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ダブルワークで社会保険に二重加入するメリットとデメリット!手続きや条件も解説

ダブルワークで社会保険に二重加入するメリットとデメリット

ダブルワークをしている方がそれぞれの会社の社会保険に二重加入することで、どんなメリットやデメリットがあるのか気になっていませんか?

ダブルワークによる社会保険の二重加入には、将来の年金額増加や国民健康保険にはない手厚い保障など、意外なメリットがあります。一方で、社会保険料負担の増加や手取り額の減少、副業が会社にバレるリスクなどのデメリットも存在します。

この記事では、ダブルワークを始めた方や検討中の方へ向けて、社会保険の二重加入におけるメリット・デメリットを詳しく解説します。さらに、加入条件や手続き方法、2024年10月からの制度変更についても触れます。

将来の生活を安心して過ごすために、あなたの働き方に最適な選択をするための参考として、ぜひ最後までお読みください。

この記事を監修した人

生島社労士事務所代表

生島 亮

いくしま りょう

https://syarou-shi.com/

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ダブルワークすると社会保険の二重加入は義務?

「ダブルワークをしている場合、必ず社会保険に二重加入しなければならないのか?」という質問をよく耳にします。

結論から申し上げますと、ダブルワークをしているからといって、必ずしも社会保険の二重加入が義務付けられているわけではありません。しかし、一定の条件を満たす場合には、複数の職場で社会保険に加入する必要があります。

具体的には、ダブルワークをしている場合で、両方の勤務先で社会保険の加入条件を満たしていると、それぞれの職場で社会保険への加入義務が発生します。これが「二重加入」と呼ばれる状況です。

つまり、社会保険の二重加入が必要かどうかは、各勤務先での労働条件や収入などによって決まります。それぞれの職場で加入条件を満たしているかどうかを確認することが重要です。

社会保険の加入条件は複雑で、勤務時間や収入、勤務先の企業規模などさまざまな要素が関係します。そのため、自分の状況が二重加入の対象になるかどうか判断に迷う場合は、勤務先の人事部門や社会保険労務士に相談することをおすすめします。

社会保険の加入条件は以下のとおりです。

  1. フルタイムで勤務している場合
  2. 週の労働時間が正社員(フルタイム)の3/4以上の場合
  3. 月の労働日数が正社員(フルタイム)の3/4以上の場合

また、所定労働時間が正社員の4分の3未満でも、以下の条件をすべて満たす場合は社会保険の加入対象となります。

これらの条件を踏まえると、ダブルワークをしている場合でも、それぞれの職場で上記の条件を満たしていれば、複数の職場で社会保険に加入する必要があります。

例えば、勤務先が加入条件を満たしているという前提で、2つの職場でそれぞれ週20時間以上勤務し、月収が88,000円以上ある場合、両方の職場で社会保険に加入することになります。

一方で、1つの職場でフルタイム勤務をしており、もう1つの職場でパートタイムとして働いている場合、パートタイムの職場が上記の条件を満たさなければ、その職場での社会保険加入は不要です。

社会保険 【スポット申請】社会保険の加入条件や加入手続きの流れと加入方法の全まとめ

では、具体的にどのような条件で社会保険の二重加入が必要になるのか、詳しく見ていきましょう。

2024年10月から施行される社会保険の適用拡大で、複数の事業所で社会保険の加入する必要がでてくるケースがあります。その場合、二以上勤務届が義務になります。この二以上勤務届は提出しないと罰則が科される可能性があります。

「二以上勤務届」は、制度上は従業員本人(被保険者)が作成し、提出する必要があります。しかし、この制度は複雑であり、個人で対応するのは難しい場合が多いです。そのため、実務的には、会社側が従業員の代わりに「二以上勤務届」を健康保険組合や管轄の年金事務所に提出することが一般的です。

生島社会保険労務士
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両方の職場で社会保険に加入が必要となる条件

両方の勤務先で社会保険の加入条件を満たしている場合、両方の職場で社会保険に加入する必要があります。

具体的には以下のようなケースです。

※A社もB社も従業員が101人以上(※2024年10月からは従業員数51人~100人の企業も対象)

例1:A社:本業(正社員)、B社:副業(月額賃金が100,000円、週25時間労働)の場合。

この場合、B社の副業も「月収が88,000円以上」であり、かつ「週の労働時間が20時間以上」であるため、両方の職場で社会保険に加入する必要があります。

例2:A社:パート(月額賃金が90,000円、週20時間労働)、B社:パート(月額賃金が100,000円、週25時間労働)の場合。

この場合、A社とB社の両方で「月収が88,000円以上」、かつ「週の労働時間が20時間以上」であるため、両方の職場で社会保険に加入する必要があります。

ちなみにA社かB社、どちらかの勤務先だけ加入条件を満たしている場合は、片方だけ社会保険に加入する必要があります。

両方満たしていない場合は、どちらも社会保険に加入する必要はありません。

ダブルワーク・掛け持ちのときの社会保険への加入条件や注意点について下記の記事で詳しく解説しています。

ダブルワーク・掛け持ちは社会保険はどうする? ダブルワーク・掛け持ちのとき社会保険加入は片方だけ?条件や注意点を解説

ダブルワークで社会保険に二重加入するメリット

ダブルワークで社会保険に二重加入することには、実はさまざまなメリットがあります。社会保険料の負担が増えるというデメリットもありますが、将来的な保障や給付の面で大きな利点があります。

ここでは、社会保険に二重加入することで得られる主なメリットについて詳しく解説していきます。

将来受け取れる年金額が増える!

社会保険に二重加入することの最大のメリットは、将来受け取れる年金額が増加することです。厚生年金保険に加入している場合、その保険料は将来の年金給付に直接反映されます。

ダブルワークで二つの職場から厚生年金保険料を納めることで、それぞれの給与に応じた保険料が積み立てられていきます。この積み立てた保険料は、将来の年金額の計算基礎となります。

具体的には、厚生年金の年金額は「平均標準報酬月額」と「加入期間」によって決まります。ダブルワークで二重加入することで、この「平均標準報酬月額」が上がり、結果として将来受け取れる年金額が増加するのです。

例えば、本業で月給20万円、副業で月給10万円の場合、二重加入することで年金額の計算基礎となる収入が30万円になります。これにより、将来の年金額が大幅に増加する可能性があります。

また、厚生年金には「在職老齢年金」という制度があり、65歳以降も働き続ける場合に年金額が調整されます。ダブルワークで二重加入することで、この在職老齢年金の計算にも有利に働く可能性があります。

ただし、年金額の増加幅は個人の状況によって異なりますので、具体的な試算については年金事務所や社会保険労務士に相談することをおすすめします。

年金の受給資格期間の短縮

社会保険に二重加入することの2つ目のメリットは、年金の受給資格期間が短縮される可能性があることです。年金を受け取るためには、一定期間の加入が必要です。

日本の年金制度では、老齢基礎年金を受給するためには、原則として10年以上の加入期間が必要です。この加入期間には、国民年金の加入期間、厚生年金保険の加入期間、そして合算対象期間が含まれます。

ダブルワークで社会保険に二重加入する場合、それぞれの職場での加入期間が別々にカウントされるわけではありません。しかし、二重加入することで、より確実に加入期間を積み重ねることができます。

例えば、一方の職場での雇用が不安定な場合でも、もう一方の職場で継続的に加入することで、加入期間の空白を防ぐことができます。これにより、年金の受給資格を確実に得られる可能性が高まります。

また、厚生年金保険には「みなし被保険者期間」という制度があります。これは、実際の加入期間よりも長い期間加入していたとみなす制度です。ダブルワークで二重加入することで、この「みなし被保険者期間」が適用される可能性も高まります。

さらに、厚生年金保険に加入することで、国民年金の第1号被保険者として別途保険料を納める必要がなくなります。これにより、国民年金の未納期間が生じるリスクを減らすことができ、結果として年金の受給資格を得やすくなります。

国民健康保険にはない給付や保障の強化

社会保険に二重加入することの3つ目のメリットは、国民健康保険にはない給付や保障が受けられることです。健康保険の給付内容は、国民健康保険と比べて一般的に充実しています。

まず、傷病手当金が挙げられます。これは、業務外の病気やケガで働けなくなった場合に、一定期間、給与の一部が補償される制度です。国民健康保険にはない給付であり、生活の安定に大きく寄与します。

次に、出産手当金があります。出産前後の休業期間中に、一定の給付が受けられます。これも国民健康保険にはない給付で、出産を控えた方にとっては大きな経済的支援となります。

また、健康保険組合によっては、人間ドックの費用補助や、特定の疾病に対する追加の給付など、独自の付加給付を行っているケースもあります。ダブルワークで二重加入することで、これらの付加給付を受けられる可能性が広がります。

さらに、健康保険の被扶養者として家族を加入させることができます。これにより、家族の医療費負担も軽減されます。国民健康保険の場合、世帯ごとの加入となりますが、健康保険では被保険者の扶養家族として加入できるため、保険料の面でもメリットがあります。

このように、社会保険に二重加入することで、より手厚い医療保障を受けられる可能性が高まります。特に、長期的な治療が必要な場合や、出産を控えている場合には、大きなメリットとなるでしょう。

精神的な安心感

社会保険に二重加入することの4つ目のメリットは、精神的な安心感が得られることです。これは数値化しにくい利点ですが、日々の生活や将来設計において非常に重要な要素です。

まず、複数の職場で社会保険に加入することで、一方の職場を失っても、もう一方の職場での保障が継続します。これにより、突然の失業や収入減少に対する不安が軽減されます。

また、将来の年金受給額が増加する可能性があることは、老後の生活に対する不安を和らげる効果があります。特に、現在の年金制度に対して不安を感じている方にとっては、自分の努力で将来の保障を増やせるという点で、大きな安心感につながります。

さらに、健康保険の給付が充実することで、病気やケガに対する不安も軽減されます。特に、傷病手当金や出産手当金などの所得保障は、万が一の際の経済的な不安を大きく軽減します。

加えて、雇用保険のセーフティネットが強化されることで、キャリアチェンジや新しい挑戦に対する心理的なハードルが下がる可能性があります。失業のリスクに対する備えがあることで、より自由に働き方を選択できるようになるのです。

また、社会保険に加入することで、社会的な信用度も上がります。例えば、住宅ローンの審査などで、安定した収入源として評価される可能性があります。

このような精神的な安心感は、日々の仕事のパフォーマンスにも良い影響を与える可能性があります。将来に対する不安が軽減されることで、現在の仕事により集中できるようになるかもしれません。

さらに、家族がいる場合は、家族の将来に対する不安も軽減されます。特に、被扶養者として家族を健康保険に加入させることができる場合、家族全体の医療保障が強化されることになります。

このように、社会保険に二重加入することで得られる精神的な安心感は、目に見えない大きなメリットと言えるでしょう。ただし、これらのメリットを最大限に活かすためには、自身の働き方や生活スタイルに合わせて適切に選択することが重要です。

ダブルワークで社会保険に二重加入するデメリット

ダブルワークで社会保険に二重加入することには、メリットだけでなくデメリットもあります。ここでは、社会保険に二重加入する際に注意すべき4つの主なデメリットについて詳しく解説していきます。これらのデメリットを理解することで、ダブルワークを始める際や継続する際の判断材料となるでしょう。

社会保険料の増加と手取り額の減少

ダブルワークで社会保険に二重加入すると、各職場での収入に基づいて社会保険料が計算されるため、支払う保険料の総額が増加します。これにより、1社で働いている場合よりも多くの保険料を納めることになり、毎月の収入から引かれる金額が増えます。その結果、手取り額が減少し、収入が増えたと思っても実際には手元に残るお金が思ったほど増えない、もしくは減ってしまうことがあります。

特に、ダブルワークによる追加収入を期待している場合、この手取り額の減少は大きなデメリットとなり得ます。収入が増えることで生活にゆとりが生まれると期待していたにもかかわらず、社会保険料の負担増加によってその効果が薄れてしまうと、働くモチベーションにも影響が出るでしょう。

手取り額を重視する場合は、ダブルワークによる収入増加と保険料負担のバランスを慎重に見極める必要があります。場合によっては、二重加入を避けるために勤務時間を調整するなどの対策も検討すべきです。

手続きが面倒

社会保険に二重加入する際の手続きの煩雑さも、無視できないデメリットの一つです。二重加入の手続きは、基本的に被保険者である従業員自身が行う必要があり、その過程は決して簡単ではありません。

例えば、健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択届や、二以上事業所勤務届の提出が必要です。これらの書類を自分で準備し、提出する必要があるため、手続きが煩雑に感じられることも少なくありません。

また、各職場とのやり取りや書類の準備には時間がかかるため、スムーズに手続きを進めるための時間と労力が求められます。

特に、普段忙しい中でこれらの手続きをこなすのは、非常に負担に感じることが多いでしょう。

社会保険に二重加入する場合の手続きについて詳しくはのちほど詳しく解説しています。

副業が本業の会社にバレる危険性がある

社会保険に二重加入することで、副業の存在が本業の会社に知られてしまう可能性があることも、重要なデメリットの一つです。多くの会社では就業規則で副業を禁止または制限しているため、この点は特に注意が必要です。

二重加入の手続きを行う際、年金事務所から本業の会社に対して照会が行われる場合があります。これは、被保険者の情報を確認するための通常の手続きですが、この過程で副業の存在が明らかになる可能性があります。

また、健康保険組合に加入している場合、保険料の按分計算のために両方の勤務先の情報が必要となります。この際に、本業の会社が副業の存在を知ることになる可能性があります。

副業が発覚した場合、最悪のケースでは本業の会社から懲戒処分を受けたり、解雇されたりする可能性もあります。特に、競合他社での副業や、本業の業務に支障をきたす可能性のある副業の場合は、会社側の対応が厳しくなる傾向があります。

ただし、近年では副業を認める企業も増えてきています。2018年1月に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、副業・兼業を前向きに捉えるよう企業に求めています。そのため、副業の申請を正式に行い、会社の承認を得た上で二重加入の手続きを行うことで、このリスクを回避できる可能性もあります。

いずれにせよ、副業を始める前に、本業の会社の就業規則や副業に対する方針をしっかりと確認し、必要に応じて上司や人事部門に相談することが重要です。社会保険の二重加入によるメリットと、副業が発覚するリスクを慎重に比較検討する必要があるでしょう。

社会保険に二重加入する場合は自分で手続きが必要

ダブルワークで社会保険に二重加入する場合、手続きは本人が行う必要があります。これは、複数の事業所で働いていることを正しく把握し、適切な保険料の計算や給付を行うために重要な手続きです。

健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届の提出

まず、二重加入の手続きには「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」の提出が必要です。この届出書は、複数の事業所で勤務していることを年金事務所に報告するためのものです。

この届出書の作成には、両方の勤務先の情報が必要となります。具体的には、事業所名、事業所所在地、事業所番号、被保険者番号などの情報を記入する必要があります。これらの情報を正確に把握し、記入することは意外と手間がかかります。

また、この届出書は勤務先を通じて提出するのではなく、被保険者本人が直接年金事務所に提出する必要があります。そのため、年金事務所に出向く時間を確保しなければなりません。

さらに、二重加入後も定期的に状況の確認や更新が必要となる場合があります。例えば、給与額に大きな変動があった場合や、勤務先を変更した場合などには、再度届出が必要となることがあります。

加えて、確定申告の際にも注意が必要です。二重加入している場合、社会保険料控除の計算が複雑になるため、確定申告の手続きにも時間がかかる可能性があります。

このような煩雑な手続きは、特に時間的余裕の少ない方にとっては大きな負担となります。手続きに不備があると、後々トラブルの原因になる可能性もあるため、慎重に対応する必要があります。

【ダブルワーク】副業している場合の社会保険手続きとは?二以上勤務届を出そう!

ダブルワークで社会保険に二重加入する場合でも、健康保険証は1つ

ダブルワークで社会保険に二重加入する場合でも、健康保険証は1枚だけ発行されます。これは、健康保険の被保険者資格は1つしか持てないためです。

健康保険証が1枚であることで、医療機関での混乱を防ぎ、適切な医療サービスを受けられるようになっています。ただし、厚生年金保険料は両方の事業所の給与を合算して計算されるため、保険料負担は増加することに注意が必要です。

また、副業先では健康保険証を提示する必要がないため、副業の存在を本業の会社に知られるリスクを軽減できる可能性があります。ただし、副業を禁止している会社では、就業規則に違反する可能性があるため、事前に確認することが重要です。

ダブルワークで社会保険に二重加入しないと罰則があるの?

ダブルワークで社会保険の加入条件を満たしているにもかかわらず、二重加入しない場合、法律上の罰則が設けられています。ここでは、社会保険の二重加入をしない場合のリスクと、それに伴う罰則について詳しく解説します。

まず、社会保険の加入は法律で定められた義務です。健康保険法と厚生年金保険法により、一定の条件を満たす労働者は必ず加入しなければなりません。この条件を満たしているにもかかわらず加入しない場合、法律違反となります。

具体的な罰則としては、健康保険法第208条および厚生年金保険法第102条に基づき、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。これは、事業主が被保険者の届出を行わなかった場合に適用される罰則です。

ただし、この罰則が実際に適用されるケースは稀です。多くの場合、まずは年金事務所から是正指導が行われ、それに従わない場合に罰則の適用が検討されます。

また、罰則以外にも、社会保険に加入しないことによるリスクがあります。

例えば、遡って加入手続きをする必要が生じた場合、過去の保険料を一括で支払わなければならない可能性があります。これは、被保険者である従業員の給与から天引きできなかった分も含まれるため、事業主にとって大きな負担となる可能性があります。

さらに、従業員側のリスクとしては、健康保険や厚生年金の給付を受けられない可能性があります。例えば、病気やケガで働けなくなった際に傷病手当金を受け取れなかったり、将来的に年金の受給額が減少したりする可能性があります。

したがって、ダブルワークで社会保険の加入条件を満たしている場合は、適切に二重加入の手続きを行うことが重要です。不明な点がある場合は、年金事務所や社会保険労務士に相談することをおすすめします。

生島社会保険労務士
生島社会保険労務士

本業と別に副業の事業を個人事業主から法人化する場合や役員報酬をうけとっている場合は、社会保険の加入の対象になります。このように両方の職場で社会保険の加入する場合は、二以上勤務届を提出する義務が生じますので注意が必要です。

「二以上勤務届」の手続きや保険料計算は非常に手間と時間がかかるため、専門家である社会保険労務士に依頼することも選択肢の一つです。

お困りの場合は、公式LINEにて社会保険に関するご質問を受け付けていますので、お気軽にご相談ください。

副業・兼業に関する裁判例

マンナ運輸事件(京都地判平成24年7月13日)

【概要】
運送会社が、準社員からのアルバイト許可申請を4度にわたって不許可にしたことについて、後2回
については不許可の理由はなく、不法行為に基づく損害賠償請求が一部認容(慰謝料のみ)された事案。


【判決抜粋】
労働者は、勤務時間以外の時間については、事業場の外で自由に利用することができるのであり、
使用者は、労働者が他の会社で就労(兼業)するために当該時間を利用することを、原則として許され
(ママ)なければならない。
もっとも、労働者が兼業することによって、労働者の使用者に対する労務の提供が不能又は不完全に
なるような事態が生じたり、使用者の企業秘密が漏洩するなど経営秩序を乱す事態が生じることもあり
得るから、このような場合においてのみ、例外的に就業規則をもって兼業を禁止することが許されるも
のと解するのが相当である。

東京都私立大学教授事件(東京地判平成20年12月5日)

【概要】
教授が無許可で語学学校講師等の業務に従事し、講義を休講したことを理由として行われた懲戒解雇
について、副業は夜間や休日に行われており、本業への支障は認められず、解雇無効とした事案。


【判決抜粋】
兼職(二重就職)は、本来は使用者の労働契約上の権限の及び得ない労働者の私生活における行為で
あるから、兼職(二重就職)許可制に形式的には違反する場合であっても、職場秩序に影響せず、
かつ、使用者に対する労務提供に格別の支障を生ぜしめない程度・態様の二重就職については、兼職
(二重就職)を禁止した就業規則の条項には実質的には違反しないものと解するのが相当である。

十和田運輸事件(東京地判平成13年6月5日)

【概要】
運送会社の運転手が年に1、2回の貨物運送のアルバイトをしたことを理由とする解雇に関して、
職務専念義務の違反や信頼関係を破壊したとまでいうことはできないため、解雇無効とした事案。


【判決抜粋】
原告らが行った本件アルバイト行為の回数が年に1、2回の程度の限りで認められるにすぎないこと
に、証拠及び弁論の全趣旨を併せ考えれば、原告らのこのような行為によって被告の業務に具体的に
支障を来したことはなかったこと、原告らは自らのこのような行為について会社が許可、あるいは少な
くとも黙認しているとの認識を有していたことが認められるから、原告らが職務専念義務に違反し、
あるいは、被告との間の信頼関係を破壊したとまでいうことはできない。

都タクシー事件(広島地決昭和59年12月18日)

【概要】
隔日勤務のタクシー運転手が、非番日に輸出車を船積みするアルバイトに月7、8回たずさわったこ
とを理由とする解雇に関して、労務提供に支障が生じていないこと、他の従業員の間でも半ば公然と行
なわれていたとみられること等の事情から、具体的な指導注意をしないまま直ちになした解雇は許され
ないとした事案。


【判決抜粋】
就業規則において兼業禁止違反の制裁が懲戒解雇を基準としていること等に照らすと、就業規則に
よって禁止されるのは会社の秩序を乱し、労務の提供に支障を来たすおそれのあるものに限られると解
するのが相当である。
タクシー乗務の性質上、乗務前の休養が要請されること等の事情を考えると、本件アルバイトは、就
業規則により禁止された兼業に該当すると解するのが相当である。しかしながら、現実に労務提供に支
障が生じたことをうかがわせる資料はないこと、従業員の間では半ば公然と行なわれていたとみられ、
かつ、アルバイトについての具体的な指導注意がなされていなかったこと、・・・(中略)・・・等の事情を
綜合すると、何らの指導注意をしないまま直ちになした解雇は(懲戒解雇を普通解雇にしたとしても)
余りに過酷であり、解雇権の濫用として許されないものと認めるのが相当である。

小川建設事件(東京地決昭和57年11月19日)

【概要】
毎日6時間にわたるキャバレーでの無断就労を理由とする解雇について、兼業は深夜に及ぶものであ
って余暇利用のアルバイトの域を超えるものであり、社会通念上、会社への労務の誠実な提供に何らか
の支障を来す蓋然性が高いことから、解雇有効とした事案。


【判決抜粋】
労働者は労働契約を通じて一日のうち一定の限られた時間のみ、労務に服するのを原則とし、就業時
間外は本来労働者の自由であることからして、就業規則で兼業を全面的に禁止することは、特別な場合
を除き、合理性を欠く。
しかしながら、・・・(中略)・・・兼業の内容によつては企業の経営秩序を害し、または企業の対外的信
用、体面が傷つけられる場合もありうるので、従業員の兼業の許否について、労務提供上の支障や企業
秩序への影響等を考慮したうえでの会社の承諾にかからしめる旨の規定を就業規則に定めることは不当
とはいいがたく、したがつて、同趣旨の債務者就業規則第三一条四項の規定は合理性を有するものであ
る。

橋元運輸事件(名古屋地判昭和47年4月28日)

【概要】
会社の管理職にある従業員が、直接経営には関与していないものの競業他社の取締役に就任したこと
は、懲戒解雇事由に該当するため、解雇有効とした事案。
【判決抜粋】
元来就業規則において二重就職が禁止されている趣旨は、従業員が二重就職することによって、会社
の企業秩序をみだし、又はみだすおそれが大であり、あるいは従業員の会社に対する労務提供が不能若
しくは困難になることを防止するにあると解され、従って右規則にいう二重就職とは、右に述べたよう
な実質を有するものを言い、会社の企業秩序に影響せず、会社に対する労務の提供に格別の支障を生ぜ
しめない程度のものは含まれないと解するのが相当である。

古河鉱業事件(東京高判昭和55年2月18日)

工場業務課営業係において製品の受注納入等の業務に従事している労働者と、工場製造課において
さく岩機部品の切削作業に従事している労働者について、会社の重大な秘密を記載した長期経営計画の
基本的方針を示す計画基本案を謄写版刷りで複製し、当該労働者が所属する社外の団体に配布した事案。
労働者は労働契約に基づき労務を提供するほか、信義則により使用者の業務上の秘密を守る義務を負
うとしたうえで、会社が機密漏洩防止に特段の配慮を行っていた長期経営計画の基本方針である計画基
本案を謄写版刷りで複製・配布した労働者に対する懲戒解雇を有効と判断した事案。

協立物産事件(東京地判平成11年5月28日)

外国会社から食品原材料等を輸入する代理店契約をしている会社の従業員が、顧客と共謀し、当
該顧客から会社に対する商品供給を停止したうえで、当該顧客が設立した競業会社の代表取締役に
在職中に就任した事案。
労務者は、使用者との雇用契約上の信義則に基づいて、使用者の正当な利益を不当に侵害しては
ならないという付随的な義務を負い、原告の就業規則にある従業員の忠実義務もかかる義務を定め
たものと解されるとしたうえで、外国会社から食品原材料等を輸入する代理店契約をしている会社
の従業員について、在職中の競業会社設立は、労働契約上の競業避止義務に反するとされた事案。

社会保険に二重加入した場合の保険料

社会保険に二重加入すると、保険料はどのように計算されるのか、気になる方も多いでしょう。社会保険料は、各職場での収入に基づいて算出されます。つまり、二重加入することで、2つの職場の収入を合算した金額から保険料が計算されることになります。その結果、1社での加入に比べて、全体の保険料負担が増える可能性があります。

ただし、増加した保険料は将来の年金額や医療保障など、社会保険制度の恩恵をより大きく受けるためのものです。

したがって、保険料の増加を負担と感じるか、将来の利益と捉えるかは、それぞれの状況によって異なります。自分にとって最適な選択をするために、各職場での収入や働き方を考慮し、慎重に検討することが求められます。

社会保険に加入するメリットとデメリット、加入条件を解説

まとめ:社会保険に二重加入するメリットとデメリットを考慮して、働き方を選択しましょう

ダブルワークで社会保険に二重加入することには、将来の年金額が増加するなどのメリットがある一方、社会保険料の負担が増えるなどのデメリットも存在します。

これらの要素を踏まえ、自分にとって最適な選択をすることが重要です。特に、将来の生活を見据えた計画を立てるためには、今の段階で適切な判断を行い、早めに手続きを進めることが求められます。

また、手続きには時間と労力がかかるため、必要な情報を集め、各職場と連携をとりながらスムーズに進めるよう心がけましょう。自分自身の働き方やライフプランに最も適した選択肢を見つけ、充実した将来に備えて行動を起こすことをおすすめします。

生島社会保険労務士
生島社会保険労務士

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