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個人事業主は従業員を1人でも雇うと雇用保険への加入が義務?加入条件と手続きを社労士が解説

個人事業主として事業を営む方が従業員を雇用する際、その人数が1人であっても、条件を満たせば雇用保険への加入が法律で義務付けられています。

「個人事業主だから」「従業員が少ないから」といった理由で加入が免除されることはありません。雇用保険は失業時の給付だけでなく、育児休業給付や介護休業給付など様々な保障を従業員に提供する重要な制度です。

本記事では、個人事業主が知っておくべき雇用保険の基礎知識から加入条件、具体的な手続き方法、そしてメリットまで詳しく解説します。適切な対応で従業員を守り、事業の信頼性を高めていきましょう。

この記事を監修した人

生島社労士事務所代表

生島 亮

いくしま りょう

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個人事業主は従業員を1人でも雇用したら雇用保険の加入義務が生じる

個人事業主として事業を営んでいる方が、事業拡大などの理由で従業員を雇用することになった場合、一定の条件を満たす従業員については雇用保険への加入が法律で義務付けられています。

これは、従業員が1人であっても変わりません。「個人事業主だから」「従業員が少ないから」という理由で加入を免除されることはありません。

適切な手続きを行わないと、事業主および従業員双方に不利益が生じる可能性があるため、注意が必要です。

雇用保険は従業員を守るための重要な社会保障制度であり、個人事業主として適切に手続きを行うことは、法令遵守の観点からも事業経営の信頼性の面からも非常に重要です。

生島社会保険労務士
生島社会保険労務士

個人事業主が社会保険に加入する場合は任意適用が必要です。 社会保険に関する手続き(届出・種類)は複雑で多くの専門的知識を必要とするため、社労士に依頼することも検討してください。

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雇用保険とは?

雇用保険とは、労働者が失業した場合や、育児・介護のために休業した場合などに、生活の安定を図るために必要な給付を行う、国の社会保険制度です。また、労働者の再就職を支援したり、能力開発を促進したりする事業も行っています。

雇用保険は、労災保険と合わせて「労働保険」と呼ばれています。労働保険は、労働者を1人でも雇用する事業主に対して、加入が義務付けられている社会保険制度です。労災保険が仕事中や通勤途中のケガや病気を補償するのに対し、雇用保険は主に失業時の生活保障や再就職支援を行います。また、雇用保険には、就業促進給付(再就職手当など)や教育訓練給付など、失業時以外の給付もあります。

労災保険は、従業員を1人でも雇用していれば、原則として加入が義務付けられています。

個人事業主の労災保険の手続きについては、以下の記事で詳しく解説しています。

個人事業主は従業員を雇用したら労災保険の加入が義務!手続きや負担金額を社労士が解説

個人事業主本人は雇用保険に加入できない理由

個人事業主本人は、原則として雇用保険に加入することができません。その理由は、雇用保険の被保険者となるためには「労働者」であることが要件となっているからです。個人事業主は自らの事業を営む事業主であり、労働基準法上の「労働者」には該当しません。

会社員と個人事業主の最大の違いは、「雇用関係」の有無にあります。会社員は会社と雇用契約を結び、会社の指揮命令下で働く「労働者」です。一方、個人事業主は自らの裁量で事業を行い、誰かに雇われているわけではないため、労働基準法上の労働者に該当しません。

また、労災保険には一人親方などの特別加入制度がありますが、雇用保険には個人事業主本人が特別に加入できる制度はありません。このため、個人事業主が自分自身を雇用保険に加入させる方法は基本的にはありません。

ただし、個人事業主であっても、別の会社で雇用されている場合(いわゆるダブルワークの場合)は、その雇用先で労働時間などの加入条件を満たせば、その勤務先において雇用保険に加入することは可能です。

この場合、その会社での勤務が雇用保険の加入条件(週の所定労働時間が20時間以上、31日以上の雇用見込みがあるなど)を満たしていれば、その会社で雇用保険に加入することができます。

ダブルワーク・掛け持ちは社会保険はどうする? ダブルワーク・掛け持ちのとき社会保険加入は片方だけ?条件や注意点を解説

従業員が5人以上の場合は社会保険の加入が義務

個人事業主が従業員を雇用する場合、雇用保険以外にも社会保険の加入義務が発生することがあります。

特に、従業員が常時5人以上になると、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務となります。(ただし、農林水産業やサービス業など、一部の業種は除きます。)

社会保険の適用事業所となる条件は、法人の場合は従業員数に関わらず強制適用ですが、個人事業主の場合は原則として従業員が5人以上の場合に強制適用となります。社会保険の加入は、従業員の福利厚生を充実させ、安心して働ける環境を整える上で重要な要素となります。

個人事業主が従業員1人、あるいは5人以下を雇う場合の社会保険加入の条件や、具体的な手続き、注意点などについては、以下の記事で詳しく解説しています。

個人事業主が従業員1人、5人以下を雇う場合の社会保険加入の条件は?手続きや注意点も解説

雇用保険に未加入の場合のペナルティ

個人事業主が、雇用保険の加入条件を満たす従業員を雇用しているにもかかわらず、雇用保険に加入していない場合、法律違反となり、厳しいペナルティが科されます。

具体的には、雇用保険法違反として、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。これは、雇用保険の加入が法律で義務付けられているにもかかわらず、その義務を怠ったことに対する罰則です。

さらに、未加入期間中の雇用保険料を遡って徴収されるだけでなく、追徴金が加算される場合もあります。また、罰則だけでなく、従業員にとっても大きな不利益が生じます。雇用保険に未加入の場合、従業員は以下のような給付を受けることができなくなります。

  1. 失業手当(基本手当):失業時の生活を支える重要な給付
  2. 育児休業給付金:育児休業中の所得保障
  3. 介護休業給付金:家族の介護のための休業中の所得保障
  4. 教育訓練給付金:スキルアップのための支援

これらの給付を受けられないことは、従業員の生活安定を脅かすだけでなく、優秀な人材の確保・定着の観点からも個人事業主にとって大きなデメリットとなります。また、適切な社会保険制度の整備は、事業の信頼性向上にもつながります。

雇用保険の未加入は、事業主、従業員双方にとって、大きなリスクとなります。
「知らなかった」「手続きが面倒だった」では済まされません。従業員を雇用する際は、必ず雇用保険の加入条件を確認し、適切な手続きを行いましょう。

【関連記事】
雇用保険に未加入だと違法?入ってない場合の罰則と発覚時の対処法を解説

雇用保険の対象となる加入条件

従業員を雇用したら、必ず雇用保険に加入しなければならない、というわけではありません。雇用保険の加入には、一定の条件があります。ここでは、個人事業主が従業員を雇用する際に、雇用保険の適用対象となる条件について詳しく解説します。

雇用保険の適用対象となる従業員

雇用保険の適用対象となるのは、以下の2つの条件を両方満たす従業員です。

1.1週間の所定労働時間が20時間以上であること

1週間の所定労働時間が20時間未満であっても、雇用契約上、週によって労働時間が変動し、20時間以上となる週がある場合は、原則として雇用保険の対象となります。

2.31日以上引き続き雇用される見込みがあること

雇用契約の期間が31日未満であっても、更新の可能性がある場合や、同様の雇用契約で31日以上雇用されている労働者がいる場合は、「31日以上引き続き雇用される見込みがある」と判断されます。また、試用期間中であっても、この条件を満たせば、雇用保険の対象となります。

上記2つの条件を満たせば、正社員だけでなく、パート、アルバイト、契約社員、派遣社員など、雇用形態に関わらず、原則として雇用保険の対象となります。ただし、派遣社員の場合は、派遣元の会社で雇用保険に加入します。

雇用保険の適用対象とならない従業員

以下の従業員は、原則として雇用保険の適用対象となりません。

  • 1週間の所定労働時間が20時間未満
  • 継続して31日以上雇用する予定がない(日々雇用される労働者や、30日以内の期間を定めて雇用される労働者など)
  • 季節的に雇用される場合で、次のいずれかに該当する場合(例:スキー場の従業員、海の家の従業員など)
    • 4か月以内の期間を定めて雇用される
    • 1週間の所定労働時間が30時間未満
  • 学校教育法で規定される学校・専修学校・各種学校の学生または生徒(昼間学生)
  • 船員保険の被保険者
  • 代表取締役など会社の役員
  • 個人事業主と同居している親族

1週間の所定労働時間が20時間未満の労働者でも、雇用契約上、週によって労働時間が変動し、20時間以上となる週がある場合は、原則として雇用保険の対象となります。

家族を従業員にする場合の注意点(親族の適用条件)

個人事業主が家族(配偶者や親族)を従業員として雇用する場合、雇用保険の取り扱いについて、注意が必要です。同居の親族は、原則として雇用保険の被保険者となりません。これは、同居の親族は、家計を共にしていることが多く、労働者としての実態が曖昧であるためです。しかし、以下の条件を全て満たす場合は、同居の親族であっても、例外的に雇用保険の被保険者となることができます。

*   業務が家事労働ではなく、事業の業務であること

*   就業実態が他の従業員と同様であること(出勤、仕事内容など)

*   賃金が実際に支払われており、給与明細や賃金台帳などで確認できること

*   労働保険料や社会保険料の本人負担分が給与から控除されていること

ここでいう労働者性とは、一般の従業員と同じように、事業主の指揮命令下で労務を提供し、その対価として賃金を受け取っている状態を指します。これらの条件を満たすかどうかは、個別のケースごとに判断されます。判断が難しい場合は、労働基準監督署や社会保険労務士に相談することをおすすめします。同居の親族を雇用する場合は、労働者性を証明するための書類(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿やタイムカード、雇用契約書など)をしっかりと整備しておくことが重要です。

個人事業主が従業員を雇用する場合の手続き

従業員を雇用した場合、個人事業主は、労働保険(労災保険・雇用保険)や社会保険(健康保険・厚生年金保険)に関する様々な手続きを行う必要があります。ここでは、特に雇用保険に焦点を当て、従業員を初めて雇用する場合と、すでに適用事業所となっている場合について解説しています。

適用事業所となった時

個人事業主が初めて雇用保険の対象となる従業員を雇用する場合、以下の手続きが必要となります。

以下では、はじめて手続きを行う方にもわかりやすいよう、各ステップで必要となる書類や提出先、注意点などを詳しく説明していきます。

①労働保険の保険関係成立届の作成と提出

まず、「労働保険の保険関係成立届」を作成し、所轄の労働基準監督署に提出します。これは、労働保険(労災保険・雇用保険)の関係が成立したことを届け出るための書類です。

項目内容
提出先所轄の労働基準監督署
提出期限従業員を雇用した日の翌日から10日以内
必要書類・労働保険保険関係成立届(様式第1号)
・事業主の印鑑(届出に押印が必要な場合)

雇用保険と労災保険をまとめて「労働保険」と呼びます。この届出により、労働保険の適用事業所となります。

②労働保険概算保険料申告書の作成と提出

次に、「労働保険概算保険料申告書」を作成し、提出します。これは、その年度(4月1日から翌年3月31日まで)に支払う見込みの賃金総額に基づいて、概算の保険料を申告するための書類です。

項目内容
提出先所轄の労働基準監督署または都道府県労働局、または金融機関
提出期限従業員を雇用した日の翌日から10日以内
必要書類・労働保険概算保険料申告書(様式第6号)
・賃金総額の見込み額がわかる資料

③概算保険料の納付

社会保険に未加入のままだと罰則やリスクも

労働保険概算保険料申告書を提出したら、算出された概算保険料を納付します。

項目内容
納付先銀行、郵便局などの金融機関または労働基準監督署
納付期限申告書の提出と同時(保険関係が成立した日から50日以内)
必要なもの・納付書(申告書と一体になっている場合があります)
・納付金額

申告した概算保険料を期限内に納付します。口座振替を利用することもできます。

労働保険料の納付方法と期限は?支払い時期や分割納付について社労士が解説

④雇用保険適用事業所設置届の作成と提出

「雇用保険適用事業所設置届」を作成し、所轄のハローワークに提出します。
これは、雇用保険の適用事業所となったことを届け出るための書類です。

項目内容
提出先所轄のハローワーク
提出期限適用事業に該当(労働者を雇用する事業を開始)した日の翌日から10日以内
必要書類・雇用保険適用事業所設置届
・労働保険保険関係成立届の事業主控(労働基準監督署受理済みのもの)
・事業所の実在を証明する書類(個人事業の場合:事業許可証、契約書、公共料金の請求書など)

⑤雇用保険被保険者資格取得届の作成と提出

「雇用保険被保険者資格取得届」を作成し、所轄のハローワークに提出します。
これは、従業員が雇用保険の被保険者となったことを届け出るための書類です。

項目内容
提出先所轄のハローワーク
提出期限従業員を雇用した日の翌月10日まで
必要書類・雇用保険被保険者資格取得届、・従業員のマイナンバー(個人番号)・雇用契約書など雇用関係を証明する書類

この届出により、従業員が雇用保険の被保険者となります。届出後、ハローワークから「雇用保険被保険者証」が交付されますので、従業員に渡す必要があります。

マイナンバーの記載が必要ですが、提供を拒否された場合は、その旨を申し出ることで受理されます。ただし、マイナンバーの提供は法令で定められた義務であることを従業員に説明してください。

従業員を雇用したときの手続き

適用事業所となった後、新たに従業員を雇用した場合は、その都度、「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する必要があります。提出期限や提出先は、上記⑤と同様です。

雇用保険の対象となる従業員を雇用するたびに、この届出を行う必要があります。届出後、ハローワークから「雇用保険被保険者証」が交付されますので、従業員に渡してください。

従業員が離職したときの手続き

従業員が離職した場合は、「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」(退職する従業員から「離職票」の発行を希望された場合)を作成して提出する必要があります。

雇用保険被保険者資格喪失届の提出

「雇用保険被保険者資格喪失届」を作成し、所轄のハローワークに提出します。これは、従業員が雇用保険の被保険者でなくなったことを届け出るための書類です。

項目内容
提出先所轄のハローワーク
提出期限従業員が離職した日の翌日から10日以内
必要書類・雇用保険被保険者資格喪失届
・その他(従業員の雇用契約書、賃金台帳など)

雇用保険被保険者離職証明書の交付

退職する従業員が「離職票の発行」を希望した場合は、「雇用保険被保険者離職証明書」を作成し、ハローワークに提出する必要があります。(提出期限は、資格喪失届と同じ)

この離職票は、従業員が失業給付(基本手当)を受給するために必要な書類です。

離職証明書には、離職理由や賃金支払い状況などを正確に記載する必要があります。虚偽の記載をした場合、罰則の対象となる可能性があります。

手続きが遅れたり、誤りがあったりすると、従業員が失業給付をスムーズに受けられなくなるなど、不利益が生じる可能性があります。また、事業主も、罰則を受けたり、行政指導を受けたりする可能性があります。

不明な点がある場合は、労働基準監督署、ハローワーク、または社会保険労務士に相談し、適切なアドバイスを受けましょう。

離職票(1と2)とは?発行手続きや離職証明書・退職証明書の違いを社労士が解説

労働保険料の年度更新の手続き

労働保険料(労災保険料と雇用保険料)は、年に1度、「労働保険の年度更新」という手続きを行って、申告・納付します。年度更新は、すべての事業主が行う必要がある、重要な手続きです。

年度更新とは、毎年6月1日から7月10日までの間に、前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を申告・納付する手続きのことです。

  • 確定保険料: 前年度(4月1日から翌年3月31日まで)に従業員に支払った賃金総額に基づいて計算した、確定した保険料額です。
  • 概算保険料: 当年度(4月1日から翌年3月31日まで)に従業員に支払う予定の賃金総額に基づいて計算した、概算の保険料額です。

年度更新では、まず、前年度の確定保険料を計算し、既に納付した概算保険料との差額を精算します。概算保険料が不足していた場合は追加で納付し、過払いがあった場合は還付または翌年度の概算保険料に充当されます。

そして、当年度の概算保険料を申告し、納付します。
概算保険料は、原則として、3回に分けて納付することができます(分割納付)。

労働保険の年度更新は、毎年必ず行わなければならない手続きです。期限内に、正確に申告・納付を行い、安心して事業を運営できるようにしましょう。

労働保険の年度更新とは?手続き方法や対象期間、申告書作成時の注意点をわかりやすく解説

雇用保険の給付内容(従業員向け)

雇用保険制度は、労働者の生活の安定と就職の促進を図るため、様々な給付を行っています。個人事業主が従業員を雇用保険に加入させることで、従業員は以下のような給付を受けることができます。

雇用保険の給付は、大きく分けて「失業等給付」と「育児休業給付」があります。(※ 厳密には、「育児休業給付」は「失業等給付」とは別の給付として位置づけられていますが、本記事では、便宜上、まとめて解説します。)

失業等給付

失業等給付には、以下の4つの種類があります。

求職者給付(失業給付)

一般的に「失業保険」や「失業手当」と呼ばれるものが、この求職者給付(基本手当)です。労働者が失業した場合に、生活の安定を図り、求職活動を支援するために支給されます。

基本手当の給付日数は、離職理由、年齢、雇用保険の被保険者期間などによって異なります。基本手当の給付額は、原則として、離職前6ヶ月間の賃金日額の50~80%です。(賃金日額が低いほど、給付率は高くなります。)

基本手当を受給するためには、ハローワークで求職の申し込みを行い、積極的に求職活動を行う必要があります。

就職促進給付

失業している方が、早期に再就職できるように支援するための給付です。

主なものとして、以下の給付があります。

  • 再就職手当:
    基本手当の受給資格がある方が、早期に安定した職業に就いた場合に、基本手当の支給残日数に応じて、一時金として支給されます。
  • 就業促進定着手当:
    再就職手当の支給を受けた方が、再就職先で6ヶ月以上雇用され、賃金が低下した場合に、一定額が支給されます。
  • 広域求職活動費:
    ハローワークの紹介で、遠隔地の事業所の面接などを受ける場合に、交通費や宿泊費が支給されます。

教育訓練給付

労働者の主体的な能力開発を支援するための給付です。厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を受講し、修了した場合に、受講費用の一部が支給されます。教育訓練給付には、「一般教育訓練給付金」「専門実践教育訓練給付金」「特定一般教育訓練給付金」の3種類があります。

雇用継続給付

労働者の雇用の継続を支援するための給付です。

主なものとして、以下の給付があります。

  • 高年齢雇用継続給付:
    60歳以上65歳未満の労働者で、賃金が低下した場合に、一定額が支給されます。
  • 育児休業給付金:
    労働者が育児休業を取得した場合に、一定期間、休業前の賃金の一部が支給されます。
  • 介護休業給付金:
    労働者が家族の介護のために休業を取得した場合に、一定期間、休業前の賃金の一部が支給されます。


育児休業給付

育児休業給付金は、労働者が1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した場合に、雇用保険から支給される給付金です。(一定の条件を満たせば、子が1歳6ヶ月または2歳になるまで延長可能)

育児休業給付金は、休業前の賃金の67%(育児休業開始から6ヶ月経過後は50%)が支給されます。

雇用保険の給付は、労働者の生活を支え、再就職やキャリアアップを支援するための重要な制度です。給付を受けるためには、一定の要件を満たす必要があります。

個人事業主が従業員を雇用保険に適切に加入するメリット

個人事業主が従業員を雇用する際に雇用保険に適切に加入することは、法的な義務であるだけでなく、事業経営にも多くのメリットをもたらします。

ここでは、個人事業主が雇用保険に加入するメリットについて詳しく解説します。

給付金・助成金をもらえる

雇用保険制度では、事業主向けの様々な助成金制度が用意されています。これらの給付金や助成金を活用することで、人材採用や従業員の育成・定着にかかるコストを軽減できます。

個人事業主の方も、支給要件を満たせば、これらの助成金を受給することができます。

主な事業主向け助成金

助成金名概要
キャリアアップ助成金非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を行った事業主に支給
雇用調整助成金景気の変動などにより、事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、従業員の雇用を維持するための休業手当の一部を助成する制度
トライアル雇用助成金一定の条件を満たす求職者を、試行的に雇用した場合に支給される助成金
人材開発支援助成金従業員に職業訓練を実施した事業主に支給
両立支援等助成金育児休業取得者の職場復帰支援や介護離職防止の取組を行った事業主に支給
特定求職者雇用開発助成金高齢者、障害者、母子家庭の母など、就職が困難な方を雇用した場合に支給される助成金
地域雇用開発助成金雇用機会が不足している地域で、事業所の設置・整備や従業員の雇用を行った場合に支給される助成金
人材確保等支援助成金魅力ある職場づくりのための取り組み(労働時間短縮、有給休暇取得促進など)を行った事業主に対して支給される助成金

【2025年版】キャリアアップ助成金とは?申請方法や支給金額を社労士がわかりやすく解説

助成金制度は、雇用保険料を財源としているため、雇用保険に加入していない事業主は、原則として受給できません。これらの助成金は、要件や申請手続きが複雑な場合がありますが、受給できれば、経営の安定化や人材確保に大きく貢献します。

採用面でのPRになる

雇用保険をはじめとする社会保険制度に適切に加入していることは、従業員の採用活動において企業としての信頼性や安心感をアピールする上で、非常に効果的です。

求職者は、企業の福利厚生や労働条件を重視する傾向があり、雇用保険の加入状況は、その判断材料の一つとなります。

採用活動で雇用保険加入がPRになるポイント

  • 求職者に「従業員を大切にする事業主」という安心感を**与えることができる**
  • 経験豊富な人材や家庭を持つ求職者の応募増加に**つながる**
  • 求人広告やウェブサイトで「雇用保険加入」を明示することで他社との差別化が図れる
  • ハローワークの求人票で「加入」と記載でき、求職者の目に留まりやすくなる
  • 社会的責任(CSR)を果たす事業主としての信頼性が**向上する**
  • 取引先や地域社会からの評価にもプラスに**働く**

適切に雇用保険に加入し、そのメリットを積極的にアピールすることで、採用活動を有利に進めることができます。また、従業員の安心感や満足度を高めることで、離職率の低下や生産性の向上にもつながります。

個人事業主の雇用保険に関するよくあるQ&A

個人事業主と雇用保険の関係について、よくある質問とその回答をまとめました。
疑問や不安の解消に、ぜひお役立てください。

個人事業主の雇用保険の負担額はいくら?

雇用保険の保険料率は、事業の種類によって異なります。
令和6年度の保険料率は、以下の通りです。

雇用保険料は、従業員に支払う賃金総額に、上記の保険料率を乗じて計算します。
個人事業主が負担する保険料は、上記の「個人事業主負担」の率を用いて計算します。

例えば、一般の事業で、従業員に支払う年間の賃金総額が500万円の場合、

  • 従業員負担: 500万円 × 0.6% = 3万円
  • 個人事業主負担: 500万円 × 0.95% = 4万7,500円
  • 合計: 7万7,500円

となります。

個人事業主は労働保険料は経費にできない

個人事業主が負担する労働保険料(労災保険料と雇用保険料)は、全額必要経費に算入できます。これは、租税公課として扱われるためです。確定申告の際には、忘れずに経費として計上しましょう。ただし、従業員の給与から控除した雇用保険料(従業員負担分)は、預り金として処理し、経費には計上できませんので、注意が必要です。

個人事業主本人が雇用保険に入る方法はある?

原則として、個人事業主本人は雇用保険に加入できません。雇用保険は、「労働者」を対象とした制度であり、個人事業主は労働者に該当しないためです。

しかし、例外的に、個人事業主が別の会社で「労働者」として働く場合(ダブルワーク)は、その会社での勤務が雇用保険の加入条件(週の所定労働時間が20時間以上、31日以上の雇用見込みがあるなど)を満たしていれば、その会社で雇用保険に加入することができます。

なお、労災保険には、「一人親方」などのための特別加入制度がありますが、雇用保険には、個人事業主本人が加入できる特別加入制度はありません。

個人事業主自身が、失業や病気、ケガなどに備えるためには、雇用保険以外の方法を検討する必要があります。

雇用保険以外の備え(例)

  • iDeCo (個人型確定拠出年金): 掛金が全額所得控除の対象となる、私的年金制度。
  • 小規模企業共済: 個人事業主や小規模企業の経営者のための、退職金制度。
  • 生命保険: 死亡や高度障害に備えるための保険。
  • 医療保険: 病気やケガによる入院・手術などに備えるための保険。
  • 就業不能保険: 病気やケガで長期間働けなくなった場合の、所得補償のための保険。

これらの制度や保険を組み合わせることで、個人事業主自身のリスクに備えることができます。

業務委託やフリーランスの場合は雇用保険に加入できる?

業務委託やフリーランスは、個人事業主と同様に、原則として雇用保険に加入できません。雇用保険は、「労働者」を対象とした制度であり、業務委託やフリーランスは、特定の会社と雇用契約を結んでいるわけではなく、独立した事業者として働いているためです。

ただし、業務委託やフリーランスであっても、働き方の実態が労働者に近いと判断される場合は、例外的に雇用保険の適用を受けることができる場合があります。
例えば、

  • 特定の会社の指示に従って仕事をしている
  • 仕事をする時間や場所が拘束されている
  • 報酬が時間給や日給で支払われている

などの場合は、労働者とみなされる可能性があります。
この判断は、個別のケースごとに、労働基準監督署が行います。

業務委託やフリーランスとして働いている方で、雇用保険の加入について疑問がある場合は、労働基準監督署や社会保険労務士に相談することをおすすめします。

まとめ:個人事業主も雇用保険の知識を持ち万全の体制を

個人事業主本人は雇用保険に加入することはできませんが、従業員を1人でも雇用する場合には、条件を満たせば雇用保険への加入が法律で義務付けられています。この義務を怠ると、罰則の対象となるだけでなく、従業員が本来受けられるべき給付を受けられなくなるというリスクが生じます。

雇用保険に加入することは、単なる法的義務の履行だけではありません。さまざまな助成金制度を活用できるようになり、採用活動においても大きなアピールポイントとなります。また、従業員の安心感や満足度を高めることで、優秀な人材の確保・定着にもつながります。

個人事業主として事業を営む上で、雇用保険は、従業員を守り、事業を安定させるための重要な制度です。「自分は関係ない」「手続きが面倒」と考えるのではなく、雇用保険について正しく理解し、適切な対応をすることが求められます。

従業員の安心は、事業の信頼性向上につながり、ひいては事業の発展にもつながります。

個人事業主として事業を成長させていくためには、自身の事業スキルを磨くだけでなく、雇用に関する制度や法律についても正しい知識を持つことが重要です。

特に、従業員を雇用する際には、雇用保険をはじめとする社会保険制度について理解し、適切に対応することで、従業員と事業主の双方にとってメリットのある環境を構築しましょう。

社会保険制度は定期的に改正されることがありますので、最新の情報を常にチェックし、不明点や不安がある場合は、必要に応じて専門家である社労士のアドバイスを受けることをお勧めします。

「従業員を守る」という視点を持ち、法令を遵守した事業運営を行うことが、長期的な事業の発展につながります。

社労士クラウドのスポット申請代行サービスについて

個人事業で従業員を1人でも雇用すると、労働保険(労災保険・雇用保険)の手続きが必要になります。しかし、専門的な知識を要するため、慣れていないと多くの時間や手間がかかるだけでなく、計算ミスや書類の不備によるリスクも否めません。

「社労士に依頼すると費用が心配…」「自社で確実にできるか不安…」という場合は、社労士クラウドのスポット申請代行サービスの利用を検討してみてはいかがでしょうか。

必要なときだけ専門家に依頼できるため、手続きの負担やミスのリスクを大幅に軽減できます。

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社労士クラウドのスポット申請代行サービスは、必要な時だけ専門家に業務を依頼できるサービスです。

例えば、労災保険加入手続きのみを依頼することも可能です。スポットで依頼することで、自社で対応するよりも、確実かつ効率的に手続きを進められる場合があります。

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生島社会保険労務士
生島社会保険労務士

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