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【社労士監修】30人以下の事業主のための人事評価制度の始め方

事業主の皆さん、人手不足を実感されている方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。これまでと同じ求人を出しても、まったく応募者がないことや、飲食店などでも人手不足のため休業や廃業をせざるを得ない事業主の方もいらっしゃいます。また、人が入ってもすぐ辞めてしまうということもあり、採用費や採用の手間などに頭を悩ませている事業主の方は多いです。

採用した方を定着させることが出来なければ、一年中採用をし続けなければなりません。採用費だけでなく教育コストもかさみ、事業運営に大きな打撃を与えることとなります。ではどうしたらいいのか?今回は定着に有効である「人事評価制度」について社会保険労務士が解説いたします。

この記事を監修した人

生島社労士事務所代表

生島 亮

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人事評価制度を導入している企業は中小企業でも増えている実態

「人事評価制度なんて10人未満の会社には不要だ」という方もいらっしゃいますが、人手不足の今、人事評価制度をしっかり整えることで他社との差別化を進めている事業主は非常に多くなってきています。中小企業庁における2022年度中小企業白書に、人事評価制度の導入割合が従業金数別に記載がありますが、従業員5~20人の企業では、人事評価制度があるのは4割程度、101人以上の企業では9割程度となっています。規模が大きくなればなるほど導入割合は増えますが、導入をする事業主は増加しています。

飲食店10店のうち、4店が人事評価制度を入れているということになります。その数字を事業主の皆さんはどうとらえますか?多いでしょうか、少ないでしょうか。

人事評価制度を導入する企業が増えているのは、人手不足を解消するための労働環境の改善施策として実施しているからです。

生島社会保険労務士
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本当に人が採れない時代の幕開け

日本は少子高齢化で、1995年の生産年齢人口(※)は8716万人とピークを迎えましたが、2023年には7400万人と減少、2040年にはさらに減少し、6000万人を下回ると予想されています。そうなると2040年の生産年齢人口は日本の人口の53.9%まで下がることになります。

65歳以上の人口が総人口の21%を超える社会は「超高齢化社会」となります(WHOの定義)。日本はすでに超高齢化社会なのですが、2040年になると65歳以上の人口が35.3%、75歳以上の人口が20.2%となり、高齢者数のピークを迎えることになり、現在世界でもトップの数字となっています。このような深刻な生産年齢人口減少のために、どの産業業種においても「人手不足」が深刻な問題として挙げられています。

(※15歳から64歳の人口を指します、要は働き手としてカウントできる人口のことです。)

「また採用すればいいか」は通用しなくなる

このように、働き手となる生産人口の減少が進む中、労働市場では、これまでは経験者しか採用されなかった求人でも、未経験の方が採用されるということが起こっています。これまでの採用基準では人が採れなくなっていることから、採用基準を大幅に見直すことが必要となり、大手有名企業ですら採用基準は下げざるを得ない状況になっています。中小企業や零細企業は今よりもっと採用難になるということは容易に想像が出来ます。

一方で、労働者にとっては転職しやすい環境が労働市場に整備されていることとなりますので、転職が成功する(給与等の処遇がアップする等を指します)可能性が高まっており、またスカウトサービス等の台頭により、求職者にはたくさんの求人情報が手間をかけずに手に入るようになりました。従業員は今に大きな不満がないとしても、他に良い条件の転職先があれば本当に転職してしまう、まさに「転職が促進される、転職がしやすい環境」が出来ているというのが現状です。

採用と同時に施策を実行すべき「人材の定着」について

このような状況から、採用についてはこれまでの手法を見直す必要がありますが、それだけでは施策としては当然足りません。採用は入り口ですが、人が辞めていくという出口についても、何らかの施策を行うことが必要です。そうでなければ穴の開いたバケツで水を汲み続けることと同じになります。採用した人材を辞めさせずに定着させるためには、人事評価制度の導入は大変有効な手段です。

人事評価制度とは

人事評価制度と聞いても何をするのかよくわからない、種類も多く自社にはどれがいいかわからないというお声も良く聞きます。人事評価制度とは人事制度3つのうちの1つの制度です。人事制度には、人事評価制度、等級制度、報酬(賃金)制度とあります。それぞれは密接に関係している制度のため、重複する部分もありますが、おおよそ3つに分けて理解していただくとよいと思います。

人事評価制度

人事評価制度は、実際に仕事を行う際に必要な知識や技術・技能、成果を出すための行動などの項目を定め、その項目について評価測定するものです。

評価には、業績評価、能力評価、情意評価などの評価軸があり、また、評価は必ずしも上司だけが行うわけではなく、自分自身が行う自己評価、メンバー同士で行う評価などもあります。そして、評価の方法と種類がいくつかあり、目標管理(MBO)や360度評価などがあります。

等級制度

等級制度は、組織内の職務や役割、従業員の能力などを区分分けし序列化したものに加え、権限や責任などを明確にしたものです。軸は「能力」「職務」「役割」と大きく3つに分けられています。職能資格制度、職務等級制度、役割等級制度などが代表的なものとして挙げられます。

報酬(賃金)制度

基本給の構成や手当の種類、支給される人の要件、賞与や退職金など、金銭に関する処遇の決め方を制度にしたものです。人事評価制度と等級制度とも密接に紐づいていることが多く、業績や勤続年数や貢献度をどのように反映させていくのかを決める、従業員にとっても働くモチベーションに直結する制度となります。

「●●制度」をいきなり導入する前に考える事

人事制度を導入したいと考えて色々と調べてみてみると、様々な名称の「●●制度」に出会います。それらを見てすぐに理解ができるという事業主の方はあまり多くはないと思いますが、説明にある効果や目的を見て、自社の導入目的に合うのではと思いこんでしまうパターンはよくあります。実は自社にぴったり合った「●●制度」というものを選定すること自体が大変難しく、導入後の運用まで考えたうえで選定しなければなかなかうまくはいかないのです。例えば「うちは役割等級制度を導入しよう!」といきなりフレームから決めると、実態と合わせるのが大変で、扱いきれなくなるようになります。最終的には形だけやっていて手間ばかりが増え、肝心の人の定着にはつながっていない、ということは本当によくあります。

まずは自社がなぜ人事制度を導入するのかを考え、どんな状態になりたいのかを決める必要があります。

30名以下の会社であれば「現行賃金テーブル」を作ってみることがお勧め

ではどのように進めたらいいでしょうか。制度の名前に一旦こだわらず、まずは現状の把握として「現行の賃金テーブル」を作ってみることをお勧めします。

なぜ賃金テーブルから作ってみるのかというと、「誰にいくらの賃金を支払っている」という紛れもない事実があるので、賃金テーブル作りはその事実を形にする作業なので、初心者でもやりやすいからです。また、評価と賃金はセットで作るべきだと思いますので、現行の賃金がどうなっているのかを可視化することは必ず実行する必要があります。人は、褒められることも認められることももちろん嬉しいですが、その評価が賃金と紐づいているほうが従業員もより納得し、よいパフォーマンスをしてくれます。

「現行賃金テーブル」の作り方

まず現在の従業員に支払っている基本給や手当を一覧にしてみます。

その一覧が出来たら、なぜこの基本給にしたのか、なぜこの手当を支払っているのか、なんの目的のために支払っている賃金なのか、という内容を書き出してみます。

基本給は年齢で決めているのか、自社での経験年数で決めているのか、今できる仕事で決めているのかを書き出していきます。理由が1つではないなら複数書いていきます。

手当については、例えば店長だから「店長手当」を支払っているとします。店長のどの仕事に対して支払っているのかを書き出します。シフトの作成や材料の発注や在庫管理、新人の面接などが該当しそうですね。また、利き酒師の資格を持っているから「資格手当」を支払っている場合、利き酒師の資格が業務の何に活かされているのかを書き出します。 このようにまずは今の状況を「可視化」してみるとよいと思います。

「何のための賃金」「どうやって決めていくのが妥当か」というルールを決める

上記の作業をしている中で、人により決め方がバラバラになってしまっていることもあれば、人により目的がずれた賃金を支払っていることがわかることもあります。それらについては書き出し終えた後に「この場合にはこれを支払う」などルールを決めていきます。いきなり細かく決めると運用がしづらいので、大枠を3つ決めるなど、ある程度後から変更できるようなものを残しておくほうがやり易いと思います。

人事制度とは会社にとって大事な項目をどう決めるのかという「決め方」を明文化したものであると捉えたほうが分かりやすいと思います。

人事評価制度は「目標」を労使相互で決めることから

あとは、「この人がこの仕事が出来るようになったら賃金を上げる」などを決めます。そのために、業務をまずマニュアル化してみるのもおすすめです。そのうえで、そのマニュアルの習熟度を従業員ごとに表などに作成してみるのもお勧めです。その中から、どれをできるようになってほしいのかなどをその従業員に伝えて、実際にできるようになるようにサポートをします。

気を付けるべきポイントは「これが出来るようになったら会社の業績にどう影響があるか」という点を考えて決めることです。業績とすべて結びつけることは難しい場合もあるかもしれませんが、この視点がなく決めてしまうと、従業員は満足してくれるかもしれませんが、単に経営を圧迫するだけになる場合もあります。

人事制度を導入するメリット

人事制度を導入しきちんと運用することは以下のようなメリットへとつながっていきます。人材定着に繋がるものはもちろんのこと、事業主の業務効率化につながるものもあります。

・求めている人材要件を明確に提示することで、従業員が現状とのギャップを認識し、成長が期待できる

・頑張る人を正しく把握し、承認することでモチベーションアップができる

・理念や目標などを明確にできるので、みんなで同じ方向を向くことができる

・人事制度というルールを使うことで経営者の時間に無駄やムラがなくなる

・実際の成果や発揮能力に対して、相応の報酬や処遇を決定することができる

賃上げタイミングで評価を行うことでさらなる効果アップ

人材確保のために賃上げを行うという事業主の方は多いと思いますが、せっかく賃上げをするのであれば、より「効果的」にすべきかと思います。ただ単に、時給を上げるだけでは「物価も上がっているし、世の中の流れだから当然」と捉える従業員は残念ながら本当に多いのです。

賃上げのタイミングで人事制度を始めることで、本人への伝わり方が劇的に変わります。最低賃金が発表される時期に合わせるのも良いタイミングだと思います。

最後に

人がいなければ成り立たない事業を行っている事業主の方にとって、人材採用と定着は非常に重要な問題です。日本国内の人口は減少していくため、今後は外国人材の活用、業務の棚卸からデジタル化を測るなど様々な方法を模索する必要があります。採用は手法を変えると結果が早く出る傾向にありますが、人事制度導入などの人事施策は実施してきちんと運用できるようになるまでには、大変時間と手間がかかります。いつかはやらなければならないとお考えであれば、今すぐ着手することを強くお勧めします。

また、人事制度は当然に賃金に関係が深く、賃金の決め方のルールといってもいいと思いますが、賃金の決め方は就業規則に記載する絶対的記載事項となっています。制度を導入したら就業規則の改訂や賃金規程の作成を必ずしましょう。また、何らかの不利益変更となっていないかどうかも確認する必要があります。不安なことやよくわからないと思うことがおありでしたら、ぜひ専門家である社会保険労務士へご相談ください。顧問契約が不要なスポット相談もとても便利です。ご状況を丁寧にお伺いしておりますので、大変手軽だとご好評をいただいております。また、お話を伺う中で、漏れている手続きがわかることもあり、労務環境整備に繋がることも多々ございます。ぜひ一度、活用してみませんか?いつでもご相談をおまちしております。

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