社会保険料の変更は、毎年7月の算定基礎届(定時決定)や、昇給・減給時に提出する月額変更届(随時決定)のタイミングで行われます。
また、健康保険料率や厚生年金保険料率が毎年改定されることもあり、一般的には3月分(4月納付分)から適用されるため、企業としては改定内容を正確に把握し、給与計算へ適切に反映しなければなりません。
社会保険料は従業員の給与から控除される重要な費用で、標準報酬月額をもとに算出されます。
この記事では、社会保険料の改定時期や給与への反映タイミング、さらには手続き上の注意点までを詳しく解説します。
正しい手続きを踏むことで、企業の社会保険管理をスムーズにし、従業員の手取り額への影響を最小限に抑えることが可能です。ぜひ本記事を参考に、社会保険料の変更ルールを正しく理解し、日常の実務に役立ててください。

生島社労士事務所代表
生島 亮
いくしま りょう
https://sharoushi-cloud.com/社会保険手続きの自動販売機|全国のあらゆる社会保険手続きと労務相談を「顧問料なしのスポット」で代行するWebサービス【社労士クラウド】の運営者|懇切丁寧 ・当日申請・フリー価格・丸投げOK| 1,800社以上の事業主様や顧問先の社保周りを解決されたい士業の先生にご利用頂いており、顧問契約も可能です|リピーター率8割以上
社会保険料とは、健康保険や厚生年金保険、介護保険といった社会保険制度を維持・運営するために必要な費用です。これらの制度は、病気やケガ、高齢に伴うリスクから生活を守るために欠かせない仕組みであり、被保険者である従業員と事業主が保険料を分担して支払うことで成り立っています。
社会保険料の変更時期や給与への反映タイミングだけでなく、社会保険制度そのものの目的や仕組みを理解しておくことは、企業の労務管理や従業員の安心につながります。企業経営者や人事担当者は、基本的な制度内容をしっかりと把握し、適切な対応を行うことが重要です。

社会保険料の変更時期は、原則として毎年1回、7月に「定時決定」と呼ばれる標準報酬月額の改定によって行われます。これは、4月~6月の給与をもとに見直され、9月分の保険料(10月支払給与)から適用されます。
また、健康保険や介護保険の保険料率の改定は、毎年2月に発表され、3月分(4月納付分)より適用されるのが一般的です(ただし、変更がない年もあります)。
標準報酬月額とは、社会保険料を計算するために、給与を一定の基準で区分した金額です。給与の増減や制度改正によって、この標準報酬月額や保険料率が変更されることがあります。
さらに、以下の3つのタイミングでも、一定の要件を満たすと社会保険料が変更されます。
- 随時改定(月額変更届):給与が大きく変動した場合
- 資格取得時決定(入社時):新しく社会保険に加入したとき
- 育児休業等終了時の変更:育児休業後の給与が変わった場合
社会保険料の変更は、企業の保険料負担や従業員の手取り給与に影響を及ぼすため、正確な情報を把握し、適切に対応することが重要です。
それぞれの変更タイミングや手続きについて、以下で詳しく解説します。
定時決定(算定基礎届):9月分の保険料から変更
定時決定とは、社会保険料を適正に算定するために、毎年7月に行われる標準報酬月額の見直し手続きです。企業は、4月から6月までの3カ月間に支給した給与の平均額をもとに各従業員の標準報酬月額を決定し、算定基礎届を年金事務所へ提出する義務があります。
定時決定の対象となるのは、7月1日現在で在籍している被保険者です。ただし、以下に該当する従業員は定時決定の対象外となります。
- 6月2日以降に入社した従業員(資格取得時決定が適用されるため)
- 6月30日以前に退職した従業員
- 7月に随時改定(月額変更届)が適用される従業員
- 8月または9月に随時改定が予定されている従業員
企業は、6月から7月にかけて給与情報を集計し、7月10日までに「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届」を年金事務所または事務センターへ提出しなければなりません。
新しい標準報酬月額は9月分(10月支払給与)から適用され、翌年8月分まで継続します。
定時決定については、下記の記事で詳しく解説しています。
【社労士監修】社会保険の算定基礎届(定時決定)とは?対象者や提出方法、作成時の注意点をわかりやすく解説
随時改定(月額変更届):変動月から4ヶ月目の保険料から変更
随時改定(月額変更届)は、従業員の給与に大きな変動があった場合に適用される社会保険料の変更手続きです。給与と標準報酬月額との間に大きな差が生じた際、社会保険料を適正に見直すために行われます。
次のすべての条件を満たした場合に、随時改定が適用されます。
- 固定的賃金(基本給や手当など)が変動した(昇給・降給、手当の増減など)
- 変動後の3ヶ月間における給与平均額を算出し、標準報酬月額が従来より2等級以上変動している
- 3ヶ月間の報酬月額が連続して同じ等級ではない
給与が変動した支払い月を1ヶ月目とし、その後3ヶ月間の給与平均額をもとに新しい標準報酬月額を決定します。そして、4ヶ月目の保険料から適用される仕組みです。
例
- 8月に昇給・降給が発生。
- 9月に変動後の給与支払い。
- 8月~10月の3ヶ月間の給与をもとに新しい標準報酬月額を決定
- 12月分の保険料(翌年1月支払給与から控除)より新しい社会保険料が適用
給与改定が行われた場合は、該当する従業員の月額変更届を速やかに年金事務所へ提出しなければなりません。提出が遅れると社会保険料の計算にずれが生じ、企業・従業員の双方に影響が出る可能性があるため注意が必要です。
随時決定(月額変更届)について詳しく知りたい方は、下記の記事もご参照ください。
社会保険の月額変更届(随時改定)とは?標準報酬月額の改定条件や手続き方法をわかりやすく解説!
保険料率の改定:原則3月分(4月納付分)から変更
社会保険料は、標準報酬月額の変更だけでなく、毎年見直される保険料率の改定によっても変動します(改定が行われない年もあります)。特に健康保険料率・介護保険料率は、全国健康保険協会(協会けんぽ)や健康保険組合で毎年検討され、2月に新しい料率が発表されます。
適用時期は以下のとおりです。
- 新しい保険料率は3月分(4月納付分)から適用
- 4月給与(3月分の社会保険料控除)から新しい料率が適用される
企業は、毎年2月に発表される保険料率を確認し、給与計算へ反映しましょう。その際、従業員の手取り額への影響を考慮し、保険料変更について適切な周知が必要です。
育児休業終了時改定の変更
育児休業等終了時改定とは、育児休業から復帰した従業員の給与が休業前と比べて変動した場合に、標準報酬月額を見直す手続きです。社会保険料を正しく計算し続けるために、非常に重要な改定となります。
以下の条件を満たした場合に、育児休業等終了時改定が適用されます。
- 育休前と比較して標準報酬月額が1等級以上変動していること
- 育児休業終了日の翌日が属する月以降の3ヶ月間のうち、いずれか1ヶ月の支払基礎日数が17日(短時間労働者は11日)以上あること
※ 支払基礎日数が17日未満の月は計算対象から除外されます。ただし、15日以上17日未満の月が複数ある場合は、その月の平均報酬額をもとに算定します。
この改定を適用することで、育児休業終了後の給与水準に見合った社会保険料へと調整されます。
適用時期は以下のとおりです。
- 1月~6月に改定された場合:同年8月分まで適用
- 7月~12月に改定された場合:翌年8月分まで適用
例
- 4月に育児休業を終了した場合
→ 4月~6月の給与をもとに標準報酬月額を決定 → 8月分の保険料(9月給与控除分)から適用 - 10月に育児休業を終了した場合
→ 10月~12月の給与をもとに標準報酬月額を決定 → 翌年8月分まで適用
育児休業等終了時改定を適用する場合は、事業主が「育児休業等終了時報酬月額変更届」を管轄の年金事務所または事務センターへ提出しなければなりません。
資格取得時決定(入社時のタイミング)
資格取得時決定とは、新たに入社した従業員が社会保険の被保険者資格を取得するときに行われる標準報酬月額の決定手続きです。新入社員は入社時点で給与の実績がないため、基本給や手当などをもとに見込額を算出し、その金額から標準報酬月額を決定します。
決定された標準報酬月額は入社月から適用され、社会保険料の控除が開始されます。
たとえば、5月1日に入社した場合、5月分の社会保険料は6月の給与支給時に控除されます。また、給与実績がない新卒社員の場合は、基本給に加えて通勤手当や時間外手当などの見込み額も合計し、その合計金額をもとに標準報酬月額を算定します。
ただし、この見込額に基づいて決定された標準報酬月額は8月までの適用となり、9月からは4月~6月の給与実績を反映した新しい標準報酬月額が適用される仕組みです。
企業は、新たに従業員を雇用した際に、5日以内に「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を年金事務所または事務センターへ提出する必要があります。
さらに、社会保険料の控除開始時期や、9月以降に標準報酬月額が変更される可能性があることについても、事前に従業員へ周知しておくことが望ましいでしょう。見込額と実際の給与実績によっては社会保険料に差が生じるため、給与明細などで適用される保険料を丁寧に説明することが大切です。
標準報酬月額などが改定されて社会保険料が変更された場合、企業は変更の適用開始時期に合わせて給与計算を調整しなければなりません。
実際に給与から新しい保険料が控除されるタイミング(給与への反映時期)は、企業の給与支払い規程によって「当月徴収」か「翌月徴収」かに分かれます。さらに、給与が「当月払い」か「翌月払い」かによっても、反映時期が異なるため注意が必要です。
算定基礎届(定時決定)はいつから反映?社会保険料の変更時期と給与計算の注意点を社労士が解説
当月徴収の場合
当月徴収とは、対象となる月の社会保険料を、その月の給与から控除する方法です。この場合、給与が「当月払い」なのか「翌月払い」なのかで、反映時期が異なります。
給与も当月に支払われ、社会保険料も当月に控除されます。よって、改定された月の給与から新しい保険料が適用されます。
◯例1:定時決定(9月分から変更)
9月分の社会保険料が改定されるため、9月支給の給与から新しい保険料を控除します。
◯例2:随時改定(7月分から変更)
4月に昇給し、7月分から新しい標準報酬月額が適用される場合、7月支給の給与から新しい保険料を控除します。
◯例3:保険料率の改定(原則3月分から変更)
3月分の社会保険料が改定されるため、3月支給の給与から新しい保険料を控除します。
給与は翌月に支払われますが、社会保険料は当月徴収となるため、改定された月の翌月支給の給与から新しい保険料が控除されます。
◯例1:定時決定(9月分から変更)
9月分の社会保険料が改定されるため、10月支給の給与から新しい保険料を控除します。
◯例2:随時改定(7月分から変更)
4月に昇給し、7月分から新しい標準報酬月額が適用される場合、8月支給の給与から新しい保険料を控除します。
◯例3:保険料率の改定(原則3月分から変更)
3月分の社会保険料が改定されるため、4月支給の給与から新しい保険料を控除します。
翌月徴収の場合
翌月徴収とは、その月の社会保険料を翌月の給与から控除する方法です。この場合も、「給与が当月払い」か「翌月払い」かによって、反映時期に違いがあります。
給与は当月に支給されますが、社会保険料は翌月に控除されるため、改定された月の翌月支給の給与から新しい保険料が適用されます。
◯例1:定時決定(9月分から変更)
9月分の社会保険料が改定されるため、10月支給の給与から新しい保険料を控除します。
◯例2:随時改定(7月分から変更)
4月に昇給し、7月分から新しい標準報酬月額が適用される場合、8月支給の給与から新しい保険料を控除します。
◯例3:保険料率の改定(原則3月分から変更)
3月分の社会保険料が改定されるため、4月支給の給与から新しい保険料を控除します。
給与が翌々月に支給され、社会保険料は翌月徴収で控除されるため、改定月の2ヶ月後の給与から新しい保険料が反映されます。
例1:定時決定(9月分から変更)
9月分の社会保険料が改定されるため、11月支給の給与から新しい保険料を控除します。
例2:随時改定(7月分から変更)
4月に昇給し、7月分から新しい標準報酬月額が適用される場合、9月支給の給与から新しい保険料を控除します。
例3:保険料率の改定(原則3月分から変更)
3月分の社会保険料が改定されるため、5月支給の給与から新しい保険料を控除します。
社会保険料の変更が給与に反映されるタイミングは、企業ごとの給与支給方法により異なります。当月徴収を採用している企業では、改定月の給与から新しい保険料が控除される場合が多く、翌月徴収を採用している企業では、翌月または翌々月の給与から適用されることになります。
給与計算担当者は、自社の給与支給ルールを正しく把握し、改定の適用時期に応じて社会保険料を適切に反映しなければなりません。
また、従業員に対しても、社会保険料の変更が給与にいつ影響するのかを事前に周知し、手取り額の変動に備えてもらうことが重要です。
社会保険料の変更は、従業員の給与計算や企業の財務管理に大きな影響を及ぼします。事業主としては、特に以下の3点を意識して対応することが重要です。
新しい標準報酬月額の決定通知が届いたら、速やかに従業員へ通知する
定時決定や随時改定によって新しい標準報酬月額が決定された場合、企業には日本年金機構や健康保険組合から決定通知が届きます。この通知には、従業員ごとの新しい標準報酬月額と、それに基づいて変更される社会保険料の金額が記載されています。
会社は、決定通知を受け取ったらできるだけ早く従業員に周知し、給与から控除される社会保険料が変更になることを事前に伝える必要があります。
特に、標準報酬月額の変更によって手取り額が減少する可能性があるため、早めに知らせることで従業員の混乱を防ぐことができます。
また、新しい社会保険料が適用される給与を計算するときは、給与計算ソフトや人事システムの設定を必ず最新の標準報酬月額に更新し、誤った金額で控除しないよう注意しましょう。
届出の提出漏れや遅延があると罰則や追徴金・遡及のリスクがある
社会保険料の変更手続きには定められた提出期限があり、遅れや提出漏れがあると企業にとって重大なリスクとなります。
特に、随時改定や資格取得届などの手続きを適切に行わなかった場合、罰則や追徴金の支払い、さらには遡及による追加負担を求められることも少なくありません。
たとえば、従業員の昇給や降給があったにもかかわらず、月額変更届(随時改定)を提出しなかった場合、本来の標準報酬月額への変更が適用されず、誤った社会保険料を徴収し続けるリスクがあります。
後日、年金事務所の調査などで問題が発覚すると、過去にさかのぼって正しい保険料を一括納付しなければならないケースもあり、企業の負担が大きくなる可能性があります。
さらに、未納や誤った控除が見つかった場合は、企業が従業員から追加で保険料を徴収し直す必要があり、業務負担の増大や従業員とのトラブル発生にもつながります。
特に、期限の把握漏れや書類作成の遅れなど、給与計算担当者のミスが原因で提出が遅れた場合、企業側が罰則を受ける可能性もあるため、必ず期限を厳守して確実に届け出を行わなければなりません。
月額変更届(随時改定)を申請しなかったらどうなる?出し忘れた場合の罰則と対応方法を解説
賞与が年4回以上支給される場合は、随時決定の対象になる
標準報酬月額の見直しは通常、定時決定や随時改定によって行われますが、賞与が年4回以上支給される場合にも注意が必要です。
一般的に賞与に対する社会保険料は、賞与支給時に一度だけ控除されます。しかし、支給回数が年4回以上となると、その支給額が「報酬」とみなされ、標準報酬月額に含めて計算し直すことが求められます。
その結果、賞与の支給が標準報酬月額の変更基準を満たす場合は、随時改定の対象として社会保険料が増加する可能性があります。企業としては、該当従業員の手取り額が減少する場合に備え、事前に適用時期や影響を丁寧に説明し、理解を得ることが大切です。
また、年4回以上の賞与に伴う随時改定が発生した際には、速やかに「月額変更届」を提出しなければなりません。
提出が遅れると、本来であれば新しい標準報酬月額で控除される保険料が誤ったまま処理されることになり、後から遡って修正する際に企業・従業員双方の負担が増してしまう恐れがあります。
そのため、給与計算システムの設定や賞与支給時の管理には十分注意し、ルールを明確化したうえで適切に対応することが求められます。
賞与を年4回以上支給する時の社会保険の手続きを年3回以下の場合との違いを含めて解説!
ちなみに賞与が年3回以下の場合は、賞与を支給したあとに賞与支払届の提出が必要になります。
賞与支払届とは?書き方のポイントや記入例、提出先から手続きの流れを解説
社会保険料の変更に関しては、多くの企業が疑問を抱くポイントがいくつかあります。特に、標準報酬月額の決定方法や、役員報酬を改定した際の手続きについては、誤解しやすい部分もあります。ここでは、社会保険料の変更のことでよくある質問についてまとめています。
定時決定と随時決定の違いは?
社会保険料の算定では、主に「定時決定(算定基礎届)」と「随時決定(月額変更届)」の2つの方法があります。
定時決定は、社会保険料を公平かつ安定的に徴収するために年に一度実施される仕組みです。4~6月の給与平均をもとに標準報酬月額を決定し、新しい社会保険料は9月分から翌年8月分まで継続して適用されます。
一方、随時決定は、昇給・降給などで大きく給与が変わった場合に都度適用されます。変動月から3ヶ月の給与を確認し、2等級以上の差があるかどうかを判断します。要件を満たした場合、新しい標準報酬月額が4ヶ月目から適用されるため、担当者は月額変更届の提出期限を守り、給与計算システムを適切に更新する必要があります。
下記の表で、両者の違いを比較しています。
項目 | 定時決定 | 随時決定 |
実施時期 | 毎年7月 | 昇給・降給など給与に大きな変動があったとき(随時) |
対象期間 | 4月~6月の3ヶ月間の報酬額 | 給与が変動した月を1ヶ月目とし、その後3ヶ月間の給与 |
変更されるタイミング | 9月分から翌年8月分まで | 支払い月の4ヶ月目の保険料から適用 |
対象となる被保険者 | 全員(給与の変動がなくても必ず実施) | 固定的賃金(基本給、手当など)が2等級以上変動した従業員 |
標準報酬月額の決定方法 | 4~6月の給与平均額をもとに標準報酬月額を決定 | 変動後の3ヶ月間の給与を平均し、標準報酬月額を再計算 |
主な適用ケース | 毎年の定期的な見直し(年に一度、全員が対象) | 昇給、降給、固定的賃金増減など大きな給与変動があった場合(都度、該当する従業員が対象) |
役員報酬を改定した場合も月額変更届の提出は必要?
役員報酬を変更した際、一定の条件を満たせば随時決定の対象となり、月額変更届の提出が必要になります。
そもそも役員は、従業員のように労働の対価として給与を受け取るのではなく、経営に対する報酬として役員報酬を受領します。そのため、役員報酬の変更時には社会保険上の取扱いに注意が必要です。
以下の3つの条件をすべて満たす場合、標準報酬月額が変更されます。
- 役員報酬の変更が「固定的賃金」の増減にあたること
- 変更後3ヶ月間の報酬平均額に基づいて算出した標準報酬月額が、従前と比べて2等級以上の差があること
- 変更後の3ヶ月間において、各月の支払基礎日数が17日以上(短時間労働者は11日以上)であること
たとえば、6月に役員報酬を引き上げた場合、6月~8月の3ヶ月間の平均報酬額をもとに新しい標準報酬月額を決定し、10月分(10月給与控除分)から新しい社会保険料が適用されます。
役員報酬の改定は、社会保険の観点だけでなく、法人税法上の「定期同額給与」の要件にも影響を受けます。
定期同額給与の原則に則らない形で報酬を変更すると、税務上の損金算入が認められない可能性があるため、変更のタイミングや手続きは慎重に行う必要があります。
また、役員報酬の改定が年1回の定例改定ではなく、特定の事情による臨時改定であった場合、社会保険料の変更が認められないケースもあります。
たとえば、業績悪化に伴い一時的に報酬を引き下げ、その後すぐに元の額へ戻すといった改定は、随時改定の対象外となる可能性があるため、事前に確認しておきましょう。
本記事では、社会保険料が変更されるタイミングや、給与への反映時期について解説しました。社会保険料の変更は、従業員の給与や会社の経費に大きく影響するため、**定時決定(算定基礎届)や随時決定(月額変更届)**などの手続きを正確に把握し、必ず期限を守って届出を行う必要があります。
定時決定(算定基礎届)は、毎年7月に行われ、4~6月の給与実績を基準に9月分から翌年8月分までの社会保険料を決定する手続きです。
随時決定(月額変更届)は、昇給・減給など給与に大きな変動があった際に個別で行います。
上記の手続きを怠ったり、提出が遅れたりすると、罰則・追徴金や遡及適用による一括納付などのリスクが生じる可能性があります。
また、社会保険料の計算そのものも非常に複雑で難しいため、手続きや計算に不安のある方は、専門家である社会保険労務士(社労士)に申請代行や相談を依頼することをおすすめします。
社会保険料の変更は、従業員の手取り額にも直結します。事業主や人事・労務担当者の方は、常に最新のスケジュールや法改正などの情報をチェックし、適切に対応することでリスクやトラブルを未然に防ぎましょう。
社労士クラウドのスポット申請代行サービス
算定基礎届の作成や提出は、専門的な知識を要するため、慣れていないと多くの時間と労力を費やしてしまいます。また、計算ミスや提出漏れなどのリスクも伴います。「社労士へ依頼するのは、費用が心配」「自社で対応できるか不安」といった場合は、社労士クラウドのスポット申請代行サービスの利用を検討してみるのも一つの方法です。
社労士クラウドのスポット申請代行サービスは、必要な時だけ専門家に業務を依頼できるサービスです。例えば、算定基礎届の作成・提出のみを依頼することも可能です。スポットで依頼することで、自社で対応するよりも、確実かつ効率的に手続きを進められる場合があります。
【関連記事】

全国のあらゆる社会保険手続きと労務相談を「顧問料なしのスポット」で代行するWebサービス【社労士クラウド】
懇切丁寧 ・当日申請・全国最安値価格| 1,800社以上の社会保険手続き実績|