働き方改革や副業解禁、多様な働き方の推進など、政府が主体となり日本の働き方はずいぶんと変化している昨今ですが、事業主のみなさまの組織では、副業やダブルワークを行っている方はいらっしゃいますでしょうか?
従業員の副業やダブルワークについて、事業主はその実態を把握する必要があります。
副業と聞くと正社員の方をイメージされる事業主の方もいらっしゃると思いますが、パートやアルバイトの方のダブルワークの状況についても、社会保険の手続き上、実は事業主は把握する必要があります。
なぜ把握しなければならないのか、把握したうえで事業主はどんなことをしなければならないのか?それをしなければどうなるのか?
今回は、二つ以上の事業所で勤務する人に関する手続きについて、社労士が解説します。
生島社労士事務所代表
生島 亮
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副業(ダブルワーク)は、通常の主要な職業や仕事の他に、追加で行う仕事や活動を指す言葉です。副業は、追加の収入を得るために行われることが一般的ですが、趣味やスキルの活用、キャリアのスキルアップ、独立起業への準備など、さまざまな目的で行われることがあります。
昨今では、自分のスキルや専門知識を活用して、フリーランスの仕事をしたり、オンラインショップ、飲食店、美容室、コンサルティング会社などを立ち上げ、小規模なビジネスをしたり、IT系に強い方は請負でアプリ開発やシステム開発、プログラミングをされる方もいます。
二以上の適用事業所それぞれで、社会保険の被保険者となるための加入要件を満たしている場合は、どっちもです。副業(ダブルワーク)をする際は、二以上事業所勤務届という届出を年金事務所に届け出る必要があります。これを届け出ないと正確な社会保険料が算出されない為、年金事務所の調査が入った時に遡及して支払う可能性がでてきます。
本人から申し出がある場合もありますが、ない場合ももちろんありますので、該当する場合の要件の理解、把握の方法などを事業主は検討する必要があります。
下記記事でダブルワークしているときの社会保険は片方だけでいいのか、両方加入する必要があるのか?条件や注意点を解説しているので、悩んでいる方は合わせて確認してください。
ダブルワーク・掛け持ちのとき社会保険加入は片方だけ?条件や注意点を解説
二以上事業所勤務届は原則として従業員本人が、選択事業所の所轄の事務センターへ提出をしますが、本人が似以上勤務届を理解していない場合もありますので、事業主の方は副業やダブルワークの有無を確認し、二以上事業所勤務者に該当するかどうかを把握する必要があります。
また、正社員、パート、アルバイトなどの雇用区分に関わらず、また、社内で副業等の禁止をしていたとしてもこっそり行っている場合もあります。
まずは事業主が制度を説明したうえで、手続きが法律上の義務であることを社内に周知することが必要です。
社会保険の被保険者が同時に複数(2カ所以上)の適用事業所に使用される場合、どの事業所を主たる事業所とするのかを被保険者本人が選択するために必要な届出となります。
具体的には、事実発生から10日以内に、被保険者本人が「健康保険厚生年金保険被保険者所属選択二以上事業所勤務届」を選択した事業所の所轄の事務センターへ届け出ることとなっています。
二以上事業所勤務届の提出をせず、社会保険料を未納のままでいると法令違反になる可能性があります。
二以上事業所勤務届には、被保険者の氏名、生年月日、マイナンバー若しくは基礎年金番号、選択事業所と非選択事業所それぞれの住所や社会保険の事業所整理番号や報酬月額などを記入します。
届出は郵送、窓口申請、電子申請があります。
何のために二以上事業所勤務届出が必要となるのか?
社会保険の毎月の保険料は、被保険者の得る報酬の月額によって決まります。
例えば、1つの事業主のもとで貰うお給料が30万円でしたら、標準報酬月額表で30万円が当てはまる等級となり、その等級に応じた保険料が決定します。
2つの事業主のもとで貰うお給料が20万円と25万円でしたら、この合計額45万円が当てはまる等級となり、その等級に応じた保険料となり、その保険料は2つの事業主で按分して納付し、被保険者はそれぞれの事業主の賃金支払い時の社会保険料控除によって負担します。それぞれの事業所が正しいルールで決められた保険料を納付するためにもこの届出は必要になります。
例えば2つの事業所が偶然同じ所轄の年金事務所となるような場合でも、事業所選択は必要となります。前述した通り、保険料の按分などの手続きがあるためです。
具体的には以下の場合において、社会保険の事業所選択が必要となります。
- 保険者の一方が健康保険組合の場合
- 保険者がいずれも健康保険組合または共済組合の場合
- 保険者の一方が全国健康保険協会、他方が健康保険組合の場合
- 保険者の一方が共済組合、他方が全国健康保険協会または健康保険組合である場合 ※共済組合を選択する必要があります。ただし、厚生年金基金の加入員となる場合は除かれます。
- 保険者がいずれも全国健康保険協会で、二以上の事業所を管轄する年金事務所が異なる場合。 ※主となる年金事務所を選択します。
- 保険者がいずれも全国健康保険協会で、二以上の事業所を管轄する年金事務所が同一の場合。 ※主となる事業所を選択します。
二以上事業所勤務届の提出をし、その結果、選択した事業所の所在地を管轄する事務センター(または健康保険組合)が当該被保険者に関する事務を行うこととなります。
なお、健康保険組合に加入している事業所を選択した場合、厚生年金保険の事務は事務センターが行います。
二以上事業所勤務届の提出をし、その結果、選択した事業所の所在地を管轄する事務センター(または健康保険組合)が当該被保険者に関する事務を行うこととなります。
なお、健康保険組合に加入している事業所を選択した場合、厚生年金保険の事務は事務センターが行います。
二以上事業所勤務届の提出にあたっては、適用事業所の被保険者となるための「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」の提出が前提となっているため、もしも選択事業所で新たに被保険者となる場合は、資格取得届をあわせて提出する必要があります。
※ただし、健康保険に加入する事業所に使用される者で、国等の事業所の短時間勤務職員としても使用される方については、共済組合制度の加入者となるため、健康保険に加入する事業所から資格取得届とあわせて、健康保険の保 険料徴収および保険給付を行わないための「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」の提出も必要となります。
また、健康保険証については、これまでの事業所ではなく新たに勤務することとなった事業所を主たる事業所として選択した場合は、これまでの事業所の被保険者資格喪失届及び健康保険証の返却が必要となります。
その被保険者に被扶養者がいた場合についても、被扶養者異動届の提出や健康保険証の返却などは当然に被保険者と同様の扱いとなります。
社会保険に加入することができる基準をこれまでは満たさなかった短時間労働者の方の加入基準を引き下げる法改正が行われております。
社会保険に加入している労働者数が501人以上の企業で働いている短時間労働者だけが対象だったところ、2022年10月には労働者数101人以上、2024年10月には51人以上の企業と、社会保険の適用範囲が段階的に拡大していくことが決まっています。
この法改正で、社会保険加入の条件を新たに満たす従業員が発生する場合もあり、それにより社会保険加入手続きに加え、二以上事業所勤務届の提出及び対応が必要となることももちろんあります。
適用事業所及び短時間労働者の方の要件については、こちらの記事で詳しくお伝えしていますので、以下をご参照ください。
【スポット申請】社会保険の加入条件や加入手続きの流れと加入方法の全まとめ
法人の役員ついては、役員報酬を受けている場合は、社会保険の加入の対象となります。
適用事業所で役員報酬を受けている方が、新たに別の適用事業所で役員報酬を受けている場合は、二以上事業所勤務届の提出が必要となります。
また、1つの適用事業所では労働者として加入、もう1つの適用事業所で役員報酬を受けている場合も必要となります。
非常勤役員である場合は、以下勤務の実態等により、社会保険加入の判断が必要となります。
・自社への定期的な出社について
・自社の職のほかに多くの職を兼ねていないかどうか
・役員会等の出席について
・他役員及び職員に対する指揮監督の状況
・自社においての実行権等
・業務の内容と報酬の額のバランス
役員の社会保険の加入については、役員は加入の要件として労働者のような時間等のルールが当てはまりませんので、役員の社会保険加入要件についての疑問点については、所轄の年金事務所へお問い合わせください。
雇用保険については2つの事業所にて重複して加入するということはありません。
雇用保険については、一人につき1つの保険という考えになっており、二つの事業所にて加入するということはありません。どちらも加入を満たす場合は、原則お給料が高いほうに加入することとなります。
事業主の皆様は、副業やダブルワークを行っている方については、他の会社で雇用保険に加入しているかどうかを確認し、二重で加入手続きをしないよう注意が必要です。
日本の公的年金制度(厚生年金保険及び国民年金)は、現役世代が納める保険料で、その時々の高齢者世代に年金を給付しています(賦課方式)。つまり、現役世代が将来受け取る年金は、その子どもや孫たちの世代が納める保険料でまかなわれることになります。そのため、自分が納めた保険料が積み立てられ、将来自分に年金として戻ってくる仕組み(積立方式)ではありません。
少子高齢化の日本では、現役世代からの保険料が少なく、年金を給付する高齢者が多いという状況にあるため、社会保険の適用拡大の流れがあります。
2024年10月からは、社会保険に加入している労働者数が51人以上の企業で働く短時間労働者が社会保険加入の要件を満たすこととなり、加入手続きのみならず、二以上事業所勤務届の提出などの新たな対応が必要となる企業も増えていくと考えられます。
詳しくは以下の記事で2024年10月から変更される社会保険の適用拡大について解説しています。
2024年10月〜パート・アルバイトの社会保険の適用範囲が拡大!企業が取るべき対応と影響を解説
社会保険に加入している労働者が51人以上の企業という要件も、今後改正されることも視野に入れて、社内の保険手続きについての理解をしなくてはなりません。
社会保険の届出については法律上の義務となっていますし、その手続きの期日についても定められ、周知されています。
もし、要件を満たしているにもかかわらず届出をしなかった場合には、事業主には6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処することとされています。
また、2年間さかのぼっての保険料請求などもありますので、手続きを忘れないように行わなければなりません。
二以上事業所勤務届は従業員本人が届出をするものですが、そもそもこの制度を知らないという方も多くいらっしゃいます。
まずは事業主自身が制度の理解をすることはもちろんのこと、副業やダブルワークを行っている方がいるかどうかを把握する必要があり、そのうえで正しい手続きをする必要があります。
お忙しい事業主のみなさま、いつ法改正があるのか、どんなタイミングで手続きを誰に依頼しなければならないのか、把握するのはとても手間がかかります。
ぜひ専門家である社会保険労務士にご相談ください。スポットでのご相談やご依頼など様々なサービスをご用意しております。どうぞお気軽にご連絡くださいませ。
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