事業主の皆さん、これまで事業所所轄の年金事務所から社会保険に関する調査連絡が入ったことはありますでしょうか?労働基準監督署が行う労働基準法の調査同様、社会保険に関しても、日本年金機構が行う調査があります。
どんな会社に社会保険の調査が入るのでしょうか?もし調査が入ったらどんな準備をし、対応をしなければならないのか?
日本年金機構が行う社会保険の調査について、社会保険の専門家である社会保険労務士が解説いたします。
生島社労士事務所代表
生島 亮
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国の監督のもと、公的年金制度の運営を国から任されている唯一の組織は日本年金機構となります。東京都の本部では事業全体の管理・統括・運営を担い、年金事務所は全国312か所に設置されており、届書を審査する事務センターは全国15か所に設置されています。
このような組織で成り立つ日本年金機構には、厚生年金保険・健康保険などの適用促進に向けた取り組みというものがあり、その一環として行われているのが社会保険に関する調査となります。
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全ての法人事業所と常時5人以上の個人事業所(農林水産業やサービス業等の業種を除く)は、厚生年金保険・健康保険両制度に加入し、従業員を厚生年金保険・健康保険の被保険者として資格取得の届出を行う必要があります。そのうえで事業主が負担すべき保険料と従業員が負担すべき保険料とを一括して、毎月納めなければなりませんが、保険制度への加入手続きを行わず保険料の納付を免れている事業所があることや、社会保険に加入している適用事業所でも従業員に係る適用漏れの防止及び届出の適正化が必要となっています。
将来的な無年金者、低年金者の発生の防止や事業主の負担の公平性を確保するため、その把握に努めるとともに、加入指導等を行うために調査が行われています。
社会保険の適用事業所に対して行う調査があります。この場合は、
・新規に社会保険に加入した後に行われるもの
・すでに適用済み事業所へ定期的に行われるもの
とあります。
未適用の事業所(加入していない事業所)への調査もあります。
これは社会保険の適用が必要であるにもかかわらず手続きをしていない事業所へ加入を促すために行います。
よって、社会保険の調査は加入している事業所だけが対象になるわけではなく、社会保険に加入していなくても、従業員を雇用している事業主で、加入対象者がいると思われる事業所に対し調査が行われることも当然にあります。
「うちは小さな会社だから調査はない」と勘違いされている事業主の方も多くありますが、調査対象となる事業所には、従業員数など事業規模は全く関係ありません。
まず、所轄の年金事務所より調査連絡が原則郵送されます。指定された書類を指定された期日までに郵送か電子申請で提出をします。その内容を日本年金機構で精査をしますが、不備等がなく状態として問題がなければ特に連絡はなく、その後事業主も対応をする必要はありません。
しかしながら現在は社会保険の適用範囲拡大などの法改正が度重なっており、キャッチアップできていない場合もあり、正しく対応が出来ていない場合が多くあり、遡及加入などの是正対応が必要となる事例も多く報告されています。
正しい状態であるかどうかが分からない場合は、社会保険労務士など専門家へ現状精査の依頼をすることをお勧めいたします。
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2024年10月〜パート・アルバイトの社会保険の適用範囲が拡大!企業が取るべき対応と影響を解説
加入対象であるかどうかを調査するために、指定書類の提出が求められます。書類を精査した結果、加入が必要かどうかなどの調査が行われます。提出が求められる書類は以下となります。
・賃金台帳
・出勤簿やタイムカードなど労働時間がわかるもの
・労働者名簿
・労働条件通知書や雇用契約書
・源泉所得税の領収書
・就業規則や賃金規程等
これらは指定された期間分の書類を提出する必要があります。また、事業所調査票など指定の書類に記入をし、提出する必要があります。
状況により、これら書類のうち省略されるものもあれば、これら以外にも追加で資料を求められることもあります。
上記の書類については、社会保険の加入や雇用形態を問わず、指定された時点の在職者で賃金・報酬を支払っている方(役員・従業員・パートアルバイト等含む)がすべて対象となります。
提出した書類をもとに、新規適用事業所届や、資格取得届や算定基礎届、月額変更届、賞与支払届などの届出が正しくなされているかを調査されます。
・適用事業所であるかどうか
法人で役員1名だけでも、役員報酬が支払われている場合は社会保険適用事業所となります。また、役員報酬が支払われていなくても、加入要件を満たした従業員がいる場合でも、社会保険適用事業所となり、新規適用事業所届が必要となりますので、正しい届出をするよう指摘されます。
・対象者の加入手続きが正しくなされているか
まず、加入の条件を満たしているのに加入漏れがないか、働いている時間などをもとに調査されます。その結果、加入対象であるにもかかわらず加入していない場合は、加入対象となったその日まで遡って、加入するよう指摘されます。
遡及加入は2年まで可能ですので、最大で過去2年分の保険料納付が必要となることもあります。
・正しい報酬額で手続きがされているか
加入手続きはなされてはいるものの、賃金に変動があったのにも関わらず、変更の届出をしていない場合、正しい届出をするよう指摘をされます。
例えば、昇給や業務量の増加による割増賃金等の発生などが一般的には多くあります。
社会保険料は報酬に応じた額となっているため、要件に該当する場合は変更の届け出が必要ですが、手続き漏れが大変多くあります。
賞与支払届の届出が必要にもかかわらず、その提出がない場合は、正しい届出をするよう指摘がされます。賞与は、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるもののうち、年3回以下の支給のものです。なお、年4回以上支給されるものは標準報酬月額の対象とされ、また、労働の対償とみなされない結婚祝金等は、対象外です。従業員等に支払う手当で賞与支払い届が必要かどうかの判断がしにくい場合が多く、届け出漏れが指摘されることが大変多いものです。専門家である社会保険労務士に相談されることをお勧めいたします。
調査を行った結果、間違いや届け出漏れがあった場合は、正しい届出などが必要となります。それに伴い社会保険料の納付が発生することもありますし、給与計算などのし直しなどの膨大な手間も発生し、不備及び控除にいついて従業員に対し説明を行うことも必要となります。
不備の内容によっては多額の社会保険料を用意しなければならないこともあり、また対象従業員が退職していれば労使折半のうち従業員負担分を事業主が納付しなければならないこともあり、非常に経営上のリスクがあります。正しい手続きを心がけましょう。
厚生年金保険法第100条において「厚生労働大臣は、被保険者の資格、標準報酬、保険料又は保険給付に関する決定に関し、必要があると認めるときは、事業主に対して、文書その他の物件を提出すべきことを命じ、又は当該職員をして事業所に立ち入って関係者に質問し、若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。」とされています。
また、同第102条において、事業主が、正当な理由がなくて「第百条第一項の規定に違反して、文書その他の物件を提出せず、又は当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の陳述をし、若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。」は6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処することとされています。
法律で定められていることですので、調査連絡が来たら速やかに対応をしましょう。
加入の勧奨など年金事務所の職員による重点的な加入指導を実施しても加入手続きを行わない事業所に対しては、年金事務所の職員が立入検査を行い、被保険者の資格の有無の事実を確認し、必要に応じて、職員の認定による加入手続きを実施します。
なお、事業主には立入検査に応じる義務がありますので、検査を忌避したり、質問に対し答弁をしないことなどは罰則の対象となります。
厚生年金保険法第90条に、厚生労働大臣による被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある場合は、社会保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服がある者は、社会保険審査会に対して再審査請求をすることができると定められていますので、調査結果により加入指導など受けた内容について不服申し立てをすることは可能です。
社会保険の調査については、適用範囲の拡大などの流れからもわかる通り、厳しさを増しています。正しい手続きを行っていれば恐れることはなく、何も問題はありません。
しかしながら、社会保険は自由加入であると誤解をしている事業主の方も多く、「加入しなくていいと従業員に言われたから」という理由で加入要件を満たしているのに届出をしていない場合もあります。社会保険は自由加入ではなく、加入要件を満たしている場合は必ず加入する必要があります。
正しい手続きをすることは、従業員の将来の年金額や、万が一のけがや病気により障害年金の支給が受けられるなど、たくさんのメリットがあります。
事業主の皆様にはぜひ、正しい届出を行うよう、お願い申し上げます。
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社会保険の加入対象者の適用拡大などの法改正がすすみ、結局、加入対象者が誰なのか、なにをどこから行えばいいのか、そもそも必要な書類が事業所で調整されていなかったなど、正しい届出をするための準備がよく分からない場合もありますね。そんな時は、ぜひ専門家である社会保険労務士へご相談ください。
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