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【社労士監修】自分でできる!障害年金申請時の文書作成のポイント

障害年金

「障害年金を申請する際、文書を準備することが大変でした。」

障害年金をご自身で申請した多くの方たちが口を揃えておっしゃるのは、準備する文書の種類が多いということはもちろんですが、何よりも内容が大変複雑であるということが挙げられます。

初めて障害年金を申請する方にとって、年金制度の理解や医師との連携に苦労されることが多いからでしょう。

しかし、障害年金は国が用意している社会保障制度であり、決して特別な知識や技術を持ち合わせた方のみが申請できるものではありません。

社会保険労務士のように専門家の支援を受けることも一考ではありますが、障害年金の申請に関するポイントを抑えることで、ご自身で申請することも可能です。

今回は障害年金を申請するにあたって一番重要と言われている「医師の診断書」、加えて医師の診断書ではお伝えしきれない現況を説明する「病歴・就労状況申立書」にフォーカスし、文書作成のポイントをご案内します。

※障害年金の概要をお調べになりたい方は障害年金についての基礎知識をご覧ください。

この記事を書いた人

神庭社会保険労務士事務所代表

神庭 豊

カンバ ユタカ

https://home.sr-kamba.jp

2023年3月に神庭社会保険労務士事務所を開業。「夜にあいてる社労士事務所」をテーマに、企業内の人事労務支援を行う「ユア人事」と、WEB対応を条件とした安価な報酬設定の「障害年金申請支援」の2つのサービスを提供しています。 趣味はジョギングやコンビニスイーツ、沖縄旅行(離島好き)。 特技は資料作成とセミナー講師。

障害認定基準を理解する

障害年金は、申請者の障害の程度により障害等級が認定され、等級に応じた年金額が決定します( 1 級又は 2 級。障害厚生年金に限り3級、および一時金である障害手当金が設けられています)。

障害等級を決定するためには、障害認定基準が設けられており、その内容は公開されています。先ずは、ご自身に残存している障害の認定基準を事前にご確認することをお勧めします。

ただ闇雲に障害年金の申請手続きを進めてしまうと、認定に必要な情報が足りない文書が作成されてしまうリスクがあります。ご自身の障害が適切に評価されるためには、計画的、かつ丁寧な準備が必要であることをご理解ください(ポイントは後述します)。

19種類の障害認定基準

障害年金の認定基準は障害が残存する部位や症状に応じて、19種類の区分に分けられています。

(出典:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」)

仮に上肢に障害が残存する場合、両上肢の機能に著しい障害を有する場合は障害等級は「1級」であり、 一上肢(片方)の機能に著しい障害を有する場合は障害等級は「2級」と明確に定められています。

また、精神の障害(例:うつ病)の場合、「障害の程度は、その原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定する」と定めており、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを「1級」に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを「2級」と基準を用意しています。

こちらは上肢の障害に比較すると曖昧な領域もあり、医師によって判断が分かれる可能性があります。

各障害の認定基準の特徴は事前に確認しておきましょう。

併合等認定基準

  • 障害年金の認定の対象となる障害が 2 つ以上ある(併合認定
  • 既に障害年金を受給しているが、更に障害年金を支給すべき事由が生じた(加重認定
  • 内科的疾患が併存している(総合認定

上記例のように、場合によっては2つ以上の障害が残存していることがあります。そのような場合には、「併合等認定基準」が設けられており、各々の障害における評価を組み合わせて障害等級が認定されます。

(出典:日本年金機構「第 2 章 併合等認定基準 」)

医師の診断書作成時のポイント

障害年金の障害等級認定にあたっては、前述の通り、医師の診断書の内容が何よりも重要です。

患者さまの症状が障害認定基準に至っていることを医師に適切にご作成いただくためには、以下のポイントに沿った丁寧な準備・対応が必要です。

【参考】診断書(精神の障害用) ※1枚目

引用:日本年金機構「精神の障害用の診断書を提出するとき」

患者さまと医師の立場を理解する

患者さま、医師共に、「傷病を治療し、完治する」ことを目的にしています。

しかし、患者さまが障害年金を申請するため、医師に診断書作成を依頼する際は、「障害年金の認定を受けたい」という気持ちがあり、診断書の内容はできる限り、重たい症状であるよう記載して欲しいと思う方もいるかもしれません。

なお、患者さまが医師に強く症状を訴え続けることで、医師は治療に専念することをご助言されたり、ご自身の治療内容を批判されていると捉えて不快の意を示す等、診断書作成が順調に進まないケースがあります。

根本に医師は「患者さまの傷病を治したい」という想いをお持ちです。その医師の立場を理解、そして感謝し、関係を構築することで、以後の手続きも円滑に進むことが期待されます。

こちらは対応が必須の項目ではありませんが、私が障害年金の申請代行をする際は、お客さま全員に説明しています。

医師に障害年金の制度を理解してもらう

医師は患者さまへ治療行為を行う医療のプロフェッショナルであり、障害年金のプロフェッショナルではありません。

よって、医師がスムーズに、そして適切に診断書を作成する環境を整えていくことがとても重要です。

医師へ診断書の作成を依頼する際には、診断書のドラフトのみをお渡しするのではなく、追加で、障害年金の診断書の目的、作成方法がわかる資料(以下にご紹介している日本年金機構のホームページに掲載している記載要領や注意事項)や、患者さまの現況を共有する資料を同封することが望ましいです。

(出典:日本年金機構 障害年金の請求手続き等に使用する診断書・関連書類、日本年金機構 障害年金の診断書を作成する医師の方へ

医師が障害認定基準を認識していなければ、診断書の内容が必要な情報を満たさない恐れもあります。医師と認識合わせができるよう、丁寧な説明が必要であることをご理解ください。

また、障害年金の申請は障害認定日時点の症状を基に障害等級の認定をするものであり、治療を終了する意向がある訳ではないことをお医者さまにご理解いただくことが望ましいです。

(医師から「治療が終了していないので診断書は書けない」とお断りを受けるケースがあります)

日頃のコミュニケーション

医師は診察時しか患者さまの情報を得ることができません。

医師が知ることができない、患者さまが日常生活や就労について困っていることは積極的に共有することを推奨します。

患者さまからの情報は診療録(カルテ)に残る可能性が高く、医師が診断書を作成する際の参考になります。なお、共有する際のポイントは「具体的」であることが望ましいです。

「事務仕事はできるが、30分以上は姿勢を保つことが辛い」「お風呂は家族の協力がないと入れないので、週2回程度入浴している」等、「何が」「どのくらいの期間」「どうやって」のように、いわゆる5W1Hを意識すると具体的な表現につながります。

先述した通り、診断書の作成を依頼する際に、患者さまの現況を共有する資料を同封することをお勧めしましたが、依頼時のみにご主張するだけよりも、日頃の会話から情報共有ができていると、よりスムーズに手続きが進むことが期待できます。

注意事項

先ずは、医師への尊敬の気持ちに欠ける行為を避けましょう。特に医師へ診断書の記載内容に対して注文をつけたり、障害年金の認定を受けられるような診断書を作成して欲しいと依頼することは、医師の尊厳に関わるだけでなく、詐称行為になるリスクにもつながりますので、必ず避けてください。

また、医師に気を遣って、症状が改善していないにも関わらず「良くなっている」と表現してしまうことも注意が必要です。

医師は患者さまのお話を信じて診察をし、診療録に記録を残します。いざ、障害年金を申請する際に重度な症状が残っていたとしても、改善しているという記録がある場合、これまでの整合性が保てず、障害年金の認定を受けることが困難になる恐れがあります。 繰り返しになりますが、医師への尊敬の気持ちを持ち、良好なコミュニケーションを重ねて、療養に専念することが大切です。

病歴・就労状況等申立書

病歴・就労状況等申立書は患者さまご自身が作成する文書で、医師の診断書ではお伝えしきれないご自身の現況を説明する役割を担っています。

報告書類を作成する機会が無い方にとっては、抵抗感があるかもしれません。しかし、要点を押さえることで作成が可能な文書です。

ひとつずつポイントを整理していきましょう。

【参考】病歴・就労状況等申立書 ※1枚目 引用:日本年金機構「病歴・就労状況等申立書を提出するとき」

病歴・就労状況等申立書の構成

病歴・就労状況等申立書は、主に「病歴状況」「就労・日常生活状況」を報告する二部構成です。

病歴状況」は、発病した時から現在までを時系列に、具体的な症状、治療内容、通院頻度等を中心に記載します。

転院や治療方針等で、複数の医療機関を通院した場合は、医療機関ごとに記載することが基本です。なお一つの医療機関の通院期間が長期間(5年を超える)であった場合は、症状が変遷していることが考えられるため、3〜5年毎に分けて記載していくことが推奨されています。

就労・日常生活状況」は障害認定日(初診日から1年6ヶ月目、またはそれ以前に傷病が治った日)および現在の状況についてそれぞれ記載します。

また、障害者手帳を交付されている場合、交付年月日、等級、障害名等を報告する必要があります。

作成時のポイント「5W1H」

ご自身で病歴・就労状況申立書を作成する際、「5W1H」を意識することを推奨します。いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように・・・が記載されていることで、相手方に物事が伝わりやすくなります。

症状・治療について記載する場合、症状はいつ・どのくらいの頻度で出てくるか、どの部位なのか、どんな治療をしていたのか、治療をした際はどのような効果が出たのか、治療をしても改善しなかったことは何なのか、どのくらいの頻度で通院したのか、通院していない時期がある場合はなぜなのか…、できる限り具体的に記載するよう心がけてください。

日常生活で不便なことについて記載する場合、なぜ不便なのか、どのくらい不便なのか(例:家族の支援が必要である)、等を併せて説明することが望ましいです。

就労状況は、仕事の内容を具体的に記入し、その中でもどんな業務の対応に困っているのかを説明することで、より具体的な情報を提供することができます。

インタビュー&レビューの協力を依頼する

病歴・就労状況等申立書をご自身で作成する際に、なかなか筆が進まない…という方が一定数いらっしゃいます。

そんな時は、どなたか(ご家族や友人、治療経過をご存知の医療機関の職員等)のご協力をいただき、インタビュー形式で療養の経緯を振り返ることをお勧めします。

ひとりで黙々と書類を作成していると、偏った内容になることがありますが、自身の言葉で発すること、第三者から質問されることで、当時できなかったこと、どんなことで困っていたのか等、具体的な内容を思い出すことが期待できます。文書の内容を充実させるため、ぜひ実施を試みてください。

また、病歴・就労状況等申立書の作成が完成した際には、第三者にチェックの依頼をしましょう。

初めて文書作成する方がほとんどであり、当然のことと言えますが、せっかく作成した文書の内容が伝わらない、伝わりにくい…というケースが散見されます。

他の方にご確認されることに抵抗感のある方もいらっしゃるかもしれませんが、文書の品質を高めるために、必ず実施しましょう。

最後に

今回は障害年金を申請するにあたって一番重要と言われている「医師の診断書」、加えて医師の診断書ではお伝えしきれない現況を説明する「病歴・就労状況申立書」にフォーカスし、文書作成のポイントをご案内しました。

なお、障害年金の申請は患者さまの治療経過や傷病内容等によって、対応すべきことが様々であるという特徴があります。

この特徴が、障害年金申請のハードルを高くしているのではないかと思料しています。

社会保険労務士事務所では「無料相談」の場を設けているところが多く、無料相談を活用して、障害年金の認定可能性の確認や、申請手続きの整理等から始めるのも良いかもしれません。

(社会保険労務士に障害年金申請を正式に依頼することで、申請手続きの効率化や、準備負担からの解放、作成する文書の品質向上等、様々な恩恵を受けることができますが、報酬を支払いするという金銭的な負担が発生しますことをご留意ください)

障害年金申請のハードルは高いように感じるかもしれませんが、障害年金は社会のセーフティーネットのひとつであり、専門家の協力無くして申請できないといった類のものでは決してありません。

こちらの記事が、みなさまの障害年金の申請手続きを進める後押しになることを心から願っています。

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