従業員の入退社手続きを行う中で、「雇用保険被保険者証って何の書類?」「退職する従業員にいつ渡せばいいの?」「紛失したと言われたらどうすれば?」と迷うことはないでしょうか。
雇用保険被保険者証は、従業員が雇用保険に加入していることを証明する書類です。
転職先での入社手続き、失業給付や教育訓練給付金の申請時に使われるため、事業主として適切に管理・交付することが求められます。紛失した場合でも、ハローワーク窓口で即日・無料で再発行できます。
この記事では、雇用保険被保険者証の基礎知識から交付義務、退職時の取り扱い、再発行の手続きまで、実務に必要な情報をまとめて解説します。
手続きが遅れれば罰則の対象になる可能性がありますし、被保険者証の渡し忘れは退職者とのトラブルにもつながります。
手続きを適切に行うことは、従業員の次のステップを守り、会社の信頼を維持することにつながります。

生島社労士事務所代表
生島 亮
いくしま りょう
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まずは、被保険者証がどのような書類なのか、その基本を押さえておきましょう。
記載内容、雇用保険の加入条件、そして離職票やマイナ保険証との違いについて整理します。
雇用保険被保険者証の記載内容と被保険者番号の役割
雇用保険被保険者証は、ハローワーク(公共職業安定所)から交付される書類で、「様式第7号」として定められています。
紙で交付されるのが一般的ですが、電子申請(e-Gov)を利用した場合はPDFの電子公文書として受け取るケースもあります。
被保険者証に記載されている主な情報は、以下の3つです。
・被保険者番号(4桁-6桁-1桁の計11桁) ・氏名 ・生年月日
なお、事業所名や資格取得年月日は、被保険者証とは別に交付される「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」に記載されています。
これは従業員の雇用保険加入をハローワークが確認したことを通知する書類で、資格取得届の提出後に被保険者証と一緒に届きます。被保険者証そのものに書かれている情報ではないため、混同しないよう注意してください。
特に重要なのが被保険者番号です。
この番号は、転職しても原則として生涯引き継がれる個人固有の番号で、新しい会社での雇用保険の資格取得手続きに使います。
従業員が入社時に「番号がわからない」と言った場合は、ハローワークに前職の会社名や生年月日で照会をかけることで確認できます。ここで安易に「新規加入」として手続きをしてしまうと、過去の加入期間が分断され、将来の失業給付の日数が短くなるなど従業員に不利益が生じます。
なお、雇用保険の加入対象は、週20時間以上・31日以上の雇用見込みがある労働者です。パート・アルバイトも対象になります。
加入条件の詳細は下記の記事をご確認ください。
雇用保険とは?加入条件や手続き、計算方法までわかりやすく解説
離職票・健康保険証(マイナ保険証)との違い
雇用保険被保険者証・離職票・健康保険証は、それぞれ別の制度に基づく書類です。
退職時にどれを渡し、どれを回収するかを正確に把握しておく必要があります。
3つの書類の違いを表にまとめました。
| 項目 | 雇用保険被保険者証 | 離職票(1・2) | 健康保険の資格確認に関する書類 |
|---|---|---|---|
| 証明する内容 | 雇用保険に加入している事実 | 退職した事実と賃金・退職理由 | 健康保険に加入している事実 |
| 発行元 | ハローワーク | ハローワーク | 保険者(協会けんぽ・健保組合等) |
| 退職時の扱い | 会社保管の場合は本人に返却 | 手続き完了後に退職者へ送付 | マイナ保険証利用者は回収不要。資格確認書が交付されている方は回収・返納が必要 |
離職票とは?発行手続きの流れや必要書類、使い道を社労士が解説
2024年12月2日をもって、従来のプラスチック型・紙型の健康保険証は新規発行が停止されました。
2026年時点では、健康保険の資格確認に関する書類は主に3種類あります。
| 書類 | 内容 | 退職時の対応 |
|---|---|---|
| マイナ保険証 | マイナンバーカードによる資格確認。原則の確認手段 | 回収物なし。システム上の資格喪失手続きのみ |
| 資格確認書 | マイナ保険証を持たない方に保険者から交付される書類 | 回収・返納が必要 |
| 資格情報のお知らせ | マイナ保険証の登録者に交付される、保険者番号等を記載した通知書 | 回収不要 |
事業主は、退職する従業員がどの方法で資格確認を行っているかを把握し、資格確認書が交付されている方からは確実に回収してください。
健康保険証の廃止で2024年12月2日から社会保険手続きはどう変わった?マイナ保険証についても解説
次に、被保険者証がどのような流れで交付されるのか、事業主として何をすべきかを確認しましょう。
雇用保険被保険者証が交付されるタイミングと流れ
被保険者証は、ハローワークから従業員の自宅に直接届くものではありません。事業主が資格取得届を提出することで、事業主宛に交付される仕組みです。
手続きの流れは次のとおりです。
事業主が、従業員の入社後に資格取得届をハローワークに提出。
ハローワークでの処理が完了後、事業主宛に以下の書類が交付されます。
・雇用保険被保険者証 → 従業員本人に渡す
・資格取得等確認通知書(被保険者通知用) → 従業員本人に渡す
・資格取得等確認通知書(事業主通知用) → 事業主が4年間保管
事業主が、被保険者証と被保険者通知用の書類を従業員本人に渡します。
電子申請の場合は、これらがPDFの電子公文書として交付されます。従業員に渡すものと会社で保管するものを正しく区別してください。
事業主が行う資格取得届の提出手続き
「雇用保険被保険者資格取得届」は、被保険者となった日の属する月の翌月10日までに、事業所管轄のハローワークへ提出します。
転職者の場合は、前職の被保険者番号を確認して資格取得届に記載します。番号がわからないと言われた場合は、備考欄に前職の会社名を記載してハローワークに照会を依頼してください。
新卒や雇用保険に初めて加入する方の場合は、新規加入として手続きを行い、新たな被保険者番号が付与されます。
提出方法は、ハローワーク窓口への持参、郵送、e-Gov(電子申請)の3つがあります。
雇用保険の加入手続きの方法を解説!必要書類・手続きの流れを含めて紹介
従業員への交付と会社保管の実務的な注意点
雇用保険法施行規則第10条では、「公共職業安定所長は被保険者証を交付する」「事業主を通じて行うことができる」と定められています。つまり、事業主は書類の経由機関であり、被保険者証の最終的な帰属先は従業員本人です。
厚生労働省も、事業主が受け取った被保険者証は「確実に、速やかに本人へ渡すこと」を行政指導で求めています。被保険者証は本人に交付するのが原則です。
実態としては、紛失防止を理由に会社が一括保管し退職時に返却する企業も多いですが、この運用はあくまで例外的なものです。保管中に紛失や毀損があった場合の責任は事業主が負うことになります。
おすすめの運用としては、被保険者証の原本は速やかに従業員本人に渡し、会社はコピーまたはスキャンデータ(PDF)を人事データベースに保管する方法です。交付の際は受領印をもらっておくと、後のトラブル防止につながります。
被保険者証(被保険者番号)は、転職時や各種給付金の申請時に必要になります。事業主として「なぜ従業員に確実に渡す必要があるのか」を理解しておきましょう。
転職時(新しい勤務先への提出)
転職先の会社が雇用保険の資格取得届を提出する際に、前職の被保険者番号が必要です。入社手続きで「雇用保険被保険者証を提出してください」と求められるのはこのためです。
新しく従業員を雇い入れる側の事業主は、入社時に被保険者証の提示を受けたら、番号と氏名・生年月日を確認し、資格取得届に正確に反映してください。
失業給付金・教育訓練給付金の申請時
退職後にハローワークで失業給付(基本手当)の受給資格決定を受ける際は、離職票などの必要書類を提出します。
被保険者証は必須書類ではありませんが、番号確認のために求められることがあるため、在職中に手元にあるか確認しておくと手続きがスムーズです。
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また、教育訓練給付金の申請時にも被保険者番号の確認が求められます。給付率は制度の種類や条件によって異なります(2026年3月時点)。
・一般教育訓練給付金: 受講費用の20%(上限10万円)
・特定一般教育訓練給付金: 受講費用の40%(資格取得等の条件達成で50%、上限25万円)
・専門実践教育訓練給付金: 受講費用の50% → 資格取得で70% → 賃金上昇で80%
参考: 教育訓練給付制度(厚生労働省)
育児休業給付金・介護休業給付金の申請時
育児休業や介護休業中の給付金を申請する際にも、被保険者番号は必須です。実務では事業主が代わりに申請手続きを行うケースがほとんどです。
休業に入る前に、従業員の被保険者番号が社内の人事システムに正確に登録されているか確認しておくことが大切です。出産や育児の真っ最中に番号を確認する作業は、従業員にとって大きな負担になります。
育休手当(育児休業給付金)とは?もらえる条件や対象期間を詳しく解説
退職時の手続きは、資格取得時以上に厳密な期限管理が求められます。手続きの遅れは、退職者の失業給付の受給開始が遅れるだけでなく、会社の信頼を損なう原因にもなります。
以下の流れに沿って、漏れなく対応しましょう。
退職時に雇用保険被保険者証を返却する流れ
会社が被保険者証の原本を保管していた場合は、退職日に確実に本人へ返却してください。既に交付済みの場合は改めて渡す必要はありませんが、「転職先やハローワークで必要になりますので、お手元にご準備ください」と一言伝えておくと親切です。
退職時に渡す書類をまとめると以下のとおりです。
| 書類 | タイミング |
|---|---|
| 雇用保険被保険者証 | 退職日当日(会社保管の場合) |
| 退職証明書 | 退職者が請求した場合 |
| 離職票-1・2 | ハローワーク手続き完了後に送付(※条件を満たせばマイナポータル直送も可。下記参照) |
| 源泉徴収票 | 最終給与計算後 |
| 健康保険資格喪失証明書等 | 退職者から請求があった場合(国民健康保険への切り替え等に必要) |
4-2. 雇用保険被保険者資格喪失届の提出
資格喪失届の提出期限は、退職日の翌日(=資格喪失日)の翌日から起算して10日以内です(雇用保険法施行規則第7条)。
例えば、3月31日に退職した場合、4月1日が資格喪失日となり、届出の期限は4月2日〜4月11日です。
届出先は事業所管轄のハローワークで、提出方法は窓口・郵送・電子申請のいずれかです。添付書類として、賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、労働者名簿、退職届のコピーなどが求められます。
提出が遅れると、離職票の発行が遅れて退職者が失業給付を受けられない期間が生じます。退職者に不利益を与えないためにも、迅速な対応を心がけましょう。
雇用保険被保険者資格喪失届の書き方を記入例付きで解説!添付書類や提出時の注意点も紹介
離職証明書の作成と退職者への書類送付
退職者が離職票の発行を希望する場合は、「離職証明書」を資格喪失届と同時にハローワークへ提出します。
59歳以上の退職者については、本人の希望の有無にかかわらず離職証明書の提出が義務です。高年齢雇用継続給付の受給資格確認に必要なためです。
離職理由の記載には特に注意してください。自己都合か会社都合かによって、退職者の失業給付の日数や給付制限期間が大きく変わります。事実に基づき、退職者の署名・記名押印を得た上で正確に記載しましょう。
なお、2025年1月20日以降、マイナポータルを通じて離職票の電子データを退職者へ直接送付するサービスが始まっています。ただし、利用するには次の3つの条件をすべて満たす必要があります。
・退職者本人がマイナンバーカードを取得し、マイナポータルの利用設定を済ませていること
・退職者が「離職票の電子送付を希望」するとハローワークに申し出ていること
・事業主が資格喪失届・離職証明書を電子申請(e-Gov)で提出していること
退職者から希望があった場合は、これらの条件を確認した上で案内してください。
雇用保険被保険者離職証明書とは?書き方と必要書類を記入例付きで社労士が解説
被保険者証を紛失した場合は、ハローワークで再発行(再交付)できます。費用は無料です。「被保険者証をなくしてしまった」と従業員から相談される場面もあるため、事業主として再発行の方法を把握しておきましょう。
ハローワーク窓口での再発行(即日交付)
最寄りのハローワーク窓口で「雇用保険被保険者証再交付申請書(様式第8号)」を提出すると、原則その場で即日再発行されます。
必要なものは、本人確認書類(運転免許証等の顔写真付き1点、または顔写真なし2点)と、最後に雇用保険に加入していた会社の情報(正式名称・所在地・電話番号)です。
転職先への提出期限が迫っている場合など、急ぎのときに最も確実な方法です。
郵送での再発行申請
ハローワークの開庁時間に行けない場合は、郵送で申請できます。再交付申請書、本人確認書類のコピー、返信用封筒(切手貼付)を管轄のハローワークに送付してください。
再発行された被保険者証が届くまで、概ね1〜2週間ほど見ておく必要があります。
電子申請(e-Gov)での再発行
e-Gov(電子政府の総合窓口)を使えば、24時間いつでもオンラインで申請できます。電子署名が必要ですが、法人の場合はGビズIDを利用すれば電子署名を省略して申請が可能です。
会社の総務・人事部門がGビズIDを取得済みであれば、従業員の代理申請にも活用でき、効率的に手続きを進められます。
会社が代理で再発行する方法と必要書類
退職手続きの途中で被保険者証が見つからないことに気づいた場合など、事業主が代理で再発行申請を行うことも可能です。
代理申請に必要なものは次のとおりです。
再交付申請書(申請者欄は従業員本人の情報を記載) 従業員本人からの委任状 代理人(会社担当者)の本人確認書類 従業員本人の本人確認書類の写し
会社側から「代理で再発行の手続きをしましょうか」と一言声をかけることで、退職手続きが円滑に進みます。
最後に、実務でよく寄せられる疑問をまとめました。
被保険者番号は転職しても引き継がれる?
はい、原則として生涯引き継がれます。
被保険者番号は「1人につき1番号」で管理されており、転職先の会社が資格取得届を提出する際に同じ番号を使用します。番号が引き継がれることで、各社での加入期間が通算され、失業給付の日数に反映されます。
雇用保険被保険者証をもらっていない・届かない場合は?
まず、前職の会社に確認してください。
「もらっていない」と思っている場合、多くは入社時に交付済みだったのに本人が保管場所を忘れているか、会社が一括保管していて渡し漏れているかのどちらかです。
事業主としては、自社の保管状況を速やかに確認しましょう。原本が残っていれば書留で郵送し、交付済みの記録があれば「ハローワークで即日・無料で再発行が可能です」と案内してください。
退職処理のチェックリストに「被保険者証の返却・交付確認」の項目を入れておくと、こうしたトラブルを未然に防げます。
雇用保険被保険者証に有効期限はある?
被保険者証そのものに有効期限はありません。
一度交付されれば、転職しても退職しても証書自体はずっと有効です。
また、長期間(7年以上など)雇用保険に未加入だった場合でも、被保険者番号は消滅しません。ハローワークの案内では、被保険者証が見当たらない場合や長期の空白がある場合でも、資格取得届の備考欄に前職の事業所名を記載して提出すれば、ハローワーク側で過去の番号を照会・引き継ぎ処理してくれます。
以前は「7年以上未加入で番号が抹消される」という情報も一部で広まっていましたが、公式の手引にそのような記載はありません。被保険者証が手元にないからといって安易に「新規加入」で届け出るのではなく、前職の情報を記載した上でハローワークに提出するのが正しい対応です。
パート・アルバイト・派遣社員でも対象になる?
はい、雇用形態に関係なく対象です。
週20時間以上、31日以上の雇用見込みがあれば、パートでもアルバイトでも雇用保険に加入する義務があります。「試用期間中だから加入させなくてよい」という扱いは違法です。
派遣社員の場合は、派遣元(人材派遣会社)が手続きを行います。派遣先の事業主が手続きを行う必要はありません。
雇用保険被保険者証は、従業員のキャリアの連続性を守り、失業給付や各種休業給付を正しく受けるための大切な書類です。事業主は、入社時の資格取得届の提出から退職時の返却まで、一貫した管理体制を整えておく必要があります。
雇用保険被保険者証は、従業員のキャリアの連続性を守り、失業給付や各種休業給付を正しく受けるための大切な書類です。事業主は、入社時の資格取得届の提出から退職時の返却まで、一貫した管理体制を整えておく必要があります。
雇用保険の手続きは年々複雑化しており、マイナ保険証への移行に伴う健康保険の管理と並行して対応が求められます。「手続きの抜け漏れが心配」「期限内に処理しきれるか不安」という場合は、専門家への相談を検討してみてください。
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