顧問料0円、完全スポット(単発)対応の社労士サービスはこちら

【社労士監修】就労と障害年金について 

社会保険

あなたは働けているから障害年金はもらえないよ

誰かのこんな一言で障害年金の請求を諦めてしまった方も多いのではないでしょうか。

これはよくある誤解です。現在働けている方でも傷病の種類や程度によっては障害年金が受給できる場合があります。

2020年に発表された厚生労働省の統計調査では、65歳未満で障害年金を受給している人のうち43.1%が、何かしらの仕事をしながら生活していることがわかっています。(出典: 年金制度基礎調査(障害年金受給者実態調査)令和元年

障害年金を受給することによって、心理的負担や経済的不安を少しでも軽くし、仕事と生活のバランスを保って治療に専念できるよう、大切なポイントをお伝えしたいと思います。

働く人の障害年金の認定について

障害年金には(二十歳前傷病による障害年金を除いて)収入要件はありません。

※二十歳前障害については障害年金についての基礎知識をご覧ください

障害年金は病気やケガの種類によってそれぞれの認定基準が定められており、要件に該当すれば収入に関係なく、請求すれば障害年金が支給されます。

外部障害

たとえば外部障害といわれる目や聴覚・肢体(手足など)の障害など、検査や数値で客観的に証明できる障害については認定基準に該当していることが明確で、働けていることを理由に不支給となることはほぼありません。

例えば・・・

  • 両耳の聴力レベルが90デシベル以上
  • 両目の視力がそれぞれ0.07以下
  • 人工透析を受けている
  • 一下肢を足関節以上で欠くもの

などが該当します。

片脚を欠損して車いすになっても仕事内容や職場によっては元気にバリバリ働ける人もいますよね。

精神疾患/内科系疾患

逆に、数値や見た目ではわかりにくい障害、精神疾患(うつ病や高次脳機能障害)やがんなどの内科系疾患では注意が必要です。

こうした障害の場合、請求時に提出する病歴・就労状況等申立書という書類の中で、労働能力の有無・日常生活状況や、周囲のサポート状況について詳しく記載する必要があります。

病気やケガがあることで、職場や家庭でどの程度の配慮やサポートがされているか、また配慮やサポートがなかった場合、どのような事態が予想されるかを具体的に考えてみましょう。

例えば職場で・・・

  • 勤務時間・日数を減らしている
  • 疲れやすいため周囲の人よりも休憩時間を多くもらっている
  • 体調不良や通院のために欠勤や遅刻・早退がある
  • 配置転換について配慮されている(出張や残業のない部署への異動など)
  • 業務内容の配慮(単純作業や、当欠などでも影響の少ない業務内容を行うなど)
  • 社内コミュニケーションの量や方法の配慮
  • 上司や産業医との定期面談など

・・いかがでしょうか?病気やケガのために上記のようなサポートを必要としていたり、現にサポートしてもらっている方は、働けているからといって障害年金を諦めるのは早いかもしれません。

周囲のサポートがあることでなんとか就労が継続できている、という状況ならば障害年金が受給できる可能性があります。

厚生労働省の精神の障害に係る等級判定ガイドラインでは

【労働に従事していることをもって、 直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえで日常生活能力を判断する。】

とあります。つまり働いている=不支給 ということではないのです。

サポートについて

日常生活面でも

  • 金銭管理や計画的な買い物ができているか
  • 適切な食事が自発的に行えるか
  • 身辺の清潔保持(洗面・入浴・着替えなど)ができているか
  • そのほか家族や周囲の人にサポ―トを受けていることがあるか

など、衣食住についても何にどの程度の困りごとがあるか、家族や周囲の人にどのようにサポートされているかを、細かく申し立てる必要があります。

ご本人がすごく頑張って、サポートを受けずフルタイムで働き一人暮らしで規則正しい生活が成り立っている場合などは、長く治療を受けていても認定の難易度はあがってしまいます。

職場では元気に頑張っていても帰宅後に疲労で動けず、入浴や食事などの生活がきちんとできないなど、誰にも気づかれないような困りごとがある場合は、そのことを申し立てできるように自分で記録しておく必要があります。

また病気やケガが原因で就労状況に変化が生じ、収入が減った場合なども客観的な証明ができると良いでしょう。

医師の診断書が大事

もちろん、配慮やサポートがあるからといって必ず障害年金が受給できるわけではありません。障害年金の審査では医師の診断書が最も重要です。

診断書ではご自身の病気やケガの程度について、正しく客観的に医師に証明してもらう必要があります。

ですが定期的に通院している方でも1回の短い診察時間では生活や就労状況についてきちんと医師に伝えられていない場合が多く、これではただ医師に診断書を依頼しても状況が正しく記載されない可能性があります。

安定した就労ができる状態なのか、サポートを受けないと働けない状態なのか、医師に正しく判断していただくためにも日常生活や仕事上での状況をメモにまとめて診察時に渡すなど、障害年金の請求にあたって医師の協力を得られるよう準備をしておきましょう。

お勤め中の方へ

3級があるのは厚生年金だけ

障害年金についての基礎知識にも記載があるように、障害年金は初診日にどの保険に加入しているかで、年金額も認定範囲も変わります。

初診日が国民年金加入中だと請求できるのは障害基礎年金となり、1級と2級しかありません。

働きながら2級以上の障害年金が認められることは難しく、【日常生活には支障がないが労働に制限がある場合】は原則3級に該当します。3級があるのは厚生年金だけです。

もし病気やケガにより働く時間が減ったことで、会社の社会保険の適用徐外になったり退職したとしても、初診日が厚生年金保険の加入中であれば障害厚生年金の請求をすることができるのです。

注意

健康診断で初めて異常が見つかった場合、その後、治療目的で病院にかかった日が初診日となりますのでご注意ください

病気やケガで今まで通りに働けなくなったとき、「職場に迷惑をかけたくない」という理由ですぐに退職を選んでしまう人がいますが、諦めないでください。

お勤めの会社では治療と仕事の両立のためのどのような制度があるか、まずは確認・相談しましょう。

新たに就職の場合

また、それまで働いていなかった方が障害年金を受給しながら新たに就職した場合でも、即座に障害年金が停止されるわけではありません。

障害者雇用枠での就職であるとか、就労形態や労働時間について周囲の援助・配慮を受けて就労する場合は記録や証明を残して、次回の障害年金更新に備えましょう。

障害年金とその他の制度について

税金について

障害年金は非課税です。税金はかかりません。年末調整・確定申告も不要です。

つまり精神障害などで障害年金を受給している場合でも、必ずしも会社に伝える必要はありません。(しかし障害を秘密にしている場合、職場からの理解やサポートを受けにくいという問題もあるため、サポートが必要な場合はご自身の障害を伝えることも検討しましょう。)

注意

障害年金を受給している人が社会保険上の被扶養者となっている場合は、障害年金の金額も被扶養判定の年収額に含まれますので注意が必要です。(障害年金とほかの収入を合わせて年間収入180万円未満であれば扶養から外れません)

失業保険について

会社を退職し、失業手当(正式名:雇用保険の基本手当)をもらう場合でも障害年金は調整されることなく両方受給することが可能です。

 ただし病気やケガで働けない状態ではそもそも失業手当はもらえません。

障害の状態によっては労働に制限があってもサポートがあれば働けるという方が多くいるため、その場合は両方の同時受給が可能になります。

傷病手当金について

傷病によって健康保険の傷病手当金を受給している場合、傷病手当金は1年6か月分の受給が上限となっており、障害年金は(原則として)初診日から1年6か月経たないと申請ができません。(人工透析の開始やペースメーカーの移植など例外を除く)

傷病手当金をもらい終わっても回復の見込みがない場合、労働への制限が続きそうな場合はぜひ障害年金を検討してください。

障害年金は請求書の提出から受給まで平均で4~5か月程度の時間を要します。医師に診断書を依頼し、書類をそろえるのにも時間がかかりますのでスケジュールに余裕をもって準備をしましょう。

※傷病手当金と障害年金の支給が重なった場合、障害年金が優先され、障害手当金の返納が発生する場合がありますのでご注意ください

労災について

同じ傷病で労災保険の給付と障害年金の両方が支給される場合、労災保険の給付が減額調整されます。(二十歳前障害の障害基礎年金の場合では労災給付がある間は年金が停止されます)

労働保険とは、労災保険と雇用保険を合わせた総称として使われています。従業員を1名でも雇えば労災保険は適用されるので保険料を納付しなければなりません。雇用保険は週20時間以上働く人を雇った場合に加入させるきまりになっているので、該当者がいる場合は雇用保険料を納付しなければなりません。

事業主様へ:従業員が怪我や病気になったとき

2018年の国立がん研究センター調査ではがんと診断を受けて退職・廃業した人は就労者の19.8%となっています。

逆に言うと、がんになっても8割の方が仕事を続けています

がんだけでなく治療が長期にわたる傷病においては、社会において治療と就労が両立できる体制が必要です。

傷病を抱えた従業員が、障害年金を受給することで収入の不安が減り、時短勤務などの無理のない就労形態を選択することができます。会社としても経験を持った従業員を離職させることなく雇用継続できるメリットがあります。

そして傷病の悪化により残念ながら退職せざるを得なくなった従業員がいた場合にも、退職後の不安を少しでも減らし治療に専念できるよう、障害年金の制度についてご本人にお伝えいただきたいと思います。

※障害年金の請求は個人の手続きとなります。会社が代理で行うことはできません。ご本人の意思を尊重したご提案をお願いいたします。

さいごに

 障害年金=障害者ではありません。

現役世代の方が病気やケガによって生活や労働に支障がある場合に支給される社会保障制度のひとつが障害年金です。

病気やケガをして今までと同じような就労生活が出来なくなったときに、ひとつの支えになるかもしれない障害年金について、皆様に広く知っていただきたいと思います。

不明な点はお近くの年金事務所、もしくは社労士事務所へご相談ください

この記事を書いた人

はやし乃社会保険労務士事務所

林 ゆき乃

https://www.hayashino-sr.com/

【相談しやすい社労士として選ばれています。】 ご自身の病気やケガが障害年金に該当するかどうかわからない、請求の仕方がわからない、書類が煩雑である、そんなお悩みを抱える方へ。 専門知識を持った社労士が病状や生活状況に合わせてお一人おひとりていねいにサポートさせていただきます。