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二以上事業所勤務届を出さないとどうなる?出し忘れた時の対策や書き方を解説

二箇所以上の事業所で働いている場合、社会保険の手続きとして「二以上事業所勤務届」の提出が求められます。しかし、提出しなかった場合の影響や罰則、具体的な手続きの詳細について十分に理解していない方も多いでしょう。複数の事業所で働く際の社会保険料の計算や、年金・健康保険に対する影響は非常に複雑であり、適切な対応が必要です。

・二以上事業所勤務届を出さないとどんなリスクがあるのか知りたい
・届出の提出が不要なケースについて詳しく知りたい
・うっかり届出の提出を忘れてしまった場合の対処法が知りたい

このような疑問や不安を抱えている方のために、この記事では、二以上事業所勤務届を出さない場合のリスクや、提出が不要なケース、さらに提出を忘れた場合の対処法について詳しく解説します。

複数の会社で働く経営者や役員の方、人事・労務担当者の方は、ぜひこの記事を参考にして、二以上事業所勤務届の重要性を理解し、適切な手続きを行ってください。社会保険制度を正しく活用し、トラブルを未然に防ぐためにも、届出の対象となる方は必ず提出するようにしましょう。

最後までお読みいただくことで、社会保険手続きを確実に進め、リスクを回避するための重要なポイントを理解することができます。

この記事を監修した人

生島社労士事務所代表

生島 亮

いくしま りょう

https://syarou-shi.com/

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二以上事業所勤務とは?

二以上事業所勤務とは、一人の労働者が複数の事業所で同時に働くことを指します。この場合、社会保険や厚生年金への加入義務が発生することがあり、適切な手続きが必要となります。

具体的には、各事業所で社会保険の加入条件を満たしている場合、その労働者は「二以上事業所勤務届」を提出することで、保険料の按分や納付が適切に行われる仕組みが整います。

二以上事業所勤務に該当する例としては、本業で正社員として働きつつ、他の会社で副業をしているケースや、複数の本業を持つ複業のケースが挙げられます。

例えば、A社でフルタイム勤務し、B社でパートタイムで働いている場合などです。

ただし、会社に勤務しながら個人事業を営んでいる場合や、会社に勤めながらプライベートでYouTuber活動を行っている場合は、二以上事業所勤務には該当しません。こういった副業や複業が認められているかどうかも、所属する会社の規定を事前に確認することが重要です。

生島社会保険労務士
生島社会保険労務士

2つ以上の会社にまたがって仕事をする場合は原則として2以上勤務届を出す必要があります。 社会保険に関する手続き(届出・種類)は複雑で多くの専門的知識を必要とするため、社労士に依頼することも検討してください。

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二以上事業所勤務届とは?

二以上事業所勤務届とは、正式には「健康保険 厚生年金保険 被保険者所属選択 二以上事業所勤務届」と呼ばれる書類で、日本年金機構や健康保険組合に提出するものです。この届出は、複数の事業所で働く被保険者が、各事業所からの報酬を合算し、適切な社会保険料や厚生年金保険料を計算するために必要です。

基本的に、被保険者である従業員自身が手続きを行う必要があり、企業側は従業員に対してこの手続きの必要性を説明しなければなりません。この届出を行うことで、労働者が複数の事業所から受け取る報酬が合算され、標準報酬月額をもとに正しい保険料が算出されます。

標準報酬月額とは、労働者が受け取る報酬額に基づいて計算される社会保険料の基準となる金額です。これには、基本給のほか、通勤手当や残業手当などが含まれます。標準報酬月額は、社会保険料や年金額の計算に用いられます。

例えば、A社で月20万円、B社で月10万円の報酬を受け取っている場合、それぞれの報酬を合算した30万円が標準報酬月額となります。標準報酬月額は、社会保険料や年金額の計算に用いられます。

手続きの流れとしては、まず、従業員が各事業所から「二以上事業所勤務届」を受け取り、必要事項を記入、署名、捺印を行います。その後、二以上の事業所での労働が発生してから10日以内に、事業所の所在地を管轄する年金事務所に提出します。提出方法は、窓口に直接持ち込む、郵送、または電子申請が可能です。

提出後、管轄の事務センターから各事業所に対して「二以上事業所勤務の承認」が通知され、手続きが完了します。届出を怠ると、適用される保険料に誤りが生じる可能性があり、最悪の場合、罰則やペナルティが発生するリスクがあるため、迅速な対応が求められます。

どちらを選択?選択事業所と非選択事業所の判断基準

二以上事業所勤務届を提出する際に重要となるのが、選択事業所と非選択事業所の判断です。選択事業所とは、主に報酬が支払われる事業所を指し、社会保険の手続きや管理がここで行われます。一方、非選択事業所は副次的な報酬を受け取る事業所です。

選択事業所を決定する基準として、従業員が社会保険加入要件を満たしている2カ所以上の会社で働いている場合、それぞれの会社で社会保険資格を取得し、「二以上事業所勤務届」を提出する必要があります。この届出は従業員自身が行うものであり、会社側が提出するのではありません。

主たる事業所(選択事業所)を選ぶ必要があるケースは以下の通りです:

・保険者が全国健康保険協会(協会けんぽ)と健康保険組合の場合
・保険者がどちらも健康保険組合の場合
・保険者がどちらも全国健康保険協会の場合

また、保険者が全国健康保険協会の場合、以下の基準で選択事業所を決定します:

・二以上の事業所を管轄する年金事務所が異なる場合:年金事務所を選択します。
・二以上の事業所を管轄する年金事務所が同一の場合:事業所自体を選択します。

選ばれた事業所は「選択事業所」として、所在地を管轄する事務センターまたは健康保険組合が、被保険者に関する事務手続きを担当します。選定が正確でない場合、適切な保険料が計算されない可能性があるため、慎重に選択することが求められます。

二以上事業所勤務届を出さないとどうなる?影響や未提出による罰則について

二以上事業所勤務届は、複数の事業所で働く労働者の社会保険料を適切に計算し、納付するために不可欠な書類です。しかし、この届出を怠ると、様々な問題が発生する可能性があります。ここでは、届出を出さない場合に考えられる影響と、未提出による罰則やペナルティについて詳しく解説します。

出さない場合の考えられる影響

  • 社会保険料の計算ミス
    二以上の事業所から受け取る報酬が正しく合算されない場合、社会保険料が適切に計算されません。これにより、従業員が少ない保険料で済む一方で、企業側が不必要な保険料を支払うリスクが生じることがあります。また、後から発覚した場合には保険料の修正が求められることがあります。
  • 遡及徴収のリスク
    未届けが発覚した場合、過去に遡って保険料が徴収される可能性があります。通常は最大2年分遡及されますが、状況によってはそれ以上の期間で徴収されることもあります。これにより、従業員や事業主の金銭的負担が一時的に増加するリスクがあります。
  • 法的罰則
    届出を怠ると、企業には6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。この罰則は、社会保険制度を適正に運営するための厳格な措置であり、届出の不履行が確認された場合には是正措置が求められるとともに、法的罰則の対象となります。
  • 従業員の不利益
    届出が行われないことで、従業員の将来の年金給付額に影響が出る可能性があります。正しい報酬額が記録されないと、年金額が本来よりも少なくなるリスクがあり、健康保険の給付にも支障が出る恐れがあります。従業員にとって大きな不利益となる可能性が高いため、届出の適時な実施が重要です。
  • 行政手続きの煩雑化
    後日、届出の修正や追加手続きが必要となると、事務作業が増加し、手続きの複雑さが増します。特に、未提出の状態が長引くと、対応に時間がかかり、従業員や企業双方に負担が大きくなる恐れがあります。
  • 信用低下
    法令遵守を怠った企業は、取引先や従業員からの信頼を失う可能性があります。コンプライアンス違反とみなされ、企業全体の信用や評価が低下するリスクがあるため、届出の確実な実施が求められます。

これらの影響を避けるためには、二以上事業所勤務の状況が発生した場合、速やかに(通常は事実発生から10日以内に)届出を行うことが重要です。

未提出による罰則とペナルティ

二以上事業所勤務届の提出は、法律で義務付けられています。未提出の場合、以下のような罰則やペナルティが科せられる可能性があります。

二以上事業所勤務届を提出しないことで、企業には6か月以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられるリスクがあります。これは、社会保険制度の適正な運用を守るために必要な措置です。従業員が複数の事業所で働く場合、この届出は必須の法律上の義務となっています。

また、届出がない場合には、過去に遡って最大2年間の保険料を徴収される可能性があり、企業や従業員にとって経済的負担が大きくなります。さらに、遅延による手続きの複雑化も発生するため、早急な対応が求められます。罰則を避け、スムーズな手続きを行うためには、届出を適切に行うことが不可欠です。

二以上事業所勤務届の提出が必要ないケース

二以上事業所勤務届は、原則として複数の事業所で働き、それぞれの事業所で社会保険の加入要件を満たしている場合に提出が必要です。ただし、全てのケースで届出が必須というわけではありません。ここでは、提出が必要なケースと不要なケースを具体例を交えて解説します。

提出が必要なケース

以下のような場合は、二以上事業所勤務届の提出が必要です。

例1:起業(法人化)した会社の代表ともう1社別で役員として報酬をもらっているケース

自身が設立した会社の代表取締役を務めながら、別の会社の役員としても報酬を受け取っている場合、両社で社会保険の加入要件を満たしていれば、二以上事業所勤務届の提出が必要です。

この場合、それぞれの会社から支払われる報酬を合算して標準報酬月額を算出し、適切な社会保険料の計算と納付を行う必要があります。

例2:本業とは別にフリーランスとして業務委託で仕事をしているケース

本業と別に副業でフリーランスとして業務委託契約を結んでいる場合、フリーランスの業務に対して社会保険の加入条件を満たしていると、二以上事業所勤務届の提出が必要となります。

社会保険の加入条件は、業務委託契約先(勤務先)ごとに次の条件を基に判断されます:

  • フルタイムで勤務している
  • 週の労働時間が正社員(フルタイム)の3/4以上
  • 月の労働日数が正社員(フルタイム)の3/4以上

また、所定労働時間が正社員の4分の3未満の場合でも、以下の条件を全て満たす場合には、社会保険の加入対象になります:

  • 週の労働時間が20時間以上であること
  • 月収が88,000円以上(年収106万円以上)であること
  • 2カ月を超える雇用の見込みがあること
  • 学生でないこと
  • 勤務先の従業員数が101人以上(2024年10月からは従業員数51人以上の企業も対象)

フリーランスとしての業務がこれらの条件を満たしている場合には、社会保険の加入義務が生じ、二以上事業所勤務届の提出も必要です。一方で、条件を満たさない場合は、社会保険への加入や届出は不要です。

条件を満たしているにもかかわらず社会保険に未加入の場合は、業務委託契約先に相談することが推奨されます。

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提出が不要なケース

一方、以下のようなケースでは、二以上事業所勤務届の提出が不要です。

例3:本業とは別にもう1社で非常勤役員として報酬をもらっているケース

本業での勤務に加えて、別の会社で非常勤役員を務めている場合、一般的に非常勤役員としての報酬は社会保険の対象とはなりません。

非常勤役員は、通常、常勤役員のように労働時間が長くなく、報酬額も加入要件を満たさないことが多いため、社会保険の適用除外となります。この場合、二以上事業所勤務届の提出は不要です。

ただし、非常勤役員としての勤務実態が常勤役員と同等であり、報酬額も加入要件を満たす場合は、届出が必要になる可能性があります。

以上のように、二以上事業所勤務届の提出義務は、それぞれの事業所での社会保険加入要件を満たしているかどうかによって判断されます。複数の事業所で働いている場合は、各事業所の勤務実態と報酬額を確認し、必要に応じて届出を行うことが重要です。

届出の要否について判断に迷う場合は、社会保険労務士等の専門家に相談し、適切な対応を図ることをおすすめします。

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二以上事業所勤務届を出し忘れた場合の対処法

二以上事業所勤務届の提出を失念してしまった場合でも、早急に対応することで問題を最小限に抑えることができます。ここでは、提出期限を過ぎてしまった際の遅延提出の手続き方法と、その際に考慮すべきポイントについて詳しく解説します。

遅延提出の手続き方法

まず、二以上事業所勤務届を提出し忘れたことに気づいたら、早急に対応することが重要です。遅延提出の際には、以下の手順を踏むことでスムーズに手続きを進められます。

  1. 事業所に確認を取る
    まず、各事業所での社会保険の加入状況や報酬の詳細を確認し、適切な報告がされているか確認します。その上で、必要な書類を揃える準備を進めます。
  2. 年金事務所への連絡
    遅延提出の場合は、所管の年金事務所に連絡し、状況を説明します。年金事務所は遅延提出にも柔軟に対応するため、早急に連絡することで適切な手続き指導を受けることができます。
  3. 提出書類の準備
    遅延の場合でも通常の提出手続きと同様に、二以上事業所勤務届を提出するための書類を揃えます。特に、報酬の詳細や勤務状況の証明となる書類を忘れずに準備してください。
  4. 速やかに提出する
    遅延している場合でも、できるだけ早く書類を提出することで、罰則やトラブルを回避することができます。年金事務所の指示に従い、提出後の手続きを進めましょう。ります。追加の手続きが必要な場合は、迅速に対応しましょう。

提出期限を過ぎた場合に考慮すべきポイント

提出期限を過ぎた場合でも、事後対応によって問題を軽減することが可能です。ただし、以下の点に留意する必要があります。

  1. 遡及的な保険料の徴収
    提出が遅れた場合でも、過去に遡って保険料の徴収が行われることがあります。通常は、最大で2年間遡って徴収されますが、早めに対応することで負担を軽減することができます。
  2. 罰則のリスク
    二以上事業所勤務届を長期間提出しない場合、法律違反として事業所に罰則が科される可能性があります。罰則には、6ヶ月以下の懲役や50万円以下の罰金が規定されていますが、早めの対応で回避できるケースが多いため、迅速な対応が求められます。
  3. 従業員の不利益を防ぐ
    届出の遅延は、従業員の社会保険や年金受給に影響を及ぼす可能性があります。特に、将来の年金額に影響が出るため、できるだけ速やかに対応し、従業員への不利益を防ぐことが重要です。
  4. 年金事務所との連携
    年金事務所は遅延提出にも対応していますが、事務的な煩雑さが増すため、連携を強化し、迅速に手続きを進めることが望ましいです。
生島社会保険労務士
生島社会保険労務士

2つ以上の会社にまたがって仕事をする場合は原則として二以上勤務届を出す必要があります。 もし遅延が発覚した場合は、すみやかに手続きをする必要があります。

社会保険に関する手続き(届出・種類)は複雑で多くの専門的知識を必要とするため、社労士に依頼することも検討してください。

社労士クラウドなら「二以上事業所届出を含め、社会保険・労働保険などあらゆる手続き」を顧問料なしのスポット(単発)で簡単かつ迅速にお手続きできます。

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二以上事業所勤務届の正しい書き方と提出手続き

二以上事業所勤務届の提出には、正確な書類の記入と適切な提出手続きが重要です。この届出は、社会保険料を正しく計算するために必要であり、誤った書類の提出や記入漏れは、保険料計算に影響を与える可能性があります。ここでは、書類の書き方と提出手続きに関する詳細を解説します。

書類の書き方と記入例

二以上事業所勤務届の記入には、いくつかの重要なポイントがあります。

  1. 被保険者情報の記入 氏名、生年月日、被保険者番号、個人番号(マイナンバー)または基礎年金番号を正確に記入します。これにより、年金事務所での適切な管理が行われます。
  2. 各事業所の情報 勤務している事業所の名称、所在地、業種を記載します。また、各事業所での報酬額や労働時間を明確に記入し、保険料の按分計算が正しく行われるようにします。
  3. 選択事業所の選定 主たる事業所(選択事業所)を選定し、その理由も記載します。この事業所が主な保険料の納付先となります。選定基準としては、労働時間や報酬額が多い事業所を選ぶのが一般的です。
  4. その他の必要事項 各事業所の代表者の署名や、提出者の連絡先も記載します。書類に不備があった場合、迅速に対応できるように、連絡が取れる情報を提供することが重要です。

具体的な記入例は、日本年金機構の公式サイトに掲載されています。実際の届出書を作成する際は、記入例を参考にしながら、漏れのないように記入しましょう。

 提出に必要な書類一覧

二以上事業所勤務届の提出には、以下の書類が必要です。

  1. 二以上事業所勤務届本体 必要事項を漏れなく記入し、押印または署名を行います。
  2. 各事業所の雇用契約書または労働条件通知書 各事業所との雇用契約書や労働条件通知書のコピーを添付します。これにより、労働時間や報酬額の確認が容易になります。
  3. 報酬に関する証明書類 各事業所から支払われる報酬の証明書類(給与明細や報酬通知書)のコピーも必要です。これにより、報酬の按分計算が正確に行われます。
  4. 健康保険被扶養者(異動)届 被保険者が扶養家族を持つ場合、この書類も提出が必要です。
  5. その他の補足書類 事業所によっては、追加の書類が必要になる場合があります。事前に年金事務所や社会保険労務士に確認して、不足のないように準備を進めましょう。

誰が書くの?提出するの?

二以上事業所勤務届は、制度上は被保険者(従業員本人)が作成し提出する必要がありますが、実務的には、会社が従業員に代わって提出することが一般的です。

複数の事業所での労働や報酬の按分に関わるため、手続きが複雑な場合は、社会保険労務士に相談することも有効です。書類の誤りや記入漏れを防ぐため、専門家のアドバイスを受けることで、スムーズな手続きが可能になります。

提出方法は、管轄の年金事務所への郵送、窓口への持参、または電子申請が可能です。提出期限は、二以上事業所勤務の開始日から10日以内となっています。

正確な書類の作成と適時の提出を心がけることで、社会保険手続きをスムーズに進め、トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。

二以上事業所勤務届のことでよくある質問

二以上事業所勤務届に関しては、多くの方から様々な質問が寄せられています。ここでは、よくある質問について、一つ一つ丁寧に解説していきます。健康保険や年金への影響、保険料の納付先、退職時の手続き、役員の場合の取り扱いなど、気になる点を確認しておきましょう。

二以上の事業所に勤務すると保険証はどうなる?

二以上の事業所で勤務する場合、選択した事業所(主たる事業所)を通じて新しい保険証が発行されます。二以上事業所勤務届の提出後、健康保険証の番号が変更されるため、それ以降は旧保険証を使用することができなくなります。

主たる事業所宛に新しい保険証が届き次第、旧保険証は差し替えて返却する必要があります。特に、以前から社会保険に加入していた会社を選択事業所として選んだ場合でも、保険証番号が変わるため、古い保険証は無効になります。

新しい保険証を使用し、医療機関での手続きを行いましょう。この変更により、複数の保険証を持つ必要はなく、選択事業所の保険証のみが有効となります。

二以上の事業所に勤務している場合の保険料の納付先は?

二以上の事業所で勤務している場合、社会保険料は選択した事業所(選択事業所)から納付されます。選択事業所は労働時間や報酬額が多い方の事業所を基準に決定することが一般的です。

社会保険料は、複数の事業所からの報酬額を合算して計算されるため、正確な報酬額の申告が必要です。報酬の按分計算によって、負担が公正に行われます。

保険料の納付は、選択事業所が管轄する年金事務所や健康保険組合に対して行われます。従業員本人が直接納付する必要はなく、事業主が一括して納付します。

退職した場合、二以上事業所勤務届の喪失手続きは必要?

二以上事業所勤務届を提出していた労働者が、いずれかの事業所を退職した場合、喪失手続きが必要になります。退職によって、その事業所での社会保険の加入資格が失われるためです。

喪失手続きは、退職日から5日以内に、退職した事業所の事業主が年金事務所や健康保険組合に対して行います。必要書類として、資格喪失届、離職票、年金手帳などが求められます。

もし、選択事業所を退職した場合は、残りの事業所で新たに二以上事業所勤務届を提出し、主たる事業所を選択し直す必要があります。

役員の場合は提出が必要か?

役員の場合でも、勤務実態に応じて二以上事業所勤務届の提出が必要になることがあります。常勤役員であれば、社会保険の加入義務が生じるため、複数の会社で常勤役員を務めている場合は、届出を行わなければなりません。

一方、非常勤役員の場合、勤務時間や報酬が一定基準を満たしていない場合は社会保険加入の義務がなく、届出の必要もありません。役員としての立場に応じて、適切な判断が求められます。

役員報酬と給与収入の両方がある場合は、それぞれの事業所での加入要件を満たしているかどうかを確認し、必要に応じて届出を行いましょう。

二以上事業所勤務届については、様々なケースがあり、一人一人の状況に応じた対応が必要です。手続きについて不明な点がある場合は、社会保険労務士等の専門家に相談することをおすすめします。

生島社会保険労務士
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まとめ:二以上事業所勤務届は適用対象になったらすぐに手続きをしましょう

二以上事業所勤務届は、複数の事業所で社会保険に加入している場合に必要な重要な手続きです。本記事では、届出を怠った場合のリスクや罰則、提出が遅れた際の対処法、正しい書き方と提出手続きなどについて詳しく解説してきました。

二以上事業所勤務の状況が発生したら、速やかに届出を行うことが求められます。届出の遅延や未提出は、社会保険料の計算ミスや遡及徴収、罰則の適用など、様々な問題に繋がる可能性があります。

届出の対象となる方は、以下のようなケースが該当します:

  • 複数の会社で常勤役員を務めている場合
  • 本業とは別に副業で業務委託契約を結んでいる場合
  • 起業(法人化)した会社の代表でありながら、別の会社でも役員報酬を得ている場合

一方で、非常勤役員のように社会保険加入の必要がない場合は、届出の提出は不要です。

届出の手続きは、被保険者本人が行う必要がありますが、実務上は会社が代行することが一般的です。届出書の正確な記入と、必要書類の準備が肝要となります。手続きが複雑な場合は、社会保険労務士等の専門家に相談するのも有効な方法です。

二以上事業所勤務届は、社会保険制度を適正に運用するために不可欠な手続きです。対象となる方は、リスクを回避し、適切な保険料負担を行うためにも、届出の提出を忘れずに行いましょう。

本記事が、二以上事業所勤務届の重要性と具体的な手続き方法の理解に役立てば幸いです。ご自身の状況に当てはめて、適切な対応を取っていただければと思います。

生島社会保険労務士
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