険者の要件を満たさなくなった場合は、忘れずに手続きを行いましょう。

状況資格喪失届の要否資格喪失日
代表取締役を退任し、役員報酬が支払われなくなった必要退任日翌日
常勤→非常勤となり報酬が減額、加入要件を満たさなくなった必要労働条件変更日当日

【実務ポイント】
「役員退任=必ず喪失」とは限らず、報酬や勤務実態によって継続加入となるケースもあります。労働実態や役員報酬の変更内容を総合的に判断することが求められます。

社会保険の被保険者資格喪失届の提出先と提出方法

被保険者資格喪失届は、事業所の所在地を管轄する年金事務所または事務センターへ、事実発生から5日以内に提出しなければなりません。

提出方法は、「電子申請」「郵送」「窓口持参」の3つから選択できます。近年は政府も電子申請を推奨しており、業務効率化の観点からも有用な手段です。

ここでは、保険証の回収といった事前準備から提出完了までの具体的な流れを、提出方法ごとの注意点とあわせて、わかりやすく解説します。

社会保険の被保険者資格喪失届を提出するまでの流れ

資格喪失届の手続きは、以下の6つのステップで進めるのが基本です。手続きの抜け漏れを防ぐため、この記事をチェックリストとして活用しながら、一つひとつのステップを着実に進めていきましょう。

ステップ① 資格喪失日と回収する保険証の確認

喪失理由(退職・死亡・年齢到達など)に応じて、正しい資格喪失日を確認し、健康保険証(本人・被扶養者分)を退職日前に回収します。

※保険証が回収できない場合は「健康保険被保険者証回収不能届」の提出が必要です。

ステップ② 被保険者資格喪失届の用紙入手と準備

届出書は日本年金機構のホームページからPDFをダウンロードするか、e-Gov電子申請システムを利用して準備します。

※協会けんぽ・健康保険組合など加入先によって様式が異なる場合があります。

ステップ③ 被保険者資格喪失届に必要事項を記入する

氏名、生年月日、個人番号、資格喪失日、喪失理由、健康保険証の枚数など、必要な項目を漏れなく記入します。

※特に資格喪失日の記載ミスが多いため、「退職日の翌日」であることなどに注意が必要です。

ステップ④ 保険証などの必要書類を準備する

記入済みの喪失届に加え、健康保険証や高齢受給者証など、必要な添付書類をそろえます。※健康保険組合加入者の場合は、組合独自の書類が必要なケースもあります。

ステップ⑤ 被保険者資格喪失届を提出する

事業所所在地を管轄する年金事務所または事務センターへ、提出期限(喪失日から5日以内)を守って提出します。

※電子申請・郵送・窓口持参のいずれかを選択可能です。

ステップ⑥ 必要な場合は資格喪失証明書を作成する

退職者が国民健康保険への切り替えなどに必要な場合、会社側で資格喪失証明書(任意様式)を発行・交付します。

※「資格喪失日」「被保険者番号」「会社情報(押印)」の記載が必要です。

電子申請・郵送・窓口提出の違いと注意点

資格喪失届は、以下3つの方法で提出できます。郵送と窓口では提出先(宛名)が異なる場合があるなど、それぞれに特徴と注意点があるため、事前に整理しておきましょう。

提出方法特徴注意点
電子申請e-Govで24時間いつでも提出可能。控えデータも残る利用には「GビズID」や事前設定が必要。慣れていないと手間取ることも
郵送提出書類の控えを同封しておけば返信対応が可能・提出先は事務センター。・配達記録が残る「特定記録郵便」や「簡易書留」を推奨。・会社の控えが必要な場合は、届出のコピーと切手を貼った返信用封筒を同封。
窓口提出窓口で直接提出し、その場で確認・控え受領も可能・提出先は管轄の年金事務所。・開庁時間内に行く必要があり、混雑時には待ち時間が発生することも。

【ポイント】
頻繁に手続きを行う企業であれば、電子申請へ移行することで業務効率が大幅に向上します。一方で、1件ごとの手続きでも「万が一の間違いが怖い」と感じる場合は、専門家である社労士へスポット(単発)で依頼するのも有効な選択肢です。

社会保険の被保険者資格喪失届の提出が遅れる・未提出の場合の罰則・影響について

被保険者資格喪失届は、社会保険制度における重要な手続きのひとつです。

そのため提出遅れや未提出には会社と従業員の双方にさまざまな不利益が生じる可能性があり、法律上の罰則が科されるリスクもあります。手続きの遅れは、従業員の保険加入や医療費負担に直結するため、放置すれば深刻なトラブルへと発展しかねません。

ここでは、具体的にどのような影響があるのかを詳しく解説します。

会社側への影響

まず、手続きを行う会社側には、主に以下のような金銭的・事務的な負担が発生します。

影響内容詳細
社会保険料の過払い喪失日以降も保険料を徴収・納付してしまい、返金処理が必要になる
年金事務所からの督促書面・電話等で催促が届き、対応に追われる
事務負担の増加返金処理、従業員への説明、追加書類提出などが必要になる

従業員側への影響

手続きの遅れは、退職した従業員のその後の生活に直接的な影響を及ぼし、トラブルの原因となります。

特に健康保険や年金の切り替えがスムーズに行えない場合、従業員が医療費を一時的に全額負担したり、保険料の二重払いが発生するなどの実害を受けるリスクがあります。

想定される影響内容
国民健康保険などへの切り替え遅延資格喪失証明書がないと国保への加入が遅れ、未加入期間が発生する可能性があります。
医療費の全額自己負担喪失後に古い保険証を使って受診すると、後日全額請求される場合があります。
保険料の二重払い喪失届が遅れたことで、社会保険料と国保の保険料が重複して請求されることがあります。
離職票や給付関連の遅延喪失届が提出されないと、雇用保険や各種手当の申請にも影響を及ぼします。

法律上の罰則について

届出の遅延や未提出は、単なる手続きミスでは済まされない場合があります。

健康保険法第208条や厚生年金保険法第102条には、事業主が正当な理由なく届出を行わなかった場合などに関する罰則規定が設けられており、悪質なケースでは「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科される可能性があります。

実務上、提出が少し遅れただけで即座に罰則が適用されることは稀ですが、法令上の義務であり、罰則も定められていることは明確に認識しておく必要があります。

もし提出の遅れに気づいた場合は、決して放置せず、速やかに管轄の年金事務所へ連絡し、指示に従って手続きを進めてください。

社会保険の被保険者資格喪失届の書き方・記入例

被保険者資格喪失届は、従業員の大切な社会保険情報を扱う書類のため、正確な記入が求められます。特に、個人番号(マイナンバー)や資格喪失年月日は、記入ミスが起こりやすいポイントです。

ここでは、日本年金機構が公開している記入例を基に、各項目の具体的な書き方と注意点を詳しく解説します。

記入項目の具体例

引用元:健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届 | 日本年金機構

上記の記入例に沿って、届出書に記入すべき主な項目は以下の通りです。

項目名内容
1.事業所整理記号・事業所番号不明な場合は空欄で可(記入不要)
2.被保険者氏名漢字フルネームで正確に記載
3.基礎年金番号/個人番号(マイナンバー)どちらか一方を記入(※個人番号記載時は別紙に記載し、書類に貼付)
4.被保険者氏名・生年月日西暦または和暦で統一
5.資格喪失日喪失の理由に応じた正しい日付を記入(詳細は下記参照)
6.資格喪失理由該当する理由を略号で記入(例:1=退職、3=死亡など)
7.健康保険証回収枚数本人分・被扶養者分それぞれを記入。回収できなかった場合は「0枚」と記載し、回収不能届を添付

喪失理由の記載方法(例:退職/死亡/75歳到達など)

「6. 資格喪失の原因」欄は、選択する番号によってその後の手続きや保険料の扱いに影響することがあるため、正確に選択する必要があります。

喪失理由選択する番号具体的なケース
退職等3自己都合退職、会社都合退職、定年退職、契約期間満了など
死亡4在職中の従業員が死亡した場合
75歳到達6従業員が75歳の誕生日を迎えた場合(後期高齢者医療制度へ移行)
その他7パート化による労働時間短縮、役員の非常勤化など

【記入ミス注意点】
「退職」を「自己都合退職」や「定年退職」などと記載してしまうケースがありますが、届出では略号「1」で統一されているため、余計な情報は記載しないようにしましょう。

資格喪失日の具体例と注意点

「5. 資格喪失年月日」は、保険料計算の基準となる非常に重要な日付です。原則と具体例をしっかり押さえておきましょう。

喪失理由資格喪失日の考え方具体例
退職・死亡退職日・死亡日の翌日3月31日に退職 → 資格喪失日は4月1日
75歳到達75歳の誕生日当日4月15日が誕生日 → 資格喪失日は4月15日
労働条件変更変更が適用された当日4月1日からパート契約 → 資格喪失日は4月1日

【最重要ポイント】 

この「資格喪失年月日」は、この届出の中で最も間違いやすい最重要項目です。特に退職の場合は「退職日当日」ではなく、必ず「退職日の翌日」を記入してください。この1日の違いで、会社と従業員が負担する社会保険料が1ヶ月分変わる可能性があります。

添付書類と保険証の取り扱い

提出するのは「被保険者資格喪失届」だけではありません。以下の書類を必ず添付してください。

添付書類説明
健康保険被保険者証(保険証)従業員本人分だけでなく、被扶養者分もすべて回収します。
高齢受給者証、健康保険特定疾病療養受給者証など該当する従業員に交付されている場合は、保険証とあわせて回収・添付します。

【トラブル防止のポイント】 

健康保険証の確実な回収は、後のトラブルを防ぐための重要な業務です。従業員本人分だけでなく、被扶養者分も1枚残らず回収してください。資格喪失後に誤って保険証が使用されると、会社を巻き込む医療費の返還問題に発展する可能性があります。

もし回収できない保険証がある場合は、「健康保険被保険者証回収不能届」を忘れずに添付し、事業主としての回収努力の記録を残しましょう。

社会保険の被保険者資格喪失届のことで従業員に伝えておくと親切なこと

社会保険の資格喪失手続きは、会社側の義務を果たすだけでなく、その後の従業員やその家族の生活をスムーズにするための重要な引き継ぎでもあります。

会社として、これから本人や家族が行うべき手続き、あるいは利用できる制度について情報提供することで、安心して次のステップへ進むことが可能です。

ここでは、資格を喪失した方(従業員本人やその被扶養者)のために、会社から伝えておくと特に親切な3つのポイントを解説します。

国民健康保険・国民年金への切り替え手続き(資格喪失証明書の発行)

従業員が退職した場合や、その家族が収入増加などで被扶養者から外れた場合、次の社会保険に加入するまでの間は、自身で国民健康保険と国民年金への加入手続きを、お住まいの市区町村役場で行う必要があります。

この手続きの際に、多くの場合、会社が発行する「健康保険資格喪失証明書」の提出を求められます。

会社としては、対象となる従業員へ事前に声をかけることで、スムーズな手続きをサポートできます。

今の保険を継続できる「任意継続被保険者制度」

退職後も、一定の条件(資格喪失日の前日までに継続して2ヶ月以上の被保険者期間があることなど)を満たせば、最大2年間、これまで加入していた会社の健康保険を継続できる「任意継続被保険者制度」があります。

国民健康保険に切り替えるか、任意継続を選択するかは、従業員本人が選ぶことができます。

比較項目任意継続のポイント
メリット・在職中とほぼ同じ保険給付を受けられる
・扶養家族も引き続き被扶養者でいられる
デメリット・保険料が全額自己負担(在職中の約2倍)になる
・原則、途中でやめることはできない(再就職などを除く)
手続き資格喪失日から20日以内に本人が協会けんぽ・健康保険組合へ申請

どちらの保険料が安くなるかは個人の状況によって異なるため、会社として「任意継続という選択肢もありますよ」と情報提供するだけでも、従業員にとっては有益な情報となります。

失業手当に必要な「雇用保険の離職票」

退職後に失業手当(基本手当)の受給を希望する従業員には、「雇用保険被保険者離職票(離職票)」が必要です。

これは、社会保険(健康保険・厚生年金)の資格喪失届とは別の、雇用保険の手続きですが、退職時には一連の流れとして発生します。会社は、従業員の退職後にハローワークで手続きを行い、発行された離職票を本人へ交付する義務があります。

従業員が失業手当を速やかに受給できるよう、社会保険の手続きとあわせて、離職票の発行手続きも遅滞なく進めることを伝え、安心させてあげましょう。

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社会保険の被保険者資格喪失届でよくあるQ&A

社会保険の被保険者資格喪失届の手続きに関して、実務担当者の方からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。手続きで迷った際の参考にしてください。

資格喪失日はいつにすべきですか?

資格喪失日は、会社の都合や個人の希望で任意に決めることはできず、法律で定められたルールに従う必要があります。

資格を失った理由によって、以下のように明確に定められています。

喪失理由資格喪失日の考え方
退職・死亡退職日・死亡日の翌日
労働条件変更変更が適用された当日
75歳到達75歳の誕生日当日

この日付は社会保険料の計算に直結する非常に重要な項目ですので、必ず上記のルールに沿って正確に届け出てください。

雇用保険被保険者資格喪失届との違いは何ですか?

社会保険の喪失届と雇用保険の喪失届は、提出先も手続きの目的も異なります。

従業員が退職する際は、これら両方の手続きがセットで発生するため、混同しないように注意が必要です。

比較項目社会保険資格喪失届雇用保険被保険者資格喪失届
対象保険健康保険・厚生年金保険雇用保険
提出先管轄の年金事務所・事務センター管轄のハローワーク
提出期限事実発生から5日以内退職日の翌日から10日以内
主な添付書類健康保険証離職証明書(離職票発行の場合)

担当者としては、退職手続きの際には「年金事務所」と「ハローワーク」の2か所への手続きが必要になると理解しておきましょう。

記入ミスや提出忘れが発覚した場合の対応は?

記入ミスや提出漏れに気づいた場合は、すぐに年金事務所へ連絡し、指示に従って修正手続きを行いましょう。

決して放置せず、以下の手順で対応してください。

  1. 管轄の年金事務所へ連絡する
  2. 指示に従い、書類を再提出する

問題を放置することが最もリスクを高めます。誠意をもって迅速に対応することが、問題を最小限に抑える鍵です。

雇用保険との手続きのタイミングがズレた場合はどうすればいいですか?

社会保険と雇用保険の手続きは独立しているため、必ずしも同日に提出する必要はありません。

それぞれの法律で定められた提出期限(社会保険は事実発生から5日以内、雇用保険は退職日の翌日から10日以内)さえ守っていれば、別々の日に提出しても法的には問題ありません。

ただし、手続きの順番や遅れによっては従業員に影響が出るため、以下の点には注意が必要です。

よくあるケース発生する主な影響推奨される対応
社会保険は処理したが、雇用保険の手続きが遅れた離職票の発行が遅れる退職者へ、離職票の到着が遅れる見込みであることと、その理由を誠意をもって説明しましょう。失業手当の受給開始が遅れる可能性があります。
雇用保険は処理したが、社会保険の手続きが遅れた保険料の過不足や、退職者の健康保険切り替えに支障が出る気づき次第、速やかに管轄の年金事務所へ連絡し、指示に従って手続きを行ってください。放置すると、退職者が無保険状態になるなど、より大きなトラブルに発展します。

理想は、関連手続きとしてまとめて速やかに行うことですが、もしタイミングがずれてしまった場合は、上記を参考に冷静に対応してください。それぞれの提出期限をしっかり管理し、どちらの手続きも忘れないように注意しましょう。

社会保険の資格喪失手続きは、期限内の正確な対応と従業員への配慮が大切

社会保険の被保険者資格喪失届は、事業主に課せられた法的義務であると同時に、退職する従業員やその家族の生活に直結する非常に重要な手続きです。

「退職日の翌日」と設定される資格喪失日を1日間違えるだけで保険料の計算が変わり、有給消化中の保険証の取り扱いなどを曖昧にすれば、後のトラブルに繋がりかねません。「事実発生から5日以内」という短い期限内に、正確な書類を提出することが、企業のコンプライアンス(法令遵守)の基本となります。

同時に、この手続きは退職する従業員やその家族に対する、最後の重要なフォローアップでもあります。資格喪失後の手続きについて情報提供したり、必要な書類を速やかに発行したりといった細やかな配慮が、従業員との良好な関係を維持し、「この会社で働いてよかった」と思ってもらうための大切なコミュニケーションです。

とはいえ、特に人事・労務の専任者がいない中小企業やスタートアップ企業にとって、これらの手続きを正確かつ迅速に行うのは大きな負担となり得ます。

もし、手続きに少しでも不安がある場合や、コア業務に集中するために手続き業務を効率化したいとお考えの場合は、専門家である社会保険労務士に相談することをお勧めします。

「社労士クラウド」では、このような資格喪失届の作成・提出を1件から代行するスポットサービスも提供しています。顧問契約は不要で、必要な時だけ専門家のサポートを受けることが可能です。

正確な手続きで会社の信頼を守り、従業員への配慮を尽くすために。ぜひ一度、お気軽にご相談ください。

生島社会保険労務士
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